「おお、わかったのか?」

「まあね。同じ主を釣った事があるプレイヤーからの話だと一週間という話が出ているよ。もちろんバラツキがあるけどね。この辺りは運が左右するから確定ではないけどね。ただ、見えるタイプのヌシを元にした証言だから安心して良い」

「そうなのか。見えるタイプというとヌシナマズみたいな奴か」

釣り針に引っかかるまでわからない奴もいるけど、固定出現って感じで見えるヌシもいるんだろう。

「再出現、思ったより時間かかるんだねー。フィールドボスとか6時間周期だったりするのに」

「あくまで釣りは魔物退治と違うからなー……しかし、よくそんな情報仕入れられたな」

「とある縁で釣りギルドの者たちと話ができるようになってね」

「釣りギルド……いいな。俺も掛け持ちで釣り仲間が欲しいぞ」

俺の言葉にアルトが返答に悩むかのように眉を寄せる。

なんだ? 何か都合が悪いのか?

死の商人が何かやらかしていないか不安になってきた。

「紹介することはできるけど、絆くんは嫌がるんじゃないかなー」

「どういうことだ?」

「この前ギルド名を一新した所だそうで、その名前が『絆ちゃんとアクヴォル様ファンクラブ』というんだよ」

「おい! 何勝手に人の名前を使ってんだ!」

肖像権とかそういう前に本人が許さないぞコラ!

つーかこの前の魔王軍侵攻イベントでのチャットでの冗談を実行に移したのかよアイツ等!

「ちょっと待てアルト、まさかと思うが俺が悔しそうにしていたって情報……」

「正解だよ絆くん。彼らがその所属メンバーさ」

うへぇ……マジでお近づきになりたくない。

「とはいえ、なんだかんだ割と真面目に釣り関連のギルド活動をしているようだよ。第一回目のギルド活動は絆ちゃんの始まりの地と称した、第一都市の港でのヌシニシン釣りだったそうでメンバーで釣り場巡りに行ったそうだから」

釣りをしながら色々と情報交換をするのが目的……っと。

俺の名前を使ったスキル縛りギルドかよ。

面白い事やってるじゃないか。

というか始まりの地とか言っているけど、釣りに限らずプレイヤー全員、あそこが始まりの地だろう。

「せめてギルド名をどうにかならんのか」

「ゲームシステム的なハラスメントにはなっていないんじゃないかな」

「絆さん……嫌ですよね」

「ネットアイドル絆ちゃんだね、お兄ちゃん!」

「中身男とわかっているくせになぜそこまで……」

いや、まあ、ネット文化ってそういうノリと勢いな所があるけどさ。

俺のファンを自称する連中が出てきたことに気色悪さが……確かにそいつらと情報交換なんてしたくない。

白鯨の太刀

「絆殿……仲間でござるな」

「闇影ちゃんファンクラブはあるのか?」

「無いけど闇影くんは結構、いろんな所で人気があるよ。やはり強さは人気につながるんじゃないかい? スキル構成が特殊な割に毎回トップに食い込む闇影くんだからね。闇影くんがパーティー募集すればあっという間に人が集まると思うよ」

まあ……ディメンションウェーブのイベントには必ず上位というかトップに君臨するエースプレイヤーなのは間違いない。

最初の波から始まり第二波や第三波でもトップにいるもんな。

挙句魔王軍侵攻イベントでもトップ……闇影に人気が出ないはずはないか。

「拙者コミュ障ぼっちでござるから困るでござる!」

「抗議しましょう」

「しても良いけど彼らも冗談交じり且つ、絆くんに続けと憧れているにすぎないからね。現に絆くんは知らなかった訳だし、メンバーも自ら名乗る訳じゃないからそっとしておいてあげれば良いさ」

