姉さんだってそれなりに良い装備してるじゃん。
それと同じだろ。
「同じ事よ。釣りの場合は事前の道具と場所なんか加味されるでしょ。農業にも似た要素があるって事よ」
「それにしたって、それ相応のマスタリー覚えればヒントが提示されるでしょ」
「あんた。釣り場での釣り具厳選、スキルでやってたの?」
……やってないな。総当たりだ。
後は水族館とか図書館でのヒントを元にやってた。
まあ、スキルだけじゃどうにもならない所があるか。
「かといって農業で問題があるって何があったわけ?」
「想定より収穫少ないのと上手く実らないのじゃ」
「まあ……こんな砂漠じゃ農業なんて相当難しいと思うけどさ」
場所も悪いよな。
こんな所で何を植えろと言うのかって位、場所が劣悪だろう。
「他にも色々とのう。まずはそこの畑を見てくれんか?」
と、言われて俺は顔文字さんの案内で砂漠にある畑……不思議と農地はあるみたいだ。
「作物の成長はどんなものなんだ? カルミラ島の作物は数日で収穫出来たけど」
一応別枠で作物もある程度育ててはいたんだよな。
あくまでメインではなくサブって形でペックル達に任せきりにしてた。
「その辺りは同じじゃ。マイホームの家庭菜園でも同様じゃった」
日差しは強いけど夏の作物……きゅうりとトマトとナスの畑だ。
ちょっと近づいて様子を確認してみる。
枯れてるのが多くて、よろしくないな。
隣にあるのは白菜の畑っぽいけどこっちも発育が良くなくて収穫は出来る様な状態じゃない。
あ、スプリンクラーはあるみたいだ。
農業ゲームだとあると便利な品だよな。
罠カテゴリーみたいで狩猟具に統括されてしまったけれどカニ籠と同じく作成レシピが分かる。
ちょっと確認するとこの砂漠の拠点はオアシスがある。
そこから水が繋がっているっぽい。
きゅうり畑も確認。
発育不全ときゅうりが実らないままって感じか。
「……この砂漠みたいな場所でうどんこ病に覆われてるとはな」
「何かわかったのかの?」
「農業スキルを取っているならこの辺りはさすがにわかると思うけどな」
開拓地による開拓の七つ道具補正で俺も農業系は多少判断出来る。
まあ、別のゲーム知識は元より親の家庭菜園なんかでも知ってる程度の物でもあるけど。
「一部はそうじゃったが問題無く収穫出来ていたんじゃ」
ある程度は大雑把な判定で作物が実ってくれていたって事かね。
ただ、それにしたって畑がメチャクチャって印象しか無い。
悪い意味でリアルとゲームの差を見ている気がする。
考えてみればリアルなら特定の気候や場所、状況で発生しない病気でも、ゲームなら発生する場合があるよな。
白菜の畑も確認……枯れてるな。
試しに引っこ抜いて即座に畑に戻して原因判明。
「根こぶ病か」
トマトの方は……枯れてる茎を切断……ドロドロ。
「青枯病……」
「おお、よく分かるのう」
「なんて言うか素朴な疑問なんだけど……農業ってディメンションウェーブだとメインコンテンツなのかな? 釣りとのギャップを感じるんだけど」
釣りがサブのミニゲーム要素が強めで不安になってくる位、農業系の要素が複雑だ。
正直、リアル農業で発生しそうな作物の病気とか、土地の病気とか、そういうもん入れてくるなよ感まである。
制作者はゲーマーに何を求めているんだろうか。
「そうなのかの?」
「というか……なんでここまで畑が全滅状態なんだ? スキルLv不足とか?」
「わらわもよくわからん。植えても植えても枯れて育たないのじゃ。最初は上手く行っていたんじゃぞ。と、話が逸れておったな」
俺を召喚した理由は姉さん経由なのはわかる気もするか……たぶん、一番詳しそうって事で呼ばれたんだろう。
それ自体は問題ないんだけど……。
「嫌だなぁ……俺の事を敵視してる連中の手伝いとか」
釣りも出来ずに尻拭いは勘弁して欲しい。
「そこまで私等も鬼じゃないわよ」
「うむ」
どういう事?
