「絆殿達がここまでの代物を拙者にくれるにはきっと何か裏があるはずでござる!」

あ、滅茶苦茶警戒している。

闇影、よくわかっているじゃないか。

しかしコイツ、全部装備しやがった。

かなり要求スペックが高いはずなんだが……エネルギーも溜め込んでやがるな。

今まで同類だと思っていたが、実はコイツ硝子並にプレイヤースキルが高いとか、そういう展開だったりするのか?

「やったね、絆くん! 理解ある仲間だね!」

アルト、親指を立てるな。

そのネタ好きなのか?

「理解されているのを喜べばいいのか……きっと、嘆けば良いのでしょうね」

硝子の台詞が痛いね。

「闇ちゃんがどれくらい強くなっているのか見物だよね、お兄ちゃん!」

確かにな。

そこまで能力が上がっているならば俺達が直面している問題も容易く突破出来るかもしれない。

だが、見物って、なんでお前はそんなに上から目線なんだ。

「闇影くん、このカルミラ島という開拓地は寄り道クエストかもしれないが、前線組が戦っている場所よりも先の場所なのは間違いないと思う。その装備は私達が努力して作りあげた品なんだ。どうか協力を頼めないだろうか?」

「そう言えば……みんな装備が変わっているでござる。拙者も何か出来るでござるか?」

「場合によっては紡の代わりに呼んだんだけどな」

もちろん紡と闇影だったらどっちにするかの経緯も説明したぞ。

俺が如何に合理的であったか、ナチュラルにクズな感じで展開された。

闇影が凄く微妙そうな顔をしているのはこの際無視だ。

「わかったでござるよ……幽霊船での出来事からバラバラだったのがこうして集まりに混ざれたのを素直に喜ぶでござる」

そんな訳で闇影は俺達が渡した装備を受け取り、着替えた。

よし、上手く丸め込めたぞ。

……いや、別にそこまでクズに成り下がるつもりはないが。

ノリ的な意味で。

「今なら何でも出来そうでござる。絆殿、拙者に何をしてもらいたいでござるか?」

「ああ、紡がやらかした所為で出現した隠しボスに挑んでもらいたいんだ」

「隠しボスでござるか。燃える展開でござるな!」

俺はラースペングーの支配領域となっている場所の上空を指差す。

闇影も何処か悟ったのか息を飲むようにしてから頷いた。

「そんな訳で、待ち望んだ助っ人、闇影のデビュー戦だな」

「ところで橋から突き落とす罰ゲームはいつやるでござるか?」

チィ! 闇影、覚えていやがったか!

ちなみに罰ゲームをさせられたのは言うまでもない。

レッツ紐なしバンジー!

もちろんアルトも紐なしバンジー!

ついでに紡も紐なしバンジー!

こうして首謀者達は橋の下に消えたのだった。

3……2……1……。

ラースペングーの支配域の前にある光の玉にアクセスするとカウントダウンが始まり、再戦が出来る。

前回と同じくブレイブペックルが横になっている所から始まるみたいだ。

「そうそう、建設した図書館にブレイブペックルの伝説って本が閲覧できたよ」

「ああ、あの建てると同時に本が収まっていた図書館か」

「蔵書は一部だけだよ。ちなみに書記のペックルが建設後に説明した話によると、島中に書物が埋まっていたり釣れたり、特定のペックルが持っていたりするそうだよ」

何だその謎のシステム!

まだ謎の資料が見つかるのか?

きっと釣れるペックルみたいに本が出るんだろうな。

「本を拾うと図書館に転送されるから安心してほしい」

水中から出現する本が図書館に……濡れて大変な事になりそうだけど、そこはゲームだから大丈夫なんだろう。

そもそもそこを気にしたらモンスターが装備をドロップするのもおかしいしな。

ピンチになったら逃げる

「で、わかった情報を説明するよ」

「ああ」

「勇者はカルマを背負った変異をする事があるらしい。主に七つの大罪にちなんだ名前に変異をするそうだよ」

「へー……ラース、憤怒はストレスが原因って事じゃないって事?」

「そのようだね。で、ブレイブペックルにとってあの赤髪の女は敵対関係らしい。設定上相当悪女な人形らしいよ」

「ラースペングーイベントが発生する直前に笑ったんだったか」

不気味すぎて気色悪いぞ。

つまり呪いの大元は赤髪の女人形で、ブレイブペックルじゃなかったって事か。

「ヒントも載っていた。ブレイブペックルを参考にすれば攻撃の切り口が見えて来るのはわかるね?」

「あー……技能系は優秀で、ダンジョンに派遣する場合、攻撃能力が無い点だな」

仲間前提のペックルだ。

だからあの戦闘スタイルだった訳ね。

「そう、あのブレイブペックルは守護を担う盾を持ったペックル。実際の所、魔法にも相応の耐性を持ってはいるだろうね。とはいえ、モンスター辞典的な物が出ていたから対抗手段も載っていたよ」

図書館故にモンスターの情報も蓄積されているって事かな?

