「あーもう! やってやろうじゃないのー! どっせええええええええ! 削岩撃ー!」
てりすのやけくそ具合は姉さんと重なって来たなー。
なんにしても俺の火力ってやっぱり相当上がっているんだなと実感する毎日。
硝子達に再会出来るのは何時になることやら。
防衛クリアで入手するチケットでクレイさんが随時交換して行くお陰で、防衛設備がドンドン強化されて行っているようだ。
主にウサウニーが施す祝福、城からの援護射撃の特殊大砲とかがそれに当たるっぽい。
出し惜しみして防衛失敗からの修復とか考えると随時必要な代物に交換して行くのが良いって事だろう。
って感じに防衛戦は毎晩続いて居たのだが……。
防衛開始9日目の事。
「うーむ……」
「ぴょん」
サンタ帽子ウサウニーの前でクレイさんが考えるように腕を組んでいる。
一体どうしたんだろう?
「どうしたのじゃ?」
顔文字さんがそこでクレイさんに声を掛けた所で何やら話をしていた。
すると顔文字さんが俺を呼んで来た。
「なに? 何か問題でもあったの?」
「ああ、実の所ね」
と、クレイさんが砂漠を指さすと……なんか砂漠の背景としか言い様が無かった先に小さく……なんか居ないか?
何だあれ?
ヘビ?
それにしたって縮尺おかしいだろ。あの距離であの大きさって何だよ。
「明日から襲撃はどうやら無いようなのだけど六日後にあのダインブルグサンドワームがここに来るそうだよ」
「設定的にダインブルグの配下兼、作り出された化け物って事のようじゃな」
「どうやらこの開拓地に来るまでに小物は入れるけど大物は無理な強固な結界があるようで数日かかるって設定のようだよ」
湧き水
「……あんなの来たら壊滅しない?」
タワーディフェンスとかそう言った代物でどうにかなる相手?
マップのマス目で言うと2マスくらい横幅だけでありそうだよ?
オアシス近隣で1マスだってのにさ。
「そこは大損害って程度で完全壊滅は無さそうだね。建物の半分が壊れる的な失敗時の説明が入っているよ」
「で……どう対処するわけ? 植物とかの防衛でどうにかなるとは思えないよ」
次元ノ白鯨クラスの巨大魔物じゃん。
全プレイヤーが一丸になって船とか使って倒す相手だと思う。
モンスターをハンティングする類いのゲームのボスじゃない?
「一応みんなで頑張って倒す相手みたいだよ。ウサウニー達の案内だと砂漠に決戦の場所を決めてそこでみんなして色々と設置して待ち構えて仕留める形でね」
「動き速そうだなー」
「砂船とかロマンじゃな」
あんまり笑えないよ?
「船大工が欲しい案件になってきたな」
しぇりるが欲しいが一度呼んで居るので呼べない。
「ここはトライ&エラーでやっていく形かな。何度か失敗しても開拓地にダメージは無さそうだからね。だから計画を立てているよ。1日目は歩兵と設置物、2日目は石垣、3日目は砂船、4日目は……城塞と言うべきかな」
なお、4日目は建築中の城って事になりそう。
「様子見って事で良いよ。相手がどれほどか、絆さんが戦えない程なのかと言う指標にもなる。失敗しても大丈夫な様にウサウニー達をフル活動させないといけなさそうだね」
「カナデキャノンを毎日使えるほどに確保せんといかんな」
「顔文字さん。それ……姉さんの居ないところで言ってね」
却下されているケミカルアシッドボムトマトを使った大砲の愛称な訳だし。
下手に定着したら顔文字さん、姉さんにどれだけグチグチ言われるか分かってるのかな?
