確認をすると箱が開く演出と共にビザランクアップの表示が出た。
これで更なる先へと行けるようになったわけか……。
他に武具の強化素材と……ボス報酬って文字が表示された水の四天王の魚鱗とアクアジュエルという名の宝石だ。
さらに追加報酬の欄がある。
えーっと……。
騎乗ペット、ライブラリ・ラビット獲得!
「騎乗ペットがあるな」
ペックルの笛で巨大ペックルを呼び出せる俺だけど、ほかにも入手してしまった。
なんか本の形をした召喚アイテムの様だ。
「絆殿、拙者も獲得したでござる!」
闇影も本を持っている。
まあ、騎乗ペットって普通に移動するよりも早くなるだろうから便利か。
周囲を見ると似た様なアイテムを持っている人がちらほらと見受けられる。
入手確率はそれなりに高い様だ。
「気になったでござるが……二勝二敗というのはどういう意味でござる?」
「四つフィールドが分かれているんだぞ?」
「……やっぱりそうでござるな」
なんて闇影と会話をしつつ硝子達が気になった所で硝子からチャットが来た。
「絆さん、お疲れ様です。どうやらそちらの戦いも終わったようですね」
「ああ、戦果はどう?」
「勝ちました。私の持っている武器と防具がボス魔物……大地の四天王・ダインブルグという方にとても有利に働きまして問題なく戦えました」
どうやら硝子も相性の良い相手と交戦したようだ。
前線組の推理だけどあながち間違いはなかったって所か。
硝子の方の戦果をこっちで細かく確認はできないけれど、闇影がトップを取れたんだから硝子もトップを取れたに違いない。
「そうか、こっちも上々、水の四天王・アクヴォルって奴を倒せたよ」
「それは何よりです」
「お兄ちゃん! 勝ったよー!」
紡からもチャットが来る。
「はいはい。正直硝子と紡が居たところはボス撃破が早そうなイメージだけどあのボス、戦場のどのあたりで倒せた?」
「真ん中に届くより少し早めだよね」
「そうですね。攻撃に対してこちらが抑える手段があったので皆さん、全力で戦えていたと思います」
うわぁ……こっちはそこそこギリギリだったぞ。
硝子の地震対策がかなり刺さっていたのは間違いないか。
「硝子さんねー殆ど項目で1位を取ってるんだよ!」
「紡さん!」
「大活躍のようで俺もうれしいよ」
こりゃあMVPは硝子で間違いないなさそう。
ただー……。
「つまりしぇりるの方は惨敗だったって事だよな」
ロゼPTが居ても敗北か……チャット出しづらいな……。
恐る恐るしぇりるにチャットを送ってみる。
「……」
「えーっと」
「……失敗」
なんか割と疲れたような顔をしているしぇりるがポツリと零す。
「ああ、次は頑張ろう」
「……そう。報酬……乗り物ペット」
「あ、しぇりるも貰えたのか」
割と確率高めなのかもしれない。
「ランキング……7位」
結構上位にいる。なんだかんだ硝子や紡、闇影と一緒に居るからだろう。
負けても報酬は良い物が貰えるんだから良いんだろう。
「すぐに合流するぞ」
「そう……」
「あんまり引きずるなよ。ゲームは楽しむもんで責任は二の次なんだからさ」
コクリとしぇりるは頷いた。
「じゃあ硝子、紡、合流しよう」
「はい。今度は一緒の場所で戦いたいですね」
「お兄ちゃんのネタ行動見たいもんね」
「してないから安心しろ」
「絆殿は――」
闇影が密告しようとしたのでチャット前に外した河童着ぐるみを闇影に見せる。
「……大活躍だったでござるよ」
よし、空気を読んだな。
まあ、すぐに噂となって広まりそうだけど気にしない。
「そっかーちょっと残念だね」
「むしろ蟹工船をしたおかげで戦場で拙者も罠を見ることができて大活躍だったでござる。何が幸いするかわからないでござるよ」
「こっちも似た感じで地雷の罠とかあったっぽいんだけどね。硝子さんの武器の力で割と完封しちゃったみたい」
「次は上手く行くかわかりませんけどね」
なんて感じで俺達はさっさと着替えてフィールドから出て関所前で合流した。
奏姉さんは……失敗したときに声を掛けたら五月蠅そうなので今度声を掛けようと思う。
