「まずブレイブウサウニーの特徴じゃが、女性プレイヤーの命令しか聞かん」
「女性プレイヤー?」
「うむ」
俺と顔文字さんと姉さんの間に沈黙が支配する。
女性の命令しか聞かないウサウニー……なんてエロウサギチックなウサウニーなんだ?
「俺の場合はどうなんだ?」
オープンネカマを自称する俺はこのウサウニーからするとどっちにカテゴリーするのだろう?
「生憎堂々とネカマを自称するプレイヤーは少ないので判断できん所じゃが、判定はアバター設定時のものだと思うのじゃ」
まあ、中身まで判断してきたら嫌だよな。
第二の人生、女キャラクターで綺麗な服を着たいってプレイヤーもいるだろう。
あれだ。ほかのネットゲームでもネカマって一定数いるのと同じ感じ、それでなくても画面に映るアバターは女の子って設定している人。結果、ネカマになる人も多い。
ん? なんで聞いてくれないんだ?
顔文字さんは幼女型のアバターだぞ? 女アバターの話は聞くんじゃなかったっけ?
「このブレイブウサウニーなんじゃがストレスゲージの上りが早いというのはペックルと同じなのじゃろうな。それだけのスペックを所持しておる。で、当初の問題としてなんじゃがストレスが50%を超えると女性プレイヤーを豚と罵り今度は男性プレイヤーの命令しか聞かなくなるのじゃ。その際に語尾がデスピョンに変わる」
おいおい。それって激しく危ないウサウニーじゃないか?
主に性別に敏感な層とかの関係でさ。
「厄介ね……つまり何か作業をさせて50%を超えたらノジャ子の命令を聞かなくなるって事でしょ」
「そうなるのう……しかも勝手に作業をするという厄介な性質まで持っておってのう」
……50%以上になると顔文字さんの命令を受け付けなくなり、しかも勝手に動くという厄介仕様。
開拓仲間が協力的なら男性が命令して別の作業をしてもらうなり待機して貰えば良いけど、顔文字さんの話じゃ協力してくれなかったんだよな?
「前のメンバーも敢えてカルマー化させて戦っておった。カルマー化しやすい筆頭なのでできる限り50%以下にして運用しておったんじゃ」
だよな……カモとはこの事とばかりに日々ブレイブウサウニーはカルマー化させられていたと。
ん?
「ブレイブウサウニーのストレスゲージが100%になるとカルマーで良いのか?」
ブレイブペックルは100%になった際はラースペングーに変化したぞ?
「そうじゃな。ちなみにわらわは島主達の開拓情報は聞いておったぞ。ダンジョン内で赤髪の人形を見つけてブレイブペックルに使ったとの話をの」
「ああ……見つけてはいたのか」
自称前線組の戦闘マニアな連中だからダンジョン攻略はしっかりとやっていたわけね。
開拓はしないがダンジョンで後れを取り戻したいと躍起になっていたようだけど……それであの赤髪人形は確保か。
「それじゃあ問題はかなり解決してるんじゃない? 特殊変化したウサウニーを倒したんでしょ?」
「うむ……ラストラビットという魅了の状態異常をばら撒く厄介なボスは倒したのじゃ。取り巻きにダークフィロリアルを無数に呼び出してさすがのアヤツ等も一回目は敗走してブチ切れておったよ」
わー……状態異常をばら撒く系のボスとか厄介だな。
しかも取り巻き召喚……無数って所が厄介だな。
「俺たちの時は一匹だったけどなーダークフィロリアル」
魅了の状態異常か。
俺たちだと対策なんてまともに出来ず瓦解してそう。
「ギミックが色々と違うのね」
「アルトがその辺り、図書館で調べてたな」
この辺りのフレーバーテキストはアルトの方が詳しかったんだよな……。
「今なら少しは分かるのう。どうやらブレイブウサウニーの面倒な過去が関わっているようじゃ。赤髪の人形のキャラとの因縁も深いようじゃな」
「何にしてもこうして戻ってきてるってことは倒せたんだろ?」
「そうじゃな。その際にブレイブペックルが背負っているぬいぐるみと同様の品をドロップしてカルマー化は抑えられるようになり、ストレスの増加は軽減したんじゃ」
