「彼なら素でやり遂げる位には商人であるのは否定のしようがないね。確かに居ないのが惜しい所ではある」
「個人的には教えないでほしいでござるな。アルト殿のリアルで関わると面倒そうでござる」
闇影もその辺りは理解して居るのね。
「まあ、アルトの代わりにうちのギルドの管理をクレイさんに委託お願いして良いか? 闇影」
「良いでござるよ。こういう管理も好きなのを知ってるでござる」
金勘定も趣味なのね。クレイさん。
アルトの抜けた穴がどんどん塞がっていくな。
もう死の商人はお払い箱となるか。
早く帰ってこないと冗談じゃ済まなくなってくるぞ。アルト。
「少し話は戻るけど、そうだね。絆さんを含めてエクシード家の者たちにはリアルで私の企画に参加検討しても良いとは思ってるよ?」
「ち、父上!?」
闇影がクレイさんの言葉に驚きの声を上げる。
「それくらい面白い所を持って居ると思っているだけさ、具体的には顔文字さんと絆さんで田舎生活をさせてみるとかね」
「……」
闇影、深く考えなくて良いから。
「確かにそれだけの能力があるのだったら編集次第で上手く行くかも知れないでござる」
「納得しちゃうのかー」
俺は農家になる気は無いんだけどなー。
「のじゃ?」
「ノジャの農業欲求が尽きてなければ行けるんじゃないの?」
「俺はー?」
「アンタの根気が尽きると言う概念は無いわ」
そこまでじゃないと思うのだけどなー。
「話が脱線してるけど闇影、お前は今後はどういった方針で行きたいんだ?」
「そうでござるな。出かける時は相談して場合によっては一緒に冒険したいでござるが常時じゃなくてもイイでござる」
「その心は?」
「父上と母上も休暇が必要でござる。拙者の相手だけをしてるとそれはそれで疲れてしまうと思うでござるよ。休暇の意味でこのゲームをプレイしているでござるからな」
おお、なんか随分と配慮が行き届いた考えだな。
子供らしくない返事とも言える。
「そんな訳だから必要だったら何時でも誘ってくれて良いからね」
「そうね。出来れば一緒に遊びましょうね」
「うん……」
闇影が演技をせずに両親の言葉に頷いている。
本当に子供なんだなー。
……ある件に関してとりあえず闇影に手招きをしておこう。
「?」
闇影が小首を傾げながら俺に近づいてくるので内緒話をするように耳打ちを行う。
「とりあえず闇影、お前の設定したキャラクターをあの二人は演じているのはわかったな?」
「うん。父上と母上をイメージモデルに作ったでござる」
「その件で母親のキャラ造形にちょっと口出しするぞ? 主に妖艶って所。ミリーさん、絶対に間違って認識してるからその辺りのキャラ設定はしっかりと話し合っておけ」
と、俺は闇影にミリーさんと二人きりになったときの悪乗りに関して報告しておいた。
クレイさんは聞き流してたけど今後の事を考えると非常に悪い事になりかねない。
「わ、わかったでござる。後で母上にしっかりと話をしておくでござる」
「それと母親はかなりの恐竜マニアだな。楽しみにしてろよ?」
きっとこれから闇影はミリーさんに博物館に案内されて色々と化石談義を聞かされるぞ。
システム以上に詳しいから間違い無く化石マニアだ。
思えば中々面白い家族をしてるな闇影は。
「そこは知ってる。家に恐竜の本がある」
ああ、そうなのね。
「何にしても一件落着だな。みんな自己紹介をした後、今度ともよろしくお願いする」
「なのじゃ」
「ええ、よろしくお願いしますね」
って事で俺達は改めて自己紹介をした。
同盟関係なんで移動に関しちゃそこまで不便じゃ無いな。
「そんじゃ絆の嬢ちゃんのところの連中とも合流したし、パッと派手にパーティーをしようぜ。社長夫妻と娘さんの再会に乾杯! ってね」
「もー、らるくったら……ま、私も良いと思うわよ。闇影ちゃんとクレイさん達の為に頑張っちゃうわよー」
「ま、面倒な娘さんがサクッと見つかって良かったわ。それじゃ私たちが料理するからやって行くわよー!」
そんな訳で俺達は再会記念と言うわけで開拓地にプレイヤーが来ても城で賑やかにパーティーを開催したのだった。
もちろんプレイヤー達も到着し新たな街での出来事を堪能し始めた。
同盟都市なのでアクセスが良く設定されているとか。
「おー! これがウサウニーか」
「素直に可愛いデザインしてるー」
「ペンギンかリスかウサギか……」
ペックルからウサウニーの雇用に鞍替えするプレイヤーは結構多いらしい。
まあ、その辺りは個人の好みかな。
で、来訪したプレイヤーは……多いと言えば多いがカルミラ島の頃よりは心なしか少なめだ。
「思ったより人が来てないな」
「まだまだ各地を探索しているプレイヤーが居るからでしょうね」
「カルミラ島は中継地としての側面が強かったのが大きいと思うよ。第四都市も似た感じで思ったよりプレイヤーが来てなかったし」
ふむ……その辺りは色々と問題としてあるのかな?
