「しかし……連携技が創作にも関わっているとなるとしぇりるも知っていないと厳しいんじゃないか?」
「その辺りは私たちが世間話でしているよ。問題は船大工……木工系の技能持ちが少ない点だね」
このままだとしぇりるが伸び止まりに差し掛かったりするのだろうか?
人間一人じゃ出来る事が限られてくる……か。技能被りがあっても良いと言うのが良いと思う反面、厳しい所だな。
「細かい事は後で拙者がしぇりる殿に教えておくでござるよ」
「闇ちゃん、しぇりるさんと話してる時あるもんね」
「俺もしてるが……」
「しぇりる殿は絆殿との話を心地良いと言っていたでござるな。気になっても踏み込んで来ずに気を遣ってくれているのが分かると言っていたでござるよ」
闇影ってしぇりるとそんなに仲良かったのか?
まあ、死神をしていた頃に厄介になっていたんだから当然か。
しぇりるって、時々発音が良い英語を喋ってるから……リアルは多少察する事は出来るんだけどな。
そこを踏み込むのは野暮ってものだ。
現にみんな俺や姉さんと紡に関して本名を聞いたりしないし。
なんて話をしながら俺達は奏姉さんとアルトを見送りに港まで来た。
「それじゃ絆、あなたしか出来ない連携技とか探して見なさいよ。きっと何かあるはずだから」
船に乗り込む奏姉さんが俺に告げる。
「俺が出来る連携技かー……」
俺の得意な事と言ったら言うまでも無く釣りだ。何か釣りで連携技が出来ないのか?
手本として奏姉さんが実践して見せてくれたけど、連携のアイコンが出ないと行けない。
で、硝子と一緒に釣り場で竿を振っていても連携は作動しなかった。
フィッシングコンボともまた何か違うって事なんだろう。アレもある意味連携だとは思うけどな。
釣り……みんなでやる事……カニ籠と言った所でピンと閃く。
「硝子、それと闇影と紡ー」
ここは一緒に楽しんでいる釣り技能が高い硝子と、必然的に上がってしまっている闇影と紡に声を掛けるとしよう。
ついでにペックルもこの辺りの技能は高いから想像通りなら上手く行くはずだ。
「なんですか?」
「激しく嫌な予感がするでござるがなんでござる?」
「お兄ちゃんから嫌な気配がするね」
「ちょーっと閃いたから連携が出来るかどうか手伝ってくれ」
と、俺は船に乗り込んだ。
「何を始めるのか、見物だわね」
「絆くん達の連携技がどんなものか」
奏姉さん達が高みの見物とばかりに答えたのが印象的だ。
まあ見てろって、なんとなく出来そうな気がする。
「オーエス! オーエス! もっと力の限り引けー!」
俺達は島の海岸で二本の綱を呼吸を合わせて引いていた。
右側は俺と硝子、そしてペックル。もう片方は闇影と紡に、もちろんペックル。
「呼吸を合わせて引くんだぞー」
「こ、これも、共同作業でござるが……やりたくないでござるよ!」
「良いから黙ってやれ、俺達のコレまでの努力で最も効率良く出来る連携技だぞ」
「こんな連携技嫌だよー! もっと戦闘で貢献出来る奴が良いのにー!」
闇影と紡がブツブツと抗議しているが、しっかりとCooperation! って表示が出たのでコレが正解だったんだ。
「なんか釣りマスター達がまた何かしてるな」
「絆ちゃん達がまた可愛らしくしているでござる」
闇影じゃない奴がまた俺に萌えを感じてやがる。お前は俺が何をしても萌えるんじゃないのか?
「海岸で綱引き?」
「なんかテレビとか動画で見たことある奴だ。何だっけあれ?」
島にいるプレイヤーも俺達がしている事を見ながらブツブツと話し合っているが、今はとにかくこの綱を引き終える事が重要だ。
「これが皆さんとの共同作業ですか……船造りをする時みたいなのとも異なりますね」
「まあなー」
「あと、これって釣りというより罠寄りな連携技なのでは?」
「……かもな」
一応釣りで罠って事なんだろう。
さて、俺達が行っている連携技が何であろうかというと文字通り地引き網という沿岸漁法である。
「ペーン! ペーン!」
ペックル達も綱を引く手伝いをして声を出している。
ミニゲームのアクションは適切なタイミングで綱を引く感じだな。
ある意味音ゲームみたいな側面があるかも知れない。
タイミングが合ったら力の限り引く。これで網がどんどん岸に近づいてくる形だ。
「拙者達は一体何をやらされているでござるか? カニ漁よりもシステム的に認められて嫌でござる」
「奥深いにしたって限度があるよね。頭おかしいよこのゲーム!」
「良いから黙って手伝え!」
徹底したカニ籠漁によって上がった熟練度で最も効率良く出来る連携技だぞ。
と、闇影と紡が嘆く中で俺達は綱引きを完遂させると、ミニゲームの終了を告げる告知が表示され海面から出た網からキラキラとした輝きを見せながら大量の魚が出てくるエフェクトが発生してリザルトに入った。
よし、連携技は大成功だ!
