5 サティナ観光 ミカヅキの革を加工依頼 モンタン一家はレストランへ

6 船探し リリー誘拐 リリー救出

7~9 サティナに滞在

10 朝にサティナを出立 アレクセイと出会い 夜、早寝するケイ

11 ケイ、アイリーンと引き離される 精霊語で意趣返し  警戒 魔術初使用

12 ユーリアに到着 アイリーン怒る ケイしょぼん

13 開き直って神殿デート アレクセイ全裸遊泳

14 ユーリア出発 開拓村で大熊撃退

15 次の村に滞在

16 朝、滞在していた村でアレクセイと決闘 午後にウルヴァーン到着

17 朝チュン 役所の手続きで心が折れる 不貞寝

18 コーンウェル商会で武闘大会を知る

~1ヶ月スキップ~

48 武闘大会当日 その夜打ち上げ  この辺りでコウとイリスがTahfu到着

49  コウたちの翌日、バーナードがラネザ襲撃

51 身分証発行

52 図書館入館

66 キノコヘアとの出会い

69 天体観測へ 望遠鏡破壊

72 逃げるようにウルヴァーン出立

73 街道を北上

74 Diran’niren到着

77 エゴール街道を引き返し再びディランニレンへ

78 ガブリロフ商会の隊商に加わりディランニレン出発

79 キジうめえ! でも明日雨になるぞコレ

80 雨降り始めた……→馬賊の襲撃 隊商から離脱

84 シャリトスコエ到着

85 魔の森に突入 霧の中再び 賢者の屋敷へ

86 オズの屋敷を出立

87 シャリトに帰還

89 なんだかんだでシャリトに留まっていたが、商会の探りがあった

90 シャリト出立、セルゲイ・アレクセイとともに馬上の旅

94 6日かかったシャリト⇔ディランニレンを4日に短縮

95 “告死鳥”の魔術師ヴァシリーとお茶会

97 ウルヴァーンに到着、銀髪キノコことヴァルグレンに連絡

100 ヴァルグレンから使いが来る

101 茶髪ロン毛と化したヴァルグレンと星見

104 ウルヴァーン出立 吟遊詩人や隊商と合流 その夜にホアキンと交渉

105 大熊の村ヴァークに着く そして 深部 の境界線に探索へ

106 翌朝ユーリアへ出立 同日ユーリアへ到着、夕方には助平領主と謁見

107 ユーリアを出立、サティナへ

109 サティナに到着

110 ホランドと商談、リリーの家を訪ねる リリーの憔悴発覚

76. 依存

お久しぶりです。

昼下がりのサティナの街は、人々の活気で満ちている。

腹をすかせて屋台を物色する隊商の護衛戦士、市場で買い物をする子連れの女、せわしなく走り回る小間使い。客引きに精を出す商店の見習いがいたかと思えば、大道芸人の一座が何やら街の官吏と揉めていたりする。

賑やかで平和な雑踏。

だがケイとアイリーンは、その中を重い足取りで歩く。

泣きじゃくるリリーをなだめて、一緒に遊んで、モンタンたちと少しばかり話してから、ケイたちはモンタン宅を辞去した。

宿屋に戻るには早すぎる時間。

さりとて昼食は摂ったばかりで、他にすることもなく。

ふらふらと誘われるように、大通りに面した見知らぬ酒場へ、二人が足を踏み入れたのは自然な流れだった。

酒場とはいえ昼間から酔い潰れる者はそうおらず―皆無とは言い切れない―至って落ち着いた雰囲気の店だった。ちょうど空いていた店の奥の席を陣取る。

エールを。二人分な

生ぬるいエールよりぶどう酒の方が美味いが、そういう気分らしい。どっかと椅子に腰を下ろしたアイリーンが、注文さえ億劫と言った様子で給仕の娘に告げる。親指でピィンと、大銅貨を弾いて渡しながら。

ケイも異存はない。胸の内の苦い想いを、もっと即物的な苦味で洗い流してしまいたい、というアイリーンの気持ちはよく理解できたからだ。

…………

席についたはいいが、二人とも黙り込んだままだった。ケイはぼんやりと酒場の客たちを眺め、アイリーンはリリーとのやりとりを反芻するように、独りで手遊びしている。

どうぞ

トン、トンッと二人の前に、エールがなみなみと注がれたジョッキが置かれた。乾杯をするまでもなく、無言で口に含む。

苦いし、不味かった。

……だが、悪くはなかった。

と、そのとき、店の片隅で小さな歓声が上がる。

羽根帽子をかぶり、琴を手にしたひょうきんな男が皆に一礼していた。どうやら吟遊詩人がやってきたようだ。店の外であらかじめ宣伝していたらしく、歌を目当てにドヤドヤと新たな客も入ってくる。

