『悪いペックル! 俺達の盾となってくれ! 少しだけの辛抱だ』

『ぺーん』

ペックル達が戦闘不能になる声が周囲から聞こえて来る。

他プレイヤー達のペックルだ。

こっちは辛うじて持ちこたえているけど……まだ俺達でさえボスの所に到着して無いんだぞ!

「倒しても倒しても……」

「キリが無い。ちょっと敵の数が多いよ」

硝子と紡が範囲技、俺がブラッディボムスプラッシュを定期的に放って周囲に群がる魔物をどんどん削って行くけど沸きがきついぞ。

一体どうなってんだ?

『ボスに攻撃してる暇がねえ!』

『俺達のLvが足りねえって事かよ!』

『島主様、絆ちゃんのお兄さん、手加減せずに終わらせて下さい! 今の俺達にはきつい!』

『廃人様キャリーお願いするっすー!』

泣き言を言うプレイヤーが出てきたぞ!

おい前線組! 俺達にお株取られてどうするんだよ!

『あ、島主と思ったらロゼじゃん、サンキュー』

紡の元パーティーメンバーも善戦してるっぽいやりとりが聞こえて来る。

「絆ー紡、やっと合流出来たわね。しかっし……魔物の沸きが激しくなったわねープレイヤー全体でかなり押され気味になってきたわ」

「歯ごたえあって面白くなってきたー!」

「紡はそうでしょうよ。硝子さん、行ける?」

「なんとか……」

とはいえ、俺達もそこそこ被弾して来ている。

既に俺はシールドエネルギーが削りきられて何度かエネルギーにダメージを受けたりして居る。

まだ戦えるけど、継続して戦い続けるとそのうち装備が脱げて大幅弱体化するぞ。

奏姉さんの提案する陣形でサッサとボスの所まで行って攻撃しないとじり貧になるな。

『ぐああああああ!』

『あの地響き、近くに居るだけでダメージ受けるのかよ。運動神経良い奴がジャンプしまくって攻撃するしかねえけどきついじゃねえか』

『岩石投げをしてくるぞ!』

『弱体化ギミックとか無いのか!』

『シンプルにボス強いぞ!』

ボス戦をして居るプレイヤーがかなり手を焼いているっぽい。

これは……相当な被害が出そうだ。

「腕が鳴るねみんな」

で、追い込まれる事でワクワクするぞ! って目を輝かせる妹がここに居る。

いや、頼りになるんだけどさ。結構ヤバくないかこの流れ。

紡がこういう顔してる時って負け戦になる事がこのゲームをする前だとそこそこある。

「拙者達は戦えるでござるが……厳しそうでござる」

「ですね。自惚れるつもりは無いですがもっと倒さないと行けないかも知れないです」

「エンジョイ勢に厳しい現状だ……」

前線組が活躍所だ。頑張って戦って欲しい。と思ってしまう所だけど……俺達も最前線だって自覚を持って頑張らなきゃ行けないな。

『うわあああああああ!』

『悪い! ボス前戦闘していたPTだけど全滅した! フィールドが閉鎖してるからリスポーンで入れない!』

そうだった。ボスが出現すると死に戻りで戦場復帰出来なくなるんだった。

かなりヤバくなってきてないか?

ボス戦闘していたPT全滅ってだけで追い込まれてるぞ。

って所で俺達にPTチャットが飛んで来た。

「……そう」

この声はしぇりる! そういえば別行動してたんだった!

「しぇりる! 大丈夫か! 魔物の沸きが激しすぎて戦場は大混乱状態だが」

「しぇりるさん。無事ですか?」

「そう」

どうやらしぇりるの声音から無事ではあるっぽい。

「しぇりる殿、どこにいるでござる?」

「D……6」

そこそこ遠い挙げ句ボスから離れすぎてる! どうする?

しぇりるの身を考えたら合流するのが一番だけど、ボスを倒さないとじり貧でプレイヤーがどんどん戦場から追い出される!

挙げ句、戦場のプレイヤーが居なくなったらどうなる? 波の突破失敗となるぞ。

早く決断しないとヤバイ。

「絆、しぇりるちゃんを救助するために二手に別れるのはどう?」

「その辺りが妥当か、姉さん。誰が良いと思う?」

と、俺と姉さんがしぇりるを救助しようとPTで話をしていると。

「……問題無い」

しぇりるが平気そうに答える。いや、正確には……自信ありな感じか?

