俺は150セリンを支払うと部屋の鍵をもらって部屋に向かう。

尚、宿屋は金さえ払っていれば24時間いつでも使えるらしい。つまり宿で一度休んだ後買い物に行く、なんて事もできる。まるで旅行に来た様な気分だ。

ともあれ俺は宿の内装を眺める。

客は一人もいない。まあゲーム開始初日にこんな早くから宿を取っている人は少ないか。

俺が調べた店の中では、まあ普通のホテルって感じだ。一番安い店だと壁にヒビが入っていた。どういう使用用途なんだろうか。

「ここか」

鍵に『101』という番号が書かれた鍵を鍵穴に差し込んで扉を開く。

部屋は普通の部屋だった。

リアルのホテルと比べると若干狭いが想像の範囲内だ。

俺はベッドに腰掛ける。俺の部屋のベッド位には柔らかい。

悪い言い方をすればホテルのベッドとしてはふかふか感が足りない。

まあ150セリンなんてはした金で止まれる宿だからな。

「……とりあえず寝よう」

服と靴を着たまま寝るのは生活習慣的に躊躇われる。

俺は靴をその辺に放り出し、服を脱いだ。

すると下着姿の幼女が。

――

――――

――――――

『おっとそれをはずすなんてとんでもない』

魔が差した。

答えだけ述べると下着より先にはなれなかった。まあ普通に全年齢のゲームでそんなやらしいシステム内蔵している訳が無いよな。

「ちっ」

別にそれ程気にしている訳では無いが半ば冗談みたいな舌打ちをする。どうでも良いが当初の予定通りベッドで横になる。これまた俺の部屋と同じ位の暖かさの掛け毛布を掛けて目を閉じた。

すると睡眠薬でも入っているみたいに眠くなってきた。

もしかしたらシステムとして眠り易くしてあるのかもしれない。

現実でもコレ位寝付きが良ければ楽なんだがな。

なんてぼんやりとした思考の中で考えていると、いつのまにか俺の意識は完全に途切れていった。

リサイクル

「ふぁ……」

随分と深く眠っていた。

こんなに気持ち良く眠れたのは何年振りだろうか。

ヴァーチャルドラックなんて最近では珍しくもない話だが、ゲーム内でこんなに気持ち良く眠れるなら、これだけで商売になるんじゃなかろうか。

えっとどれ位眠っていたんだ?