「……下手に拘束するとアングラな所で団結する」

しぇりるが同情の目線でつぶやくように言った。

そうなんだよなー。

人間って押さえつけられると余計面倒くさくなるもんだ。

「まあ俺が前に出て歌って踊ったりする訳じゃないんだし……勝手にやらせておけばいずれ改名なり自然解体するだろ」

「絆くんにはノータッチが信条を掲げているからね」

「興奮するとか遠くで仲間と話してたぞ」

「聞こえていたとは未熟だね。まあ聞かれたことを知ったからには仲間同士で粛正が入るから安心してほしい」

未熟で済ますなよ……粛正って地味に罰が厳しいな。

どういう遊びなんだろうか。

「なんでも彼らからすると絆くんの中身が男だからこそ、安心して愛でていられるし表に出なくても心の支えになるそうだよ」

「それはどうして?」

「だって仮に絆くんがこの先ゲーム内で結婚とか実装されたとして、相手に選ぶとしたら女性キャラだろう? 彼らは君が男性キャラと結婚するのが嫌なのさ」

俺も嫌だよ。

つーか結婚とかシステムができるかわからないもんを前提に、中身男で男と結婚しないだろうから信仰対象にしてんのかよ。

アイドルじゃねえんだぞ。

確かに今の俺に男性のキャラを使っているプレイヤーとの接点はあんまりないけどさ。

一応、アルトが男性キャラか?

だが、勘弁してくれ。こんな死の商人と結婚とか。

ゲーム内だとしても嫌だ。

あくまで友人でしかないだろう。

「今の所、仲良しの硝子くんとのペアが尊いと言われているね。キズ×ショウだね」

「えーっと……」

巻き込まれた硝子も返答に困ってるぞ。

「派閥だと闇影くんが次点だね」

「嫌なギルドでござる!」

俺と硝子か、俺と闇影の派閥かよ。

「釣り専門となると今の所そこに人が集まっているね。ロミナ君経由で君にルアーを作ってくれた職人もそこに所属したそうだよ。嫌なら僕とロミナ君が仲介役をしておくけど良いかい?」

「……頼んだ」

あんまり俺は気にしない方がよさそうだ。

情報だけアルトに吸い取らせる形で良い。

……釣り仲間ができると思ったというのに、そこに行ったら間違いなく俺は姫プレイをする羽目になる。

いや、担ぎ上げられるのは間違いない。

アイツ等ノリが無駄に良いのは戦場で知っている。

中身男でも俺を持ち上げて遊ぶのがたやすく想像できるぞ。

仮に普通のMMOだったら、AFK……INした状態でパソコンとかから離れてキャラクターを放置してたらご本尊とかにされてお参りとかされてそう。

ログアウト不可VRMMOで良かった。

弄られキャラは闇影だけで充分だ。

孤高の釣り人を貫くしかない。

俺は姫じゃない!

「く……良いさ、釣り仲間は硝子がいるもん」

「お兄ちゃんのそういう所、萌えとか言われそうだよね」

「うるさい。お前の所為だろ」

「んー……外見関係なく屈強でもギャップで萌え言われてたと思うよ」

どうすりゃいいんだよ。

「あまり関わらず無視するのがよさそうでござるな」

「そうだな……」

「人が作業している最中になんとも楽しそうな話をしていたね」

ここでロミナがあきれ気味にやってくる。

「ああ、俺に妙なファンギルドが出来てしまってな」

「ご愁傷様と言っておくよ。仲介は私からもしておくから絆くんが嫌なら関わらずに行けば良いさ」

「礼を言う」

「それで何だが、要望通りの品々ができたよ」

「今度は失敗とかは無かったのか」

「工房の改築は元より私自身もしっかり技能上げをしていたからね。同じミスをするつもりはないよ。ほら、絆くんにはまずエンシェントドレスだ」

そういってロミナは俺に改修したエンシェントドレスを手渡す。

エンシェントドレス+3(5)

古代の素材を元にして作りこまれた不思議なドレス。

古代から伝わる不思議な力で驚くべき強靭さを持っており、所持者の魔力を引き上げる。

装備効果 フィッシングパワー+4 バランスアシスト+2 水泳技能+2 古の守り

装備に必要なエネルギーは下級の時と同じだけど防御力は随分と高い。

しっかりと強化を施してくれているのもあって今までよりも受けるダメージは随分と下げられるだろう。

しかもほとんどの属性に、高くはないけど万遍無く耐性を持っている。状態異常にも耐性があるっぽいな。

魔力も上昇するようだけど生憎と俺は魔法系のスキルは取っていないので魔法防御以外は効果は無いな。

汎用的に扱うにはかなり優秀だな。

運動神経の悪い俺は自然と被弾することが多いので非常に助かる装備だ。

「お兄ちゃんのニュー防具だけど……前とあんまり変わらないね」

「色合いが違いますね。前よりきれいなデザインですよ」

下級エンシェントドレスは……今のと比べると装飾が質素というか質素すぎて地味だったのが下級が取れたおかげかリボンとかが増えているし、色合いが鮮やかになっているっぽい。

