「なんで納得したのか聞くべきだよな?」

「やはり絆さんのような異様な集中力を見せているという事ですか?」

「うーん……ベクトルは違うかな。彼女にカニの加工業務をしばらく頼んでいたんだけどね。船内の作業工程のライン作業の間取りが非効率的だって全体の見直しを提案してきたんだよ」

なるほどな。

展開は読めた。

「姉さんの事だから言い逃れして逃げる理由とかにしようとしている可能性もあるけど、アルトの反応からして違うんだな?」

「うん。配置的に無駄な所を削って、効率化する見取り図まで出してくる始末だよ。僕も舌を巻いたよ。確かに彼女の言う通りにすると今までよりも効率が良くなるんだ。自分でもなんでこんなに無駄な配置だったんだって思う位、洗練されていたよ」

カニを茹でて捌いたりする作業なんだけど、そのライン作業を更に効率化させる提案をするとか……姉さんらしいと言えばらしいのかね。

あの人、攻略サイトとかあればテンプレートになる様な配置を思い付くんだよな。

別のゲームで楽をさせてもらった経験があるのでよくわかる。

理屈と膏薬

「徹底した効率的な行動主義……彼女が前線組であり、君の姉なんだと納得したよ」

「姉さんはなー……色々と狩り場とか常識とか固まってくると頭角を現すタイプなんだよ。紡とは逆のゲーマーだから、単純作業に対して効率を求めるんだよね」

「絆さんは非効率的でも黙々と続けられるのが違う点という事ですか?」

「まあね。俺は行程も楽しむ主義なんだけど姉さんは効率的に結果を出す事を求めて、紡はプレイヤースキルの訓練とかいろんなやり方を探す感じだな」

だからスタートダッシュは紡が一番早いんだ。

で、姉さんはエンドコンテンツが主流になると頭角を現す。

俺? 俺はこの手の話だと目立つ事はほとんど無いな。

「本質は似てるけど色々と差がある姉妹って事なんだと納得するしかないよ。ちなみに自分は普通だと思っているみたいだけど、君は根気の化け物だ。二人がそのゲームをやめた後も続けていて、ゲームを完全網羅するタイプだろう?」

「十五日も地底湖に潜っていられた方ですからね」

「まあせっかく始めたゲームだし、余程のクソゲーでもない限りは最後までやるけど……」

しかし、あのホームレス生活をしていた姉と、刹那的な楽しみを追い求めるおバカな妹と血の繋がりに納得されるのは非常に不服なのはわかっているのか?

どうして家族でこんなに性質が違うのかは謎だ。

「それじゃあ奏さんはカニ漁に馴染んでいるという事でしょうか?」

「そうだね。メキメキと上達する罠技能を確認して笑みを浮かべていたよ。船上戦闘スキルも上がって来てて良いわねって言うくらいに」

なんとも……姉さんらしい話だな。

見栄を捨てて、新しい環境に放り込まれたら足踏みは遅いけど着実に結果が出る様に研鑽を積んでいくか。

結果的にだが、紡と闇影の暗躍は失敗に終わったな。

「まあ、我がギルドに入る洗礼は終えたような物だからキリの良いところで合流してもらえば良いかね。もちろん人手が足りなくなったら、また来てもらうけどね」

「ああ、元々姉さんが俺達に素直に甘えられないのが原因だしな。しっかりと働いたと思ってくれたらこっちの戦闘に参加してもらうさ。硝子達も俺の底上げをそろそろ切り上げて、波に備えてLvアップに励んでもらいたいからな」

