お? ダークフィロリアルをもう少しで倒せるのか?

なんて思った直後、ラースペングーがダークフィロリアルに向かって光を放つ。

するとダークフィロリアルの体力が大幅に回復した。

おいおい、ほぼ満タンになったぞ。

……回復持ち?

「ちょっと! 敵が回復技や魔法を使うのは良いけど、ここまで高性能の回復はどうかと思うんだけど!」

何に喧嘩を売ってんだ、紡!

まあ言いたい事はわかるけどさ。

某有名なRPGの二作目のラスボスとか、全回復魔法をランダムで使ってきて腹立つしな。

「やはりラースペングーを狙えって事でしょうね」

そんなこんなでチビチビと攻撃を繰り返していると、ラースペングーのHPが7割くらいの所で制限時間が過ぎてしまった。

「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

するとラースペングーを中心に巨大な黒い炎が立ち上り、俺達の居た場所全てを焼き焦がす。

フィールド全てを燃やしつくす範囲攻撃だ。

おそらく、制限時間オーバーって事なんだろう。

「うお!」

「キャアアアアアアア!」

「うわああああああああああ!」

「ノオオオオオオ」

「く……時間切れですか」

そんな感じに俺達は黒い炎で焼き焦がされ、体力が残っているのに倒れる姿で固定された。

そして……気が付くと海岸に倒れていた。

ステータスを確認してみると、エネルギーが残っている。

どうやら強制退場って扱いみたいだな。

しかし……何がどうしてこうなったんだ?

「あー……いきなりの戦いに驚いた。ボス戦か何かか?」

浜辺で座り込んで、先ほどの出来事の感想を述べる。

ラースペングーがいるはずの丘へ視線を向けると、怪しげな色の雲が停滞してるぞ。

というか……ブレイブペックルだった様に見えたけど……。

項目を確認すると同時にアルトが頭を抱える。

「ブレイブペックルが居ない! 居るだけで全ペックルの能力が5割、指揮させると倍化させるまで成長させたのに!」

そりゃあ凄いな。

いつの間にそんなやり込むプレイをしていたのか。

「もはや開拓の要になっていたと言っても過言じゃなかったんだ! アレが居ないとまだ作り出せない建物があったのに!」

能力値の所為でか。

「それって城?」

「もちろんだ! これで当面は城造りが停滞する! 一刻も早くブレイブペックルを奪還して欲しいくらいだ!」

ん?

そこにサンタペックルがやってきた。

また狙ったみたいなタイミングで現れたな。

「ブレイブペックルは特別な道具でカルマー化してしまうと、ラースペングーという凶悪なモンスターになってしまうペン。しかも支配域に閉じこもってしまうから一日一回しか挑戦できないペン」

挑戦に制限が掛っているイベント扱い?

いや、この際、それはどうでも良い。

「さて……硝子、ダメージはどうなっている?」

「えー……正直、冗談では済まない程の大ダメージを負いました。しばらくエネルギー回復を図らないと厳しいかと」

「硝子、狙われまくってたもんな」

「はい……アイアンメイデンのダメージが凄かったです。二度目が命中したら死んでいたでしょうね」

そんなにも削られたのかよ。

再度放とうと盾の檻を硝子に放っていたもんな。

早過ぎて硝子か紡しか避けられないだろ、アレ。

フェイントが引っかかるだけマシだ。

そんな反射神経前提で作られたゲームなのか?

「絆くんがアイアンメイデンに攻撃した際にはしっかりとダメージが入った様に見えたね。発動しても妨害は可能に見える。ラースペングーの動きも止まるし、ダークフィロリアルの攻撃さえ気を付ければ破壊できそうだ」