「じゃあ闇影が居ても同様の結果になるのか?」

「いいや。やはりというか、どちらかと言うと魔法攻撃向けの様だよ。近接で攻めるなら防御無視か比例攻撃を推奨されていたけど、遠距離か魔法の方が僅かに耐性が低めだ。炎以外ならそこそこ通るはずだよ。後は試すしかない」

「あいよ! じゃあみんな、行くぞ!」

俺の声にみんな頷き、打ち合わせ通りの陣形を取る。

主にスピリットが前衛となってダークフィロリアルの猛攻を耐えつつ、ラースペングーへ攻撃を集中させる。

紡は出来る限りダークフィロリアルと対峙してラースペングーは刺激しない。

俺や硝子、闇影が遠距離攻撃でラースペングーをチクチク弄り、しぇりるとロミナが弓矢で援護射撃。

アイアンメイデンを放たれそうになったらみんなで破壊に走る。

そう決めて、ラースペングーと対峙した。

前回と同じく姿を現したラースペングーに打ち合わせ通りの陣形を取り、ダークフィロリアルを紡と対峙させ、俺達はラースペングーがダークフィロリアルを守れない様に遮る様に陣形を組む。

近接攻撃はNG。

出来る限り距離を取りつつラースペングーを攻める。

「ドレインでござるー!」

バシン! と、妙に派手なエフィクトが闇影の放った魔法を受けたラースペングーで発生する。

見ると……硝子が防御無視攻撃を放った時に減ったHPよりも多く減っている。

数字的に言えば硝子が一発当てる毎に0,5%だとすると1%のダメージが入っているようだ。

「……効きは悪いでござるな」

あれで悪いらしい。

やはり魔法防御も高いみたいだ。

とはいえ、こちらは特化装備なのである程度効いているって所か。

「この装備は凄いでござるな! 拙者の魔法が軒並み強化されているでござる! サークルドレインでござる!」

今度はダークフィロリアルを含めてラースペングーに闇影が魔法を当てる。

誘導性が高いから簡単に当たっている様に見えるな。

「更にオマケでござる!」

闇影が忍術の印を描いて、光の玉がラースペングーに命中する。

こっちはあまりダメージが入っている様に見えない。

けど立て続けに唱え続けるとそれだけでダメージが入り続ける。

ラースペングーの奴、ダークフィロリアルの体力を回復させるので精一杯になって来てるぞ。

これは行けそうだ!

「今度は負けないもんね! 紅天大車輪!」

紡が鎌でダークフィロリアルに連続攻撃をし続ける。

それだけで結構ダークフィロリアルの体力が削れて見える。

ただ、ダークフィロリアルは素早さが高い為に本気で移動されると包囲網を突破されてしまう。

そうなったら狙われた人員が走ってラースペングーから引きはがす。

「良い調子ですね! 一気に畳みかけましょう! 輪舞零ノ型・雪月花!」

硝子が大技、雪月花を放つ。

するとラースペングーは大技に反応して盾の檻で守りを固める。

「隙だらけでござる!」

その隙を逃さずに闇影が大きく魔法詠唱に入った。

そしてラースペングーが盾の檻の効果時間が切れた瞬間。

「ブラッディーレインでござる!」

隙を逃さないとばかりに闇影の大魔法が作動。

ラースペングー目掛けて真っ赤な雨が降り注ぐ。

ジュッとラースペングーの全身から煙が立ち込める。

強力な酸性雨みたいな魔法だ。

完全に闇魔法だな、これ。

属性相性は良くなさそうだけど、闇影の装備は一級品で固めてある。

強引に魔法防御をぶち抜くだけの威力が出せている様だ。

「範囲に永続ダメージと防御力低下効果がある血の雨を降らせる魔法でござる!」

「順調ですね!」

そう言ったのもつかの間!