使いまわしだけど不自然には感じない作りにしてあるっぽいなー。

ただー……もう意識しないでいるのだけどスカートはやっぱり気にならない訳じゃない。

前よりふわっとした感じで……好きな人は好きそうなドレスになってると思う。

「中級エンシェントドレスにするには必要素材が足りないみたいでね。素材がわかったら強化して行こうか」

「そうだけど……戦う敵に合わせて着替えたりするからな」

「当然だろう。ただ、汎用的に使うなら絆くんには良いと思う」

「まあ、釣りをするのに必要な装備効果があるから、文句はないさ」

泳ぎとかも対応しているから装備するだけである程度泳ぐこともできるようになった。

ペックル着ぐるみ程じゃないけど泳ぎにも対応可能で悪くない。

防御性能は河童着ぐるみより上で、これぞ正当な装備って感じだ。

「似合いますよ」

「あ、ありがとう」

褒められてもなー。

普通のゲームだったら女アバターで言われたらうれしいけど……喜ぶべきなのかなー。

「お兄ちゃんは被弾しやすいから防具は大事だもんね」

「まあな」

そこは否定しない。

お前や硝子みたいなアクロバットを誰もが出来ると思うなよ。

「後は言った通りの品である白鯨の太刀と魔法鉄の熱牛刀を渡しておこう」

白鯨の太刀<モビーディック>をエンシェントドレスを装備した俺は受け取る。

魔法鉄の熱牛刀は特筆した特徴は無い至って普通の牛刀……強く握ると火が出る包丁になったようだ。

鉄の牛刀よりも攻撃力が上がっていて、今まで切り辛かった食材も切れるようになると言ったところだろう。

本題は白鯨の太刀<モビーディック>か……前々から大きい解体刀だったから、その重量感は相変わらずって感じだ。

白鯨の太刀<モビーディック>+2(5)

勇魚を解体する太刀に白鯨の血を吸わせて強化することで磨かれた驚異の解体刀。

白鯨の力をその身に宿した一振りで力強く肉を断ち切れるだろう。

固有スキル ボスダメージアップ30% 復讐の力 大型特効3

ちなみに攻撃力は勇魚の太刀の数倍にも上がっていて、青鮫の冷凍包丁<盗賊の罪人>よりも少し高い。

その分、小回りが利かないから一撃の重さを重視した武器って感じだろう。

DPS……Damage Per Secondは青鮫の冷凍包丁<盗賊の罪人>の方に軍配がわずかに上がるだろうけど、それは敵に張り付いて攻撃することを前提とした戦いでだ。

ただ、ボスダメージとか大型特効がついているからボス戦だとこちらの方がダメージを稼ぎやすい。

硝子や紡が注意を引きつけている所で大きく一撃を当てるのだったら白鯨の太刀で切りつけた方が良いダメージを稼げるだろう。

用途に応じて使う武器を切り替えるのは当然だな。

ちなみに元々が勇魚の太刀なので当然ながら鯨包丁……適した相手は大型の魔物だな。

当然ながら大型のボスを解体する時に使うと良い。

魚鬼の釣り糸

「大きくて派手だねー大剣って言っても過言じゃないかも」

「持ち手を伸ばせば長柄武器、長刀とかになりそうな代物ですね」

紡と硝子が各々評価を下す。

まあ……俺が使う解体武器の中でも一際大きな一振りだもんな。

「これで同じ解体武器カテゴリーだというのだから不思議なもんだ」

「同じ武器種でも大きさが異なるのはありますからね」

「そうだね。私は鎌でも大鎌を好むけど鎖鎌とか小さな鎌を使う人もいるよ。小さい奴だと投げて使うらしいんだ」

へー……同じ武器でも使い方が違うのがあるのか。

そういやしぇりるも銛を投げたり刺したりしてるもんな。硝子の扇子も扇とか使ってるし。

「復讐の力ってなんだろう?」

「ダメージを受けるとしばらく攻撃力が上がる効果だね」

アルトが説明してくれる。こういう所は詳しくて助かる。鑑定とかで詳しく載っているのかな?

「かなりお兄ちゃん向けだね」

「ダメージを受けつつ殴りに行くってか? 俺は脳筋じゃないんだが……」

これだけ積んでも紡や硝子、闇影よりも火力が出せる自信はない。

「しかもボス特化という曲者武器だぞこれ……」

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