「連日クエストならある程度弱らせたら撤退とかして後日次の戦場って流れになったりするわよね」
「あるあるじゃな」
「あまり叩きすぎるとクエスト時間をオーバーするとかやっちまうよな。特定の所まで倒せない感じでよ」
「ここまでやるとその疑惑もあるわねー」
ありそうだな。
……後日、このイベントは一般プレイヤーもメモリアルクエストで追体験出来る訳だけど、俺達の雑談通り通常は撤退するイベントだった。
だけど……こう、釣りで引っかけたり嵌めたりして相手が撤退をする場所に行く余裕を与えずに短い間に削りすぎたのが原因だろうか。
次の場所は小さな関門みたいな場所なんだがそこに行く前に……。
「ギィイイイイイイ――」
ダインブルグサンドワームが大きく仰け反って咆哮を上げる演出と共に……ドスーンと倒れてしまった。
「あれ? 倒しちゃった?」
まだ次がありそうだったんだけど……。
「やったピョン!」
「勝利ペン!」
「やりましたですピョン!」
と、ウサウニーとペックル達が勝利の台詞を言っている。
どうやら終わってしまったらしい。
「終わり?」
「あっけなさ過ぎない?」
「予測と異なるのじゃ」
「うーん……絆さんの攻撃力が高いお陰かな」
「何にしても結果オーライって事で良いんじゃね」
こうしてサクッとダインブルグサンドワームはあっさりと倒せてしまったのだった。
「おーしまいっと後はサクッと解体して素材確保かな?」
「そうじゃな。島主よ。頼むのじゃ」
「あいよー」
そんな訳でダインブルグサンドワームに解体を行って素材確保をした。
巨大蟲の~って付く牙や皮、角とかが主な素材だったね。
生憎新素材だし、ロミナが育てていたペックルでは加工出来なかったのでブレイブウサウニーに防具に加工して貰う事になった。
今後の戦いを考えて前衛のらるくが装備する事になった。姉さんも状況次第で着回すそうだ。
ワームレザーアーマーって装備だったんだけど着やすさから、らるくはクレイさんに重ね着で今まで使って居た装備に重ねていたようだった。
「いろんなイベントが発生するけどサクサクだね」
拠点に戻って戦勝会とばかりにダインブルグサンドワームが居た方角を見ながら俺と顔文字さんは雑談を行う。
「みんなのお陰じゃな。今までの歩みが嘘のようじゃ」
まあ……顔文字さんは大手ギルドのマスターだったけど、メンバーが色々と問題を抱えていたからね。
拠点の城も大分完成に近づきつつあるな。
「城も順調じゃ。この調子でいけると良いのう」
「そうね。ただ……作物が景観を損ね始めて来てるからどうしたものかしらねー」
ここで姉さんが来て、まあ……畑に関しての問題を指摘してくる。
具体的には研究用の畑ね。
配管工で有名なあの噛みつく花みたいなのがあったり、種を噴射する花や火炎放射が出来る植物とかも出来てきてるからその辺りは魔境だね。
「そこはしょうがない仕様じゃ」
「早く開拓を終えられると良いんだけどね」
硝子、第四都市でしっかりと釣りをしてヌシを釣っていてくれ。
俺じゃ無いなら硝子が釣ってくれればまだ我慢出来るからさ。
「最初はどうなるかと思ったけど絆が色々と監修してノジャ子に教えたお陰で軌道に乗ったわね」
「農業の基礎が出来れば本当順調の一言だったねークレイさん達が作ったポーションとかもかなり役立ったし」
尚、俺達は紅茶なんかも飲めるほどに環境が安定してきてるぞ。
姉さんやらるくもダンジョンに潜って素材確保をしてくれるし。
なんだかんだ今までとは違う面子との交流ってのも新鮮だったかな。
「色々と助かったのじゃ。所で実は非常に気になる事があるんじゃが聞いても良いかの?」
「何?」
顔文字さんは実に不思議と言った様子で頭を傾けながらステータスを確認しつつ尋ねる。
「何故か歌のスキル熟練度が上がっておってな。ポイントを割り振ると習得可能になっておるのじゃ。覚えが無いのじゃが何が理由かわかるかの?」
「……」
「……」
俺と姉さんは不思議に思っている顔文字さんに向けて黙り込んでしまった。
もしかして気付いてなかったのか?