メニューカーソルに付属されている時計を眺めると22・07と表示されていた。

六時間位眠っていた計算か。

窓を眺めると外は陽が落ちて暗くなっている。

「さて、フィッシングマスタリーを取得しとくか」

名前/絆†エクシード。

種族/魂人。

エネルギー/2820。

マナ/70。

セリン/1850。

スキル/エネルギー生産力Ⅲ。

マナ生産力Ⅱ。

フィッシングマスタリーⅠ。

釣竿を使った全ての行動に10%の補正を発生させる。

毎時間エネルギー100を消費する。

取得に必要なマナ30。

取得条件、釣竿によるアイテムの獲得数が10個を超える。

ランクアップ条件、釣竿によるアイテム総獲得数が100個を超える。

フィッシングマスタリーⅠを取得する。するとエネルギーが100消費されてエネルギー総量が2720になった。

尚フィッシングマスタリーⅡにする為に必要なマナは60だ。現在40なので足りない。

ともあれフィッシングマスタリーⅠを取得できた。これで多少は効果が期待できるだろう。まあさすがにあの『ぬし』は簡単に釣り上げられないと思うが。

「……腹減ったな」

寝る前に飯を食ったばかりな気がするが考えても見れば6時間経っているので食べても良いのか。とりあえず作ってもらった焼き魚のあまりでも食べよう。

アイテム欄からニシンの焼き魚を取り出し口に入れる。

「冷めてる。これ、温度とかあるのか」

前回は出来たてを食べたが、その時はアツアツだった。

て事はあれだ。アイスとかその手の料理の場合溶けたりするんだろうか。

まあドライアイスみたいなアイテムが存在するのかもしれない。

若干侘しい食事だが残っている料理を無駄にするのはもったいない。我慢だ。

「飯も食ったし釣りに行こう。服は確かその辺に」

あった。靴と一緒に俺が放ったままになっている。

直に着替えると木の釣竿+2をアイテム欄から取り出し、準備完了。

宿を出る。

店先で店員NPCが『いってらっしゃいませ』とか言っていた。

外に出ると、街はかなり暗い。

シーンとしていて誰も歩いていない。

皆疲れて眠っているのか、あるいはまだレベル上げに勤しんでいるのかは不明だ。

「というか暗いな。先がよく見えない」

電灯などある訳も無く、松明なんかも無いので真っ暗だ。

地図をカーソルメニューから呼び出して現在地を確認しながら昨日と同じ橋に向かう。途中道具屋にも寄った。餌を買い忘れていたのだ。

そしてまさかの開店中。

リアルの個人商店も真っ青なサービス精神だ。ゲームシステム上しょうがないんだろうけどな。

あれか、コンビニエンスストア的な……。

ともかく橋に到着した。

生憎と空は曇っていて月が隠れている。

その為、潮風と小さな波の音で海だとは分かるんだが闇が深く良く見えない。

カンテラみたいな道具が必要かもな。

とりあえず目を細めて大量買いした餌を銅の釣り針に付ける。

指を3回刺した。合計10ダメージ。

そして糸を海面に垂らすと今までとは違う引きを感じる。

強い……と思う。

しかし、なんだろう。この単調とした引きは。

ともあれ力を込めて引き上げる。

――×××を獲得。

ん? 暗くて良く文字が見えない。

良く分からんがアイテム欄に入れておく、陽が昇れば分かるだろう。

そして餌をまた付けて糸を垂らす。

――×××を獲得。

おお! 糸を垂らした瞬間に魚が釣れる。

凄い入れ食いだ。

餌を300個近く大量買いしたが、足りないかもしれない。

よーし! 釣って釣って釣りまくるぞ!

――

――――

――――――

……朝になった。

今俺は膝と両手を地に着け頭を垂れている。

要するに(orz)こんな感じのポーズだ。

結果だけ述べるなら、200匹近く釣れた。

釣れた、というよりは引っかかっていたと表現した方が正しい。

獲得アイテム一覧。

空き缶137個。

長靴2個。

媒介結晶(未鑑定)。

ニシン40匹。

イワシ25匹。

スズキ12匹。

コモンダークフィッシュ4匹。

ゾンビフィッシュ3匹。

「なんだってー!?」

文字通り、なんだこれは……。

ほとんど空き缶じゃねーか。

バカ釣れして喜んだ気分を返してくれ。

そもそも空き缶とか世界観的にどうなんだよ。

……いや、こういう事もあるのだろう。

当初の目的である昼と夜で釣れる魚に変化がある事が分かったので良しとしよう。

この海どんだけゴミ捨ててあるんだよ。とか無粋な事は言わないさ。

尚、最後のどうみても不死属性の奴は無視する。

きっと解体すれば何かの材料になるだろう。いや、なってくれ。

そんな願望を抱きながら初心者解体用ナイフで釣れた魚の解体を始めた。

さすがに空き缶は解体できないだろう。

全部解体するのに2時間も掛かった。

解体スキルはまだ出現しない。一体条件はなんだ。

もしかするとこの武器で戦闘をする、とかそういう所か?