初めて見る顔だが、そこそこ人気の歌い手なのかもしれない。

そして見た目を裏切らぬ陽気な声で、彼は朗々と歌い出す。またぞろ正義の魔女か、それとも大熊狩りの話か? などと斜に構えて聴いていたが、どうやら新しいネタのようだ。

遠く離れた異国の街の、領主の娘の物語。見目麗しい彼女は、邪悪な魔法使いに目をつけられ求婚される。そしてそれを拒絶したがゆえに、娘は体をゆっくりと獣に変えていく、おぞましい呪いを受けてしまう。

だが、そんな娘にも救いの手は差し伸べられた。さすらいの善なる魔法使いが助力を申し出たのだ。呪いを解くには、大元を断つしかない。かくして善なる魔法使いは、邪悪なる魔法使いに一騎打ちを挑んだ。

凄まじい戦いだった。強大な神秘の力が火花を散らし、魔術の秘奥の激しい応酬が繰り広げられる。邪悪な魔法使いは絶大な魔力を誇ったが、しかし、さすらいの善なる魔法使いは一枚上手だった。なんと彼は、二体の精霊を使役し別系統の魔術を操る、類稀なる才能の持ち主だったのだ。

かくして邪悪な魔法使いは討ち果たされた。だが、時すでに遅し。呪いは娘の体に深く根付き、決して解かれることはなかった。

見目麗しいながらも獣の耳を生やしてしまった娘は、街の住民たちに恐れられ、そのまま故郷を追われてしまう。それに善なる魔法使いも同道し、かくして二人のさすらいの旅が始まった。

二人は安住の地を見つけられるのだろうか。わからない、精霊だけがその行先を知っている―と物語は締めくくられる。

アニメかよ……

ぱちぱちと拍手して、歌い手の技量そのものには賛辞を送りながら、アイリーンがボソッと呟いた。

正統派のバトルもの、ってノリだったな

ああ。獣の耳が生えちゃうとか日本人の十八番だろ?

知らん。そういう趣味はないし

からかうような視線をくれるアイリーンに、ケイは小さく肩をすくめた。

だが、どうだろう。ふと想像してみる、例えばアイリーンに猫耳が生えたら?

…………

いけるじゃん……と思ったケイは、少しだけ元気が出た。すぐにエールをあおって苦みばしった表情を取り戻したが、一瞬鼻の下を伸ばしたのをアイリーンは見逃さなかったらしい。ジョッキを置いて、何やらニヤニヤした笑みを浮かべていた。

……それにしても、デュアル・メイジの概念が出てきたのは面白いな

んんー? ……ま、そうだな。『こっち』でも発想はあったみたいだ

あからさまな話題転換だったが、アイリーンはこれみよがしに眉をクイッとさせるのみで、話に乗ってきた。

基本、魔術師と契約精霊は、一人と一体でセットと考えられている。ケイにとってのシーヴ、アイリーンにとってのケルスティンのように。

だが、類稀なる幸運が重なって、複数の精霊と契約できてしまう者もいる。精霊に出会う幸運と、精霊の要求する契約条件をその場で満たせる幸運。どちらも非常にハードルが高い。デュアル・メイジはその中でも最も『あり得る』例で、二体の精霊と契約する魔術師のことを言う。

ゲームでも滅多にいなかったからな

ああ。『こっち』にいるなら一度お目にかかりたいもんだぜ

相当なラッキーパーソンだろ、とアイリーンは言ってから、ふと思い出したように笑う。

そういや、『妖精の母ちゃん(フェアリーズ・マム)』なんてのがいたな

ああ、いたいた。懐かしい

アイリーンの言葉に、ケイは微笑みながら目を細めた。

『妖精の母ちゃん』とは、 DEMONDAL の名物プレイヤーのひとりだ。妖精が好きすぎて、契約条件のあめ玉や砂糖菓子を手に妖精の生息域を徘徊、ついには五体もの妖精と契約を結ぶことに成功した執念の魔術師。恰幅のいい女性のアバターが嬉々として妖精を連れ回している姿が笑いを誘い、こんなあだ名がついた。