「設置が終わった。一気に行く」

「設置……? 一気に行くって――」

何を? と聞く前にしぇりるが喋る。

「fire!」

するとガシャガシャ! ドドドドド! っと音が周囲から鳴り響く。

「ギギギ!?」

「グギャアア!?」

「ギ――」

同時に周囲に矢の雨と言うしか無い代物が降り注ぎ、魔物達をハチの巣にして行く。

音の方を見渡すとそこには塔を壊す道中で見たバリスタが勝手に動いて周囲の魔物を撃ち抜いているのが確認出来る。

大砲もセットだ。

どんどんバリスタから弾が放たれて魔物の数が減っていっている。

おい! イカとかカニの残骸で作られた弾丸が混じってるぞ。

『な、なんだ!?』

『矢の雨が降ってるぞ!』

『た、助かった! じゃねえ! なんだこれ!?』

『バリスタが勝手に動いてる!』

『タレットじゃねコレ!?』

『なんか戦場で見ると思ってたけ何だコレ!? どんなギミックなんだ!?』

どうやら他のプレイヤー達も助けられたのかみんな揃って驚きの声を上げている。

『見た時使えるかと思ったけど引き金無くて弾も持ってなかったら無視してたけど、なんだ?』

『最初から設定されてたのか?』

『ユーザーに優しい運営、感謝します』

『いや、ここはユーザーにクリアさせろよ。攻略不可なのにゲーム続行の為にこんな八百長されても冷めるだろ』

……違う。

これは運営の仕組んだ代物じゃない。

第四波討伐

『いや、俺見たぞ。このタレット、島主パーティーの海女が凄い速度で組み立てて移動して行く姿』

『俺も見た! 何やってんだ? って思ったけど、布石だったのか』

『ちょっと待て! これって島主パーティーが仕組んだのか!?』

『どんだけタレット設置してんだよ!』

『朗報、何もしなくても魔物達がタレットに撃ち抜かれて倒れていく件』

『悲報、助かった俺達呆然とみてる無能』

チャットは困惑を極めてるぞ。

『次元ノガネーシャさん。タレットでハチの巣にされてて、針山みたいになってる』

『HPガリガリ削れてくぞ。半端ねえ』

周囲の魔物を蹴散らした所で硝子や姉さんが俺の方に顔を向ける。

「これってしぇりるちゃんがやったのよね?」

「たぶん……」

「そのようですね」

「絆……今どこ?」

しぇりるが聞いて来る。

「Bの3と4の間。ボス近く」

「そう……」

って声がしてしばらくするとしぇりるが騎乗ペットに乗って全速力でこっちにやってきて合流した。

『ざ、雑魚は蹴散らした! みんな! 針山みたいになってるけどボスに突撃だー!』

『お、おおおお!』

『いや、これ……もうMVPとか上位入賞無理じゃね?』

『おこぼれを貰えー!』

『開き直り大事! ラストアタックをもぎ取るのだー!』

ってプレイヤー達は体制をを立て直してボスに向かって突撃して行く。

「早く行く」

淡々としぇりるが針山に向かって指さすので俺達は言われるがまま、ボスへと向かい……次元ノガネーシャと名前が出ている動く針の山に向かって攻撃……もう瀕死じゃん。

今現在も周囲に設置されたバリスタや大砲がボスに向かって飛んで来ている。

「プ、プハオオオ……」

なんだこの状況と思いながら攻撃を数回入れて居る内に……ドスーン! っと次元ノガネーシャは地面に倒れた。

次元ノガネーシャの切ない声が酷く印象的だった。

そりゃあ……周囲に設置されたタレットでハチの巣にされたわけだし分からなくも無い。

サァア……っと空が晴れ上がり、波が終了したのを告げる。

本当にコレで良いのか?

「……!」

しぇりるがドヤ顔をしているが周囲のプレイヤーを含めて言葉を失うばかりだ。

「「「よ……よっしゃー?」」」

「なのか?」

「どうなってんだ? 誰か説明しろ」

割と本当にどうなってんだ?

――ディメンションウェーブ第四波討伐!

システムウィンドウが表示されて描かれている。

「一応……突破した事になるけど、なんか達成感が薄くなってしまったような……」

割と本当になんだこれ? って状況に戸惑いを隠せない。

『あのタレット、最初から置かれて無いし、地面から生えたもんじゃなかった』

『ああ、しかも弾にイカやカニ混じってたぞ』

『ゴミ飛ばしてなかったか? 大砲』

『何がどうなってんだ? また島主がやらかしたんだよな?』

俺がやらかしたってどういう表現だよ!

