更に鎧の山に触れると、鉄でできたそれはまるで熱された飴のようにぐにゃりと曲がり、互いに溶け合って巨大な一つの塊になる。Olはそれを引き伸ばし、複雑な形を作り上げて木箱に接続していく。
わーすごーい!
ええと、色々お聞きしたいことがあるんですケド
そして出来上がったものを見てラディコは素直に歓声を上げ、フォリオは頭を抱えた。
ドロップ品を溶かしてくっつけて加工するなんて事をさらっとしないで貰えますか? びっくりしちゃうので
何を言ってる? 俺が壁を動かすのは散々見ているだろう。変性魔術としてはあれよりだいぶ簡単だし、お前たちの価値観としてもそうだろう?
なにせ信仰の対象にまでなっている程、彼らは壁を絶対視している。確かに壁を動かすのは難しいが、実際以上に驚かれているという自覚はOlにもあった。
いやーどうでしょアタシ的にはどっこいどっこいって感じですね
ふむ。そうか
木をノコギリで切って組み合わせたり、鉄の鎧を炉に放り込んで鋳溶かし型に流し込めば全く同じことができる。Olがしたのはその手順を少々省略しただけのことだ。にも関わらずそこまで驚かれるとは、この世界の常識は相変わらずよくわからん、とOlは内心呟いた。
それで、これは何を作ったんですか?
うむ。このダンジョンには足りないものが幾つもあるが、これはその中でも最重要と呼べるものだ。すなわち──
本来ならばもっと早くに作りたかったのだが、素材が足りなかったのと手が回らなかったのでここまで遅くなってしまった。
湯殿だ
魔王Olがこよなく愛する、浴室を作るためのものだった。この世界には湯殿がより正確には浴室という概念が存在しない。入浴するときは大きなたらいに湯や水を張って身体を洗うのだが、それではせいぜい腰までしか浸かれないし、湯もすぐに冷めてしまう。
Olの望む、肩までゆったりと長時間浸かる湯殿には程遠いものだった。故に、こうして作ったのだ。ゆったりと入れる巨大な浴槽と、湯を温め続けるためのボイラーを。
最重要、ですか?
Olからその機能を説明され、フォリオは引きつった笑みを浮かべてみせた。ユウェロイが上司として面倒な奴であったことは間違いないが、こいつはこいつでもう少し本心を隠すという事を覚えればいいものを、とOlは思う。
まあ、理解できないのであれば身体に叩き込むまでだ。
せいぜい思い知るがいい。湯というものの持つ力をな
第9話部下の望みを叶えましょう-2
これは確かに最重要っていうのも過言ではないかもですね
浴槽にどっぷりと浸かり、背中の羽を文字通り伸ばしながら、フォリオは弛緩しきった様子でそう呟く。Olとしてはできれば湯に浸かる時は身体に巻いた布を外して欲しかったが、フォリオは籠絡のために一度抱いただけで妻でも愛人でもない。流石にそこまで要求するのは憚られた。
そうであろう
Olくん、まだ出ちゃだめえ?
心得顔で頷くOlの膝の上で、しかしラディコは不満げに声を漏らした。浴槽は十分大きく作ったから二人や三人一度に入ったところで膝の上に乗る必要などないのだが、生憎と深さの方がラディコにとってはやや深すぎた。Olが肩まで無理なく肩まで浸かれる大きさにしたのだから無理もない。
常に中腰でいなければ口元まで湯に浸かってしまうので仕方なくOlが膝に乗せたのだが、恩湯に加えて人肌の体温まで伝わって熱くなったからか、それとも単に元々堪え性がないからなのか、すぐに湯から出たがるのだ。
もう少し堪えよと言いたいところだが、仕方あるまい
もっと湯を楽しんで欲しいところではあったが、だからといって本来身も心も安らぐための入浴で気疲れしてしまっては本末転倒だ。湯冷めしてしまわない程度に身体を温めさせてから、Olはラディコを抱きかかえるようにして浴槽から上がった。
あ! えっと、じゃあお背中洗いますね!
