「えー……絆さんの乗り物さんは個性的ですね。速度とかどうなんでしょう?」
言葉を選ぶように硝子が聞いてくる。
ふむ……と思いつつ前進を意識すると騎乗ペットはのっそりと……いや、速い!
俺を片手に持ったまま硝子たちの騎乗ペットと同速で動いている。
スキップするような歩調というのが正しい。
「速度は同じみたいですね」
「闇影、本当にこれが羨ましいのか? 正直、あんまり乗り心地良くないぞ」
普通に鞍に乗れる闇影の方が無難な代物に見えなくもないぞ。
なんか抱きかかえられているから安定感が無いし。普通に肩車とか背中に乗って四足移動じゃないのかとツッコミたい。
騎乗戦闘
「……河童の方が忍びで良いでござる。着ぐるみを着た前提が無ければ問題ないでござる」
「着てても違和感無さそうだけどな」
カッパがカッパを乗せて移動するって感じだし。
「ペックル……カスタム可能」
「ああ、あるんだったか」
ペックルの笛は俺達のPT用にある大型騎乗ペットだけど、こっちは個人用の騎乗ペットだ。
別アイコンでカスタマイズができるなら弄ればどうにかなりそう。
「人力車を装備できるみたいでござる」
「それなら背中に乗るよりマシそうだな。俺の方はー」
ライブラリ・ラビットのカスタム画面を出して確認、装備可能な代物がわかるっぽい。
……人力車は装備できない。というか装備可能な項目が錫杖や衣服、帽子辺りで鞍とか装備は出来ないようだ。
何か装備することができるみたいなんだけど……なんかアイコンで円形の盾みたいな代物だけど盾じゃないので、よくわかんない。
錫杖の代わりに本も持たせられるっぽいけど、これってスキンか何かか?
「この乗り方がデフォルトみたいで変えれん」
「絆さん大丈夫ですか? 場合によっては乗らないのも手ですよ」
「いや、出し入れが早く出来て移動に使えるなら使うに越したことはない。頑張ってみるさ」
「結構お兄ちゃん似合ってるよ?」
はいはい。
「じゃあ、色々と補給したら乗り物に乗ってミカカゲの関所を超えて行こう」
「行くでござる!」
って感じで俺達は関所から補充のために船の方で待機していたアルトやロミナに会いに行った。
今回の攻防戦で物資支援という組に所属していたアルトとロミナにも騎乗ペットは授けられていた。
どうやら参加者は騎乗ペットが貰えるイベントって感じだったみたいだな。
アルトは普通に馬でロミナはモグラの騎乗ペットだ。
……みんな普通に動物や魔物が多いけど俺のは異彩を放っているような気がしてきた。
「イベントお疲れ様、本当に君たちの報酬素材を貰って良いのかい?」
「ロミナには色々と世話になっているからな」
「はい。それでいい装備を作って下さい。ほかに必要な物とかあったらいつでも言ってくださいね」
「ありがとう。ありがたく受け取っておくよ。ところでアルトくんに絆くんたちに預けた着ぐるみの注文が何件か来ていると聞いたんだが」
俺と闇影はサッとロミナから視線を逸らす。
「性能はなかなか優秀だからね。一般販売をするんだったら後で材料を調達してくれると助かるよ」
「あのネタ装備を欲しがる奴がいるのか?」
「性能重視で考えれば素潜りにも水系魔物との戦闘にも使えるからね。可能性を見出したんじゃない?」
いつの世も見た目よりも性能にこだわる物はいるって事か。
「ちなみに染料職人に頼めばカラーリングを変えることくらいはできるよ? 闇影くん用に黒くするのはどうだい?」
「嫌でござる!」
アルトの提案を闇影は断った。
まあ、俺もあの着ぐるみを常時着用するのはちょっとなー……。
「しぇりるくんはどうだい?」
「……」
しぇりるってここで頷きそうだけど断ったようだ。
「冗談はこれくらいにして、君達は早速移動という所かな?」
「ああ、ミカカゲの新しくいける所に興味が湧いている連中ばかりでさ」
「そうかい。じゃあ行ってくると良い。良さそうな鉱石とか見つかったら教えてくれ」
と言う訳で俺達はロミナとアルトと別れて一路ミカカゲの関所を超えに向かう。
とはいっても途中までは高速便での移動なんだけどさ。
お祭りをやっている中継地から一路次の関所へと向かう。
みんな貰ったばかりの騎乗ペットに乗っての移動だ。
このウサギに抱きかかえられる形での移動……やだ、頼れるって冗談ができるな。
ブレイブペックルを出しているのだけど……俺たちが騎乗ペットに乗ったら合わせて騎乗ペットを出したぞ。
白とピンクのヒヨコみたいな奴に乗ってる。もしかしてラースペングーになった際に現れた取り巻きだろうか?