『絆ちゃんは無実でござる! だって呆然とみてたのを見かけたでござるー』

『みんなの絆ちゃんがここまで頭が回る仕掛けはしないよなー』

『ボスを釣り上げる所を見たかった』

『奇抜な釣りキボン』

それはそれでよく考えろ。ここは陸だ。俺を馬鹿にするな!

ボスを釣るってゾウの口に引っかけるにしても俺が来た時には針山だったよ!

周囲の期待が変な所に集まっている。

なんて内心愚痴を思っているところでリザルトが表示される。

与えダメージで俺は……12位か。

エネルギーブレイドとか闇影との連携スキルで結構稼げたけどやっぱり俺はそこまで貢献しきれてないな。

使用したエネルギーを考えると大規模イベントだからこそって感じのコストパフォーマンスだ。

闇影の方は2位……相変わらずの高火力だよな。

広範囲魔法だから数で稼いでいる強味だ。

「……」

ふんす! っとしぇりるが胸を張っている。

堂々の1位だもんな。合計ダメージもぶっちぎりだ。総取りとはこの事で他はドングリの背比べな次元となっている。

まあ……俺たちはそこそこ稼いでいたのでその中でも少しばかり上なんだけどさ。

1位な理由は戦場にタレットを無数に設置してぶっ放したのだから当然か?

「ペーン」

で、タレットをよく見るとペックルたちがなんか特定の場所に立ってタレットを動かすと追随するように無人のタレットが動いている。

あれってもしかして。

「おそらく何かしらのギミックで連鎖するようにしているでござるな。しぇりる殿はマシンーナリーを習得しているでござるから」

「……そう」

うわ、やるもんだな。

「戦場に無数のタレット設置ですか、すごいですね」

「絆を参考にした……」

「参考に? 何を?」

「大量設置」

「カニ籠でござるよ。絆殿が各地でばら撒くように設置していたのがアイデア元だとしぇりる殿は言いたいでござる」

闇影の補足にしぇりるがこくりと頷く。

「備えて大量に作った」

「イカやカニ、バリスタの矢も含めて色々と戦場を飛び交っていましたね」

「あはは、しぇりるちゃんも面白いことをするねー!」

紡がケラケラと笑っている。まあ……これも工夫次第の戦い方ってことになるのかね。

「本当、固定観念持ってると痛い目見るわ。私ももっと尖った副業を覚えた方がいいのかしらね」

姉さんも感心している。

確かに、ここはしぇりるの一本勝ちって感じだ。

ただ……生活の出費ランキングもぶっちぎりでお前だぞ。

「アルトが帰ってきたら謝らないとな。倉庫にあった金や物資が大量になくなってて悲鳴を上げていたぞ」

「……そう」

犯人はしぇりるだったというのは想像に容易い。

工房に籠って今回使うタレットを大量に作っていたのだろう。

どれだけ技能経験値を稼いだのか。

集められるだけ集めて色々と作る……ロミナ並みのマシンナリーの腕前をしぇりるは修練しているのかもしれない。

「お兄ちゃんは相変わらず総合順位はトップだね」

「しぇりるが1位じゃないんだな?」

なぜか総合順位で俺は前回と同じく1位を取っている。

なんでだ?

「……あれだけ荒稼ぎしてやることをやっていればそうなるかと思いますね」

姉さんと紡以外の全員が顔を逸らしながら頷いている。

「本当この子は、自分が何をしでかしていたのか自覚がないのが嘆かわしいわ」

「なんかあったっけ?」

「お兄ちゃんのカニ籠漁の結果でプレイヤーの汎用装備がどれだけ広まったのか考えた方がいいよ」

「アルト殿も大量に関わっているでござるがそこは不動でござるな」

あ、そういえばアルトの名前はあるかな?

そう思ったのだけどアルトは生活などの項目で名前が載ってなかった。

免除枠に入っているのだろうなぁ。

パッと見つけるのが大変なので後にするか。

「産業を生み出す火種に必ず関わりながら色々とやって波にも戦闘貢献していたら他のプレイヤーじゃ手も足も出ないわよ」

「そんなもんかねぇ」

「そもそもお兄ちゃん。ペックルを強化させる帽子を被っているだけで戦闘貢献度が勝手にあがるでしょ」

「でしょうね。かなり恵まれてるわよ。あら、私もかなり貢献扱いされてるわね」

姉さんが総合順位で12位にいる。一気に順位が跳ね上がったなぁ。

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