あれはもしや、ディメンションウェーブ第二波じゃないか?

「ま、まさか……」

なんだかんだでディメンションウェーブ第一波は楽しかった。

多少エネルギーを失うという問題もあったがエネルギーブレイドを手に入れるなど報酬も大きかったし、第二波も参加を決めていたのだが……。

「参加できない……?」

そんなバカな。

いや、ゲーム会社的には現在俺がここにいる事の方が問題なのかもしれない。

カルマーペングーの強さから適正じゃないのは間違いない。

自業自得とはいえ、不参加とは……。

「出せええええぇぇぇぇ! 俺は参加するんだー!」

俺は海に向かって吠えた。

イベント中なら出られるかも、と淡い期待をしたが木の船でも相変わらずだった。

そうして諦めて砂浜で波の方を眺めながら体育座りをしているとサンタ帽子のペックルがやって来て言った。

「大分開拓も進んできているペン」

「そうか」

「誰か会いたい人はいるペン?」

「そうだな……硝子に会いたいな」

「その人の名前は『硝子』で良いんだペン?」

「は?」

なんかペックルが不自然なセリフを吐いている。

何故サポートキャラクターが硝子の名前を聞きたがる。

……教えてみるか。

「函庭硝子って名前だ」

「詳しい文字を教えてほしいペン」

そういうとペックルはシステムウィンドウを表示させて文字の入力画面を出した。

俺は一時の期待を込めて『函庭硝子』と入力する。

「わかったペン。会える事を祈っているペン」

サンタ帽子のペックルはそう言うと踵を返して仕事に戻って行った。

なんだったんだ?

良く分からないが、どちらにしても俺はディメンシュンウェーブ第二波に参加できそうにない。

結局、その日はペックル用の餌と俺用のクエを釣っていると陽が沈んで行った。

磯女が来る日

「浜辺に何か流れ着いているペン」

翌朝の早朝、ペックルが俺を起こして言った。

いや、まあフラグがあれだけあったので気付いてはいたが、まだ眠い。

最近はほとんどの業務をペックルに任せて釣り生活していたので少々自堕落な生活をしていた。特に昨日はディメンションウェーブに参加できないという事で釣りしまくったしな。

そうこう思考しながら俺が最初に流れ着いた浜辺にやってきた。

そこには垂直にうつ伏せで倒れている人の姿があった。

「やべぇ、なんだこの倒れ方」

ご丁寧に手が起立状態で完全に垂直だ。エンピツみたい。

なんか面白いからスクリーンショットを撮っておこう。

俺は両手でカメラのポーズを取るとその人物を撮影して何枚か撮った。

もっと近付けないかな?

近付いてアップの写真を撮る。

というか、このポーズじゃ砂とか海水で窒息するんじゃないか?

ゲームだから大丈夫なのかもしれないけど。

よし、もう一枚。

しかし近付いた瞬間、足をつかまれた。

「ひぃっ! 磯女!?」

「誰が磯女ですか! って絆……さん?」

俺の足をつかんで磯女と化した硝子が戸惑いの言葉を漏らした。

つまり、昨日のペックルは仲間を呼び寄せる為のフラグか。

「絆さん! 今まで一体何をしていたんですか! 心配したんですからね……」

そう呟きながら俺の小さな身体を抱きしめる硝子。

今まで硝子達が何をしていたのか俺に解らない様に、硝子達もまた、俺が何をしていたのか知り得なかった、という事なのだろう。

それにしても漂流してから随分と硝子の声を聞いていなかったが、妙に落ち着くな。

なんでだろう。いや、まあ硝子は頼りになるし、信頼できる奴なのは事実だが。

「何をしていた……と言われると微妙に答えに臆するが、率直に開拓をしていた」

「開拓、ですか?」

「ああ、島から出られないんだ」

俺はこれまでの経緯を長々と語る。

漂流して一週間、皆を待ち続けた事、島から出られない事、開拓者の七つ道具を使って開拓を始めた事、ペックルというサポートキャラクターと開拓をしていた事、開拓が進んで比較的に生活が安定してきた事、昨日ペックルが硝子の名前を聞いてきた事。

