「わかってる。わかってるけど、さっきから何度も言って来てしつこいんだ」

「指示を出せば良いじゃないかい?」

「出しても建てられる見込みが立たないんだ。その前に建てた方が良い物があるだろ?」

「確かに……未知の設計図で良い物が出来るかもしれないしなぁ……同時建設は出来ないのかな?」

「出来なくはないけど……」

「ならとりあえず指示を出すのはどうだろう?」

「それなんだけど、大事業扱いで、大量のペックルを最低限割かないといけない。やっと回っている所にこんなのぶちこむと世話が非常に面倒になる」

「ふむ……物資調達と食糧問題、更に人員管理か……ペックル達を増やす手段は絆くんがどうにかしてくれているが、それ以外に問題があるね。私も出来る限りは手伝うが」

そこにしぇりるがやってきた。

おそらく休憩がてらって感じだろう。

「ショップ」

「ああ、店が開かれたみたいだな」

「誰か会いたい人がいるペン?」

ナイスタイミングとばかりにロミナがペックルに指を向ける。

「そろそろ城を建てようペン」

「誰を呼ぶか……」

ぶっちゃけダンジョン探索の方は硝子と紡の二人でサクサクと進んでもらっているから問題は無くなって来ている。

ダンジョン内で見つかったドロップ品とか素材でロミナが武具を作ってくれているからな。

この点で言えばロミナを呼んで大正解だった。あの時の俺は運が良いな。

戦闘的な問題は解消しているが、俺の知り合いと言うと奏姉さんと闇影くらいしか親しい相手はいない。

後は紡の周りにいたデスゲームごっこ連中。

……呼ぶ程仲良くないしな。

やはり闇影か?

「絆くん、呼ぶ人員を提案しても良いだろうか?」

「え? 良いけど……」

「なーに、この状況に適した人物を私は知っていてね。絆くんよりもペックル達の管理を上手くしてくれるだろうさ」

「はあ」

なんかロミナが若干邪悪そうな笑みをしている様な気がする。

ロミナの知り合いね。

俺がペックルの提案アイコンをロミナに弾いて渡す。

するとロミナはフレンド項目を出現させてコピーペーストをしながら俺に返した。

そこに載っていた名前は……。

アルトレーゼ

「アルト?」

そう言うとロミナは邪悪な笑みを浮かべ、しぇりるも若干不快そうな顔をしている。

一体どうしたんだ?

「私が前線組へ鍛冶をするのがしばらく嫌になったのは、彼の所為でね」

「そうなのか?」

初耳だ。

まあ、アイツはゲームが始まった瞬間から金稼ぎ第一主義だったし、金銭関係で揉めたとか、簡単に想像出来る。

船に不法侵入して情報収集に走る位だしな。

幽霊とか怖いのは嫌いらしいが。

「その原因が彼の紹介した頭のイカレタ前線組の連中だったのさ」

それもアルトが原因なのかよ!

正確にはその頭のイカレタ奴が原因なんだろうけどさ。

「私をNPC扱いする。横暴な態度で武器作りを強要する。挙句勝手に仲間扱いをして専用職人扱いだ」

ロミナは深くアルトを恨んでいるのか、目付きが険しい。

仲が悪かったのか?

というか、アルトとの接点が今一わからない。

どういう関係なんだろうか。

「船作りをさせられた。お金はもらったけど……」

しぇりるも思う所があったみたいだ。

そう言えば言ってたな。

しかし、普通は船を作らされた程度で恨み節は沸かないよな。

製造スキルを使って道具を作るのは製造系の醍醐味なんだし。

どんな事をさせたんだろうか……。

南国原住民スタイル

「しぇりるくんも思う所があったみたいだね」

なんかロミナとしぇりるが握手している。

共通の敵かな?

製造組合ががめつい商人に制裁を加える時が来た様だ。

「アルトくんは代理売りすると言って、断りも無しに私が打った武器を提示した金額の五割増しで転売する始末。金の匂いには敏感で、誰が呼んだか知らないけれど、彼は死の商人と呼ばれていたね」

「それを最初に言ったのは多分、俺かな」

「そうか。絆くんと私は実に気が合いそうだ」

ロミナはアルトの事が嫌いなのか?

いや、本当に嫌いならここに呼んだりはしないのか?