ああ、多分そっちの方が正しい気がする。

仲間が捕えられたのをみんなで救出する感じ。

島内のプレイヤー全員が召喚されていた訳だし、協力プレイ前提のボスなのかもしれない。

「さて、一番の問題点なんだが、何がどうしてこんな事が起こったのかを調べないとな」

戦闘開始前に硝子は紡の方を見ていた。

硝子の性格からして、理由もなくそんな事はしない。

つまり紡が何かをした事が一番の原因だと見て間違いない。

元々ムードメーカー兼トラブルメーカーな面のあるダメな妹だしな。

「え? 私の所為なの?」

「それ以外ないかと」

「違うと思うよ。何かのイベントだと思ったからやっただけだし」

「それがこんな結末になったって事だろ」

まあイベントっていう主張は認める。

どう考えてもゲーム的に意図して起こった現象だしな。

だが、ボロを出したな。

それは自白したも同然の返答だ。

「まさか隠しボスのフラグだとはねー思いもよらなかったよ」

「自分達にしかわからない話をしない様に」

俺としぇりる、アルトにロミナが腕を組んで紡を睨む。

さすがに空気を感じ取ったのか紡は説明を始めた。

「え、えっとね。ロミナさんは知ってるでしょ? 今日、ダンジョンで見つけた赤い髪をした女の子の人形」

「ああ、あったね。あの人形がどうしたんだい?」

「それを所持した状態でブレイブペックルの近くを通過した所、ブレイブペックルが変わった動きをしたんですよ」

硝子の話を元に再現をしよう。

ダンジョンで見つけた宝箱から赤い髪の女っぽい人形が見つかったそうだ。

特に効果がある訳でも無い、収集品とも呼び辛い謎の道具。

それを持ち帰った硝子達だったが、用途が不明なので後でみんなに相談しようと言う事で解散する事になった。

なのだが、その途中でブレイブペックルが赤い髪の女の人形を凝視している事に紡が気付いた。

ペックルの友好度を上げるアイテムか何かかな?

と思い、紡は無断でその人形をブレイブペックルに渡そうとして……叩き落とされたらしい。

「近寄るなペン! そのけがわらしい物を見せるんじゃねぇペン!」

ちなみにストレス値はアルトが制御していたのでほぼ無かったはずだ。

人形を与える以外では普通の台詞を喋っていたとか。

「こ・れ・は……何かイベントの気配! 変わった技を習得するとかかも!」

なんて様子で紡は人形を執拗に見せつけ続けた。

時にはブレイブペックルの頬にグリグリと押し付けたりしたそうだ。

硝子の証言によると10分以上はやっていたらしい。

止めてもあれこれ理由を付けてやめなかったとか。

挙句、最終的に人形がケタケタ笑う不気味な演出が入ったそうだ。

「ブレイブペックルが人形をサンドバッグにしていたから面白がって居たら、いきなりこんなイベントが起きたんだよ!」

無実だと自らの潔白を宣言する紡だが、語るに落ちたな。

どう考えてもお前が犯人だろ!

「やっている事が完全にイジメだぞ。お前、学校とかで変な事してないだろうな?」

「いつもゲームの事で頭がいっぱいだから、そんな暇無いよ!」

「そ、そうか……」

説得力は多分にあったが、もやもやした物は残った。

後、妹の将来が割と本気で不安になった。

「そういえば戦闘に入る直前、物凄い勢いでブレイブペックルのストレスゲージが上がって行ったのを確認しているよ」

アルトの言質も取れた。

嫌いな道具を見せつけることで高速でストレスゲージが上がったって事か。

サンタペックルの台詞から察するに、その赤い髪の女人形が原因と見て良いだろう。

また余計な寄り道をしやがって……。

よし、以前から考えていた計画を実行に移すか。

「……紡、ちょっとこっち来い」

「なーに?」

俺は紡の手を掴んで、池へ行く橋の所まで歩いて行き……ドンと橋から紡を突き飛ばした。

「おらー!」

「ちょ――お兄ちゃん!?」

くっそ、しぶとい!