何が手に入ったか確認だぞ。
ピロンと音がして大量の魚……単純に釣り糸で引っかからない魚が掛かっている様だ。
見覚えのない魚がチラホラ確認出来る。
スリープヒラメ? ボマーフィッシュ……ニードルメゴチ……シルバークエ。
結構色々と魚が見つかるな。
他に換金用らしき沈没金貨や銀貨なんかも混じっていて、パイプ……空き缶なんかも混じっている。
あ、ヌシ素材を解体した時に手に入る低級王者の鱗とかが混じってる。
ヌシを釣れなかったプレイヤー救済も兼ねている連携技って事か?
検証次第だけど馬鹿に出来ないぞ、これ。
効率化
「単純に船の投網じゃ手に入らない品やヌシ素材とかが手に入るみたいだな」
個人的には奇妙な魚でも釣り上げたい。
「いやー……絆くんなら何か変わった連携技を使いそうだと思って居たけど徹底しているね」
「徹底しすぎでござるよ。そして拙者達も連携技の組員に巻き込まれているのが悲しいでござる」
「そうそう」
「まあまあ……色々と採れましたね」
「ああ。悪いとは思わないが釣りの醍醐味が少し損なわれて居るのが残念といえば残念だな」
俺は釣りをしたいのであって漁師でありたい訳ではないのだ。
まだ見ぬ強力な魚を釣り上げるのが俺の目的だ。
「ただ、かなり便利なのは間違いない! みんな、もう少し検証の為に続行するぞ!」
っと再度連携技を使おうとした所で視界に再使用時間が表示されてしまった。
……6時間ほどか。
「あれ? 再使用するのに6時間掛かるみたいだ」
「技能系の連携技の中には再使用するのにクールタイムがあるらしいね」
「料理とかの連携技はクールタイムは短めだけど、その地引き網は6時間掛かるって事なんでしょ」
「大量に採れすぎる事によるバランス調整なのでは無いかい?」
「今更でござると強く拙者は思うでござるが? 主に絆殿が各地に設置している代物に関して」
「そうそう」
闇影と紡が露骨にカニ籠漁へのバランス調整の要望だ。
気にすんな。アレはアレで採れる魚とか限られてるんだ。ゴミも結構採れるんだぞ。
「あんな連携技あるんだな。釣り系……だよな? 今度みんなでやってみるか」
「面白そう。トリガーとなるスキルがフィッシングマスタリーだけじゃないよな。船操作系か?」
と、俺達から離れた他のプレイヤー達が考察をしている。
具体的にはフィッシングマスタリーとトラップマスタリーが主だな。
他に当然のことながら舵スキルも必要だ。
みんなで協力して事を成すことで手に入るってのは中々奥深いと思う。
「より検証を深める場合は海岸限定だろうけど、場所によって何が採れるかも確認だね」
「そうだな。第一都市の港から海沿いに海岸があったし、ミカカゲ方面にも海岸がある。他にも各地の小島なんかでも出来そうだ」
闇影と紡が聞こえないとばかりに耳に手を当てているが余裕があったらするぞ?