顔文字さんって何かあると鼻歌を歌っている事を。
クワを振るのに始まり、休憩中とか何か作業をする合間にずっと歌っているのだ。
アレでスキルを振ってないとはな。
カニ籠漁よろしく、罠技能が一定ラインまであっさりと上がるって位には顔文字さんは歌っていたのだろう。
自覚無く歌えるって凄いな。
「歌ってスキル的にはどんなもんなの姉さん?」
釣りばかりしていたのでその辺りは詳しく無いので姉さんに聞いて見る。
そう言えば闇影が楽器演奏をやってみるとか言ってたな。
再会出来たら顔文字さんと組ませるのも良いかもしれない。
何か連携スキルが発動したりしてな。
「あまり取得している人は居ないけど、バフ……補助効果があるそうよ。それと魔法詠唱にもシナジーがあるそうね」
早口的な感じだろうか?
「いや、何故上がってるのか聞いたんじゃが……」
これって言わなきゃいけないの?
誤魔化してどうにかなるって話じゃ無いし本人が不思議がってるんだから言うしか無いか。
「ノジャ子、アンタ機嫌が良い時に時々鼻歌を歌ってるのよ? 気付かなかったの?」
姉さんがズバッと言い切ると顔文字さんが何!? って顔をしてた。
いや、そんなおかしな事?
「しらんかったのじゃ」
「農業をしてる時によく歌ってるよね」
「そうね」
「なんで黙ってたんじゃ」
「本人の集中方法なのかなと」
「ええ、妹の紡も似た感じに笑ってる時あるわ」
ハイテンションだからこその笑みみたいな感じで顔文字さんは歌を歌っている事なんだろうなとは思ってた。
こう、歌唱力は相当だから別の趣味なんだろうってね。
「そ、そうじゃのう。今後注意して歌わないようにせんとな」
「別に良いんで無い? ついでにあげれるなら損にもならないと思うけど」
何かの作業中にあげれるなら効率を考えると悪い手じゃないと思うけどなー。
船旅のついでに釣り技能が上がるみたいな一石二鳥をパッと出来るって意味じゃ腐らないでしょ。
「顔文字さんとしてはどうなの? 一気に取得でもして更にスキルの幅を増やす感じ?」
「いや、わらわは歌を上げる気は無いのじゃ」
「なんで? 魔法にシナジーがあるなら腐らないと思うけど」
「何がなんでもやらないのじゃ! 絶対じゃ!」
ってなんか珍しく顔文字さんは強めの口調で言い切った。
以降、時々歌っている顔文字さんだけど歌ったと思った直後に歌おうとしている自身に気付いて歌わないようにしているようだった。
まあ……それでも集中し始めると歌い始めるのが顔文字さんなんだけど。
どうしてそんなに気にしてるのかな?
アレかな? 歌うの好きだけどカラオケとかで歌って笑いものにされたとか?
クレイさんに雑談をしている際に話題に上げた所、苦笑されつつ彼女がこのゲームをする際に自ら課した制約みたいだから気にしてあげないようにとか言われてしまった。
かなり上手だと思うから気にしなくて良いと思うんだけどなー。
どっかで聞いた声な気がするんだけどね。
カモンウサウニー
そんなこんなで開拓は問題無く終わるはずも無くダインブルグワームを倒して五日後……城の建築が完了した。
オアシスのどこからでも見える城。尚、ウサギの耳っぽいのも城にはつけられて居る。
カルミラ島の拠点となっている城と規模の大きさが変わらない豪華な建築物。
これが個人に所有権があると思うと超が付く大金持ちって印象を覚えてしまう。
もはや国の所有権って感じで……俺もゲーム限定で領主って事なんだけど改めて考えると凄いな。
規模的に俺達の方の城と同じように大きな中庭に寄宿舎、食堂があり、温泉もどこからか引いてきたのかある。
オアシス内には目玉の博物館の他に工房も完備。
カルミラ島の工房は武具作成に使われるけどこっちは方向性が異なり調合や品種改良に重きの置かれる研究所と言った形相をしていてアトリエとかファクトリーって感じかな。
この工房内にそこまで広くは無い小さな畑があるのだけど、ここは特殊効果でダンジョン内と同じ成長速度で植物を発育出来るなんてものもあって品種改良を促進出来るようになった。
ゲームの便利性ってすげー!