「本音で言えば絆さんも来てくださると良いんですけどね」

なんだかんだ合間で釣りとかさせてもらって解消はしているけど、俺は本来いろんな釣り場で釣りをするのが目的なんだから一日中釣りをするのも悪くないんだ。

Lv上げと同じ位、資金稼ぎも重要だしな。

「もちろんミカカゲに設置したカニ籠の採取をして行かないといけないし、やっていくさ。ついでに海の方でも挑んでない魔物に挑むのも良いな」

「ええ、波に備えてラストスパートです。がんばりましょう」

っとアルトから姉さんの近況報告を聞いた後……俺達は就寝をしたのだった。

そんな夜が明けようとした時刻での事……。

バリン! ……っと朝靄が掛かる時間に波の到来を告げる音が響き渡ったのだった。

波の到来する場所はみんなの想像通り、ミカカゲ……ではなく、第二都市ラ・イルフィ近くの山脈近くで発生したのだった。

朝……寝起きに泊まって居た宿の前に出て朝の背伸びからの散歩、川で軽く釣りをしようとしていたらかなり近い所に波の到来を告げる空模様があったので驚いた。

部屋に戻ってみんなと相談をする。

「まさかまた第二都市近くで波が起こるとは予想外だったでござる」

「だねーてっきりミカカゲの方で発生すると思ったのにね」

「ええ、まさかこんな近い所で起こるとは……」

やっぱりみんな波が起こる場所はミカカゲ周辺で起こると思っているよなー。

俺もミカカゲで起こると思っていた。

「ただ、結果論だけで言えばミカカゲじゃないのも納得出来なくも無いな」

「絆殿はどうしてミカカゲじゃなかったのか納得出来るでござるか?」

「ああ、まずミカカゲの入国システム。ビザのランクアップをして行かないと関所を通過出来ない仕様だぞ? 好きにプレイしているプレイヤーには著しく行動を制限しかねない。一応、全プレイヤーに参加権がある波への公平性が損なわれる」

「今更だと拙者は思うでござるが」

「お兄ちゃんと硝子さんは第二波に参加出来なかったもんね」

「そこは免除って扱いになっただろ? そもそも開拓クエスト、第三都市のカルミラの解放クエストだったんだ。プレイヤーがミカカゲのクエストが参加資格になるのは参加出来るプレイヤーが減りかねない」

ゲームの目玉イベントを参加出来なかったとしてもそれに匹敵する大規模クエストに参加中だったからこその免除だ。

セカンドライフプロジェクト、好きに第二の人生を楽しむゲームでミカカゲのクエストをやってないから波に参加出来ないのとは事情が違いすぎる。

「次にミカカゲのクエストはちょっと前に行われただろ?」

「魔王軍侵攻イベントでござるな」

「そういうことだ。近い所で大規模イベントが何度も行われては芸が無いと思わないか?」

「言われて見れば確かに発生する場所を考えると別の場所で起こっても不思議じゃないね」

「いや、それにしても第二都市近くで起こるのは妙でもあるでござるよ。だって初回と二回目の波はこの辺りで発生したでござる。それこそまた海上で波が起こっても良いはずでござるよ」

闇影の異議を俺は否定しない。確かに初回と二回目は第一都市と第二都市の間で行われていた。

行ける所が増えた今の状況で第二都市近くで波が発生する理由にならないか。

「第二波ってどの辺りで行われたんだ? 俺と硝子はカルミラ島に居たから詳しくは知らないんだが」

「第二波はリユート街道というフィールドで行われたでござるよ。第二都市から少し離れた道でござるな」

「あんまり目立つ狩り場でもない街道だから印象は薄いかもね」

「そうだったのか。まあ波の発生地点の法則に関しちゃ俺もゲームを作った奴じゃないから分からないけどな、ミカカゲは立地的な意味で不向きって事だ」

最初に述べた通り、ミカカゲは現状だとプレイヤーに優しい場所ではない。

カルミラ島の場合はダンジョンのシステム的な面でプレイヤーが戦いやすい環境を構築しやすかった。

船上戦闘スキルだって波までの間に船に乗っていれば戦えないという程では無い位には動けていた。

「まあ、波に対する救助要請って事で関所がシステム停止して現地の場所までフリーで行き来出来るとかでも良いとは思うんだけどな」

「便乗してビザを無視出来るでござるな」

「その場合、ビザを必死に上げて入れる様にしたプレイヤーが不公平感を覚えるかも知れませんね」

この程度で不満には思わないけど、あり得ない話ではない。

「かなり独特なシステム回りをしている国がミカカゲだからな……何にしても現段階では波の発生場所を外されたって事だろうな。もしくはある程度ランダムなのかも知れない」

セカンドライフプロジェクトは同じプレイヤーは一度ゲームが終了した場合、再度ゲームが開始した時に参加は出来ないってルールがある。

前回のプレイ知識を事前情報で広められても次のプレイで色々と修正が掛かって役に立たないのが触れ込みにあった。

スピリットが弱種族だって事前情報の話もこの辺りに起因する。

実際は癖は強いけど弱い種族では無い。

「理屈と膏薬はどこへでも付くでござるか。確かにあまり深く考える必要は無いのかも知れないでござるな」

「そういうこと。今の俺達に出来る事は次の波が本格的に開始する前に事前準備をできるだけする事だ」

「とは言いましても既に色々と準備は済んでいますよ」

確かになんだかんだ色々と装備は潤沢にはなってるか。

俺、硝子、闇影はスピリットでエネルギーの限界突破にいろんな魔物との戦闘が求められていた訳で、できる限りいろんな魔物と戦うとここ最近、今まで行かなかった狩り場を回っていた訳だし。

