まあ、白鯨が好きなしぇりるなら察するのは早かったのかもしれない。

あれもある意味……蟹工船だし。

その手の関係者が顔を真っ赤にして激怒しそうな海洋動物の捕縛をしたがっていたのでアルト側に属する。

内心、今も出てこないか探しているだろう。

次元ノ白鯨以外は今の所いないんだよな。

「ふむ……紡くん達にはカキでも食べてもらおうか。ほら、生ガキもあるよ!」

「カキ!?」

我が妹は単純である。

そう……カキも獲れるのだ。

養殖もあるので、もう少しでカキバイキングも出来る。

おそらく海鮮バイキングが出来る様になるぞ。

「騙されちゃダメでござる! カキは美味しいでござるが、食べたい時に食べれば良いだけでござるよ! なんで獲る側なんでござるか!」

闇影は我に返るのが早いな。

美食は知るが飲まれないのが闇影の長所なのだろう。

「残念だね、絆くん」

「よく持つなとは思ってた。ちなみにフィッシングマスタリーの熟練度も少し上がるんだぞ」

「こんなので上がりたくないでござる! 仲間を増やそうとしても無駄でござるよ!」

そうか……残念だ。

後輩が欲しかったんだがな。

尚、やる気さえあればみんなで釣りに行ける程度には熟練度を稼げたはずだ。

「それじゃあしぇりるもやってみたいと言ってた魚竜退治でもするか。もう少し素材が欲しいだろうし」

蟹取りをしている合間に魚竜を皆で戦って倒したりしてガス抜きはさせた。

しぇりるが銛で勇猛果敢に戦っていた。

もちろん硝子と紡にも手伝ってもらったぞ。

いやぁ大きな魚の竜だったから口にルアーを引っ掛けたら案外、動きを弱らせられた。

ちなみに肉の味はウナギに似ていて紡も満足してたぞ。

魚竜装備ってどんな性能をしているのかロミナに聞いて誰のを作るか楽しみだな。

「アルト殿を舳先に括りつけて餌にしたいでござるよ!」

「賛成!」

「まあ、それくらいは良いんじゃないか?」

「絆くん!?」

何故かアルトが否定的だ。

自業自得がアルトだろう。

「絆殿も同罪でござる!」

「まあ結果的にそうなるのか」

知らなかったとはいえ、貴重な数日をクエストでも無いのに蟹工船で潰したと考えると、そう言われる気持ちはわかる。

まあアルトと一緒に船首像になるのも別に良いが……。

「事情が事情なので不快ではないですが……」

硝子の言いたい事も分からなくもない。

なんておふざけをしていると……。

『ミカカゲ国からの緊急通信です』

「お? なんだ? イベントか?」

サーバーチャットが聞こえてくる。

カルミラ島がオープンした時と同じ奴だな。

「第二のカルミラ島を達成したプレイヤーでも出たんじゃない?」

「ミカカゲから?」

あの国にねー……そうなるとこっちはやっと静かになるか?

俺達も観光気分で行ってみるかね。

『現在、ミカカゲ国に魔王軍の侵攻が確認されました。ミカカゲ国も魔王軍の侵攻に対抗するために軍を編成しておりますが数が足りません。どうか冒険者の皆様、お力添えをお願いできないでしょうか?』

