その気迫は普段のしぇりるとは全く違う、鬱憤がたまっていると言った具合の連続攻撃だ。
しぇ、しぇりるさん?
しぇりるちゃんこの前の戦いのストレスが溜まってたみたいだねー
鬼気迫る勢いでござる
バチンとルアーが外れる。
するとミストマッドサラマンダーが転倒から起き上ってグルっと体を一周させて周囲に衝撃波を発生させた。
しぇりるは振り落とされて水の中に落ちる。
即座に騎乗ペットが回収してくれて水面に出る。
キュー!
行けっ! っとばかりに銛をミストマッドサラマンダーに向けると騎乗ペットのカワウソがそのまま飛び掛かってミストマッドサラマンダーの喉に食らいつく。
そのまましぇりるは無言でブスブスとミストマッドサラマンダーを刺しまくる行為を再開しだした。
なんか怖いな。
と、とにかく攻撃!
はい! この隙を逃しません!
そうでござるな!
そんな訳で俺達の怒涛の攻撃でミストマッドサラマンダーを倒すことができた。
問題なく倒すことはできたけど、思ったよりタフだね
そうですね。装備を整えた方が良いかもしれません
不要
しぇりるがここで硝子の提案を断り、ストレージからあの着ぐるみを取り出して着用を始める。
あのしぇりるさん? なんかやる気に満ちていますがサンショウウオが嫌いなんですか?
硝子のセリフにしぇりるは首を傾げている。
心の底からよくわかってないって顔だ。
硝子さん。しぇりるちゃんも思いっきり暴れたい時があるんだよ。ね? 別に両生類が嫌いだからじゃないよね
どうやらしぇりるは魔王軍との攻防で負けた事が悔しかったんだろう。
思えば俺達の中で唯一負けた戦場に居た訳だし。
強くなりたいから引きたくないって気持ちは痛いほどわかるぞ。
俺は姉さんや紡に比べると運動神経や戦闘センスに劣るから、悔しさをよく経験したもんだ。
とりあえずしぇりるちゃんがやる気に満ちてるんだからやって行こう。で、お兄ちゃん。解体任せたよ
そんな訳で倒したミストマッドサラマンダーの解体を行う。
まだほかにも出てくるだろうし早めに解体すべきだな。
高速解体を使って手短に解体を行う。
今のしぇりるは見た目がネタでも強ければ良いって心境なんだろう。
河童装備を着用してる。
今はやりたいようにやってもらえば良いか。
そこそこの付き合いだけど、数日後にはいつものしぇりるに戻っているだろう。
って感じで俺達は湿原でクエスト対象の魔物を狩って行ったのだった。
そうしている内に俺を含めて、あることに気づいた。
この辺りはどうやら引き寄せない限り、魔物が来ませんね?
ちょっとした大きめの段差のある小さめの滝とも呼べる場所なのだが、魔物が寄ってこないのだ。
そうだな、休憩ポイント的な奴なのかもしれない
たぶんそうだと思うよ? 狩場にちょこちょことあるのを知ってるよ
ふむならちょうどいいか、ここで釣りでもしてアメマスが釣れないか試してみるとしよう
確かにお兄ちゃんに試してもらうには良さそう。素材もそこそこ集まってるし、じゃあお兄ちゃんはここで釣りしてて、何かあったら呼んでよ
既にそこそこ解体は済ませてあるロミナに何かを作って貰うときに足りないって可能性もあるけれど、その時はその時だ。
タイミング的には丁度良さそう。
わかった。アメマスをしっかりと釣ってやる!
では私もご一緒しますね
ん? ここで以外な人物が挙手した。
それは硝子だ。むしろ硝子こそ今回の魔物退治を好んでするポジションじゃないのか?
みんな意外と言った顔で硝子を見る。
硝子さんどうしたの? 魔物退治よりお兄ちゃんに付き合うなんて、疲れちゃった感じ?
そうでござるな。一体どういう考えでござる?
あ、万が一に備えてお兄ちゃんの警護とか? お兄ちゃん、ペックルマスターだから逃げるのは上手だよ?
うるさい。確かに異常事態があったらペックルを盾にして逃げるけど、それにしたって言い方があるだろ。
そういうわけではなく、絆さんは私たちに付き合って下さっているのですから私も絆さんに付き合うべきだと思いまして
気にしなくていいんだぞ?
