『第三都市カルミラが解放されたペン! ここではギルドを作る事が出来るし、専用育成NPCペックルを雇用できるペン! 第一都市の港にある交流船からみんな挙って来てほしいペン!』

なんて声がシステムメッセージで表示された。

これは全体メッセージで、サーバー内の全プレイヤーが確認出来る様だ。

やっぱりそうだったのか。

「予想通り都市解放のクエストだったって事だね」

で、システム欄に色々とヘルプが追加されている。

ギルドのシステム説明から作り方。

専用育成NPCペックルの雇用と育成方法等。

ギルドはカルミラ島の城にある受付で申請し、金銭支払う事で設立する事が出来る。

前提条件として3人以上が入居出来るマイホームを持っていないといけないようだ。

……マイホーム。

そんなの俺達持ってたっけ?

ロミナやアルトは持っていそうだけどさ。

それぞれ家にしていた建物か?

確認すると俺達のギルドの家はカルミラ島になっている。

全部俺達の家って扱いか?

一応、俺の領地って扱いだからかもしれない。

更に言えば城がマイホーム設定にされているような……随分と豪華なマイホームが出来たもんだ。

「これから島がどんどん賑やかになっていきますね」

「そうなんだろうな」

南国で謎の開拓を強引にやらされ、都市解放クエストだったと後に判明したのは、納得しかねる所はあるが、良い。

しかしなんだろうか、解放された自分達の楽園を他者に踏みにじられる様な、この変な感覚は。

これはアレだな。

既に一ヵ月以上滞在している場所に見知らぬ連中がやってくると聞いて、縄張りを荒らされる様な感覚と言うのが正しいかもしれない。

島から出たかったのに、いざ島から出られる様になると出たくなくなるこの気持ち。

天邪鬼か。

「絆くんもやっと島から出られると言うんじゃないかい?」

「そうなんだけど、うーん……」

いざ出られる様になってもやる事を考えると微妙な所?

まあ、外から人が来るのを城から見守りつつ、様子を見たら良いかな?

どっちにしても俺の釣り生活にそこまで変化は無いと思う。

で、ある程度余裕が出来たら第二都市の方へ釣りをしに行く!

「まあ良いや。じゃあ来島してくる連中に備え……るのかな? 今日ものんびりと生活して行こう」

「絆さんは相変わらずですね」

硝子が呆れとも信頼とも言えるニュアンスで呟き、その日は解散となった。

で、翌日からが色々な出来事が目白押しで起こり始めた。

まず島に来たプレイヤー連中だな。

船にぎゅうぎゅうになって乗ってきたらしい。

ああ、もちろん交流船以外にも製造された船で来る事は可能になったそうだ。

新しい都市という事で装備品や近くの狩り場をチェックする為に島中や島近隣を巡るプレイヤー達。

装備品に関してはペックルが開いた武具店に始まり、ロミナが開いた店が大盛況となっている。

ロミナ曰く、失敗作の武具さえも飛ぶように売れるのは圧巻の光景だったとか何とか。

やはり島の外の連中はロミナと比べて二周りくらい腕が下だそうだ。

強さに関しても同様。

もちろん、近隣の海域でモンスターが出現する様になり、今の俺達からしたらそこそこの経験値をくれる。

目玉はインスタントダンジョンだろう。

入場料が設定出来て、プレイヤー達は挙ってダンジョンに挑むようになった。

オープニングセレモニーと言った様子で祭り状態だったっけ。

人が多くて酔いそうだった。

商人も金の匂いに釣られて我先にって感じで市場区画は元より、いろんな所で出店を開いていたっけ。

領主権限で変な所に店を開く事は出来ない様にしたけどさ。

次が都市解放三日目辺りだったかな?

