「そうじゃな。もしかしたら絆が知っておるかもしれんし」

「何が?」

なんからるくの上司って人には事情があるっぽい。

というか……人がずいぶんと多そうで間違えそうで怖いな。

「ま、いいから付いてきな。絆の嬢ちゃん……籠をオアシスに設置するのは程々にな」

らるくに注意されたのでオアシスに手持ちのカニ籠を設置するのを切り上げる。

まあ、そこそこ設置できたか。

後で全部仕掛けておかないとな。ペックルの食糧確保に必要だ。

「あーい」

「当たり前にようにドサドサと設置してたわねー……唖然としたわ」

「手際が良かったのう」

「後何人いるの?」

「三人じゃよ。そう警戒しなくてもよいのじゃ」

俺、姉さん、顔文字さんにらるく……で、ほかに三人か。

合計七人この開拓地にいるって事ね。

増えるかは様子見って話だったな。

などと思いつつ俺はペックルの管理をしながららるくの後に着いていった。

で、案内されたのは開拓地にある工房の一つだな。

ロミナの鍛冶系ではなく医療系の工房のようだ。

そこに居たのは薄茶色の髪色の錬金術師風スタイルの20代後半から30代前半くらいの男性、野性味のあるらるくとは異なり青年実業家な出で立ちかな?

「おや? みんな揃って来たという事は例の彼女が来たようだね」

青年実業家風の男性が俺達に気付いて爽やかな笑顔で近づいて来る。

「ええ、奏の嬢ちゃんの弟にしてカルミラ島の島主である絆の嬢ちゃんでさ。ブレイブウサウニーはどうやらブレイブペックルとシナジーが発生してワラの嬢ちゃんの言うことを聞くようになったそうです」

「そうかいそうかい。それは助かるね」

と、話をしている所で顔文字さんが振り返って男性に手を差し出しながら紹介をする。

「こやつはクレイさん。正式名はオルトクレイという名前なんじゃが愛称がそなたの知っている某商人と似ているという事で、後半の方を名乗るようにしているとの話じゃ」

オルト……ああ、アルトが有名で愛称がマイナスイメージがついちゃうって感じかな?

アイツ、悪い意味で有名過ぎるよな。

「商人界隈じゃ有名なんだぜ? クレイグループってな」

「はは、彼の方が手広く手段を選ばずにやっているお陰で二番手に甘んじているけどね」

ああ、顔文字さんにとってのアルトポジの商人って事かな?

「戦闘は魔法をメインにしていて、サブで商売……錬金系と機械系を浅く広くやっているよ」

悲劇のサプライズ

「紹介された通り島主の絆だ。これからよろしくお願いします。商人が開拓地に呼ばれたら困りそうだけど大丈夫なのか?」

「商売は趣味というか、癖でやってしまっているだけだから気にしなくて良い所かな。自然と目がついてしまってお金が貯まる形なだけさ」

アルトとは違って健全な商売をしてるのかな?

何だろう。そこはかとなくお金には困って無い金持ちな雰囲気がある気がする。

アルトを成金だとするなら、こっちは本物なのかもしれない。

がっついていないタイプと表現するのが適切か。

「そうそう、このような場所であるのだけど出会う人に尋ねている話があるのだけど答えてもらって良いかい? 君は島主だから顔も広そうだ」

「いやー……大して広くないと思うけど」

やっぱり思うけど、俺って人との繋がり少ないんだよなー。

硝子達以外とまともにパーティー組んだ事無いしアルトとロミナに領地経営関連も投げっぱなし、商売も裏方担当でまともに人と話してない。

人手が欲しかったらペックルを呼んでどうにかしてたし。

「本当、なんでアンタはこのゲームで成功してるのか不思議よね」

「それは俺も自覚してる」

たまたまゲームと波長があったというか運が良いだけだと思うほかない。

「ともかく、俺に尋ねる話って?」

「ああ。ミリー……件の彼が来てるよ」

「はーい」

ってクレイさんに呼ばれて工房の奥の方から紫色で長髪な成人女性のプレイヤーがやってくる。

紫色の髪色って描き方が悪いとケバい印象になる場合があるんだけど、この人のキャラデザはそんなケバい感じがせず純粋に美人な感じ。

結構作り込みがあるのではないだろうか?

