「ああもう……わかったわよ。アイツらはね。私を戦力外だって事で狩りに誘ってくれなくなったのよ。装備の更新が遅れただけで!」

「競争意識の強いプレイヤーだったという事ですか?」

「元々はリーダーをしていた人が色々と管理してくれていて、私もやりたい事をやっていたのよ。だけど何かクエストを達成した際に連絡が取れなくなって、別の人が引き継いだ辺りからおかしくなり始めてね」

「……聞き覚えのある話だね」

この場にいるみんなが俺を凝視する。

はいはい。

カルミラ島の開拓クエストみたいにリーダー格の人物が行方知れずになって連絡出来なくなったのね。

……となると、その人は今、カルミラ島みたいな特殊な状況にいるのかもしれないな。

「で、後任の奴が向上心の塊で周囲に気を配らないタイプだったって事。そのシワ寄せを姉さんを含めた複数のプレイヤーが被って、競争に負けた姉さんは縁が遠くなった、と」

なんだかんだMMOタイプのゲームは一人で遊ぶとなるとハードルが高い傾向にあるんだよな。

多くの場合、パーティープレイが推奨される。

その為に臨公広場などを利用する訳だけど、そこでも最低ラインの強さを求められる。

「アイツら私の攻撃力が足りないって馬鹿にして装備自慢をしてくるのよ。だから私もアイツらに負けない装備を手に入れれば別のギルドに入れると思って……」

「それで何してたの?」

「そ、装備強化を……」

あ、これは姉さん独特のごまかしをする際の誤解を招く言い方だな。

ロミナは何をしていたのか察したようだ。

「なるほど、過剰強化に手を出して破産したんだな?」

「そ、そうよ! 悪い!? 装備が強く無いと稼げないでしょ! 稼ぐために装備を強化しないといけないでしょ」

「装備が弱いから稼げない。稼げないから装備を強化出来ない。強い所に行けないから稼げないしLvも上がりが悪くなる……っと」

「ネットゲームあるあるでござるな」

「このゲームは戦うだけが全てじゃないんだけどねー。お金が欲しいならアルバイトも今じゃあるし」

まあ、戦闘なんて毛頭するつもりは無いってプレイスタイルをアルトはしているもんな。

文字通り食うに困らず商人界隈で一目置かれる存在になっている。

ロミナは鍛冶はトッププレイヤーだけど戦闘もそこそこ出来るもんな。

現状、装備の影響が強いのは間違いないっぽい。

「だから装備の過剰強化に挑戦し失敗……爪に火を灯す生活をして金をかき集めて過剰を繰り返していたと」

「現状の状況でそこまでこだわる必要はあるのかね?」

過剰強化担当のロミナがそれを言ったら姉さんの立つ瀬は無いな。

「絆くんの姉君にそんなデマを押しつけた職人がいるとは……とんだ不届き者だぞ」

「職人が原因とは限らないぞ。姉さんを馬鹿にしたプレイヤーが言った装備以上の品って固定観念が出来ているって可能性も高い」

「お姉ちゃん、何が欲しかったの?」

俺達の質問に奏姉さんは顔を逸らしてモゴモゴと小さく呟いた。

「え? ハーベンブルグのカトラス?」

「……」

ロミナが露骨に額に手を当てて……なんか若干青筋つけてないか?

「絆くん、紡くん。君達の持っている武器を彼女に見せてやってくれないか?」

「あ、ああ……」

「わかったよ、ロミナちゃん」

俺と紡は奏姉さんに青鮫の冷凍包丁<盗賊の罪人>と使っている鎌をとりあえずとばかりに差し出して確認させる。

「ちょっと何よこれ! 装備自慢のつもり!? そりゃあアンタ達は匹敵する位の装備を持ってるでしょうよ!」

「奏くん、君は大きな勘違いをしている。絆くんの装備は確かに希少素材を元に作っているが過剰強化など全くしていないのだよ。紡くんの装備もそこまで手が込んでいる品では無い」