俺は見てしまった。

「ふは……ふは……フハハハハハハハ!」

アルトが城の……俺達のギルドの倉庫に集まる金銭を数えながら高笑いをしている光景に遭遇してしまった。

島の施設利用、道具の売買等、税として徴収する金銭が俺の財布を通じてギルドの倉庫へと入って行くのだが、アルトに管理を任せている。

元々そこまで俺は金を使用するライフスタイルをしていないからなぁ。

「これは良い! 完全に大成功の商売ドリームだ!」

「そ、そうか。よかったな」

要するに金がいっぱい入って嬉しいみたいだ。

楽しそうで何よりって感じだな。

そのままアルトがハイテンションで俺に声を掛けてきた。

「絆くん、反応が薄いね。よくわかっていないのかい?」

「まあ」

「それは残念だ。これがゲームである事が非常に惜しいくらいの金が秒単位で流れて来るのは、商売人としても興奮を隠さずには居られないと言うのに……」

貴族の感覚

なんか呆れられてしまった。

感性の違いか、それともテンションが成せる現象なのか。

「そんなに儲かっているのか?」

「ああ、何せ僕が初期投資で開拓に使用した金銭を全額一括で倍額を貰ってもあまりある金が流れてきているよ!」

倍額……まあ、アルトには島に来てもらってから面倒なペックルのスケジュール管理を全てやってもらっているから良いけどな。

実際、俺の金というよりはギルドの資金って感じだし。

「これは絆くん達に巻き込まれた事を素直に喜ぶべきだろうね。ははははは!」

アルトのテンションがおかしい。

そんなにも金を稼いで何をする気なんだ、お前は。

いい加減商人プレイは程々に多少強くなる事を考えたらどうなんだ?

その金があれば現状の最強装備だって軽く手に入るぞ。

まあ、俺も人の事は言えないけど。

「あまりにも儲かって笑いが止まらない。これが……領地持ちの貴族の感覚と言う物かな? なるほどなるほど」

なんか貴族とか言い出したぞ。

中世ヨーロッパとかだと貴族は領地から税金を徴収する事で財を成したとか聞いた覚えがある。

おそらくそれと同じ様な事が俺達の身に起こっているんだろう。

何せ俺の財布が見た事も無い数字になった後、城の倉庫へ転送されている訳だしな。

「素晴らしい感覚だ! だが、この経験をそのまま味わっていたらゲーム終了後が怖くなってくるよ」

「現実でも似た感覚で金を使いそうとか?」

「そうだね。ここからする事と言ったら……ふむ、投資か独立か……もちろん、絆くんが許可する所までだがね」

「三分の一くらいは自由に使ってくれても構わないけど、下手な投資をして失敗、蒸発、逃亡とかしたらどんな手を使ってでも追い掛けてやるからな」

「これだけの金があれば逃げもしないさ。仮に第三都市が廃れる時が来たとしても継続して金銭は手に入る。逃げる必要性が無い。むしろ解雇こそが恐れる事態だろう」

逃げるのはバカがする事なんだろう。

しかし、金金金と言いまくる友人は見たくなかった。

元々アルトはこんな感じだった気もするけどさ。

「少なくとも第四都市が見つかるまではこの金の入りは変わらないだろう。ペックル達の雇用費など微々たるものだし、儲けしかないだろうね。更にギルドの使用料金も入れるとキリが無い! ははははははは!」