ケミカルアシッドボムトマトは相当優秀な代物なんだけどさ。
「問題は船にしろ何にしろ、得意技能にしてる人が居ないって所だけど……新たに人を呼ぶ感じ?」
「サンタ帽子ウサウニーの反応が無くてね。ここはペックルに任せる形になりそうだよ」
まあ……ウサウニー達の技能が相当上がったお陰でペックル達の能力も大分戻っては来ている。
そして船となるとペックル達の方が適正ありか。
何よりしぇりるが助手として結構使って居たから船造りの経験値は十分ありか。
「俺を呼んだ弊害で専門家を呼べないって所なのね」
「島主一人で十分じゃ」
「そうだね。出来ないと言う程の事では無いから助けを呼べないのだと私は思うよ」
顔文字さんとクレイさんは随分と俺を評価してるもんだなー。
「明日の戦闘フィールドには既に行くことが出来る様でね。ウサウニーに頼めば連れてってくれるよ」
「事前にフィールドまで完備とは……何処まで開拓でやらされる事になるんだろう」
少なくともカルミラ島ではあり得なかったイベントだぞ。
何にしてもやっていくほか無い。
「それじゃ下見に行ってみようかな」
「みんな一度は確認に行って地形を把握して貰う予定なのじゃ」
ウサウニーの案内で初日の決戦のバトルフィールドへと俺達は下見に向かった。
とは言っても……岩肌がチラホラとある砂漠なのは変わらないんだけどさ。
「でー……鉢植えと荷車を持って来る事出来るの?」
「生憎と別フィールド扱いでもって来れないようでね。現地に生えてる植物を利用するみたいだよ」
あ、なんかバルカンフラワーとか各所で生えてる。ニードルサボテン……ボムズライオ。
地形把握して植物を的確な形で発動させるって感じか?
「未発見の植物があるのう……研究用に持ち帰るのも良さそうじゃな」
「後は何処を通るのかはある程度予測はあるみたいでね。ただ、地面に潜られそうな蟻地獄のような代物があるね」
この辺りはイメージでどうにかしろって事か。
随分と大きな蟻地獄だけどプレイヤーが入る事や滑って落ちるとかは無いようだ。
「他に隠されたギミックとか探しておくと良さそうだけどー……」
って事で決戦のバトルフィールドを確認して回ると何個か蟻地獄モドキを確認した。
他に植物も確認していて思うのだけど、こう言った植物ってゲーム補正なんだろうけど野生の場合は水なしで良くもまあ自生してるもんだよなー。
って思ったのだけど蟻地獄に妙な蓋のような岩があるのを見つけた。
「ねえねえ、顔文字さん。クレイさん」
妙な蓋のような岩に近づいて確認した所で俺は二人を呼ぶ。
「どうしたんだい?」
「なのじゃ?」
「ここさ……水が漏れてる」
そう、蟻地獄のうち、岩が乗っている所がじんわりと水が漏れ出していたのだ。
「ふむ……もしやこの岩を壊すと水が出るのではないかい?」
「なのじゃ。早速壊すかのう?」
「事前に壊すことで水場として機能するのか……」
どちらが良いかとクレイさんが腕を組んで考え始める。
「ここを壊して水場になったとしたら何が釣れるかな?」
「島主らしい発想じゃな」
「そりゃあね。まあ……オアシスと同じ魚が釣れそうな気はするんだけどね」
「水源は同じ設定ではありそうじゃな」
「ノジャさん。上手くすれば良いダメージが稼げてすぐにあの魔物を倒せるかもしれないね」
「ほう……名案でも閃いたのかの?」
「言うほど名案と呼べる程では無いよ。ここまで仕掛けられているとね」
フラグを見つけるって意味だと意表は無いよ。とクレイさんは謙虚に答えた。
「少なくともディメンションウェーブイベント中にルアーを海中に投げ入れるって程、変わった発想を出来てないさ」
「それって俺の事?」
そりゃあ特殊フィールドの海って事で気になるじゃん。
釣り人ならやらない手は無い。
「実は件の釣りに関しても引っかけられるんじゃ無いかと思って居るんだ。砂の中にルアーを入れられるのが分かっているからね」
「ダインブルグサンドワームも釣れるかも知れないと!」
なるほど、確かにそれは良さそうだ。
「ついでに色々と用意するから、私の注意したタイミングでやってみて欲しい」
「了解」
「なのじゃ」
「ふふ……なんだろうね。上手く行ったらとても楽しい結果になりそうで私もワクワクしているよ」
クレイさんがイタズラを楽しみにしている子供のような顔をしている。
ミリーさんもだけど結構お茶目な両親の様ですよ。
家出中の娘さん。
後に武勇伝として語ってあげても良さそう。
