スキルで作り出したものや影響を消す解呪というスキルも持ってるんですが
フォリオの手のひらから淡い光があふれ、氷柱を照らす。そちらには一応効果が認められた。氷はほんの僅かにその表面が溶け、確かに減じていく。しかしそれもほんのわずかで、フォリオが光を照らすのをやめるとすぐに元の形状に戻ってしまう。
こんな感じで、全部溶かすのは難しそうなんです。だから、もっと強い解呪を使えればなんとかなるんじゃないかとただ、解呪の上位スキルなんて聞いたことないんですよね
伝説に聞くスキルを育てるスキルであれば解呪を強化することもできるのではないか。フォリオはそう考えたらしい。
俺自身がその上位の解呪を使えるとは思わなかったのか?
っ!使えるんですか!?
勢い込んでOlに詰め寄るフォリオ。
残念ながらそんな都合のいいものはない
ですよね
肩透かしをするような返答に、肩ごとバサリと両翼が下を向いた。
これはそもそも氷ではない。それどころか、物質ですらないな
そうなんですか!?
Olは再びそれに触れる。ひんやりとしていて冷たいが、Olの体温で溶ける様子はない。氷であるなら多少なりとも溶け、手のひらに水滴がつくはずだ。
これはおそらく高度な封印術の一種だ。中の熱すらも封印されているため冷たく感じられるが、実際に温度が低いわけではない
どういうことー?
Olの説明に理解が及ばなかったのか、ラディコは首をかしげる。
人の肌が暖かく感じられるのは、それそのものが熱を放っているからだ。人間の体温などそう差はないが、抱き合えば互いに暖かく感じるだろう?
そそうですね
フォリオの頬に手を当て、Ol。先ほどまでの情事を思い出したのか、フォリオは少し赤面しつつもうなずく。
その逆で、触れれば熱は封印の中に入り出てこない。つまり熱を奪われているため、実際の温度と無関係に冷たく感じられるのだ
氷じゃなかったらどうなるの?
話を理解してるのかしていないのか、ラディコが鋭い質問を投げかける。確かに重要なのはこれが何であるかではなくどうやったら消すことができるかだ。
解呪はスキルによって作ったものや影響を消すと言ったな。だがおそらく、スキルそのものを消すことはできまい
そりゃそうですよ
例えば、解呪であらゆる攻撃を防ぐ鋼の盾を消すことはできない。だがユウェロイの全身装甲で作り出した甲冑や投槍で作り出した槍ならば消すことができる。
他にも他人の能力を阻害する呪いに属するスキルの効果を消すこともできるが、Olが彼女を下したときに使った麻痺針のような毒は属するスキルは不可能だ。どのみち自分自身が麻痺してしまっていては、解毒スキルを持っていたとしても使えないから意味はなかったが。
これはおそらくスキルそのものに近い。その解呪を強力にしても、消すことはできまい
打つ手なしということですか
スキルを消せるスキルなんて、それこそ御伽噺だ。子供なら誰もが考える空想上の存在にすぎない。
いや。単に力づくでは無理だというだけの話だ
そんな都合のいいものはないとOlが言ったのも、同じ意味だった。この世全ての扉を開けるマスターキーなどというものはない。だが、それは扉を開けられない事を意味しない。
絶対に解けない封印などというものは、どんな封印をも解く魔術と同様に実在しないし、そもそもそんなものを作る必要がない。
解けない封印を作るくらいなら、その能力を持って中身を滅ぼしてしまった方が確実かつ手っ取り早いからだ。極論を言えば、すべての封印はいつか解かれるためにあるともいえる。
とは言え精巧だな。百年以上経て綻び一つない。これを解くのは少々骨だな
封印術は苦手という程ではないが、得意というわけでもない。少なくとも同じものを作り出す自信はOlにはなかった。
え?解けるんですか?
だが、フォリオは信じられないとでも言いたげに目を見開く。
今すぐには流石に無理だ。これにばかりかまけるというわけにもいかん。一年や二年は覚悟しておけ
少し期待させすぎてしまったか、と少々ばつの悪い思いでOlは言い訳めいた言葉を口にする。
実際には年単位の時間が必要とまでは思わなかったが、この先どの程度時間が取れるかもわからないし、この手の解呪は技術や知識よりも発想や思い付きを問われる。ハマってしまえば実際そのくらいかかる可能性もないではなかった。
いやいやいやいや、アタシの一族代々の宿願ですよ!?一年や二年?本当ですか?