いや、姉さんは普段、割と鬼な気もするとは言えない。
「もうおらんからな、アヤツら」
「え? 呼んだってさっき言ってなかった?」
「アヤツら、突然居なくなったのじゃ」
顔文字さんは経緯の続きを話し始めた。
ギスギスした関係のまま日は過ぎて行き、農業は細々だけど進めていて……日々どうにかしようと頑張っている所でこの前の波の予告が砂漠でも確認出来た。
すると再度、顔文字さんのギルドメンバーは発狂してイベントに参加出来ない事を顔文字さんに当たり散らした。
さすがに顔文字さんも心が折れてしまったとの話だ。
彼らとの和解をどうにかしたかったけれどギルドメンバーとの心は離れてしまっていた。
仕舞いにはみんな毎日罵り合っている始末。
概要だけだけど、本当辛いなその状況。
「もうわらわも手の施しようが無くてのう……まあ口だけで手が出ないゲームじゃからな。刃傷沙汰が無い分マシじゃが、そろそろ面倒になって来たと思っておったんじゃ」
これは大らかと言えば良いのか?
心が折れたとの話だが、顔文字さんって割と鋼のメンタルの持ち主なのかもしれない。
「で、その翌日の話じゃ。みんな揃って居なくなってしまったのじゃ。開拓地内ならチャットが届くはずなのに音信不通になってのう『この愚か者は電波の届かない所に居るので~』とな」
……その定型文、俺も聞いた覚えがあるな。
何かしらの要素で開拓地から出られたって事なのかな?
適した人材では無いと判断されたみたいな感じで。
どう管理しているのかは不明だけど、運営とかシステムが判断したって感じかな?
「すると最初のサンタ帽子ウサウニーが「誰か会いたい人はいるピョン?」と立て続けに聞いてくるようになっての。様子を見ながら呼ぶ事にしたんじゃ」
「結果、姉さんが呼ばれて俺が呼ばれた感じ?」
「そうなるわね。他にも何人かいるわよ。ノジャ子も気を利かせてディメンションウェーブイベント後に呼んだみたいだし、今度は相手も選んでいるから喧嘩もしてないわよ」
開拓失敗時のケアまで完備なのかな?
問題プレイヤーは解放されると……それもまた良い事なのかも知れない。
なら一安心。
「ただ、おぬしを呼ぶ時に他とは違う反応をサンタ帽子ウサウニーにされたぞ」
「へー……どんな?」
「『その人と巡り会うと他に会いたい数人と会えなくなるかもしれないピョン。それでも会いたいピョン?』 って言ってたわよ」
それってメッセージ的に召喚できる人数が減るって暗喩か?
俺は他の人よりコストが高い的な。
まあ島主だしなぁ。
いや……ユニークスキル持ちという可能性もあるな。
「俺を呼ぶ場合はコスト高めって感じっぽいけど呼んで良かったの?」
「そこはアンタの能力を加味して余るから良いでしょ」
ペックルを呼べば人材の不足分は補えるか。
「せめて硝子辺りは一緒に呼んで欲しかったけどな」
じゃないと心配しそうだし……硝子は。
隔離されるからなー開拓イベントだと。
「そこは流れ的にアンタを最初に呼んで、次に紡、硝子さんって感じで入力していくでしょ?」
「まあ姉さんのフレンド的にそうだろうな」
「アンタは私を呼ばなかったけどね。で、呼ぼうとしたんだけど呼べなかったのよね。その人とは巡り会えないピョンって、アンタの仲間を呼ぼうとしたけど全滅よ。最初に入力したアンタだけ呼べちゃったのよ」
農薬
「なんで?」
「さあ……既に開拓イベントに呼ばれたからフラグが立たなかったとかの推測になったわね」
あー……ありそうだな。考えて見ると俺は呼ぶ側で呼ばれた事は無かった。
コスト高くても俺は呼べるって事か。
まあいいや。事情はある程度分かった。
ギスギスもメンバー一新で無いならある程度は安心か。
……いや、そのフラグ理論が正しい場合、アルトはどこに行った?