ふむ、そうか? では頼もう
するとフォリオが慌てたように湯船から出てきて、道具袋から石鹸と洗い布を取り出す。体に巻き付けている布と同様、湯を溜めている間に自身の部屋から持ってきたものだ。
じゃあアタシが背中をやるから、ラディは前をお願いね
ぐったりしていたラディコは途端に元気になって腕を振り上げると、布で石鹸を泡立ててOlの胸板をゴシゴシと洗い始めた。
石鹸があるのだな
はい。泡雫球なんかがドロップします。流石に中層で取れる石鹸は質がいいですねえ
そんな事を答えながら、フォリオはOlの背中を洗い布でこする。その布は彼女が身体に巻き付けているものとは違って、目が粗く硬質な素材でできているようだった。
身体を拭くのには向いていないが、その分石鹸を泡立てたり、身体をこするのには向いている。久々の湯殿にゆっくりと浸かり、ゴシゴシと前後から垢を落とされる感覚は実に心地よいものであった。
さて、一体何を要求されるやら、とOlは思う。
一番風呂を譲ろうとしたOlに対し、身体に布を巻いてまで一緒に入ろうと主張したのはフォリオだ。ラディコは単純に喜んでいたしその反応に裏はないだろうが、フォリオの方はそうではないだろう。
一応、現在のフォリオはOlの部下というか、奴隷ということになっている。元々はユウェロイの物だったが、結果として彼女を裏切る形になり、それを庇うために交渉したからだ。
最初はユウェロイも難色を示しはしたが、立場としてはOlはユウェロイの下についている状態である。間接的にフォリオもユウェロイの配下であることに変わりはないと言えば一応納得した。
無論、フローロを通したブランの口添えや、Olの魔術によるある程度の提供例えば、彼女の部屋を多少広くするとかもあってのことだが。
だが、だからといってフォリオがOlに忠誠を誓ったというわけではない。ただ少しでもマシな境遇を選んだだけだ。
そんな彼女がこのようにOlに尽くすのならば、なにか魂胆があってのことというのは考えるまでもない。問題は、彼女が何を望んでいるのかということだ。
まだ出会って間もなく付き合いも浅い間柄だが、フォリオが聡い娘であることはわかっている。当然、何か魂胆があってこのような事をしていることにOlが感づいている事自体も重々承知の上だろう。
Olサマ、意外とと言うと失礼ですが、身体つきがしっかりしてらっしゃるんですね
魔術で強化できるとしても、最低限の筋力はあった方がいい。まあ、日頃から剣を振っているような連中には敵わんが
だがフォリオはなかなか本題に入ろうとしない。やたらと丁寧にOlの身体を磨き、筋肉を褒めそやしたりする。どうやら思ったよりも厄介な話らしい、とOlは警戒心を強めた。
思い当たるものがあるとするなら、彼女が以前口にしていたスキルを育てるスキルとやらに関わる話だろう。スキルを育てる事自体が目的なのか、それとも育てたスキルで成したいことがあるのか。
いずれにせよ、おいそれと頼むことが出来ない内容であることは間違いないのだろう。
こんなもんでしょうか。あと、は
Olの泡を洗い流し、フォリオはギクシャクした動作で前へと回る。
ここを、綺麗にしないとデスね
そしてOlの前にラディコと並ぶように跪くと、顔を真っ赤に染め上げながらOlの股間へと視線を向けた。
おちんちん!触ってもいい!?
構わんが無理をする必要はないぞ
嬉しそうに目を輝かせるラディコはともかくとして、明らかに無理をしているフォリオにOlはそう告げた。彼女がどんな事を望んでいるにせよ、形だけでも部下になった以上それがOlの目的と決定的に対立するようなものでない限り叶えてやるつもりはある。
そして対立するのなら、彼女がどれだけ奉仕しようと手を貸してやるわけにはいかないのだ。つまりフォリオの努力は不要なものであり、場合によっては完全に無為な行為にすらなりうる。
いえっ! やらせてください!
それを言外に伝えたつもりだったのだが、フォリオは強硬な態度を崩さず、恐る恐るといった様子でOlの性器へと手を伸ばした。泡をいっぱいに乗せたラディコとフォリオの手のひらが、Olの一物を撫でさする。
ラディ、絶対に鉄の腕だけは使うなよ
つかわないよお
からかうようなOlの言葉に、ラディコは頬をふくらませる。
ラディコの代名詞たるスキルを使われれば、流石にOlの股間は無事では済まない。とはいえOl自身使ってみてわかったことだが、あの手のスキルは使うにはある一定の精神集中と時間を要するし、使おうとすれば身体が輝くためにこっそり使うようなことも出来ない。つまりOlも本気で言っているわけではなく、ただの軽口だ。
えっと、痛くないですか?