それならある程度どうにかなりそうだけどな。
ブレイブウサウニーは特に問題なく開拓を促進できるって事だろうし。
なんて思いながらブレイブウサウニーが装備しているアクセサリーのぬいぐるみを確認する。
「……ブレイブペックルが騎乗ペットで移動する際の生き物にそっくりなぬいぐるみだな」
そう、ブレイブウサウニーが背負っているぬいぐるみはブレイブペックルの騎乗ペットにそっくりだった。
色合いから何まで同じだ。
「フィロぬいぐるみというものじゃったな。どうやらとても大切な存在らしくての」
「ブレイブペックルは乗り物にしてるけどな」
どんな背後設定なのかちょっと気になってくるな。
「とにかく、それなら問題はなさそうだけど……」
「ストレスの増加は緩やかになったが、確定で女性プレイヤーの言葉を聞かなくなるようになったんじゃよ。80%を超えると休息をとってくれるがの」
……全く変わらない所か言う事を全く効かなくなったとか最悪だ。
ブレイブペックルの方が扱いやすいかもしれない。
「しかも気を利かせるつもりなのか活発に動くようになってしまってのう……デスピョン言っている時が一番怖いのじゃ」
相変わらずストレスゲージでの台詞変化は据え置きで発生すると……強化アクセサリーが手に入っても厄介なユニットなんだな。
そのブレイブウサウニーがブレイブペックルと何か反応をしていると。
「だから分かったペン? 主人の言う事には従うペンよ」
「わかりましたデスピョン! 主人の命令にこれから従うデスピョン!」
ってブレイブウサウニーがブレイブペックルに敬礼してから顔文字さんに頭を下げている。
「おや? おお……ブレイブウサウニーに命令を与えることができるようになったようじゃぞ」
ほう……こんなシナジー効果があるのか。
ブレイブペックルと遭遇することで運用が難しかったブレイブウサウニーが主人の命令を聞くようになったと。
「なら幸先はよさそうだな」
「そうじゃな。とはいえ、新たに呼んだ開拓仲間に委託させていたので問題は解決しておったがな」
ああ……男性プレイヤーの命令は聞くんだったっけ。
なら協力的なプレイヤーがいれば運用はそこまで問題なかったか。
とりあえずササっと籠をオアシスに設置しておこう。
終わったら釣りをするかな?
って思っているとブレイブウサウニーを追いかけてきたらしき人が一人やってくる。
「おーい。ワラの嬢ちゃん。そっちにブレイブウサウニー行かなかったかー?」
「来たぞ、らるく。紹介するのじゃ。こっちが昨日話した通り、奏の弟である絆じゃ」
そこにやってきたのは……こう、20代中盤くらいの頼りになりそうな兄貴分なキャラクター外見をしている男性プレイヤーだった。
髪は短髪の逆毛スタイルで筋肉もそこそこ……熟練の冒険者って出で立ちだ。
「おっす! 俺の名前はらるくだ。開拓地に呼ばれたって事みたいだし、これからよろしくな。奏の嬢ちゃんの話だと農業が得意だって話だったな。釣りも農業もできるってすげえな」
クエストマニア
「あ、どうも。姉さんと妹にこんなアバターと名前を付けられてINすることになった絆です」
「ははは、してやられたって奴だな。イベントの度に名を聞いたからこっちは知ってるって感じだぜ」
へー……こんな人いたんだなー。
「やー絆の嬢ちゃんの所は毎度毎度イベントで大活躍ですげーよな。近々話がしたいと思ってた所だったぜ」
「はあ……」
軽く握手をした後、親しげに肩を叩かれる。
馴れ馴れしいけど、自然と不快に思えないのは……なんか頼りになりそうな雰囲気の所為だろうか?
「そんで、ブレイブウサウニーはどうなってんだ?」
「うむ。どうも絆が呼び出したブレイブペックルと出会うことでわらわの命令を聞くようになったようじゃ」
「マジ!? あー! 見たかったその光景をよー! もっと急いで追いかけた方がよかったぜ!」
と、らるくは心底悔し気にしている。
なんだ? そこまでしてみたい光景か?