「いい加減、暴れ過ぎな気配があったから一旦呼び付けても良い頃合いだと私は思う」

「前線組へ色々と売りつけてるのもアルトなんじゃないの?」

「そうだろうね。ふふふ……私はその前線組とやらにも嫌がらせがしたいのさ。まあアルトくんも悪い話じゃないだろう。強引に一枚噛ませてあげようじゃないか」

「た、楽しくゲームしような?」

つまりアルトを含めて怒っていらっしゃるわけか。

というか……前線組ってどんな連中なんだ?

硝子も根に持っているし、死の踏切板制度の時もそうだったっけ。

感じが悪そうな連中なのかわかっていたけど、あれはアイツ等だけだと思っていた。

そう言った連中しかいないのか?

まあ……世の中には強ければ何をしても良いと勘違いしてる連中がいるとは聞いた事があるけど。

そもそもディメンションウェーブにPvPは無い。

いずれ何処かで実装されるかもしれないけど、今の所は無い。

そんな状態で高圧的に暴れると言うのもある意味凄いな。

悪い奴等が目立っているんだと思いたい。

若干痛い連中だったけどデスゲームごっこをしていた奴等は話が通じていたしな。

というか波のリザルトを見ると闇影とかは前線組でも無いのに好成績な訳だし。

どちらにしても人間の質か……。

ロミナの八つ当たりの犠牲にアルトをさせられると……自業自得みたいだし、俺達の船に密航していた事もある。

まあ、呼んでも良いか。

一応アイツも俺達のパーティーメンバーだしな。

「じゃあ要望通りアルトを呼ぶぞ」

名前入力を終えると、サンタ帽子ペックルは背を向ける。

「わかったペン。会える事を祈っているペン」

毎度おなじみの台詞だ。

「さて、アルトくんが来るという事で色々と準備をしなくてはな」

な、何をするつもりなんだろうか?

まあ死の商人が罰せられる時が来たという事かね。

その日の夕方、硝子達がインスタントダンジョンから帰って来た。

「お兄ちゃんただいまー」

「ただいま帰りました」

「ああ、おかえり」

「絆さん、ダンジョンの60階にある休憩スポットに地底湖がありました。中々幻想的で素敵な場所でしたよ」

なに!?

地底湖だと?

「硝子さん! そんな事、お兄ちゃんに言ったらダメだよ!」

紡が焦って硝子に注意する。

おい、なんで隠そうとするんだよ。

まあいい。

「ふむ……」

地底湖か。

かの牧場経営ゲームで200年プレイしていた俺の直感が告げている。

そこに主の気配あり。

しかもインスタントダンジョンという事は潜って釣り放題だ。

これは良い話を聞いた。

「えっと……もしかして失言でしたか?」

「うん。この目は地底湖に行って釣りをする事しか考えていない目だよ」

「釣りは俺のソウルライフ。タイミングも良いしな」

ダンジョン内で釣りが出来るなら上手く行けばペックルの食糧問題も一挙に解決できるかもしれない。

これは俺の趣味だけでなく、島の問題を解決する為でもあるんだ。

そう、俺の趣味だけじゃないんだ。

「そろそろ城を建てようペン」

またもサンタ帽子ペックルがぶっ放してくる。

いい加減黙れ! わかってるよ。

ともかく……地底湖か。

こりゃあ明日が楽しみだ。

なんで明日なのかって?