これ等の話を続け様に話す。二週間近くを事実上一人で生活していた為、口数が増えたが、硝子は真剣に聞いてくれた。

「そうですか、そんな事が……絆さん」

「ん?」

「がんばりましたね」

「……ありがとう」

がんばったか、がんばってないかと言われれば、自分でもがんばったと思っている。

ペックルがいたけど、やはりNPCだ。一人で過ごすのはやっぱり寂しかった。

寂しさをごまかす様に開拓に身を投じて忙しい日々に意識を遠ざけたのも事実だ。

開拓系のゲームが特別好きだったのが救いだが、それでも硝子と会えて嬉しい。

「硝子達の方は今まで何をしていたんだ?」

「はい。私達はあれから第一都市で目覚めたのですが――」

幽霊船の戦いの後、硝子達は全員が無傷で第一都市ルロロナの砂浜に流れ着いたらしい。

よかった。実は硝子と闇影のエネルギーダメージが無いか心配していた。

最悪、現在の俺の様に全員がバラバラになっていた可能性も危惧していたが、幸いそういった事はなかったみたいだ。

それから硝子は皆と直に再会した訳だが、俺と連絡が取れない事に気付いた。

チャットを送っても。

『現在相手の電源が切れているか、電波の届かない所にいます』

と、ご丁寧に俺が硝子達に送ったチャットと別ヴァージョンが表示されたらしい。

おかしなチャットの言葉もそうだが、不可解な状況に硝子は皆と俺の探索に乗り出してくれたそうなのだが、尽く消息は掴めず、無駄に時間を浪費していく。

硝子曰く場所が海だっただけに、アルトが何かのイベントに巻き込まれているんじゃないか、と真相に近い憶測を提示して、海などを探索したが結果は今を見ればわかる。

そんな感じで経験値と過ぎて行く時間だけが肥大していった頃……ディメンションウェーブ第二波が発生した。

ちょっとした焦りが硝子の心を支配した頃、宿の自室に突如巨大な手の形をした海水が現れ必死の攻防も虚しく、気が付いたらここにいたという。

「なるほど、俺も第二波は見えたけど、このタイミングで呼んで悪かったな」

「いえ、絆さんが無事ならそれだけで良いのです」

「だけど第二波で硝子がいないのは結構な損失だろう。一波的な意味で」

「問題ありません。最初から参加するつもりはなかったのですから……」

「それはどういう……」

硝子は瞳を閉じて大事そうにアイテム欄から俺が貸したエネルギーブレイドの柄を握っていた。そうして俺にエネルギーブレイドを手渡すと話を再開する。

「絆さんに、これを返したかったんです」

「……硝子は相変わらずだな」

「はい! 私はそうそう変わりません」

何にしても元気そうでなによりだ。

カルミラ島に来てから皆の事だけは心残りだった。

船上戦闘スキルを未取得に回した俺的にどうなのかは知らないが。

「それで、どうしてディメンションウェーブに参加しないんだ?」

「もう……絆さんは、私に言わせるんですか?」

「……? まあ言いたくないなら、それで良いけど」

取り敢えず硝子だけとはいえ合流を果たせたのだから良いとするか。

ともかく再会祝いだ。昨日手に入れたクエを朝食にして祝いの席を築こう。硝子を連れて俺が寝泊りをしている拠点へと急ぐ。途中硝子がペックルの集団を見て身構えた。

「化け物!」

扇子二つを腰帯から瞬間的に取り出し、距離を取る。

「ペックルはモンスターじゃないペン」

「しゃべりました!」

やべぇ、反応が俺と同じだ。

まあ普通にペックル(笑)とかモンスターにしか見えないよな。

そもそも頭の悪い語尾に数だけが取り得のペックルだからな。

「えっと、こいつ等がさっき説明したサポートキャラだ」

「そ、そうなのですか。沢山いるので驚きました」

良く考えれば俺は見慣れたがこの光景は異質だよな……。

立場が同じなら硝子と同じ反応をしていた自信がある。

「でも凄いですね。この島では建物に巨大なペンギンがいるんですね」

「……なんだって?」

「ですから、あの魚の印が付いている建物に巨大な紫色のペンギンが……」

指を向けた方向を眺める。

そこにはペックルの食料が保存されている施設、食料庫がある。

硝子の話通り魚のマークをしており、あそこに魚を入れておくとオートでペックル達がやる気を回復させる施設なのだが……。

「施設が襲われているペン」

「サンタ帽子……そんな冷静に言われてもな……」

ペックルのリーダー的存在、サンタ帽子ペックルが淡々と言った。

個人的にはもう少し慌てて報告してほしかった。

しかしカルマーペングーは森から一歩も出てこなかったはずなんだが……。

すると珍絶景でも眺める様な硝子に視線がいく。

島に存在するプレイヤーの人数が増えたから?