そんな訳で決戦1日目。
ああ、結果だけで言えば一日で倒しちゃったよ。
「やって行きましょうかね。で、打ち合わせ通りに動けば良いのね」
「上手く行くことを祈るしかねえけど……でっけーなー」
ズモモモ……と見上げる程に大きい芋虫が砂の中から顔を覗かせながら決戦のバトルフィールドを悠々と泳いでいる。
それを俺と顔文字さんにらるく、奏姉さんの四人で見つめる。
クレイさん、ミリーさんとてりすは持ち場で待機。
飛び乗ってザクザクと斬りつけたらどうなのかとか気にはなるし、弓矢で射るって手もある。
「やるペン!」
「行くペン!」
「ペンペン!」
「頑張るピョン!」
「ここを守らなきゃいけないピョン」
ペックルとウサウニー達も待機中……俺と顔文字さんの指示で動く訳だけど連れてきたペックルとウサウニー達の動きを見て思うのは……何か軍隊を動かして大型の敵を倒すあのゲームを思い出す。
レトロなゲームで人参みたいなキャラクターを地面から引っこ抜いて戦わせる奴だ。
赤、青、黄色の軍団だったような気がする。
ロケットを修理するのが目的で宇宙人の小人が操作キャラだったな。
一応、他のペックルやウサウニー達は設置物の植物を的確にダインブルグサンドワームに狙いを定めるように配置させているんだったっけ。
環境攻撃植物
「じゃあ行くわよー! って言っても私はタンク役なので耐えるのが仕事だけど……これだけでかいと耐えるとか論外よね」
「泳いでるだけで地中から岩が出てくるからそれを俺達に当たらないように守って行けば良いんじゃ無い? それと作戦通りに誘導するのが目的だし」
「では出発!」
「わー! なのじゃー」
「わー! だぜー」
「ちょっと……小規模で内輪ネタにしかならないわよコレ!」
「ではイー! なのじゃ」
「あ、それディメンションウェーブイベント中にやってる奴いたな。良いじゃねえか! やろうぜ! イー!」
顔文字さんとらるくの悪乗りは聞き流しておこう。
そんな訳で遊撃部隊の俺達はダインブルグサンドワームのヘイトを稼がんと近づく。
顔文字さんが補助魔法を施してからの誘導だ。
「サクッと攻撃して見るかー」
と、俺は弓矢で攻撃をして見る。
「ギュイイイイイイイイイイイイイ!」
ザクッと良い感じのエフェクトが発生してダインブルグサンドワームが俺達に気付いて時々砂に潜り込みながらフィールド内の柔らかい地層を進んで行く。
で、岩盤の固そうな高台の足場で俺がチクチクと攻撃しているとズモモと顔をこっちに向けて……砂のブレスを横一文字に吹き付けてくる。
もちろん体をゆらして地面から岩を出して正確にこちらに飛ばして来てるな。
この辺りは不思議な演算で飛んで来てるのかな。
「おっと」
俺は戦闘モードなんで動きがスローに見える状態だけど顔文字さんを含めて姉さんやラルクは通常速度なので素早くは動けない。
「予想通りの攻撃ね」
と、姉さんが盾を構えて顔文字さんとらるくの前に立って砂のブレスを受け止める。
「そうじゃな」
顔文字さんが姉さんに回復魔法を施してHPを回復させる。
「鎌だと攻撃を当てるのが面倒だぜ。スローインシックル!」
らるくがその攻撃モーションの合間に鎌を投げつけるスキルで攻撃する。
俺は? って思う陣形だけど……まあ、俺の場合は避けるだけの余裕があるからなー。
「後はこれよ!」
そんで姉さんが要石の扇子を変化させて剣モードにしてから硝子が使った鎮震の剣を発動させる。
土属性の攻撃を無力化させる便利な固有技が内包されて居る。
攻撃性能は無い技なんでブレイブペックル着ぐるみ着用の姉さんでも使えるって事なのだろう。
「いやーなんつーか完封って感じじゃねえか」
「一方的に殴りつける展開ね」
「こう……こう言うのって何度も同じイベントを周回してる人が出来る様になる動きなのじゃ」
「そこはみんなの経験が物語ってるって事でしょ。案外初見でも慣れりゃ出来るってもんでしょ」
姉さんの言う事は分かるけどさ。
ちなみに俺は割と鈍くさい方。ただ、幽霊船とかは経験か。
レトロなマッピングされないゲームの経験とか生きてるし。
ある意味このゲームって対象年齢高めなのかも知れない。
不自由を楽しむ的な。
もしくは……対象スキルがあるのか。
あ、なんかその辺りあった気もする。マッピング。
さて戦闘だけど、姉さんの後ろでチクチクしても良いんだけど当てやすそうな高台で狙いを定めてバシュバシュ放っている。
「ギ――」