硝子達が休息を取らなきゃいけないからだし、アルトと話をしなきゃいけない。

大々的に潜る準備もしなきゃな。

そんな訳で釣り具は元より、キャンプ用品をロミナに作ってもらった。

翌朝の事。

ドンドコドンドコドンドンドン……。

軽快なリズムの音響が響く。

ロミナ達が作った原住民風の衣装と仮面、楽器類の音が海岸に木霊している。

「ヤーハー!」

「ヒーハー!」

「ホッホー!」

紡とロミナとしぇりるが妙なテンションで打ち合わせ中だ。

コイツ等、仲良いよな。

で、やはり海岸の波打ち際にはアルトが鉛筆の様に直立で横になっている。

どうにかならないのだろうか。

「よーし! 打ち合わせ完了。絆くん達、本当にこの原住民の衣装を着ないのかい?」

俺と硝子は参加を辞退した。

さすがにこの悪乗りにはなー……いや、楽しそうだとは思うんだけどさ。

それ以前に何故俺なら着ると思ったのか。

「まあ……」

「そこまでアルトさんにいたずらしたいのかと……理解に苦しむのですが……」

「硝子くん、君も言っていただろう? 前線組にやられた嫌がらせを」

「は、はい」

「私としぇりるくんはアルトにいたずらをして良い権利があるんだ。だからこうして遊ぶのだよ」

「な、なるほど……」

硝子が丸め込まれ掛けている。

まあ気持ちはわからないでもないが。

アルトも色々と過激な所があるしな。

「それではなんで紡さんも参加していらっしゃるのですか?」

「楽しそうじゃん」

あ、硝子が俺の顔を見る。

「紡がしなかったら俺が参加してるかな。踊りは槍を持ってリズムよくだぞ!」

ドンドコドンと俺は太鼓叩きを担当している予定だ。

なんだかんだでこういう悪ふざけは嫌いじゃない。

ゲームの強い姉と妹がいるのでアレだが、パーティーゲームなんかでは友情破壊型もそれなりにやってきたからな。

「うん!」

「迫真の演技でアルトを驚かすんだ!」

「絆さんと紡さんが姉妹なんだと確信しました」

おや? 何かわかる所でもあったかな?

だが、姉妹ではなく、兄弟な?

さて、撮影の方は既に終わらせてある。

若干今までの連中よりも距離があったけどさ。

後はアルトにばれない様に俺と硝子は大きな葉っぱで作られた囲いの中で太鼓をリズムよく叩き続ける。

この手の音楽系の技能が必要そうな楽器類だけど、ただ叩くだけなら技能Lvは不要っぽいな。

それっぽければ良いんだろう。

「では行くぞ。ヤーハー! エヌピーシーアツカイウガー!」

本当にその台詞で大丈夫なのか?

自分に対して嫌になったりしないか?

「It's purge for a mortal merchant!」

妙に発音良いな! しぇりる!

だが、それは英語だしバレるからやめろ!

「ウッホホー! ハッハッハー! イヤッホー!」

打ち合わせをしてこのテンポ。

俺達がやりたい事をやっているだけなのが一目でわかるな。

ネットゲームなんだから計画性も持とうぜ。

などと言うと俺自身が突っ込まれそうなので口には出さないでおこう。

「そろそろ城を建てようペン」

ペックルもしつこい!

今が面白い所なんだよ!

「う……」

ロミナ達の接近によってアルトの行動制限が解かれる。

「エヌピーシーアツカイウガー! ショウカイヒトエラベー!」

「ヒーハー!」

「ホッホッホー!」

起き上がるアルトを囲むようにリズムよく仮面を付けて南国原住民スタイルでロミナ達は喋り続ける。

原始人みたいに木の槍で囲んでいる訳で……。

「う、うわあああ! い、一体なんだ! 何が起こっているんだ!」

うん、普通に怖いと思う。

ちょっとやり過ぎなんじゃないかと思うレベルだ。

「バインバインド!」

「ソウソウ!」

「ハレホレサッサー!」

挙句器用にアルトをロープで囲い、悪魔の儀式をするかの様に設置してあった大きな鍋の方を指差す。

まるでこれから鍋にアルトを放り込んで調理するかのような雰囲気だ。

ドンドコドンドコと俺と硝子は隠れて太鼓を叩き続ける。

「き、君達は一体何者だ! 僕に一体何をするつもりなんだ! そもそも部屋で休息を取っていたはずのなのにどうして僕はこんな所に居るんだ!? だ、誰か助けてくれ!」

またえらく説明口調だな。

怪談

突然の事態にアルトは状況を把握する事が出来ず、目を白黒させながら三人に誘導されて鍋の方へと突き飛ばされて行く。

このゲーム、PvPは出来ないけど突き飛ばすとかは出来るんだよな。

まあVRで、しかもデータとはいえ生身の身体を動かすのに触れた際の衝撃が無いのは寂しい。

目の前で起こっている光景的に微妙なラインだけどな。

そもそもアルトってまともな戦闘をしてない商人だから腕力とか無いだろうし、話し合いが通じ無さそうな相手に恐怖で顔を引きつらせている。

ゲームの世界にいるんだって自覚があるのかな?

まあ寝起きでそんな判断が出来るかは不明だが。

「金なら幾らでも払う! だから助けてくれ!」

酷い命乞いだ……。

お前はどこの黒幕だよ。

絶対に銃とかで殺される流れだろ。

実は分かって言ってないか?

「ヤキマル、ベナ! オチトチ!」

「モビーディーック! エイハーブ!」

「モゲーレモゲー!」

「な、何に僕は巻き込まれているんだ! く……こんな事もあろうかと!」

あ、割と緊急時の知恵は働くみたいだ!

アルトが帰路の写本を取り出して掲げる。

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