まあ、ゲームだから美人なんだけど出で立ちからすると魔法使い系かな?

ドレス装備で中々良い装備をしてる。

「妻のミリーだ。ミリー、彼が奏さんの弟で有名な絆さん」

この人がクレイさんのリアル妻かー。

しかしカップル多いなぁ。

顔文字さんも考えたもんだ。

俺の勝手なイメージだが、リアルで結婚していたり、付き合っていたりする人達ってそれなりにコミュ能力が高くて、精神年齢が高そうだよな。

実際はどうなのか知らないけどさ。

きっと以前のギルドメンバーみたいな幼稚な連中を避ける為の人選なんだろう。

「このゲーム内ではミリーって名前でプレイをしているわ。よろしく。戦闘はクレイと同じく魔法系でサブは鑑定を携わっているわ」

凄くわかりやすい説明だった。

あれだ。初対面の人でもコレが出来るよって事を自己紹介してるのかな?

臨時パーティー馴れしてるって印象だ。

「えっと絆さんでしたね」

「よろしく……で、俺に尋ねたい事って?」

出会う人に尋ねているらしいけど、一体何を聞きたいのだろうか?

このゲームで上手くやる方法とかならなんとなく程度は説明出来るかもだけど、闇影達の反応が悪くて教えづらいんだよな。

「クレイ達の話はわらわ達も知っておる。らるく達がリアル繋がりで呼ばれたのもそうじゃったな」

「ああ。絆の嬢ちゃんも話だけでも聞いてやってくれや」

「良いけど、何?」

「ああ、実は私たちには幼い娘が居てね。日々仕事が忙しくて滅多に休日一緒に居られる事がなく――」

と、クレイさん達は自らの事情を説明し始めた。

なんでもクレイさんのリアルは、らるくの説明通り会社の重役で夫婦揃って会社の為に色々と飛び回って休む暇が無いそうだ。

で、クレイさん達には大切な娘というものがおり、親子関係は良好であるそうだった。

ただ忙しい所為で1日に一緒に居られる時間というのは少なく、電話やチャットで僅かな時間しか話が出来ない日なんかも多かったらしい。

子供の教育は専属の教師やベビーシッターなんかに任せているとか……何処の海外の話だろうか?

ともかく、そんな忙しい中でどうにか娘と一緒の時間を作りたいとクレイさん達は考えていた所でこのセカンドライフプロジェクトの話が舞い込んで来た。

娘にも一緒に参加してゲーム内時間で数年。家族水入らずでゲームを楽しみつつ第二の人生遊ぼう! っと話を纏めていたんだそうだ。

その娘も大層喜んで笑顔で頷いて参加日を指折り数えていたらしい。

まあ金持ちなら参加権を容易く手に入れられるよな。

高いと言っても一般市民でも頑張れば参加出来る訳だし。

なるほど……忙しくて親子の時間が取れない家庭にとってこのゲームは親子の仲を育むのに非常に向いているという事なのか。

「前提はわかったけど、なんでそんな事情を俺に?」

「みんなそう思うわよね」

リアル金持ちって話をするのも中々に勇気がいるものだとは思うけどさ。

というか……件の娘は何処だ?

確か俺、姉さん、顔文字さんにらるくで残り三人だろ?

クレイさんにミリーさんとなると、らるくの彼女で埋まっちゃわないか?

「ああ……ここまでは良かったのだけど我が社のイベントプランナーがサプライズを挟んだ方が良いと提案してきてね」

ミリーさんがオヨヨ……とばかりに顔に手を当てている。

……なんか嫌な空気の流れがしてきたぞぉ。

「私も彼女も娘を驚かせつつ喜ばせようとね。外せない仕事が入ってしまったと娘に嘘を付き、勿体ないので私たちが雇用したゲームが上手なボディガードと参加してくれと手配し、ゲーム内で嘘だと説明してから楽しもうとしたんだ」

「このキャラクターも娘が私たちが使うようにって作ってくれたもので……」

あっ! 察し……って感じで後の展開が読めた。

「このゲームにログインしているのまでは私たちも隣のカプセルで確認したんだ」

「だけどゲーム内でログインしているはずのキャラクターは……その。メルというキャラクターは別人が使って居て……話によると参加権をタダで貰う代わりにこのキャラクターでログインして欲しいとネットで取引したそうなの」