今まで百年以上、糸口すら見つからなかったのだ。にわかにはOlの言葉が信じられず、フォリオは念入りに尋ねる。だがOlは、それを自身の能力への不信と受け取った。
良かろう。そこまで疑うならば、明日までにある程度の目処くらいはつけてやる
明日!?
驚くフォリオをよそに、Olは封印の前に座り込んで本格的に解析の準備に入る。彼の周囲にいくつもの魔法陣が浮かび、フォリオには理解できない情報がその表面に現れた。
ほんと、奴隷風情になんでそこまでしてくれるんですかね
髪をかきながらぽつりと漏らしたフォリオのつぶやきは、もはやOlには聞こえていないようだった。
第9話部下の望みを叶えましょう-5
とりあえずはこんなものか
一通りの情報を収集し終え、Olは封印から意識を離す。気づけば周囲の壁は薄っすらと明かりを放っていた。太陽のないこの迷宮の一日は日暮れと早朝の区別がつきにくいが、体感的には後者だろう。
解析を始めたのは昼過ぎの事だったから、ちょうど半日近く経ったことになる。
フォリオとラディコの姿は既になく、傍らにスープとパンが置いてあった。おそらくフォリオが置いていったのだろう。一体いつ差し入れたものだったのか、すっかり冷めきったスープを飲みながら、Olは解析した情報に思いを巡らせる。
術は非常に複雑なものながら、構造自体は思っていたよりもずっとシンプルな結界だった。おそらくこの封印は、時の流れと空間の距離を極度に捻じ曲げたものだ。さほど大きいようには見えないが、実際には極めて広大な空間が圧縮されている。フォリオが放った炎が表面で消えたように見えるのも、実際には中心まで到達できなかったがゆえのことだ。
シンプルであるがゆえに対処が難しい。Olの力であれば結界の境を超えて中に入ることは出来るが、出てきたときには下手をすれば数百年が過ぎ去っている、などという羽目になりかねない。
長年綻び無く保っているのも納得だ。結界そのものがその効果を受けているから、主観的には張られてからそう長い年月は経っていないという事なのだ。
いずれは自然に解けるだろうが、それが何年後の話になるかはわからない。そして外部から解くにしても、干渉自体が恐ろしく鈍化されてしまうために酷く手間がかかることにわかった。鍵穴自体は単純だが、鍵を突っ込んで回すのに時間がかかるのだ。
ともあれ、ひとまずの目処がついたのは確かなことだ。余裕を持って三月もかければ封印は解けるだろう。問題は、解いた後のことだ。
Olでさえこれほど手こずる封印。施した者も、そして施され封印されている者も、相当の力を持っていると見て間違いない。そんな者の封印を軽々に解いてしまっていいものか。中に入っているのが、友好的な存在とは限らないのだ。
Olはじっと封印の中に閉じ込められている人影を見つめる。半透明の封印に入ったその人影は、ぼんやりとした輪郭くらいしか見えず、恐らくは女だろうという程度しかわからない。
だがその影を見ていると、何故か無性に嫌な予感がした。胸がざわつくというか、厄介なことになるだろうという、漠然とした勘のようなものが脳裏をよぎるのだ。
もっとも、Olはそういった勘をあまり当てにはしない。ユニスたちのような戦いに生きるものたちであれば直感に従って上手くいくこともあるが、Olの強みは論理的な解析と分析である。事実というものは直感に反することも多い。
ともかくこれで最低限の仕事は果たしたはずだ、とOlは凝り固まった身体を伸ばす。もう一度ゆっくり湯に浸かりたい気分だが、それ以前に睡眠が足りていない。まずはひと眠りするかと、Olは下層にあてがわれた自室へと戻る。
む。どうした?
そこにはナギアとフローロが待ち受けていた。
どうしたではありませんわ!