「カルミラ島も人の出入りは安定してきましたよね」
「でも四天王との再戦ダンジョンがここにもあるんでしょ? カルミラ島は行きづらいって感じでバランス取ってるみたいだし」
「一応な。カルミラ島にはそう言った難点があるのか」
後で確認しなきゃ行けなさそうだ。
「ならいずれ来ると思うよ。他にも行ける範囲が大幅に広がるのが分かってるし、今は行ける所が多すぎになってるだけだよ」
そんな物なのかね。
世界は冒険で溢れてるって事でよさそう。
「お兄ちゃん! 私たちも四天王の再戦ダンジョンに行ってみたい」
「俺は島主だから行けなかったんだよな。後で行こうか」
「ええ、是非とも連れて行って欲しいです」
硝子と紡も色々と堪能しているようで何よりかな。
「それじゃあ皆さん。この草原の名物になる博物館を案内しますねー」
ミリーさんの案内で俺達は博物館へとやってきた。
俺は時々出入りしてるので目新しい要素はあんまり無いけどね。
顔文字さん達は各自別行動で見てまわるそうだ。
「当博物館へようこそピョン。あ、領主様のお友達ピョン? ではフリーピョン。どうぞお楽しみにピョン」
受付のウサウニーがそう答えて俺達は博物館へと入る。
「博物館か……」
「一応博物館だけど展示物には植物館のコーナーも併設してるな」
顔文字さんが育てた野菜なんかも博物館のコーナーの半分を占めている訳だし、正確には博物館なのかというと怪しい所は大きいか。
あ、てりすの発掘した鉱石も展示されているので……カルミラ島よりもコレクション類は大きいかも?
そういやカルミラ島にも小さな博物館があった気がする。
島でしか採掘出来ない鉱石の展示とか島の歴史とか。
郷土資料館扱いだったのか?
博物館
「ここがプラド草原での実績要素なんですね」
「そうなるかな」
まず俺達が向かったのはミリーさんがお勧めしている化石のコーナーだ。
いろんな恐竜の化石が展示されている。
ちなみにカースダイノキングは討伐した影響なのか化石が展示されてるぞ。
クエスト参加をしたお陰か報酬のコインを俺もそこそこ貰った。
「沢山展示されているでござるな」
「ブラキオサウルスまで展示されてるのよ? 凄いと思わない?」
ミリーさんが闇影に超巨大な化石を指さして聞いている。
まあ……メチャクチャ大きいな。
「こう言った巨大化石って博物館じゃ展示が難しいのよ? 単純にスペース確保が難しいのが大きいわ。天井とかも高くしないと行けないから」
「そうなのでござるな」
「ゲームだからこそ、こんなにも展示出来るって事ね」
まあ……博物館の内側の空間と外側の見た目が合っていないのはゲーム独自の四次元空間な感じだよね。
カルミラ島の水族館もそれだし。
「絆さん達と一緒に掘削して最初に見つけた化石がこのマイアサウラよ。良い母親トカゲという属名になった恐竜で、貴方に家出されて見つけた恐竜だから私……激しく反省したわ」
「……」
それ、自分の娘にも言うのな。
闇影、お前の気持ちは痛い程分かるぞ。
ミリーさん、何故自ら地雷を踏みに行った? 自虐なのか?