アットホームなパーティー

手頃な狩り場はもう大分一巡した。

「ミカカゲの方で最終調整に予定を切り上げるか」

「私もフレンドと情報交換した感じだと、Lvは若干負けてるね。ガッツリやってた人にはさすがに追いつけないかな」

「けど負けるつもりは毛頭無いんだろ?」

「もちろんだよ。お姉ちゃんがいた所じゃ無いけどこのゲームじゃあんな極限プレイは不要だもん」

確かにな……Lvだけが全てじゃ無い。

俺達の周囲の評判は金を持ったトッププレイヤーって扱いらしいけど、割と好き勝手に……楽しんで、無理の無い生活をしている。

「姉さんとも合流して次の波への対策を整えよう!」

「ええ! 連携スキルも大分感覚が掴めてきましたものね」

「しぇりる殿にも報告でござるな」

そういや、しぇりるとは最近まともに話をしてないなー……全然顔を出さないし。

という訳で俺達はカルミラ島に戻り、みんなと合流した。

「しぇりるー、いるかー?」

籠っているしぇりるの元へ行き、声を掛ける。

するとしぇりるは顔を上げてこちらに気付いて手を上げて作業を中断して近づいてきた。

「……おかえり」

「ただいま。ロミナから話は聞いたか?」

ここに来る途中でロミナがしぇりるには話をして置いたと聞いたので尋ねる。

「……そう」

肯定とばかりにしぇりるはこくりと頷く。

「リベンジ」

「やる気は十分あるようだな」

ここ最近、ずっと工房に籠って遅れがちだった技能習得に励んでいたみたいだけど、やる気があるようで何よりだ。

「作業の方はキリの良いところまで来たか?」

「そう……ちょっと準備してた」

波に備えた準備をしていたって事ね。

「それは何より、最近俺達も連携スキルって代物に手を出してきた所だし、後でしぇりるは闇影と一緒にどんな攻撃が出来るか試して見てくれ」

「……そう」

若干乗り気じゃ無いって感じにも見えなくは無いが……ともかく、しぇりるも準備万端みたいだな。

「絆ーってそこにいるのは、みんなが話をしていたしぇりるちゃんね」

奏姉さんがしぇりるに気付いて近寄って来る。

「私は絆の姉の奏よ。ちょっと前に厄介になったからこれからよろしくね」

「そう……絆と紡が話してた」

しぇりるは奏姉さんを見て答える。

「ちょっと絆、紡と一緒にどんな話をしてた訳?」

「そんな大層な話はしてないぞ? なあ?」

「……そう。よく知らない」

しぇりるも闇影ほどじゃないけど結構人見知りをする奴だからな……姉さんと打ち解けるのに少し時間が必要かも知れない。

「よろしく」

「ええ、よろしく。これからはみんなの台所事情は私が担当するから、魚料理以外も食卓に上るわよ」

姉さんめ、ここぞとばかりにアピールをしてくるな。

「しぇりるちゃんは何が好みの料理かしら?」

「……」

好物を尋ねる姉さんと沈黙するしぇりる。

少し時間が経った所で姉さんが俺を後ろで小突いて個人チャットを送って来る。

『私何か変な事言った? なんか反応が無いんだけど』

『特には。しぇりるって少し会話のテンポが独特だからあんまり気にしない方が良い。嫌だったり不快だったら露骨に顔には出るから問題は無いはず』

姉さんもしぇりる相手だと最初は戸惑うか。

「……和食をもっと知りたい」

「和食ね。わかったわ。魚料理以外も作って行くわよ」

好物は? と聞かれて和食を知りたいと答えるしぇりる。

ちょっとズレてるけどあんまり気にしてもしょうがないな。

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