しつこく橋の縁に手を掛けて生き残っている。

俺はその手を踏み付けた挙句蹴り飛ばして、川へと落としてやった。

「きゃああああああああああああああああああああああああ――……」

「うわ……」

「処刑」

しぇりる、人聞きの悪い事を言うんじゃない。

制裁と言え。

共同生活をしているのに、そんな身勝手な行動をしたのなら罰は必要だろう。

例えゲームだとしても、だ。

コレだから妹という生物は……妹萌えの精神は理解しがたい。

こんなイカれた頭のおバカな妹って生き物の何処が可愛いのか。

まだ奏姉さんの方が萌えがあると思うぞ。

あっちはアホと言える行動をするけど、被害は無いしな。

これでお淑やかで優しくて兄想いの妹だったなら別なんだけどな。

それこそ牧場ゲームを一緒にやってくれる、従順な妹なら良い。

残念ながらそんな妹は実在しないしないけどな。

まあこれが俗に言う『兄が妹に望む幻想』なんだが。

「容赦しないね」

「かと言って、お咎めなしもどうかと思いますしね……強く止めなかった私の責任でもあります」

「硝子は……まあ、ダメージが多かったから良いよ」

その被害を一番受けたのが硝子だしな。

というか、橋から落ちた所でダメージを少し受けるだけでペナルティも無いしな。

ボス考案

「ゲッホ! ゲホゲホ……」

まあ、そんな感じで川に流された紡が海岸に流れ着いた所で俺は再度言う。

「後、三回は味わってもらおうかな」

「ごめんなさい、お兄ちゃん! だから勘弁して!」

「俺に謝ってどうするんだよ」

せめてエネルギーの消費が激しい硝子に軽くても謝罪しておけ。

ゲームとはいえ、みんなが楽しめない遊びは感化できない。

闇影をボッチにさせてしまった件については棚に上げる。

その時は甘んじて罰を受けるさ。

「NPCごめんなさい!」

「お前、ネタに命掛けているだけだろ!」

「ごめんなさい! 人形を吊るしてブレイブペックルで遊ぶのはもうしませんから!」

そんな事をやっていたのか。

そ、そういえば俺も『アニマルな森』というゲームで、住民を落とし穴にハメたり、橋から突き落としたり、なんて事をした覚えある。

ゲーム内で起こす行動の闇を鑑みた気がした。

「まあまあ……今回のイベントも乗り越えたら結果的に良い事があるかもしれませんから、これくらいにしましょう」

硝子が俺を止めるので、止む無くこれ以上の制裁は見送る事にしよう。

一番被害を受けている本人が許しているんだから良いだろう。

「はあ……硝子に感謝するんだぞ」

「はい!」

「でだ。アルトの話ではブレイブペックルが抜けた穴が大きくて困るそうだ。おそらくラースペングーを仕留めることで帰って来ると思うが、どうやって倒す?」

「挑戦は一日一回。制限時間30分というルールのようだね」

戦うのは一日一回。

となると最低でも明日まで待たなければならない。

「硝子、ダメージを回復するのにどれくらい掛りそうだ?」

「仮に今からダンジョンに潜って精一杯戦ったとして……二日は必要なくらい削られました」

そりゃあ随分とやられたなー……硝子がこんなにダメージを受けるなんて相当なもんだぞ。

「再戦は見送るべきだろう。というか、また島にいる奴等全員が強制で呼ばれるんだろうか?」

それだと……波と同じく大人数で削り切るボスって事になる。

そうなったらこの人数じゃ不可能だ。

ただ……地道にダメージは入っていたんだよな。

三割位は削れたし、思ったよりは強くない。

時間さえ掛ければ倒せるはずだ。

まあ、制限時間があるんだけどさ。

「その辺りの条件は一回しか戦っていないし、まだ謎だね。ただ、僕が特に狙われたりしない所を見るに戦闘が出来ない人を攻撃する様なAIはしていないんだろうね」

「一定範囲まで接近しなきゃ攻撃されない可能性もあるだろうなぁ」

少なくとも俺やしぇりる、ロミナは狙われる確率が低かった。

その辺りのAIはよくわからない。

「後はそうですね……ダークフィロリアルというモンスターの攻撃は苛烈でしたけど、ラースペングー自体が直接攻撃する事はありませんでしたね」

「そうだったか? セルフカースバーニングって技を何度も放っていただろ」

「お兄ちゃん、気付かなかった? あの攻撃の条件」

「まあ……技名もそうだが、十中八九カウンター主体の戦い方なんだろうとは思った」

ダークフィロリアルに攻撃を任せて、自身は守りに徹する。

そして不用意な攻撃を受け止めてカウンターのセルフカースバーニングで辺りを焼き払って攻撃する。

相手の高威力技には反応してダークフィロリアルと共に守りを固める編成だ。

そして隙あらば檻で閉じ込める技を放って必殺技のアイアンメイデンで決めて来る。

って所だろう。

アイアンメイデンを撃つまではそこそこ時間が必要だったし、クールタイムか何かがあると見て良い。

何処までもいやらしい戦い方を好むな。

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