いえ、いつまでも甘えるわけにはいきませんから、カルミラ島の時にも教えてくださったじゃないですか
まあそうだね
あの時は大事なルアーが奪われて教えるって状況じゃなくなったから硝子への釣り訓練は中途半端な状況だったっけ。
だから今回、私は絆さんと一緒にアメマス釣りのクエストの方をしますね
硝子さんも律義だねーわかったよ
俺より一緒に魔物を倒している紡が頷いた。
理由はわかったでござる。では拙者たちが魔物退治をしてくるでござるよ。しぇりる殿もそれでいいでござるな
ではそっちは任せたでござるよー
ああ、ついでに今晩はアメマス料理を振舞ってやるからなー!
と言う訳で俺達は二手に分かれてクエストを行うことにした。
紡達が遠くに行くのを見届けた後、俺は装備欄からお古の釣り具を取り出して今回のアメマス用に釣り具をセットして硝子に渡す。
スポーツフィッシングの側面があるようだから釣り糸は丈夫な奴にしてルアー釣りで良いだろう。
フライフィッシングでも釣れるとは思うけど。
ほかに何が釣れるかわからないんだし、これで良いだろう。
はい硝子、これで釣りをしてくれ
はい。フフ、絆さんのカニ籠回収に付き合ったおかげでフィッシングマスタリーが上がっているのですぐに挑戦できますね
ああ、スキル取ったんだ?
はい。使わない時は外せばいいですから
スピリットは取得したスキルで常時消費するエネルギー量が決まる。
もちろん時間で増えるエネルギー量との塩梅を調整することが何より大事だ。
マナも毎時増えて行く訳だけど上げ下げすると半分は戻ってくるけど損失は出る。
あんまり上げ下げはいい方法ではない。けど硝子が取得すると決めたのだから良いんだろう。
カニ籠はフィッシングマスタリーとトラップ関連の条件に該当するらしく、カニ籠で捕まえた獲物を手にした時にカウントされるのだ。
なので山ほど俺が設置したカニ籠を蟹工船をした際に、みんなで回収作業をしてもらったのでみんな、相応にフィッシングマスタリーとトラップ関連の経験を得ている。
そのため、硝子もフィッシングマスタリーを一気に引き上げる事が可能となっているんだ。
オオキンブナ
それで絆さん、今回はルアー釣りのようですね
ああ、まあ見ててくれ。まずは手本をやるぞ
前はその手本でいきなり主が引っかかっちゃったんでしたね
苦い経験だな。カルミラ島の池で釣りをした出来事が思い出される。
今でのその時に遭遇した主の装備を俺と硝子は各々使っている訳だし。
騎乗ペットに乗ったまま釣りができるっぽいな
片手で俺を支えていた騎乗ペットが両手で支え始める。
なんか踏ん張りが効くのはゲーム独自の仕様か小舟に乗ってもバランスよくルアーを投げることは出来そう。
スナップを掛けてルアーを湿原の水辺に投げ入れる。
リールをリズムよくキリキリと回して魚を演出するのを意識しながら竿を小刻みに動かしながら巻いていく。
手元まで巻いてしまったら再度キャスティング。
そうしているとクイクイっと手ごたえが来たので竿を上にあげると、魚がヒットしたのかぶるぶると手ごたえが来た。
右へ左へと逃げる方向とは反対に竿を動かしながらリールを巻き取る。
今回かかった獲物はそんな引きが強くないみたいだ。
一気に引き寄せて釣り上げる。
するとビチビチと40センチくらいのカエルが釣れていた。
確認するとジャイアントパープルトードと出ている。
ジャイアントパープルトードも釣れるみたいだな
まあボーンフィッシュとか釣れたりするわけだし、よくあることだ。こうして釣り上げたのは収納できるのは覚えてるよな
はい。前にも釣ってましたもんね
そうそうアイスヘローンだったな。かすめ取りをしようとしてそのまま釣られた奴。
とまあこんな感じ、ルアーを地面に引っかけて大地を釣らないように色々と試していけば良いさ
分かりました。じゃあやって行きましょう
硝子が俺から教わった通りに釣り竿を振りかぶってルアーを飛ばして着水させる。
絆さんみたいに静かに落ちませんね。ドボンって感じで落ちちゃいました
そこは馴れだ。マスタリーはしっかりと取っているんだし、すぐにできるようになる
キリキリっと硝子も俺がやった手つきを見よう見まねで若干ぎこちないけど糸を巻いていく。
が、ピクッと引き上げてしまった。
あれ感触から何かが掛かったような気がしたんですが
早すぎだったんじゃないかな? こう、軽く突いているって時もあるんだ
魚さんも侮れないって事ですねしっかりと間合いを図り、引っかけるタイミングを見極めなければいけません
なんか硝子が燃えているような感じだ。
それから硝子が釣り竿を何度か振るっていくと、どうやら魚が近づいて来たようで巻き方がゆっくりになる。
今度は失敗しないとばかりにタイミングを見極めながら巻いていた硝子が、確かな手ごたえと共に竿を振り上げる。
竿がしなって魚がヒットしたことを伝えてくれる。
いきます!