クリスや他のペックルは……呼び出すと俺の騎乗ペットの肩に乗っかるようだ。そっちに俺が乗りたい。
「関所ばかりだけどそろそろ首都に到着とかしないのかね」
結構関所を超えたけどまだミカカゲの王都にたどり着かない。
どれだけ厳重で排他的なんだ? 信用第一なのかもしれないけど。
江戸時代とかに例えて鹿児島から江戸までって考えるとかなり遠いんだろうけどさ。
そこまで再現してるのか?
「どうなんでしょうね」
「王都で売ってる装備とか気になるよね」
「色々と面倒なクエストを超えた先に行ける場所だからなー……店売りでも性能は高そうなのは間違いない」
夢は広がる。
第四都市ミカカゲって事に……なるのか?
なんか引っかかる……第四都市に普通のプレイヤーが入るのに手間がかかりすぎている。
次のディメンションウェーブが第四都市近辺だと参加できるプレイヤーの制限が多すぎて人員が足りなくなりすぎるぞ。
その辺りはどう解決するんだ?
プレイヤーたちを信用できると国が判断してビザが不要になります?
アップデートの際にありそうな修正だけど……違和感は拭えないな。
なんて考えている所で関所に到着した。
ビザを見張りのNPCに見せるように声を掛けると快くうなずき、門が開いて先に進めた。
「新しい場所ですね。今度は何があるんでしょうか」
「とりあえず拠点を見つけないとな。今日は戦いの連続だったし早めに休んだ方が良いだろ」
「えー探検しないのー?」
「したいなら行ってこい」
ちなみに街道があるのでこの街道に合わせて移動すれば魔物との遭遇はほとんどない様だ。
スタスタと俺達は軽快に道なりに街道を進んでいくと……山と湿原が見えてきた。その麓に小さな町っぽい場所が見えてくる。
「次の中継地はあそこみたいだな」
「そのようですね。紅葉がキレイです」
ああ、そういえば周囲の木々が色とりどりの葉の色をしていて雰囲気的に秋っぽい色合いを見せている。
ミカカゲはこの辺りの風景がきれいだな。
渓流でもそういった要素が楽しめた。
ただ……湿原の方の空はどんよりだな。
「湿原でござる」
「当然、俺は釣りをするぞ。ヌシは何だろうな?」
「絆さんらしいですね。町に着いたら一晩ゆっくり休んでから各々活動するで良いんじゃないかと思います」
そうだな。その足で釣りに行くのも良いけど魔物とかいそうだ。
まずは硝子たちと一緒に行って安全であることや俺だけで魔物を処理できるかを確認するのが大事だろう。
魔物に関しちゃまず無理な話だけどさ。硝子たちがいないと魔物のいる場所での釣りは結構。
海に関しちゃバリスタとか投網、ペックルたちでどうにかなっていたんだけどさ。
セーフエリアとか割と魔物が出ない場所とか大体そういったフィールドが無いとゆっくり釣りも出来ん。
一応、魔物が少ないって場所は今まであった。
「ところで気になったでござるが……」
「どうした?」
「この個人所有の騎乗ペット、乗ったままでの戦闘も想定されているようでござるよ」
「そうなのか?」
「そうでござる。しばらく乗っていたからか騎乗戦闘スキルが出ているでござるよ」
言われて確認する。
お? 確かに出てるな。
騎乗戦闘Ⅰ。
騎乗専用スキル。
騎乗時に発生するあらゆるマイナス補正を軽減し、プラス効果を付与する。
同時に騎乗ペットの能力を開花させる。
毎時間200のエネルギーを消費する。
取得に必要なマナ200。
獲得条件、4時間以上騎乗状態で行動する。
ランクアップ条件、30時間以上騎乗ペットに乗って行動する。
船上戦闘の同種みたいなスキルだ。
しかも騎乗ペットの能力開花も関わっているとなると取得すると戦闘で有利に働くか?