「今回のイベントってさー、魔王の四天王の顔出し的な奴っぽいよね。倒した後で飛んで行っちゃったし」
「そうだな。これでどこかのイベントのフラグが立つとかなんじゃないか?」
「だよねー」
「いずれ決着を付けないといけませんね。やはり今回のイベントのように戦うのでしょうか?」
「どうだろ? どこかのクエストで遭遇とかもあり得るんじゃない?」
古き良きRPGとかでもありそうだよな。
「イベントでも出てくるけどインスタンスダンジョンのボスの可能性もあるぞ? フィールドボスとかもいるかもな」
「ありそー攻撃パターンが増えていたり色々とバリエーションの出てくるボスって奴。フィールドボスでも出てくるかもね」
闇影と出会った時の出来事を思い出す。
あれもフィールドボスだったな。
「しぇりるさん、お疲れ様です」
「……」
「しぇりるさんは絆さんが戦った水の四天王と戦いたかったですか?」
コクリとしぇりるが頷く。
まあ、水関連は俺としぇりるが担当って感じだもんな。
やってることは釣り人と海女だし。
「とりあえずしぇりるの鬱憤を晴らす方向で何かしていくか。しぇりる、次はどこ行きたい?」
河童運
「……関所の先、それと魚竜を倒したい」
冒険志向の強いしぇりるらしい返答だ。
「これからもう少し装備を強くする……機材も」
しぇりるはマシンナリーもしてるから、色々と今回の反省からやって行きたいって事なんだろう。
「了解。でだ……報酬で騎乗ペットが出た訳だけど硝子たちも手に入ったんだよな」
「はい」
と、みんな本を取り出す。割と今回のイベントだと上位は貰える品っぽくて関所前では各々本をもって雑談をしている人が多数いる。
どうやら開くことで呼び出せるっぽい。
「じゃあ、試乗してみよう」
「そうですね」
と、硝子が本を開くと……虎くらいの大きい白い猫が出た。
「ニャー」
ノビーっとしてから硝子が乗りやすいように伏せをしている。
「わー猫ちゃんだーにゃーん!」
紡が触れようとすると猫がすり抜けた。
「あれ? 触れない」
「個人所有の騎乗ペットだからじゃないか?」
「ああ、なるほど、硝子さん乗ってみなよ」
「は、はい」
硝子は恐る恐ると言った感じで白い猫の背中に乗る。
すると白い猫はスタッと立ち上がった。
「あ、馬と同じ感じで進めますね。ちょっと上下が激しいですけど良いです」
スタスタと硝子が乗り心地を試していた。
周囲にいる他プレイヤーも似た感じで各々乗り物を楽しんでいるっぽい。
お? なんか大きなトカゲみたいなのを騎乗ペットにしている人もいる。
結構ランダムなんだな。
「次は私ー!」
で、紡は犬を出していた。シベリアンハスキーっぽい感じの乗り物だ。
かなりファンシーな犬って感じがする。
「紡さんのワンちゃんもかわいいですよ」
「えへへー」
「……」
続くしぇりるは大きなカワウソの騎乗ペットの様で悪くないって顔をしている。
「……」
で、なぜか闇影がしぇりる化して目が死んでいる。
「どうした闇影」
「そうでござる……」
なんでここでそこまでテンション下げているんだ?
「絆殿は……」
「俺がどうした?」
「いや……その反応は違うでござるよな……」
だからどうしたんだよ。次は俺かお前の番だろ。
「闇ちゃんどうしたの?」
「闇影さん?」
「そう?」
みんな闇影の様子がおかしいので首を傾げる。
「絆殿! 交換してほしいでござる!」
「なんで俺が指定されてんだよ」
「あ、闇ちゃん。今回の騎乗ペット受け渡しできないよー」
「なんとでござる! では拙者、騎乗はしないでござる! 捨てるでござる」
「おいおい。せっかく手に入れたんだから無駄にするなよ勿体ない」
なんだ? 一体何を引き当てたんだよ。
闇影の奴、どうにもみんなに乗り物を見せるのを拒絶している。
「嫌でござる! これは交換を要求するでござる! せめてカエルならよかったでござる!」
「なんだ? ナメクジとか蛇でも当てたか」
「それなら当たりでござる! そもそもなんで絆殿はこれじゃないでござるか! みんな同じだと思ったでござる!」
ナメクジと蛇は当たりなのか。
忍者路線だから当然だったのかもしれないが。
本当、何を引いたんだ?