「らるくのプレイスタイルはクエストやイベント重視なんじゃ。隠されたクエストやイベントを隈なく探してゲームを満喫したいそうじゃよ」
俺が小首を傾げていると顔文字さんが事情を説明してくれた。
クエストを重視のプレイヤーか……そういったプレイスタイルもあるんだな。
世界観を知るって意味だと一番ゲームを楽しんでそうな人だな。
俺の場合は釣りメインでクエスト関連とかは人任せだし、受注は硝子や紡に任せっぱなしだった。
「ミカカゲとかクエストだらけで楽しんでそう」
「ああ、確かにたくさんあったな。お使いが多いからもっと掘り下げたイベントがやりたかったけどよ。そういや絆の嬢ちゃんが港でブルーシャークのヌシを釣ったって話だったよな。遠目で見てたぜ」
あの時の観衆に紛れていたのか……。
「何かあったら是非俺を誘ってくれよな? 絆の嬢ちゃんはワラの嬢ちゃんと同じく領地持ちだからいろんなイベントに出会ってそうだからよ」
クエストマニアって事なのかねー。
「このらるくお兄さんに頼ってくれて良いんだぜ。この開拓地に来たのは俺が先だからよ」
「そうね。ほんの少しだけ先よねー。文字通り数時間ほどね」
「奏の嬢ちゃん。そこは少し気を使ってくれていいんじゃねえか?」
ああ……俺とほぼ同時期に呼ばれたのね。
「絆、このらるくさんは紡と同じく鎌系武器の使い手で戦闘メインよ」
「腕は確かじゃな。時々一緒に臨時PTを組んだものじゃ」
「へー……良かったな。俺はネカマだけどこんな外界と隔絶された所で女性プレイヤーを囲ってハーレムだぞ」
アルトを呼んだ時に行った冗談をらるくにぶつけてみよう。
現状だと周囲のプレイヤーを見ればある意味ハーレムだ。
「おいおい。勘弁してくれよ。俺は少ない休暇を彼女と満喫するためにこのゲームに参加したんだぜ? ハーレムなんて楽しむつもりはねえよ」
「ああ、彼女いるんだ」
「ちなみに件の彼女も一緒に呼んだんじゃ」
「絆、弄ろうと思ったようだけどそううまく行かないわよ」
姉さんがしてやったりって顔をして俺を挑発している。
「まあ姉さんほど弄れないってのはわかったよ」
「ちょっと! 絆!」
ここ最近の姉さんは割と冗談でからかわれるポジにいるのは間違いないだろうに。
「場所が場所だから手に職を覚えようとは思ってるぜ。相方と一緒に細工をやるつもりだからよ。とはいっても相方の方がスキルLv高いけどな」
戦闘メインで細工をやろうって人なのか。
で、本題はクエストやイベントを体験したいと。
「つまり本来はこのらるくさんに頼んでブレイブウサウニーの世話をしてもらおうって思ってた感じ?」
「いや? そこはー……まあ、ちょっとな」
歯切れ悪い返事で、らるくは頭を掻きながら答える。
何? こういう細かいの苦手な感じだろうか?
あ、でも細工を覚えようって流れらしいから違うのか?
「頭の上がらない人に手伝いを頼まれたという事じゃったな」
「そーだよ。ワラの嬢ちゃん」
さっきから自然と流してたけどらるくはどうやら人を名前プラス嬢ちゃんと付けるスタンスらしい。
で、顔文字さんはワラの嬢ちゃん……ああ、プギャーって呼んだりノジャって呼ぶのとは別の個性を意識したのかな?
笑ってるって所からかな? Wを草生えるとかワラって言ったりするし。
「頭上がらない人?」
「直ぐに会うことになるけどー……ぶっちゃけるとリアル会社の重役、ゲーム休暇の申請を認められてて取ったらまさかまずないって招集をされちまったんだよ」
へー……そんな許可してくれる会社あるんだな。
懐が深いというのかねー。
あれかな? 休暇をやるからゲーム内で接待しろ的な。
そっちだととんだブラックに変貌するんだけどさ。
「ホワイト? ブラック?」
ちょっと気になるので聞いてみよう。
「ホワイト。圧迫じゃなく単純に協力を頼まれてるだけだっつーの」
「らるくを呼んだのはそのフレンドの提案じゃよ」
「私がアンタを呼んだのと同じリクエストでね」
へー……そうなのか。
ゲームでもリアルの知り合いに振り回されるって大変だよな。
「俺の事情は良いんだよ。ともかくブレイブウサウニーをワラの嬢ちゃんが扱えるってんならそれでいいって話だな」
「そうじゃな。色々と助かりそうじゃ」
「とりあえずよー絆の嬢ちゃんにみんなを紹介するのが良いんじゃねえのか?」