まあいいか。
行方不明の理由が開拓イベントとは限らないしな。
アイツならどこでもそれなりに上手くやっているだろう。
「なんか他に良さそうな子いない? 呼んで無い子」
「姉さん、俺の様なコミュ障ボッチに何を期待しているんだよ」
闇影じゃないけど、思えば俺って繋がり少ないよな。
謎のファンクラブ会員程度しか後は知らん。
「本当……アンタはなんでそんなに活躍出来るのか不思議でしょうがないわ」
「それは自分でもそう思うよ。プレイヤースキルの必要なゲームで活躍出来たのは珍しいしな」
事実ではある。
しかしホームレスしてた人にそんな事言われたくないぞ。
「とにかく農業しなさい! 詳しいのはアンタだけなんだから!」
「俺は釣りをしたくて――あ……嫌じゃ! 野菜なんて摘みとうない! 農業なんてやりto night!」
「それは妾の口調じゃろ!」
俺が今やりたいのは釣りなのだアピール。
「あ……ってなによ。言う程嫌だと思ってないでしょ。アンタ、ウケ狙いで言ってるでしょ!」
まあ実はそうなんだよね。
基本的には釣りがメインだけど、硝子達との狩りもやっていた訳で……こういう場面で農業やろうぜって求められたら、別にやっても良いって思っている。
そもそも農業ならカニ籠と同じで、そこまで張り付いてなくても大丈夫だろうし。
「ウケ狙い……これこれよさぬか、ビッグブレイブペックル」
あ、顔文字さん、乗りが良いな。
俺の悪ふざけに便乗して姉さんを注意している。
せめてからかってやろうとしたのにネタを取られちゃったな。
う~ん、さすが大規模ギルドのマスターをしていただけはある。
ノリが良いというか、楽しそうな人だ。
「誰がビッグブレイブペックルよ!」
「姉さん、そこは『よさぬペン』だよ」
「あんた等、初対面の割に息が合ってるじゃないの……私で遊ぶんじゃないわよ。良いからやりなさい! ノジャ子も絆に教わって覚えなさい!」
「ラジャーなのじゃ! やりたかったから教わるのじゃ」
「しっかりと仕事したら絆。アンタは好きに釣りでもしてれば良いから。ここにライバル居ないし、何処かで釣りでもしてヌシでも釣って遊んでなさい」
「うぇーい」
しょうがないな。最低限顔文字さんに農業をたたき込もう。
まあ、やる気はありそうだし、戦闘ギルドのマスターやっていたくらいだ。覚えるのも早いだろう。
そしてこの地域に釣りのライバルは居ないので……少なくともオアシスとやらのヌシも狙える。
なので悪くない提案ではある。
「人員は様子を見つつ呼ばんと同じミスをしかねないのでな。呼べても今は様子見じゃ」
「わかったよ。とは言いつつ、植えてある作物が全滅に近いってのも逆に凄いよなぁ。まずは原因を特定しないといけないな」
畑を入念に確認……こう、パソコンが苦手な人みたいな色々と弄くった癖に勝手に壊れたとかぶちかまされるようなイラッとする要素を探すみたいな空気感がある。
顔文字さん、農業好きみたいだけど基礎知識が無さそうだ。
まあ、これが一般的な農業系のゲームに対する認識なのだからしょうがないんだけどさ。
んー……しかし、ここまで畑が壊滅してるってどういうことだ?
何処もレッドゾーンって感じでメチャクチャだ。
うどんこ病に根こぶ病、青枯病に発育不全……大豆畑もあるけど、こっちはダイズリゾクトニア根腐病とダイズ黒根腐病。
「何なのこの開拓地……汚染された土地で難易度マックス設定なの?」
「そんなに酷いの、絆?」
「酷いなんてもんじゃないよ。ぱっと見のゲーム性的に大豆畑なんて土地ひっくり返して全部滅却処理した方が早いんじゃないかな。病に感染した畑になってる」
「うはー……そりゃ凄いわね」
姉さん、よくわかってないな。
「むしろ絆。アンタ随分詳しいわね。想像以上だわ」
「そりゃあ色々とゲーム情報を調べてたらついでに覚えた感じだよ」
「アンタさ……大学、農業系行きなさいよ」
「嫌だよ。うちは農家じゃないじゃん」
そもそもな話、土地が無いでしょうが。
しかも儲からないって話で有名じゃん。
ちょっとリアルよりのゲームに詳しい程度で調子に乗って農家とかアホ過ぎでしょう。
「ともかく……ここまで畑の状態悪い原因って……顔文字さん、ここの作物、前は何植えてた?」
「ん? そりゃあ大豆畑は大豆じゃな。どれも収穫後に同じ物を植えるぞ。あ、ちゃんと肥料をやるのを知っておるぞ」
「となると連作障害が設定されてそうかな……後、ここまで細かい設定だと多分、植えてる距離が近い。肥料の件も肥料だけが全てじゃないと思う」
追肥とかあるけどさ。
肥料は一応農業系スキルであるもんな。
魚とか肥料に使えたし、オアシスで釣って支援って流れもありか。