確かに紡って装備品の類いの作成はそこまで手の込んでいる品は少ない。

むしろ俺はワンオフ装備みたいなのばかりだけど、それにしたってほぼロミナに作って貰った品ばかりだ。

「絆くん達は解体で得られた素材で作ったものばかりでボスドロップでは無い。君が狙っている海賊船長のサーベルからのカトラスの方が特殊な品なのだよ」

「お姉ちゃん、ぶっちゃけカトラスって次のアプデできっと型落ちする装備だよ? 結局は何処かで再強化する事になる程度で、ゲームの最強装備じゃないよ」

「あの程度で打ち止め扱いにされると職人プレイヤーとしてのプライドを傷つけられてしまうよ」

ロミナも武器に関する所はこだわる訳ね。

「次のアプデで良いのが来ると思って生活を維持しつつ貯金するくらいが丁度良いと思う」

これもオンラインゲームあるあるの話だ。

現在最強の装備が翌週のアプデで型落ちする、なんてな。

装備じゃなくキャラだったりして、そこはゲームによって違う訳だけどさ。

「けどみんなアレが凄いって言ってるじゃない。アレが今後の人権になるって話よ。カニ装備は頭打ちになるって」

「何処の誰がそんなデマを広げているのやら……悪徳商人かな?」

このゲームで最も悪徳な商人が何か抜かしている。

「カトラスだけが全てじゃないよ、奏くん。君が長く愛用した装備をもっと大切にしてくれたまえ……でないと装備が泣いてしまうよ」

姉さん、どうやら周囲のプレイヤーに恵まれなかったみたいだな。

情報がなんか凄く狭い。

もっと視野を広げないとダメじゃないか。

おそらく件のリーダーをやっていたプレイヤーの舵取りが上手かったのかな?

「なんかロミナが本当の職人みたいな事を言ってる」

「間違った事など私は言っていないぞ? 愛用した装備を強化する事でより良い効果が付くのだからな」

と、ロミナは試作品で作ったブルーシャークの短剣を奏に差し出す。

「そもそもだね。新しく行ける所で……絆くんが持ってきた材料の一部でこんな代物を私は既に作っているのだよ?」

「こ、これ……カトラスには劣るけど……」

奏姉さんも性能の高さが一目で分かったっぽい。

材料集めはちょっと面倒だけど、ボスドロップと比べれば簡単に作れる装備だもんな。

姉加入

「職人である私が断言しよう。カトラスが絶対では無い。もうカトラスに並ぶ装備が既に入手出来る段階にある。君の周囲は視野が狭すぎるのではないかね?」

「どっちにしてもそんな面倒な連中を見返すとか馬鹿な事を考えて無いで、一緒に来るように。しばらくは養生して臨公広場の使用は禁止」

姉さんって変な所で凝り性だからゲーム終了まであんなホームレス生活をやりかねない。

ゲームって言うのは楽しんでなんぼだ。

ゲームは遊びじゃないんだよ! なんてのに付き合っていたら馬鹿を見る。

「装備は私が見繕ってあげよう。城の倉庫に大量に作ってある品がある」

「そんな……悪いわよ。絆や紡ならともかく……」

ここに来て遠慮を姉さんはしているけど、その対象に俺達を入れないのはどうなんだ?

「じゃあ装備の支給代金として僕が雇用しよう。しばらく僕の指示に従ってくれれば良い。なーに、魔物と戦えなんて言わないから安心してくれたまえ。なんと罠に関する技能が大きく伸びるし、絆くんほどじゃないが釣り技能も上がる。給金は……」

と、アルトが姉さんに交渉を持ちかけている。

何をさせる気だ?

いや、アルトがさせようとしている仕事が何であるのかこの場にいる連中はみんな揃って理解した。

「そ、そんなにくれるの? それならLv上げが滞るけど……少しの間なら……」

「奏さん! アルトさんの誘惑に乗ってはいけません」

「お姉ちゃん、タダで貰っちゃダメだよ。しっかりと働いて装備を買わなきゃ!」

硝子と紡がここで反対の事を言ってきた。

硝子は素直に良心による説得で紡は仲間を求めてだな。

なんて酷い妹なんだ。

「アルト殿の仕事は素晴らしいでござるよ。拙者、その仕事のお陰でこの前のイベントで大活躍したでござる。臨公では得られない貴重な経験値が手に入るでござる」

目が曇った闇影までもが紡側に立っている。

お前もか、闇影。

そんなにも仲間が欲しいのかお前達は!