しばらくは釣りをする予定なので試しはしないが。

だが、時間に比例した量、アイテムを解体できた。

やはり解体武器は便利だ。

これは勘だが魚以外にも出来るはずだ。モンスターと戦う機会があったらやってみよう。

「さて、アイテムを売るか」

時計を確認すると09・27と表示されている。

さすがに商売根性逞しいアルトの事だ。もう起きているだろう。

一度チャットを送ってみよう。

確かアルトレーゼだったか。

アルトレーゼ商会云々という会話が妙に耳に残っていたので正確に覚えている。

紡にチャットを送った時と同じく電話音を聞きながらアルトの返信を待った。

「はい、アルトレーゼです」

耳聞こえの良い覇気のある声だ。

今日も商売一直線と言った所なのだろう。

「ああ、俺だ」

「その声は昨日の女の子、じゃなくて女キャラを使ってるんだっけ」

「そう、その絆だ」

「絆って言うんだね。つい昨日は名前を聞きそびれちゃったよ」

そういえばそうだった。

アルトの名前は聞いたが俺の名前『絆†エクシード』という恥ずかしい名前は教えていない。というか意図的に言わなかった気もする。

まあチャットを送った時点で名前はバレているんだがな。

「それで今日はどうしたんだい?」

「ああ、アイテムを買い取って欲しくてな。魚ばっかりだがいいか?」

「もちろんだよ。今どこにいる?」

「地図に載っている海沿いにある橋の右側なんだが――」

俺達はお互いの場所を教え合い、結局昨日と同じ場所で落ち合う事になった。

橋から急いだつもりだったがアルトは既に来ていた。

昨日は初期装備だったが新しくなっている。

中々に羽振りが良さそうだ。

「やあ、絆。魚って言っていたけどどれ位あるんだい?」

「ああ、これ位だが」

俺はアルトが送って来た交換ウィンドウに了承を選択する。

普通に手渡しでも渡せるがアルト曰く、大量なアイテムを交換すると商談の場合こっちの方が良いそうだ。

俺は分解された鱗、骨、肉、お頭、牙、背ビレなどを交換ウィンドウに乗せていく。

「既に調理済みだけど、随分と沢山あるね。驚いたよ」

「調理済み?」

解体済みでは無くか? と口にしようとした所で先にアルトが喋る。

「うん、昨日絆と別れてから分かった事なんだけど、料理スキルの包丁を使って魚を調理すると何個かアイテムが増えるんだよ」

「へぇ」

「て、事は絆も料理スキルを取得したんだね。何か材料が必要だったら売ろうか?」

いや、料理スキルは項目が出てすらいないんだが、と口にしようと思った所で思い留まる。

アルト程の友好関係が広いプレイヤーが解体武器の使い道を知らないはずが無いはずなんだが……もしかして何かあるのか?

「アルト、全く関係無いんだが、解体武器ってどういう効果があるんだ?」

「え? 確か武器によって特定種族に対するダメージが高いんだったかな。と言っても基礎攻撃力が低いから使っている人は少ないけどね」

「なるほど……」

「後、該当モンスターを倒した時に時々普通とは違うアイテムが出る位だよ」

……これはまさか、使用用途が判明していないって奴か。

俺の知る限り、魚を慎重に解体すれば鱗や肉などにできる。

だが、その情報は料理スキルで代用できるらしく、そっちの方が効果として見られている様だ。それなら、無理に言わずに金稼ぎに使えるか。

無論、遅かれ早かれ周知の事実になるだろうが、この手の情報は知られる前に使えば荒稼ぎできる。ゲーム開始時には良くある話だ。

「それで解体武器がどうしたんだい?」

「ああ、俺が使っている武器なんだ。そうか特定種族に特化の武器か……」

「なるほどね。絆は本当に珍しい事が大好きなんだ」

「まあな」

「それじゃあ、この数だ。合計6000セリンでどうだい?」

「そんなにか?」

当然の様にアルトは言ってのける。昨日は8000セリンが全財産と話していたが、俺がのんびりしている間に随分と稼いだみたいだな。

「料理スキルは時間が掛かるでしょ。時給換算だとこんなものだよ。それに量も多いし、現在の相場だと少し安い位だからさ」

安く仕入れて安く売る。昨日言っていた転売方法か。

なら良いだろう。NPCに売るよりも遥かに高額だしな。

俺は交換承諾の項目をOKを選択して6000セリンを受け取った。

「毎度ありがとうございます。また売るアイテムがあったらいつでも呼んでよ」

「ああ、次も頼む」

さて、俺はアイテム欄にある残った空き缶を眺める。

正直137個あっても困るだけなんだが。

NPCに見せても1セリンと5セリンだった。

違いはアルミニウムとスチールだ。

待てよ? アルミとスチールか。

「なぁアルト。もう一つ聞きたいんだが空き缶って今どれ位で売れる?」

「空き缶かい? 残念ながら捨て値だね。店売りした方が良い位だよ」

「そうか……気になるんだが、空き缶ってアルミとスチール、だよな?」

意味のある様に、声を低くして告げるとアルトはハッとした顔した。

「…………なるほど。溶鉱炉でインゴットにできるかもしれないのか!」

「溶鉱炉なんてあるのか」

「うん。製造系スキルの中に鉱石を溶かしてインゴットにする奴があるんだ」

「じゃあこれでできるかは分からないが調べてもらえるか? もしも本当に溶かしてアルミや鉄になるなら沢山あるからさ」

再度交換ウィンドウを開き、俺はアルミとスチールの空き缶を5個ずつ渡す。

ゴミの空き缶が何かの役に立つなら安い出費だ。

仮にインゴットに出来なかったとしてもはした金、あってない様なもんさ。

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