現在、島の収入は交流船の船賃、宿屋等の施設利用料、道具や武具の税、更にインスタントダンジョンの使用料金、ギルドの申請料金と利益献上費だそうだ。

このギルドの利益献上費と言うのはプレイヤーが設立したギルドメンバーが得る金銭の1%が物を売買したりモンスターを倒したりして得た金銭から差し引かれる。

元々手数料と言う設定で引かれていた金の行き先がこっちに変わるらしいのだ。

他にマイホームの購入だが、これは丸々俺達の懐に入る。

島に関して、何でも金が掛る事に俺達を通すので自然と金が入る訳だ。

アルト曰く、下手な事業を何度失敗しても取り返せる位の金が入る見通しになっているんだとか。

ちなみにインスタントダンジョンの入場料はデフォルト設定の金額にしてあったはず。

引き上げる事も無料にする事も出来る。

但し、その分やらねばならない事も増えているけどさ。

施設の修理費とか、島解放で増えた開拓とか、何に使用するか不明の項目も色々とある。

アップデートを見越した物もあるらしく、全て把握するのは難しいとアルトは説明した。

「さてと、じゃあドンドン仕事をしていくとしようじゃないか! まだまだ僕には出来る事がある!」

今のアルトは最高に輝いている! という事で納得した。

後にアルトはいろんな意味でディメンションウェーブで名を轟かせる商人になる訳だけど、そのアルト曰く印象的だったイベントとして語るのが今回の開拓イベントだそうだ。

そんなアルトの後ろ姿を見届けてから俺はその場を去ったのだった。

次が……闇影の粘着質な噂を流していた連中と遭遇した時だったか。

俺達が世間話をしながら広場の方へ歩いていた時の事だ。

「さて、この後釣りでもするかな」

「いえ、さっきしてませんでした?」

「絆殿は相変わらず釣りばかりでござるな」

「闇影も釣りを覚えないか? せめて素潜り漁を覚えるのが良いぞ」

しぇりるもやっているんだ。

海で戦う事が前提の今の状況なら覚えても悪くは無いはず。

「拙者は忍びであって漁師ではないでござる」

「竹筒を使って水の中を移動する忍者がいるだろ?」

「そんな考え方が……いやいや、拙者の理想像から外れるのでござる!」

今、ちょっと揺らいだな。

水面を歩く方の忍者なら落とせるか?

「はいはい。硝子だって釣りを覚えてくれたっていうのに……」

「覚えはしましたけど、本腰は入れてませんよ」

「この程度で呆れられたでござる! 理不尽でござる!」

「そういやしぇりるは最近何やってんだ?」

開拓を終えてから見ていない気がする。

ちょっと前まで一緒に素潜り漁とかやっていたんだけどな。

またマシンナリーの作業でもしているんだろうか?

「城と隣接している専用のドックでお金に物を言わせて船を作っている最中だったかと」

アルトと提携してって事かね。

しぇりるもやりたいようにやり始めたって事かな?

「この前話をしましたが、新大陸へ行けるように建造しているそうですよ」

そういやしぇりるとそんな話をしたっけ。

島から出る事ばかり考えていたから忘れていた。

まあ……この島は中継港みたいな場所なのはわかるもんな。

ここから更に外海に行く事を考えているって事だろう。

ロミナは大量に持ち込まれる素材で今日もカンカンと武具を作っているし紡は知り合いに強さを見せつける為にインスタントダンジョンに行ったんだったっけ。

何だかんだで纏まりが無いのが俺達かな。

しかし……巨大ペックルではダメなんだろうか?

ちなみにアルトの助言を受けて、新たにギルドへの入隊は認めない方針にしている。

今集まって来るのは硝子や紡、闇影の強さを利用しようとする連中や金目当ての奴らで碌な奴が居ないんだったか。

アルト程じゃないとは思うがな……まあ、一理あるから本当に信用出来る人員以外は断る方針だ。

というか……俺が領主だって知らない人の方が多いし。

そんな訳でカルミラ島は最前線としての地位を確立し始めている。

最前線か……奏姉さんは今頃何処にいるのかな?

会ったらみんなにギルドに誘うか話そうと思うんだけど。

問題は変に連絡を取ると後でうるさいから声を掛けずにいるんだけどさ。

何かあったらあっちから声を掛けて来る筈だし。

「それよりも絆殿、ダンジョンに行かないでござるか?」

「とは言ってもなー……」

戦いだけがこのゲームの全てじゃない。

開拓を終えた俺達はもう少しゆっくりとした生活をしても良いと思うんだ。

そう闇影を説得しようとしたその時!

「あ、死神じゃねえか!」

闇影を指差して声高らかにぶっ放したのは四人組だ。

硝子がその四人組を見て眉を撥ねさせる。

ああ、話で聞いたシージャックをしようとしたバカ四人か。

トラブルの香りが半端じゃないな。

「垢BANされたと思ったらこんな所で何やってんだ?」

垢BAN……アカウントBANの略称だ。

アカウントは言うまでもなくオンラインゲーム等で使用する物で、BANは英語の英単語、禁止するって意味だったかな。

闇影が露骨に嫌そうな顔をしながら硝子の後ろに回り込む。

相手も硝子の顔を見て更に不快そうな顔を強めた。

「そんな大声で言わなくても良いんじゃないですか?」

島の広場で大声で話すもんだから、周りのプレイヤー達が何事かと視線を向けている。

「不正な事をしているユーザーを指摘する事の何が悪いって言うんだよ! 凍結解除されたって許されるもんじゃねえぞ!」

どうやらコイツ等の頭の中では闇影はアカウント凍結を喰らって、それが解除されたとか思っているようだ。

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