脅威度の高い闇影に向かってラースペングーとダークフィロリアルが同時に突貫して来る。

「クエエエエエエエエエエエエ!」

ダークフィロリアルが高速の八連撃で硝子と紡の妨害を突破して闇影に殴りつけ、それが終わるや否やラースペングーが盾の檻で閉じ込めてアイアンメイデンを放った。

「邪魔です!」

「そうだよ! 一方的にやられると思ったら大間違い! 鎌技・クレセントシックル!」

紡が鎌を横に振りかぶるとダークフィロリアルに向けて三日月形の斬撃が飛んで行く。

そしてダークフィロリアルを切り裂いて、背後に出現していたアイアンメイデンへと飛んで行く。

チュインと音を立ててアイアンメイデンにぶつかって紡の技は消失。

「まだまだ! 輪舞二ノ型・吹雪!」

二つの扇子で花吹雪を発生させてアイアンメイデンを切りつける。

後は俺やロミナ、しぇりるがやる番だな!

「ルアーダブルニードル!」

ガツッとルアーをアイアンメイデンに引っ付けて、ロミナとしぇりるが放つ特製の矢を待つ。

「行くよ!」

ロミナとしぇりるがアルトと一緒に作りだしたのは爆弾付きの矢だ。

射程が随分と短いが放てば相当の威力が出る。

ドゴンと矢が当たった直後、爆裂してアイアンメイデンが砕け散る。

「プハ! 死ぬかと思ったでござる!」

盾の檻から抜けだした闇影がそう漏らした。

硝子と同等のエネルギーを持っているなら一撃を受けただけでは死なないだろうが、ダメージがきついからな。

とは思うが、それ所じゃない。

「よし! アイアンメイデンも無効化した! 一気に畳みかけるぞ!」

「「「おー!」」」

なんて感じにラースペングーとダークフィロリアルを撃ち合わせ通りにチクチクと攻撃して行く。

「……この手ごたえと感覚、間違いないですね」

硝子が何か分かったのか呟く。

「何が?」

「闇影さんが参加した今回の戦いと前回とでラースペングーの守りが若干上がっています。挑戦人数で能力値が変動するのだと思います」

なるほど、つまりもっと人数が多い場合、相応の強さになるか。

多勢に無勢で畳みかけられない様に作られているのか……厄介な。

とはいえ、どちらにしても勝機は見えた!

そう思ったその時、ラースペングーの体力が半分を切った頃だろうか。

「乗った!?」

そう、ダークフィロリアルにラースペングーが乗っかり、フィールドを素早く走りまわり始めた。

くっそ! 足が早いぞ!

しかも何故か攻撃をして来なくなった。

「これは……時間切れまで逃げようとしているのではないでしょうか?」

残り時間18分まで減っている。

ピンチになったら逃げるとか……。

「何処までも面倒な戦闘スタイルをしていやがるな! だが、事逃げる奴を追い詰めるのは俺の専売特許! 即席落とし穴だ!」

罠の技能を上げていたのがここで役立つ。

少し離れた所に大量の罠を設置して追い詰める。

「クエ!?」

ダークフィロリアルが穴に足を取られて動きが止まる。

「今だ! バインドルアー!」

ラースペングーにルアーを引っかけてる。

ラースペングーが必死に抵抗するがルアーが引っ付いている限り、逃げられない。

リールを巻いて、逃亡距離を制限する。

「おお……凄いでござるな!」

「さすがはお兄ちゃん。罠がここで役に立つなんて思わなかったよ!」

「今の内に畳み掛けろ! 効果が切れてすぐに逃げるぞ!」

「わかったでござる」

「行きます!」

そんな訳で逃げるラースペングーを罠とルアーで抑えつけ、どうにか攻撃を当て続け……やっと体力を削り切った。

「……やったか?」

「なんという、生存フラグ」

なんてお約束な会話をしていると黒い炎が収縮していき、ラースペングーが所持する黒い盾が砕け散ってブレイブペックルの盾に戻る。

ダークフィロリアルは影となって霧散して消え去った。

そしてブレイブペックルが倒れる演出と共に空が青空に変わった。

どうやらお約束の生きている展開は無いらしい。

ぬいぐるみ

「おお……今までが不穏な雲だった故に圧巻でござる!」

「見慣れた空のはずなのに綺麗だと思えるね」

アルトがそんな空を見上げて呟いた。

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