ミリーさんとてりすが関わった区画は化石と宝石が随所に散りばめらており、カルミラ島とはいろんな所が違う。
コレクションルームにはこれまたミリーさんとてりすが収集した化石と宝石が飾ってある。
凄いのはミリーさんが独自にテキストで纏めた資料なんかも付け加えられていて、もう一つの博物館って所だ。
ちなみに……俺と一緒に悪乗りで作ったオリジナル恐竜なんかもコレクションルームに展示してある。
独自設定を娘さんに付けて貰う予定なので白紙のテキストを用意している形だ。
ちなみに城に付いた耳やウサウニーを模したポールや大きな人参のオブジェが各所のあるけれどこれはクレイさんがウサウニーにコインで交換した実用的な効果のある代物を設置して貰った感じ。
何でも植物の成長や品質の促進向上効果や防衛能力の強化なんかの効果があるそうで、外観との調整でこのようになったそう。
「一気に作りあげたよ。これで開拓が終われば良いんだけどね」
「これで出られるんじゃなー」
俺達はサンタ帽子ウサウニーを連れて城の玉座へと来る。
カルミラ島の時と同じく二つの玉座がある。
「よくぞこの地を開拓してくれたピョン!」
開拓終了を宣言するはずのウサウニーが言い切った。
もちろん、他のウサウニー達も集まって居て、ペックル達も同伴している。
キングペックルこと、クリスも玉座の間でペックル代表という形で立っているね。
「この地は昔、緑溢れる地だったそうピョン。それが砂漠となってしまい荒廃してしまっていたピョン。けれど領主様のお陰で復興の目処が立ったピョン」
お? バックストーリー的な奴かな?
「この地を緑溢れるようにするには後一歩ピョン!」
うん。だから解放宣言するんだよね?
って内心思っていたのだけど……サンタ帽子ウサウニーが勿体ぶっている。
「侵略者達の砦へのルートを確保出来たピョン! アイツらが外界へのルートを塞いでいるから倒して欲しいピョン」
サンタ帽子のウサウニーがそう言い放った。
「解放イベントじゃないのか」
「次のイベント?」
「みたいじゃな。ちょっと確認をするのじゃ」
顔文字さんとクレイさんがサンタ帽子ウサウニーを相手に色々と確認を行っている。
「さっきウサウニーが言った通りどうやらこのイベントをクリアしないと城を完成させても解放宣言が出来ないみたいだね」
「カルミラ島とは随分と違う要素が入ってるなー」
俺の時は城を完成させたらあっさりと解放出来たのに。
「四天王が邪魔をするのじゃ。しっかりと潰してやらねばならんとなのじゃ」
「攻勢に出るって事で良いのかな?」
「その様だよ。むしろダインブルグがここまで攻め込んで来る事を考えるとカルミラ島の方が不安になってくるよ。そっちでもイベントが起こってそうだからね」
あー……俺も結構不安になってきた。
「領主様に此度の戦いに備えて送り物ピョン」
そう言ってサンタ帽子ウサウニーは顔文字さんに手を差し出す。
「いつでもウサウニーを呼ぶ事が出来るピョン。御用があったらお手伝いをするピョン」
この台詞、ペックルの時と全く同じだな。
「あ、カモンウサウニーを習得したのじゃ」
「絆の嬢ちゃんがペックル呼ぶときのスキルだな。ワラの嬢ちゃん」
「そうじゃな! 何処でもウサウニーじゃ!」
「ここから更に発展するはずなんだけど……」
「後は既に解放済みだからこれが出来るピョン!」
って案の定顔文字さんのスキルもパワーアップをした様だ。
「カモンブレイブウサウニーも覚えたのじゃ!」
「それではお願いしますピョン!」
「前報酬にして決戦じゃな! 発展の邪魔をした魔王軍に反撃に出る時じゃ!」
「おっし! やってやろうじゃねえか」
「よろしくですピョン!」
と、ブレイブウサウニーがブレイブペックルの隣で片手を上げて自己主張する。
サンタ帽子ウサウニーの進化は都市解放が確定してからか。
「ここまで来ればあと少し、みんなで行こう。思ったよりも隔離されずに済んだね」
クレイさんがにこやかに渇を入れている。
そうだね。早く城を建築して娘さん探しを再開しないとね。
「えー、てりす達、結構ここにいる気がするわー」
「ダンジョン内で過ごした時間を考えると多いだろうぜ」
「あ、なるほど」