「闇影さんも嘘ではないけど推奨しちゃいけませんよ。奏さんは大変な生活をしていたんですよ!」

「まあ、奏姉さんが面倒なプライドがあって甘えられないようだし、死の商人に一度痛い目をみせられてからの方がやりやすくなるんじゃない?」

なんか面倒になってきたし、奏姉さんが納得する形で一度労働させてからで良いか。

本来姉さんは実際に試してみて検証するタイプのプレイヤーでもあるしな。

「な、なんかよくわからないけどわかったわ。どんな仕事でもやってやるわよ!」

「彼女がそれで納得するというのなら私は止めないがね。どちらにしても君を利用してカトラスを作ろうとしている職人とは一度距離を取る様に」

ロミナが念押しをしている。

まあ、姉さんを使って過剰品、技術の練習台にするような奴はな。

金は掛かるけど腕は良いロミナと格安でやってくれるけど腕は信用がおけない職人だったらな。

俺の身内でこれから迎え入れるって事でロミナも快く武具を作ってくれるのだから良いよな。

「奏くんの装備はシンプルに剣だったね」

「ええ、それと盾を使っているわよ」

って奏姉さんは自身の装備を見せる。

辛うじて過剰されているカニ装備という格安汎用装備一覧って感じだ。

剣も供給過多で投げ売りとなっている品の過剰品で盾を見た所でロミナは声を漏らした。

「ふむ……盾は唯一愛用しているようだね。これなら強化に使えそうだ。正統派のタンクを彼女にして貰えば戦いも安定するだろうね」

「正統派?」

硝子がポツリと呟く、どうしたんだ?

「絆くんが使役しているブレイブペックルはともかく、硝子くんのスタイルは癖がとても強いのでね。少人数戦闘なら良いが数に来られると厄介だろう?」

まあ、硝子って敵の攻撃を文字通り弾いて無効化して耐えるスタイルで今まで戦って来たもんな。

いざって時は俺や硝子、闇影が文字通りスピリットの性質をそのままにダメージを受けてごり押ししていたんだし。

最近じゃブレイブペックルに耐えさせていたけど、ブレイブペックルを長時間運用は出来ない。

「注意を引きつけるスキルは持ってるわよ。弾くのもね」

奏姉さんはその点で言えば確かに正統派か。

曲芸回避じゃなく、しっかりと前衛を任せられる頼れる盾って事で。

なんだかんだ安定はして居るんだけどな。

さて……ここで念のために確認して置いた方が良いよな。

「姉さん、他に何か手に職みたいなスキルで育ててるのある?」

「そうね……採取と料理技能のLvが高いかしらね」

「……採取?」

「ええ、回復薬の節約用に薬草採取してたら上がったのよ。料理は自炊もして食費を浮かせられるからね。元々得意だから良いでしょ?」

まあ、我が家で料理が出来ないのは紡だけで基本は姉さんがやっていたからゲーム内でもなんとなくで料理はしていたって事で良さそうだな。

「魚料理以外が出来るでござるか?」

なんか闇影の目が輝いている。

魚ばかりで悪かったな。

「出来るけど……絆? あなた彼女達に毎日何を食べさせて居たのかしら?」

「何って釣った魚を料理して振る舞っていたけど?」

「お姉ちゃん、バリエーションは豊富だったからそこまで飽きる程は食べてないよー」

「ほぼ毎日魚料理でしたからね……」

硝子までもがなんか不満がありそうな同意をしている?

何か問題があるか?

「たまには魚以外の料理も食べたくなってくる頃だよね」

「はぁ……しょうがないわね。明日は私が作るわよ。後で食材を見せるのよ。それと絆、料理が出来るなら一緒に料理するわよ。連携技が出来るから手伝いなさい」

「あ、姉さん連携技知ってるんだ? 俺達よくわからなくて使ってないんだよね」

そう言うとなんか姉さんが呆れた様に頭に手を当てる。

「どうしてこんなにも成功しているアンタが知らないのよ。情報の偏りを指摘されたその場で言い返したくなるわ」

俺はアルトとロミナの方へ顔を向ける。

「鍛冶は職人仲間やペックルを指揮すれば連携技が出来るのでそこまで気にはしなかったのだが……」

「聞かれなかったし、君達は出来るだろうと思っていたよ?」

わかっているつもりで何もわかっていなかったって言いたいのか?

「固定パーティーを組んでいると連携技の発動率が上がるって話があるのよ。戦闘だと魔法とスキルのコンビネーションね」

「へー」

システムとして知ってはいたけど具体的な発動方法はよくわかってなかったなぁ。

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