キリキリキリとリールを巻きながら右へ左と硝子は魚との攻防を始めた。まあ魚の引きが弱いのか一方的に引き寄せられているんだけどさ。
そうして近くまで手繰り寄せてからスッと水面から魚を引き上げる。
えーっと大きさが15cmあるジャイアントパープルオタマジャクシトードの前のオタマが釣れたようだ。
釣れました!
あ、うん。釣れたね
オタマジャクシが釣れるんですね
そうだね。とりあえずこれが硝子の初魚って事だね
は、はいなんか少し気になりますけど
まー魚としてカウントしなくても良いかもね。魔物枠なんだし
確かにそうです。じゃあどんどん釣って行きましょう
って感じで硝子もやり方をしっかりと覚えてくれたので一緒に釣りを始める。
俺もヒョイッと釣り竿を振るってルアーを落とす。
リールを巻いていくとヒットの手ごたえ。
ビクッと竿がしなったのでそのままリールを巻く、釣り具の性能が良いからかあっさりと魚が顔を出す。
30センチほどのフナが釣れた。
なんか水族館で見た覚えがあるぞ。コイと生息域が被る魚だ。
となるとコイもここでは釣れるかもしれないな。
やりましたね
ああ。色々と釣って行こう
はい。あ、何か引っかかりました手ごたえが弱いですね?
ザバァっと硝子が竿を上げると長靴が釣れた。
硝子が切ない目をして長靴を見つめる。
虚しくなる必要はないぞ? 俺なんてしばらく空き缶を釣り続けていたんだからな
今でも結構ゴミが釣れることはある。
カニ籠にも混じっていたりするしな。なんだかんだ人間の環境汚染はゲームにも反映しているのかもしれない。
ゴム長靴だから、ゴム素材としてアルトやロミナが回収してくれるぞ
そうなんですね。どんどんやって行きます
こうして釣り場をちょこちょこと移動して流れのある所にルアーを投げ込む。
するとフナとは別の魚が釣れた。
ウグイかな?
ミカカゲウグイというどうやらこの国固有のオリジナル魚が釣れた。
見た感じ大きめのウグイだ。大きさは30センチ。
どうも30センチ代の魚ばかり釣れるなーアメマスは一体どこで釣れるんだ?
あ、き、絆さん! 引きが強い魚が来ました!
硝子の方を見るとバシャバシャと水音を立てながら魚との攻防が行われていた。
とはいえ、硝子の引っ張る力の方が強い。
そこは右、うん。良い感じ、そのまま巻いてー
助言を聞きながら硝子はリールを適切に巻いていった所で魚が抵抗とばかりに水面から飛び出した。
あ、巻くのはストップ!
水面から出た直後に巻くと糸が切れたり針が外れたりすることがあるんだ。
ただ、硝子が引っかけている魚は大きかった。ウグイよりは大きいので別の魚なのは間違いないはずだ。
確かに引きがかなり強い魚の様だ。こうパワーのある魚って海の魚が多いけど、川の方でも力のある奴はいるもんだ。
よーし巻いてー
ザブンと水に入ったのを確認してから硝子に巻くのを指示。
はい。ブルブル震えて手ごたえがなんか心地いいです
釣りって人間の狩猟本能を刺激するって言うらしいからね
なんとも不思議な魅力があるのは否定しない。
まー俺もリアルで釣りが趣味だったかというと時々行く程度だったんだけどさ。
このゲームで釣りをしているうちにどんどんハマって行ったのは間違いない。
よーし! あとは引き上げるだけ針が外れないように掴むから安心して
って感じで巻き終えた硝子の代わりに俺が魚を引き上げる。
お、硝子、やったよ。目的の魚を一匹ゲットだ