ゲームではよくある事だが、参加人数が増えると難易度も上昇するという事があるんだが、もしかしたら今回のカルマーペングーはそれに該当するかもしれない。

「と、ともかく今は硝子先生がいるからな。あのデブ、絶対食ってやる」

「先生? なんですか、その悪意の篭った表現は」

「俺の中で硝子は先生なんだよ」

「……今度追求しますからね」

「と、ともかくアレを倒してくれないか? 俺一人じゃ厳しくてな」

「わかりました。絆さんといると、変わった事ばかり起こりますね」

そう言って楽しげに微笑んだ硝子。

別に好き好んであんなのと遭遇している訳ではないんだが。

ともあれ俺達は食料庫まで走り、襲撃しているカルマーペングーに戦いを挑んだ。

「行きます!」

ここまでの道で扇子を帯から抜いていた硝子は道中スキルをチャージしていた。

和服と扇子が幽霊船の頃より高価な物に変わっており、俺がいない間、色々あった事がうかがえる。先程俺を探す間、経験値が入ったと話していたので強くなったのだろう。

俺の方はカルミラ島で開拓をしていただけなので、何か置いて行かれた様な気がする。

「よし、俺も負けていられないな」

漂流して伝える事が叶わなかったが、硝子に強くなる方法を教えてもらう予定だった。

俺だってただ島で漂流生活をしていた訳じゃない。立派に生きていたんだ。

名前/絆†エクシード。

種族/魂人。

エネルギー/138630。

マナ/49070。

セリン/68780。

スキル/エネルギー生産力ⅩⅣ。

マナ生産力ⅩⅠ。

フィッシングマスタリーⅩ。

ヘイト&ルアーⅡ。

一本釣りⅠ。

解体マスタリーⅦ。

クレーバーⅤ。

スライスイングⅡ。

高速解体Ⅳ。

破壊マスタリーⅢ。

ファームマスタリーⅠ。

クッキングマスタリーⅣ。

元素変換Ⅱ。

俺の生活……生産系だ。わかっていたけどな。

ともかく俺は硝子から返してもらったエネルギーブレイドとケルベロススローターを握る。やはり俺の臨戦態勢と言えばこの装備だ。

いや、俺はこのままで良いのか?

本当にこの戦い方で硝子に今までがんばったと胸を張って瞳を交わす事ができるのか?

エネルギーブレイドの様な、ゴリ押しで満足して良いのか?

……違うだろう。

俺が目指すのはもっと強く、突飛に敵を倒す事だろう。

なんか違う気もするが、俺にはもっと違う戦い方があるはずだ。

そこでアイテム欄に入っている開拓者の七つ道具が目に入った。

こ、これだ!

「輪舞三ノ型・霞!」

カルマーペングーに霧の様な演出の四段打撃攻撃を硝子が命中させると同時に俺は突撃する。

「ドリル!」

鋭いモーター音を鳴らしながらカルマーペングーの脇腹をドリルで貫く。

なに、レベル4だ。多少はダメージだって期待できるはず。

それにドリルはまだ事実上未実装装備だぞ。俺の使う装備の中では威力がある。

「――!」

おお、カルマーピングーが少しひるんだ。

その隙に硝子が二つの扇子を使って、左右上下から攻撃を仕掛ける。以前よりも強くなった硝子の攻撃で後ろずさったカルマーペングーに再度ドリルを当てる。

やや卑怯な気もするが、今までの俺は常に卑怯だった気もするのでコレで良いと思う。

ともあれ、さすがは破壊武器に属する装備だ。

カルマーペングーのフリッパーに螺旋が巻き込まれて羽が抜け落ちる。

ダメージとしては期待して良いのではなかろうか。

簡単に表現するなら、波平おじさんの最後の希望にドリルを巻き込む様な物だ。

そんな感じの嫌がらせ……では無く、鋭い攻撃を繰り返すと意外にもあっさりカルマーペングーは大きな断末魔を上げて倒れた。

「攻撃は重いのですが、思いのほか行けましたね」

「そうだな。攻撃を受けなかったのは硝子のおかげだ」

なんだかんで俺は横からドリルで攻撃していただけだからな。

硝子はカルマーペングーの攻撃はスレスレの所で避けていた。

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