ああ。お前はもっと力を入れてもいいぞ
しかしその軽口を聞いても、フォリオの緊張は解けることがなかった。湯でのぼせたわけでもあるまいに、耳まで顔を赤く染めてぎこちない手つきで男根を撫でている。
ひゃぁっ!
あ、おっきくなったー!
そのぎこちなさがかえって新鮮なこともあってか、Olの一物はみるみるうちに膨れ上がり反り返った。あっという間に体積を増した肉の槍に、フォリオは目を見開いて小さく悲鳴を上げる。
無理はせんでいいと言っているだろうが
だ、大丈夫です。あの、これ舐めて綺麗にしても?
どう見ても大丈夫な様子には見えないが、隣で尻尾をパタパタと盛んに振りながら期待の眼差しを送ってくるラディコがいる手前、やめろとも言いづらい。
好きにしろ
本人がしたいと言うのなら、これ以上気を使うのも馬鹿馬鹿しい。別に何かを約束したり言質を取られたわけでもない。Olはそう考えて、おざなりにそう答えた。
湯冷めしてもつまらん。こちらでやれ
Olは自身の泡を洗い流すと、浴槽の縁に座ってそう促す。ついでに魔術でその形状を少しいじって、二人の体格にちょうどいい高さの底をもう一つ作ってやった。フォリオとラディコは湯の中に腰まで浸かる形で顔を寄せ合い、そそり勃つ怒張へと舌を伸ばす。
んっふ、ちゅっは、ぁんっんむっ
ちゅ、ちゅっちゅぷっれる
二人が一瞬だけ視線を交わすとそれだけで意思疎通は済んだようで、フォリオは先端を口の中にぱっくりと咥え、ラディコが付け根から袋にかけてついばむように口づけ舐める。
決して巧みとは言えないが、湯殿にあって布を巻き裸身すら見せない女たちの口奉仕というのは、それはそれでまた別格の良さがあった。
とはいえ隠されれば見たくなるのも男の性だ。
外すぞ
二人の胸元にくいと指先を潜り込ませ、そう宣言する。
だ、ダメです!
それは許可を得るためではなくただ声をかけた程度の意識だったのだが、フォリオはぎゅっと胸元を押さえて拒否反応を示した。
ここまでやっておいて何故、とOlは一瞬思うが、考えてみればOlの方から望みを口にするのはこれが初めてだ。交渉しどころだと考えたのだろう、と納得する。
わかったわかった。お前の望みを聞くだけは聞いてやる。それで良いな?
元々こんな事をせずとも話は聞くつもりだったのだから、欲望に流されたわけでもない。むしろさっさと話を切り出さないフォリオに焦れてすらいたから、渡りに船とばかりにOlは告げる。
気づいてないとでも思っていたのか? 俺に頼みたいことがあるのだろうが。聞いてみるまで確約はできんが、聞いてやるから肌を晒せと言っておる
おお見通しでしたか
バツが悪そうに眉を寄せるフォリオに、何を白々しい、とOlは内心嘆息する。それとも、本当にOlが気づいてないと思っていたのか。
ではこの指を引いても良いな?
ボクはいいよ!
はい
Olの問いにラディコが元気よく答え、躊躇いがちにフォリオも頷く。肌と布の間に入れた指をぐいっと引っ張れば、それはあっさりと外れて二人の裸身が露わになった。
うう、粗末な身体でスイマセン
フォリオの背中から生えた翼が彼女を覆うように畳まれる。しかしそれでは意味がないとわかってはいるのだろう。中途半端に畳んだ翼の隙間からは、彼女の控えめな乳房も薄っすらと茂みの生えた秘所もバッチリ見えていた。
謙遜するな。お前たちの身体は十分美しい
魔王として君臨し、数多の女を当然の権利として抱いてきたOlにとっては、そんな風に恥ずかしがる様子はかえって新鮮だった。それに何より、手のひらにすっぽり収まりそうなフォリオの乳房も、殆ど凹凸のないラディコの子どものような裸身も、十分魔王の対照範囲内だ。