ナギアは蛇のような下半身を波打たせるとしゅるりと詰め寄り、ひどい剣幕で言い募る。
好きなだけ抱いて頂けるという約定、お破りになられますの?
ナギアさん、ずっと待ってたんですよ
初めて彼女を抱いたとき、確かにそんな約束をした。だがそれ以来、翼獅子退治に湯殿作り、結界の分析と忙しくて相手をしてやれなかったのは確かだ。
わかったわかった。お前たちの腰が抜けるまで相手してやる
徹夜明けのだるい身体に鞭を打ち、Olは二人を抱き寄せた。
んっあっ、は、くっぅぅんっ
ふふ。可愛らしいですね
布を張り巡らされた薄暗い部屋を満たすのは、甘い匂いと甘い声。
二人の女が一糸まとわぬ姿で睦み合っていた。
もっともっとっくださいっ!
今日のユウェは欲しがりさんですね
ユウェロイが大きく開いた両脚の間、秘部にブランの指がずっぷりと埋まる。
あぁっもっともっとぉ!
ええ。もっと良くして差し上げますからね
くちゅくちゅと音を立て、ブランの白魚のような指がユウェロイの膣内を出入りする。
奥奥にぃっ
ふふふこう、ですか?
あぁっ
ユウェロイは見てしまった。ブランの指が、その根本までユウェロイの中に差し込まれている。
──そしてそれでも、触れて欲しい部分に届いていない。
(そんなそんなはずがない)
否定すればするほど、思い出してしまう。
(敬愛するブラン様との逢瀬こうして頂けるご褒美。これが最高のもの、至上のものであるはずだ)
言い聞かせるまでもなく、それが当然のことだと思っていたことに、しかしユウェロイは気づかない。
(あんな男に嬲られることが良いものであるはずがない!)
だが彼女の脳裏に去来するのは、Olの長く太いゴツゴツとした指先。そして、それにもまして硬く大きい、あのグロテスクな器官であった。
(ブラン様より、あんな男のほうが気持ちいいなんて、ありえない!)
あらあら。そんなに腰を浮かせてはしたないですよ
快楽を求めて無意識に腰を突き出すユウェロイに、ブランはクスクスと笑いながら攻める。
っあっあぁっ
びくんと身体を震わせて、ユウェロイは達した。
良かったですか?
は、はい
あまりにも浅い絶頂。しかもそこでブランはやめてしまう。Olならば達しても更に攻めてきたはずだ。
ブラン様ありがとう、ございました
そんな思いを振り払い、ユウェロイは頭を下げる。前回断ったせいか、ブランの攻めはいつになくねちっこく、長いものだった。だがその長さに反して、ユウェロイは全く満足できていない。むしろ中途半端に刺激されたせいで、余計に飢えるような感覚があった。
(そんなはずがない)
心の結びつきこそ最重要であるはずだ。ましてやあんな醜悪な、男などによくされるわけがない。
だが気づけば、ユウェロイの足は下層のOlの部屋へと向かっていた。
あっ、あぁぁっ!んっ、ふぁぁあっ!
部屋の中からは、女の嬌声が漏れ出ている。フローロの声だ。魔力を供給するとかいう名目のもと、あの二人は暇さえあればまぐわっている。先日の朝もそうだ。ユウェロイはいつものように、扉の隙間から中を覗き見た。
ああぁっ!Olぅっ!いいっ、そこぉっ!奥ぅっ!気持ちいいですぅっ!
Ol様あぁっわたくしのお胸んっはぁっそんな、しちゃ、いけませんわっ!
そこには信じられない光景が広がっていた。
Olは寝台の上で四つん這いになったフローロの腰を抱えるようにして後ろから突きながら、もう片方の腕でナギアを抱き寄せ、舌を絡めあっている。二人の女を同時に抱くなど、ユウェロイの常識からは考えられないことだ。
そもそも自分以外の相手と関係を持つという時点で許容し難いというのに、目の前で睦み合うなど論外だ。だと言うのに、ナギアもフローロも随分と幸せそうだった。
魔族というのはそういうものなのか、と思いかけて、ユウェロイは首を振る。皆が皆そうであるはずがない。彼女が敬愛するブランもまた、魔族だ。