あー……御付きのボディガードと接待ネトゲを数年するなんて嫌って形で別に作ったキャラクターで監視の目をくぐり抜けちゃったのね。

「ああ……あの人見知りをするあの子がこのゲーム内で一人でいると思うと胸が締め付けられるわ……」

「どうにかして探し出し事情を説明して、当初の予定通りに過ごしたいんだ。だから私たちは娘を探しているんだ」

なんていうか……悲しい入れ違いというべきなのかなー……最初からサプライズなんてせずに娘と意思疎通してゲームにログインすればこんな事にならずに済んだものを。

このゲームが始まってから既に数ヶ月も経過している訳だし……。

飢えて死ぬとかはないから物理的に死ぬ事は無いはずだ。

だが、敢えて言わせて貰おう。

「やはりサプライズは悲劇しか生まないんだ」

「そうね。サプライズは碌な結果にならないわ」

「本当にな」

俺と姉さんが口を揃えて告げる。

無能なのはそのイベントプランナーだな。

娘側の制御がまるで出来ていない。

こういうのはサプライズされる側が察している位が丁度良いんだ。

「なんか言葉の重みがなかったか? 絆の嬢ちゃん達」

「エクシード姉妹に一体何があったのかのう。ドッキリは古いが業界でもあったイベントじゃろうに」

そりゃあイベント大好き遊び人である姉と妹がいる我が家がサプライズなイベントを計画しないはずはない。

結果として主賓を引きつけておかない準備は、本末転倒な結果になる。

誕生日パーティーを計画した所で、本人が友達に祝われて帰ってこないとかな。

「ともかく件の娘さんが行方知れずだから知らないか? って話な訳か」

「そうだね。君ほどの有名プレイヤーなら娘を知らないかとね。ついでに何かあった際に探している人がいると広めて欲しいんだ。もしかしたら娘の耳に入るかも知れないからね」

会社の権力とか使えないなら人との繋がりで探そうって事ね。

そういうのって、アルトとかロミナ、それこそ部下であるらるく辺りが得意としてそうな話だけどな。

まあ全員、この情報を知ってそうだ。

「人捜ししてるのにこんな所に呼ばれちゃ本末転倒では?」

隔離された場所にいるって件の娘を探すのには向いてないだろう。

呼んだら怒る筆頭ではないか?

「既に己の手を伸ばせるだけ伸ばしているからね。既存の手段でダメな以上、娘の耳に入るようにこう言ったイベントを超えた結果で名を売って、広報したいのさ。だからノジャさんに繋がるよう、彼女のパーティーメンバーにお願いしておいたのさ」

つまる所、知り合いの顔文字さんが既に何かのイベントに巻き込まれている事を外部にいる時点で察していたのか。

中々上手い事を考えたなぁ。

確かに開拓地のお偉いさんともなれば娘さん発見に近づくはずだ。

「仲間には呼んだ直後に罵倒されたがの。クレイとミリーを呼べとは言われたからウサウニーが次に言うまで待っておったのじゃ」

本人がイベントクリア時のアルトみたいに商人として領地の顔役になることを前提に取引していたのか。

カルミラ島の立地的な感じで。

アルトもクレイさんの頼みを聞いて娘捜しをしてやれば……アイツ、金儲け第一主義だからこう言った文字通り砂漠で無くした宝石を探すみたいな途方もない慈善事業はやらないか。

優等生

「まあ……話はわかったよ。で、その娘ってどんな特徴があるの? 外見とかで特定は出来ないから性格面での判断材料として欲しいんだけど」

「本名を語って探すのは良くないと注意されてね、性格面で話すと人見知りをする子だよ」

「本を読むのが好きで学校の成績は良かったわ。映画鑑賞もよくしてたわ。想像力も豊かで将来有望だって私たちは思っているわ」

人見知りで物語や映画鑑賞をしている。

「楽器も演奏会が出来る程には習い事に力を入れていたの」

「ゲームもとても上手だったわ。何度も同じゲームをして縛りプレイにまで手を出すほどだったのを私も知っているわ。私も幼い頃はゲームをしていたのよ」

「私たちのこのキャラクターもゲームにINする前の娘が語って居た造形に近づけるように努めているんだよ。このオルトクレイは凄腕軍師で錬金術と発明を嗜む最強の魔法使いのお父さんだそうで……」

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