「あー……これって多分、ディメンションウェーブみたいな感じの大規模イベントだよ。魔王軍討伐クエストって所じゃない?」

「たぶんな。これをクリアすればプレイヤーが普通に入れる様になるって所か?」

『協力して下さった冒険者の皆様には戦果に応じてビザのランクを上げさせて頂きますので、どうかご参加お待ちしております』

って声が何度か発せられる。

「ビザのランク上げるって……関所を越えられる程度か……」

「一般プレイヤーはまだ第一の関所を越えた所で四苦八苦してる所だよ? 絆くん達が足早過ぎるんだよ。むしろ僕がせき止めているせいでもあるけどね」

ああ、カルミラ島の交流クエストをほぼ俺がクリアしてしまった弊害か。

俺達でもクリアできる程度の受注クエストなのが問題だろう。

それにミカカゲに出入りできるようになって二週間程度なんだ。

すぐにクリアできるようには作られていないだけでしかない。

現に魔物に関してはそこまで強さは繰り上がっていないしな。

「船に戻ってくるまでに第二の関所辺りに他のプレイヤーいたよ。たぶん、あれが前線組だと思う」

お祭りの中継街の前……川のある中継街辺りにもう他のプレイヤーが来てるのか。

前線組の攻略速度もバカに出来ないな。

あれで戦闘特化だからレベルとか高いだろうし。

臨時パーティーイベント

「で、絆くん達はどうするんだい?」

「そりゃあ参加するよ。ミカカゲに行けば良いみたいだしな」

「蟹工船をやらされるよりは良いでござる!」

「うん!」

確かに。

俺はこういうローテーションは嫌いじゃないけど、こういうイベントが発生したならそっちを優先する。

そもそもカニ籠は一定時間仕掛けられる事が利点なんだし、後で取りに行けばいいさ。

「皆に付き合った俺への対応が冷たいなー結構一緒に居たのに」

「もう絆殿はずっと釣りをしていればいいでござるよ!」

「お兄ちゃんも結構ヤバイよね」

「その絆さんから色々と高級料理を貰ってパクパク食べていた紡さんも色々と凄いと思いますよ」

硝子は結構自重していたもんな。

ウナギとか一般的な量を食べていたし、蟹とかも詰め込むように食べたりしていない。

一番むさぼったのが紡だ。

文句を言う権利はあるが、俺が文句を言える程度に堪能しただろう。

「まあ、いい加減にしないと皆に嫌われるので俺が最近一人でしていた事を知ってもらうのはこれくらいにするとしよう」

「……」

しぇりる、その沈黙はどういう意図なんだ?