素直に移動用で片付けるか、それとも戦闘にも使うかはプレイヤー次第だな。
というか湿原に来て思った。
「闇影の河童の方が俺向きじゃないか……泳がせるとかできそうで水陸両用だろ」
「心の底から交換したいのは同意でござる」
湿原の良さげな所にボートで漕がずとも行けるとか便利すぎるだろ。
闇影に釣りの趣味が無いのが問題だ。
お風呂
「アルトに水陸両用で使えそうな個人騎乗ペットが売ってたりしないか探させるか」
「……」
しぇりるがじっとこっちを見てる気がする。
「まあ……小舟も便利だけどな」
ここはフォローを入れねばいけない。
小舟で行けない所とかで使えたら便利ってだけだ。
「籠は先に設置しておくか」
「そこは妥協しないんですね」
「当然だ。だって籠があるから釣りをする時間を短縮して硝子たちと一緒に行動できるんだからな」
釣りが今の俺のソウルライフな訳で、だけど硝子たちとも一緒に行動したいという妥協ができるギリギリのラインなのだ。
幸いにしてアルトから補充分のカニ籠は受け取っているので設置するとしよう。
とりあえず……アクセスがよさそうな町からほど近い湿原に設置しておこう。
設置設置と湿原の設置できそうなところに仕掛けて置く。
「他プレイヤーがあれを目視出来たら雰囲気が台無しになること請け合いでござるな」
カニ籠に関してなんだけど設置者のパーティーメンバー以外は見ることができないらしい。
「お兄ちゃんが限度を知らない設置をしてるのはわかるとしてよくお兄ちゃんの設置数にゲームが対応してくれてるよね」
「考えてみればそうでござるな。この手の代物は上限とかありそうなイメージがあるでござるよ」
確かに俺も最初は上限とかあるんだろうかと恐る恐る設置したがそれらしい様子はない。
設置したらトコロテンの要領で最初に設置した奴が消えるとかも検証したが今の所それらしいものは確認できていない。
「ロード」
しぇりるがなんか言ってる。
「君主……領主だからでござるか? 確かにあり得るでござるな。いや、どちらかと言えば大量に必要であることを前提にしたゲームだからこそなのかもしれないでござる」
なんかしぇりるのセリフを察して闇影が推測をしている。
まあできるもんなんだから良いだろ。
カニ籠を出してポンと湿原の水辺に沈める。
これで一定時間後に取りにくれば何かが引っかかっているって寸法だ。
ちなみに結構な確率で外れが混じっているのはご愛敬だな。
流木に始まり単純にゴミってアイテムなんかも手に入る。
ゴミに関しては何か使い道があるらしくアルトが引き取って職人に処理させるとか言ってたな。
あれって何に使えるのかよくわからん。
「よし、設置完了、新しい街へと行くぞ」
「はい!」
「未知が拙者たちを待っているでござるよ」
「あの町では何があるかなー」
って感じで俺達は新しい中継地の町へと立ち入った。
「近くに湿原があるからか、土台がしっかりと舗装された場所みたいですね」
「みたいだな」
なんか石畳の土台が立てられていて、基礎がしっかりした……陸地なのに港を連想する町だ。
民宿っぽい宿を取る。
「ガラガラで景色がよさそうな宿に簡単に泊まれるのが良いでござるな」
「そりゃあ私達が一番乗りだもんね」
「まだ前線組はここまで来れないからな」
おそらくお祭りをしている中継地で前線組は寝る間も惜しんで受注クエストをしている所だろう。
それも定期的にビザ更新と申請時間があるので、ここに来るのにもう少しかかる。
「効率が良くて、金が稼げて、人がいない場所ですね。まだここも」
それは解体の秘密を秘匿する際に硝子たちと話し合った狩場の条件の話だ。
けれど俺達は今までそれをずっとし続けている。
「そうだな。思えば遠くに来たもんだ」
解体に関しちゃ今では見聞きしているプレイヤーが多くなり、パーティーメンバーに一人は所持しているなんてのが当たり前になっていたりする。
ちなみに魔物の場合は死体を持ち運ぶって事は出来ないので解体屋って店は開けない。
あくまで現地での解体しかできないのが難点だな。
魚とかはできるんだけど。