ちなみに、同じタイプの精霊と複数同時に契約するメリットは薄い。一つの術に対し全ての精霊が反応して発動させようと試みるため、効果も倍増するが消費も倍増、あっという間に魔力が尽きてしまうためだ。

でも妖精って便利だよなぁ。できるならオレも契約したい

幻惑や眠りの術は、魔道具づくりでも応用が効くだろう。

そうだな。消費魔力も―

少なくてコスパがいいし、と言おうとして、ケイは口をつぐんだ。風の、気配を感じる。きっと声に出して言ったら何か良くないことが起きる。

―まあ、いつどこで妖精を見つけるともわからないし、持っていてもいいかもな。あめ玉の一つや二つ

アイリーンはハハッと笑いながらそう言ったが、あめ玉という言葉から連想してしまったのかもしれない。顔を曇らせた。

…………

またぞろ、沈黙が降りてくる。

そして、休憩していた吟遊詩人が再び歌い始めた。今度は、サティナ定番の正義の魔女の歌だった。ホアキンに何度も聴かされていい加減飽きていたし、それ以上に居心地が悪く感じられたので、二人はどちらからともなく、席を立った。

ぶらぶらと用事もなく歩く。

雑踏を抜け、いつしか城壁が見えてきた。そういえば、町の外に出るときはいつもサスケやスズカが一緒で、徒歩で出たことはほとんどない。

行ってみようか

そだな

なんとはなしに、ケイはアイリーンを郊外の散歩に誘った。衛兵に挨拶して顔を憶えてもらってから、二人は草原に出た。

爽やかだ。午後の風が心地よい。ぼちぼち肌寒い季節がやってくる。

みずみずしい草原の緑は見慣れていたが、いつも騎乗から眺めていたので、視点の高さが新鮮に感じられた。

……なぁ。リリーのあれ、どう思う

歩きながら。見晴らしのいい、誰もいない原っぱで、アイリーンがとうとう口を開いた。

依存症、か

……あれ、本当に依存症なのかな

……と、言うと?

他に何があるのか。ケイが怪訝な顔をすると、アイリーンは オレも詳しくはないんだけどさ と前置きし、

リリー、たった一回しか経験してないんだろ? それも注射とかじゃなくて、経口摂取で。……そんなに一発で、依存症になるものなのかな

もっと何度もやらないと、酷い依存性は出ないんじゃなかったっけ? と。

……わからない。だがここは地球じゃない。俺たちの知らない、依存性が異常に高いヤクがあってもおかしくはない

まあ、そうだけどさ

そうであってはほしくない、と言わんばかりに、アイリーンは辛そうな顔をしていた。ケイも同感だ。

そう、だな……。トラウマとか、そういうので蜂蜜飴が『精神安定剤』として、条件付けされてしまったのかもしれない。……という、考え方もできる

だと良いけど……いや、良くないけどさ

ハァ、とアイリーンは短く溜息をついた。

……どっちにせよ、リリーが苦しんでることには変わりないんだ

そう、それが事実だった。

ケイは無言で瞑目することで、同意を示す。

ピピー、ピピピ……と可愛らしく鳴いて、鳥が飛んでいく。夏の残り香を追い求めるように、蝶々が舞い飛んでいた。

オレたち、どうすりゃいいんだろうな

手近な木立に踏み入って、大きな石の上に腰掛けるアイリーン。

その真向かいの切り株に座り、ケイはおもむろに、胸元のポケットを探った。

……リリーの問題を解決する方法は、ある

えっ? 何が?

これだよ

すっ、と指で摘んで見せた。

赤銅色の―何の変哲もない指輪を。

オズのくれた指輪だ。コレに願えば、おそらく一発で解決する

オズ。

北の大地、魔の森に住まう賢者。

天界より降臨せし悪魔(デーモン)が一柱。絶大なる力を持つ異次元の存在。忘却と追憶を司る者―

依存症だろうが、トラウマだろうが、オズの手にかかれば、一瞬で……

治るはず。記憶をいじれば簡単だろう。

だが―

でも、……それは、ケイ

アイリーンが困惑している。いや、言うまでもない。

わかっている。たしかにリリーは苦しんでるが……『死ぬほど』じゃない

そういうことだろ、と目で問う。

リリーは、幼いながらに苦しんでいる。

だがその苦しみのせいで、明日にでも命を落としてしまうわけではないし、現状は五体満足に暮らしていけている。

深い同情には値するが、それでも、生きているのだ。

それに対し、この指輪の力は絶大すぎる。

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