何か良い素材が見つかったら良い感じの装備をロミナに作って貰える可能性があるんだからな。
「絆さん。このニードルメゴチって投擲武器として使えるみたいですよ? 攻撃力が記載されてます」
「イカを無理矢理バリスタに乗せて代用出来たけど、こっちはしっかり武器扱いなんだな」
「クナイ投げみたいに投げるでござるか? 鋭いのは認めるでござるが締まりが無いでござるよ」
「本当、お兄ちゃんと一緒に居るとネタ武器に事欠かないね。何処かに凍ったままの魚で武器に出来るのとか釣れそう」
と、紡が呟いた所で硝子が苦笑いを浮かべていた。
ありえるよなーネタ武器って馬鹿に出来ないのがこのゲームだ。
河童装備が物語っている。
「何にしても絆達もしっかりと連携を意識するようになって良かったわ。それじゃアルトさん。行きましょうか?」
奏姉さんが馬鹿な事をして居る俺達を尻目にアルトに出発を促す。
「そうだね。じゃあ、ちょっと行ってくるとしようか。絆くん達は当初の予定通り、今までの狩り場巡りに行くんだろう?」
「ああ、今までの狩り場……海岸で地引き網をする」
「違うでござる!」
闇影のツッコミが早いなー。
「冗談だよ。いい加減そろそろ次の波が来そうだし色々と準備していくさ」
時期的には何時来てもおかしく無い頃なのだ。
なので今まで硝子の提案通りに俺達自身の底上げをして行きたい。
「それは何より。じゃ、僕たちは行くとしようか」
「じゃあね絆。あんまり釣りばかりしてないでやる事をやるのよ」
と言うわけで奏姉さんはアルトに連れられて船で出発していった。
「これで拙者達の仲間が増えるでござるな」
「うん。お姉ちゃんも仲間になるね」
「あなた方は……」
こうして腹に一物を抱えた連中に硝子は呆れた声を出しつつ俺達は第二都市へと戻って狩り場巡りを再開したのだった。
「あ、お兄ちゃん。私、ちょっとフレンドから聞いた種族クエストをクリアして来るよ」
「あー……なんかあったな」
第三波をクリアしたときのアップデート情報で見た覚えがある。
紡の種族は亜人、特定のクエストをクリアすると獣化出来る様になるって奴だ。
「お手伝いしましょうか?」
「そこまで難しいクエストじゃないんだって、それと参加するには同じ亜人の種族じゃないとダメなんだってさ」
文字通り種族クエストなのか。
「色々と面倒そうだけど大丈夫なのか?」
「大丈夫、フレンドから聞いてるし必要なアイテムもアルトさんが用意してくれてるからすぐに終わるよ」
それは何よりだな。
「種族クエストですか……スピリットはどんな物があるのでしょう?」
「よく分からない感じだったよな。倒したモンスターを集めて力に出来るってのも限界突破の条件にも読み取れるし」
「クエストを受けてないでござるよ」
確かに、種族毎に何かしらのクエストがあるのだったら何処かで達成しなくちゃ出来ない事だ。
「スピリット系のクエストの話は聞かないから分からないね」
「あるけど不明って面倒だよな」
思えば魔王軍侵攻イベントでスピリットで俺達以外に印象付けられる何かをして居るプレイヤーは見なかった。
「人間とかジュエル、エルフとかもよくわかってないみたいだよ。だけどライカンスロープ、亜人はクエストが分かってるんだって」
これを優遇や不公平と取るか、キークエストが分かって居ないだけと取るかは判断に悩む。
けどどちらにしても紡の底上げには必要な事か。
「亜人のクエストを達成するとどうなるんだ?」
「獣化スキルって奴が開花するんだって、現段階だと自分にバフを掛けるスキルだけどアプデでもっとスキルが強力になるんじゃないかって亜人のフレンドが言ってた」
実装したばかりでまだそこまで強く無いスキルか。
単純に上がりが悪いスキルか。
「どっちにしても覚えられるなら早めにやっておいた方が良さそうだな。紡、行ってこい」
「うん。すぐに合流するからみんな待っててねー」
と、紡も種族クエスト達成の為に別行動をする事になった。
「じゃあ……やっていくか」
それから二日経った。
紡はあっさりとクエストを終えて俺達と合流を果たした。
紡曰く、種族クエストは簡単にクリアできたらしい。
宿で化石のクリーニングをしているとアルトから連絡が入った。
硝子も部屋で一緒に休んでいたので共に話をする事になったぞ。
最近の硝子は釣りの練習とばかりにルアーを思った通りに投げる練習をしていた。
俺ほどじゃないけどかなり正確にルアーを飛ばすことが出来る位にスキルが向上している。
奏姉さんはカニ漁と加工業務に励んでいるとの話だが、何やらアルトが感心していたと呟いていた。
「いやぁ……さすがというか奏くんは君の姉であるとマジマジと理解させてくれるね」