「あんまり騒ぐなよ。他のプレイヤーの迷惑だろ」
「理不尽でござる!」
「闇影さん、何を引いたんでしょう? ちなみに絆さんは?」
「ライブラリラビット」
「それって他のプレイヤーも出してる奴だね」
と、周囲のプレイヤーへと紡が視線を向ける。
硝子たちのに比べると若干小柄の乗るには少し心もとないウサギの乗り物だ。
そこそこ外れ枠だろ。
そんな俺に比べて外れってどんなだ?
「では見るでござる!」
しばらくぐずっていた闇影だったが、観念したのか闇影が本を開く。
すると煙と共に現れたのは……河童だった。
ファンシーな感じの二頭身の河童だな。河童着ぐるみとも趣の異なるかわいい系だ。
口には手綱を咥えており、鞍を背負っている。バランス悪そう。
「わーかわいいー」
「でも河童でござる!」
「幾ら尻子玉抜かれたからって毛嫌いするなよ」
「闇ちゃんネタが尽きないのってすごいねー」
「それだけが理由じゃないでござる!」
闇影……着実に不幸ながら美味しいポジションを引いているなぁ。
「……死神忍者が河童引いてる」
「そりゃあ、あの河童装備で大活躍したんだ。河童運が巻き起こるのはしょうがねえだろ」
周囲のお笑いを誘う。それが闇影の生きざまなんだろう。
あんまり弄ると碌な事にならないだろうからここでは自粛しておこう。
「河童装備……アレを着たんですね」
「やむなくな。装備したお陰で活躍できたのは間違いないから完全に笑いものにはされていないぞ」
「拙者は笑いものになったでござる!」
俺も着ていたのに闇影に集約したのは間違いない。
すまんな闇影、さすがに騎乗ペットに河童を引くなんて誰も想像できなかった。
「安心しろ闇影、これでお前を死神という奴はいなくなる」
「今度は河童忍者と呼ばれるでござるよ!」
そこは否定しない。
かっぱ着ぐるみの代償は闇影がその風聞をもって支払ってくれたのだった。
「釣りマスター絆ちゃんは何を引いたんだろうな」
「気になるー」
「ウサギだってさっき言ってたぞ」
「心が……ペックルマスターだからペンペンしようぜ!」
絆ちゃん言うな!
ネカマだと言っているのに何故俺に萌えを見出すんだあいつらは!
「最後は絆さんですよ」
「はいはい」
なんかみんなの中で割と汎用的なのを引いちゃったなー……既にどんなのかわかっているからドキドキは無いな。
と本を開くとズモモ……っと騎乗ペットが現れた。
……なんか見上げる位に大きい……二足歩行のウサギが出てきた。
目が大きくてかわいく見えるけど……さ。
法衣を着てて片腕には錫杖を持ってる。
動物のウサギじゃなくて、ウサギ獣人って感じのどっしりした体系してないか?
「……」
俺と騎乗ペットの視線が交差する。
サッと俺は他プレイヤーが乗っているウサギに目を向けてから自分の騎乗ペットに再度視線を向ける。
「釣りマスターの騎乗ペット、ウサギだけど違くね?」
「モッフモフで良いな」
「どうやってあれ騎乗すんだ? 肩車か?」
俺も思った疑問を他プレイヤーたちが言った。
よく見るとペックルの笛とこの本がなんか共鳴しているような光り方をしている。
領主だからか何らかのボーナスが発生して入手したって事か!?
「絆殿も当たりだったでござる下げて上がる酷い裏切りでござる!」
「騒ぐな! こっちはどうやって乗るか悩んでんだぞ! 肩車とか微妙にリアクションに困るだろ!」
わははーってなんか微妙に乗りづらい事この上ないだろ!
なんて闇影にツッコミしながら騎乗ペットに近づくと片方の手を程よい所まで下げてきた。
……これに足を引っかけろって事?
とは思ったのだけどなんかステータスに騎乗アシスト画面が出た。
え……その乗り方?
差し出された手に座るとウサギはそのまま俺を親が子供を抱きかかえる感じで立ち上がった。
とりあえずこの乗り方が正しいらしい。
「うわ……釣りマスターの外見から超似合うな」
うっさい!
ペックルの笛で騎乗を続けてやろうかコラ!
あれは水辺専用だが!
「お兄ちゃん、すごくファンシーだね」
「やかましい!」
「タフガイと少女」
しぇりるがポツリとつぶやいた。
ああ……このウサギがムキマッチョの男性で俺がこうして抱きかかえられてたら確かにそれっぽいかもな。