「飽きもせず一人で黙々とこれが出来る絆殿は凄いでござるよ」

「無駄だと思う事に力を入れるって大事だろう? 効率だけを考えているなら最初からゲームなんてしないさ」

「ぐっ……絆殿に言い返せないでござる!」

闇影もなんだかんだでゲーマーなのだろう。

ゲームを楽しむ、という前提は理解してくれた。

「しぇりるさんはケロッとした顔をしていたので、職人技能を上げているプレイヤーと戦闘好きのプレイヤーとの違いかもしれませんね」

「拙者達は何だかんだ戦う事に夢中なプレイヤーって事でござるか……」

硝子の言葉は素直に受け入れるのな、闇影。

「ロミナさんやしぇりるさんには感謝しないといけませんね」

「僕は?」

「俺は?」

「感謝されるように行動してください」

あらら……何事も限度があるという事らしい。

同じゲームをプレイする者同士でも感性は人それぞれなのだ。

「まあ、絆殿のお陰で罠を発見する技能条件も満たせたでござるし、損ではないでござるが」

「乗っている時間が長いから船や海関連の技能も上がる」

フォローも入る所が闇影の良い所だな。

そんな感じで強く咎められる事はなかった。

みんななんだかんだで楽しんではくれていた様だ。

「それじゃあ、一旦カルミラ島に戻って、装備を整えたらミカカゲに行くぞー」

「おー!」

こうして俺達はカルミラ島を経由してミカカゲへと一路向かったのだった。

「魔王軍討伐クエストってどこで行われるんだ?」

ミカカゲに到着した俺達は港からイベントに参加するための場所を探しに行く。

「あ、なんか関所に人が集まってるよ。あそこじゃない?」

沢山のプレイヤーが見慣れない看板とNPCに集まっている。

俺達も近づいて確認するとやはり今回のイベントに関する説明をしているようだ。

NPCの話でわかったことは魔王軍の侵攻が残り二日ほどまで迫っていること。

フィールドが四つに分かれていて、迫りくる魔王軍の進軍をプレイヤーは四手に別れて防衛するという事らしい。

このフィールドには入る際、パーティーを組んでいても別のフィールドに出てしまうことがある。

一度決まったフィールドからは別のフィールドに行くことはできない。

出てきた魔王軍を討伐できればクエストはクリアになるみたいだ。

「固定パーティーだけじゃなくて、臨時でパーティーを組まないといけないってイベントみたいだね」

「稀にあるよな。こういう出会いを重視するイベント」

オンラインゲームでは稀にこういった見知らぬプレイヤーとの協力イベントというものが存在する。

見知った固定の仲間達との冒険を楽しんでいるけど、その代わり新しい出会いをしないプレイヤーの為の非常に面倒なイベントだ。

新たな刺激は他のプレイヤーとの出会いもあるって事なんだろう。

思えば俺達は一緒に行動するようになってからは固定パーティーで楽しんでいる。

大体はカルミラ島が原因だけどな。

「絆さんと一緒に戦えない可能性もあるんですね」

「そうなる。だけど上手く戦える自信は無いな」

少なくとも俺は正面戦闘に関して得意とは言えない。

前衛の硝子や紡の補佐的に弓矢や釣り竿を振るって攻撃する事ばかりだ。

もちろん最近は解体武器でそこそこ戦えるけど、武器の性能で誤魔化している面は非常に大きい。

格下相手ならどうにかなるが格上が相手だとエネルギーは赤字を覚悟しなくてはいけないだろう。

避けるのとかあんまり得意じゃないしな。

VRのゲームってヴァーチャルの世界で身体を動かす関係か、アクション要素が重要な事が多いんだ。

まあせっかくゲームの世界で凄い体験が出来るのに、普通のRPGみたいにモンスターを攻撃した時に命中率が低くてミスとか出たら雰囲気がぶち壊しなのはわからないでもない。

ディメンションウェーブもその例に漏れない。

残念ながら俺のプレイヤースキルだと硝子や紡みたいな動きは期待出来ないんだ。

ちなみに初期のVRゲームでは、軽く触れただけでダメージ判定が入り、小刻みに武器を当てるのが効率的な方法、というゲームもあったらしい。

その辺りはジャンルが成長する過程で淘汰されていったみたいだが。

「もしみんなと別のフィールドに出たら拙者無言で戦うでござる」

コミュ障忍者が断言してしまった。

そういえば闇影って自称コミュ障なんだっけ。

そこは臨時でパーティーを組むとか考えようよ。

「……そう」

……察する事を要求する会話が面倒な奴がもう一人。

こっちは日常会話はチラホラできるけど、どうも早口だと処理に時間が掛かるみたいなんだよな。

「お兄ちゃんの場合は一人になってもペックルを呼んで戦えそうじゃない? みんなペックルを連れてるし」

まあ……みんなが連れてるペット枠がペックルであり、普通は一匹の所を俺はそのペックルを大量で呼び出せる。

連携ができない臨時の仲間とかよりも役に立つかもしれないのは事実か……問題は俺は戦闘がそこまで得意ではないという所だけど。

ただ、確かにペックル達を盾に、ブレイブペックルに前に立ってもらえばそこそこどうにかなるかもしれない。

そもそも最近は罠とかも使うようになっているし……上手く行くことを祈ろう。

「うむ……とりあえず回復薬とかの商品は多めに並べて置くのが無難だね」

アルトは徹底して商売特化なので戦場には出るつもりはない様だ。

この辺りはいつも通りだな。

「少しでも見知った相手が戦場で会えるように死の商人も参加したらどうだ?」

「はは、挑発には乗るつもりはないよ。そもそも僕が戦場に出たらこれ幸いにMPKを画策するような連中も出てくる可能性があるからね」

まあ、確かに。

というか恨まれている自覚はあるんだな。

「よくわかってるね」

「そうでござるな。正直、ここに来るまで船で踏み切り板をさせるか議論したくらいでござる」

いつのまにかアルトの処刑が議論されていたらしい。

「四面楚歌だな、アルト」

「知らないなー」

面の皮の厚い商人だ。

本当、こいつには隙を見せてはいけないというのが知れば知るほどわかる。

「準備をしなくてはいけないのはわかった所だね。それでクエストとはどこでやるんだい?」

今回はロミナも同行している……というかクエストでロミナが何か作れる代物が増えるかもしれないので急いでミカカゲのクエストを受けてクリアしてもらう事になった。

大規模イベントだし、出来るだけ装備を充実させておきたい。

「ルールもわかった事ですし、急ぎましょう」

「アルトはしっかりと準備をしてくれよ。そのために雇用しているようなもんなんだからな」

「もちろんだよ。個人的な商売以外のビジネスに関して手を抜いては何にもならないからね。ついでに他プレイヤーの情報収集もして、上手くイベントを達成できるように根回しをしておくさ」

この手のイベントに関する信用は出来るか。

もちろん旨味がある部分はしっかりと独占するって算段なんだろう。

「では行きましょう」

河童着ぐるみ

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