勘弁して欲しい。
『絆殿……ゲームの乱数とは恐ろしいでござる。こんな偶然は他者だと笑えるのでござるか?』
闇影のメールが俺に届く。
気付かれない様によく打てたな。
こういう所は今時の子って奴なのかね。
『安心しろ。俺達も気まずい、ミリーさんの一発ギャグだ。どうにかミリーさんを持ち上げろ』
闇影のヘルプに対してできる限りの助言を行う。
「も、もう気にしないで良いでござる。沢山、拙者の願いを叶えようとしてくれてとても嬉しいでござる。さあ、もっと教えてほしいでござる」
「ええ、まだまだ沢山、みんなで見つけたのよ。ふふ、恐竜の化石を見つける人をドラゴンハンターって言うのだけどお母さん、ドラゴンハンターになっちゃおうかしらね?」
「ゲームだと別の職業やスキルみたいでござる」
確かに、ドラゴンを狩る者って意味でドラゴンハンターだけど現実だと化石を探す人の事を言うんだな。
狩猟具のスキル持ちからすると……ってもしかして恐竜人っぽい奴等の化石ってそう言った意味で攻撃対象だったのか?
「そうね。でもお母さんが目指すのは恐竜発掘よ」
「闇影も化石掘りを覚える時が来たな」
ようこそ、化石掘り地獄へ。
魚の化石だとテンションが激しく上がるぞー。
ちなみにこの博物館にある魚の化石は俺が見つけたものだからな。
鮫の化石とか色々とあるぞ。
アンモナイトとかも当然ながらあるからな。
「少しは覚えるでござるが……」
「フフ、無理をしなくて良いわよ。貴方の好きな事をしなさい」
「はい……母上」
良いお母さんなんだろうとは思うけど……闇影、好きだけどちょっと苦手意識も持ってないか?
アレか? 甘えるのが苦手みたいな微妙な関係って奴。
俺達がいなくて困るのってそう言った親と仲良し接待もそれはそれで疲れるって事だったっぽいな。
とりあえずスキンシップをしっかりと取れよ?
ゲームが終わったら手を繋いで思い出話をしながら帰る感じの関係になるのだ。
「太古へと思いを寄せる……それも素敵なものですね」
硝子が化石のコーナーを見ながら聞いてくる。
「魚の化石を寄贈したのが絆さんなんですね」
「ああ、魚の類いはお願いして貰った」
「お兄ちゃん徹底してるね。で、お姉ちゃんは一体何をしてた感じ?」
「草刈りと料理、それとダンジョンでの物資調達、夜の防衛戦担当だったかな」
らるくも似た感じだったな。
一応てりすの手伝いで細工をしてたらしいけど。
「紡、アンタは戦闘だけでしょ」
「正解」
実際紡は島では基本、戦ってばかりだったもんね。
「最近はジャグリングを少し覚えたもん。賑やかにしてるから良いでしょ」
そう言えばここでパーティーした際に紡が宴会芸とばかりに闇影の演奏に合わせて後ろでやってた。
一応やっているんだな。
「俺が呼ばれる前に話してたのやってたんだな」
「もちろん、攻撃にも多少役立つスキルが出たよ。そのうち見せるよ。カマとシナジーあったし」
ほう……そんなスキルが出たのか。
「楽しみにしてるわよ」
「お姉ちゃんもスタンダードな戦闘以外に何かシナジーあるのを覚えようよ。私も覚えたんだし」
「それが分かったら苦労しないわよ。まあ、耐久系から攻撃系に切り替えるように何か覚えるのも良いわね。無難に槍辺りが王道かしら?」
ビッグブレイブペックルからビッグブレイブウサウニーに姉さんがなりそうだ、と内心思ったけどグッと堪える。
前回のディメンションウェーブイベントから考えてやりそうなんだよね。
姉さんの事だからさ。
「思うんだけど博物館って静かに見たい印象があるよね」
「そうだな。団体で来ると賑やかで雰囲気を壊しかねないのは否定しない」
太古の世界に思いを馳せる。って奴。
「ミリーさんからすると雑談は迷惑かな?」
「いいえ、私自身が解説をしながら見ているので楽しいですよ」
なんとも寛容な感じだなー。
クレイさんはそんなミリーさんと闇影を微笑んで見ているんだけどね。
「むしろクレイ、貴方も何か話とかしないのかしら?」
「うーん……生憎とここの博物館で私が話せる事はあまりなくてね。化石はミリー、作物は絆さんに負けてしまうよ」
「いや、作物のコーナーは顔文字さんに解説をしてもらわないと駄目じゃない? どんな作物を作ったのかの体験談とかをさ」
「絆さんの場合、水族館ではそんな解説してませんけど?」
言われてみれば魚を見ておしまいって感じで後は各自だったね。
「何処で釣ったかとか水族館で聞きたい?」