「そうね。特にノジャ子は多いけどあんまり苦に感じて無いようね」
確かに、一番頑張っていたのは顔文字さんだと思う。
残り数日の段階の工房で研究用の栽培加速施設が出来上がったけどそれ以外の時はよくダンジョンに潜って品種改良をしてたしね。
クレイさんが物資のチェックを色々としてくれたお陰で城の建設が完了した。
この辺りは商人としての能力が高い人が適任のようだ。
「ああ、アレはそこまで難しく無いのじゃ。田植えをするじゃろ? 水やりをしてポーションをふりかけ、昆虫や妙な病気が蔓延してないかチェックしたら寝るんじゃ。すると次の段階まで寝られるから同様にするだけじゃな」
もはや手慣れたとばかりに言ってるけど時間感覚麻痺しそうで恐いねそれ。
「正直、体感じゃが五日で一日と変わらんかったの。地上だと仕様が違うようで起きてる時間が短すぎると睡眠時間も短くなるようじゃ」
そこまで理解してる顔文字さんって本当、凝り性なんだな。
「それで攻勢に出るわけだけど皆して行く感じ?」
「でしょうね。んじゃ行くわよ」
姉さんの言葉に皆頷き……都市解放の為にクエストへと挑む事になった。
ウサウニー達に案内してもらうと言う形で移動して行くと……案内無しで歩くといけない砂漠の一角に、なんか大きなクレーターのある荒野みたいな所にたどり着いた。
ちなみに砂漠って文字通り砂しかないイメージを浮かべる人も居るけど荒野も砂漠と言う認識だったりするんだ。
人類が生活するには厳しい環境だとその名が付く感じなのかな?
海とかも飲み水の確保が難しいって所で砂漠みたいな所がある。
そこに禍々しい石作りの砦が建造されていて……ゲーム風で言うなら魔王の城と言っても過言じゃ無い様相をしているようだった。
ジャリッと地面は岩の部分と砂の部分が交互にあって、城の堀にはマグマが通っている。
「あそこじゃな」
「そのようだね」
「ここは……」
「ミリー、どうしたんだい?」
「いえ、採掘場などで得られた情報や石版によく似たクレーターがありまして……滅びた恐竜の都が眠っているとの話が記されて居たのですよ。ですけど砦があるので別の場所なんでしょうかね」
へー……恐竜の都か、なんかロマンがあるけど都ってどういう事なんだろう?
「後々該当する場所が何処かにあるんじゃないかい?」
「そうね。考古学の為にも探して行きましょう」
「じゃあ行こうか」
って皆して向かおうとした直後、ポーンとどこからかメールやメッセージ、チャットが届く音が聞こえた。
「「む?」」
俺と顔文字さんが同時に反応する。
「どうしたの? アンタたち」
「いや、突然何かが届く音が聞こえて」
と、システムを確認すると……テキストメール?
拝啓
外界とは隔絶していて呼ばれた人以外とは連絡が出来ないこの状況でメールが届くってどうなってるんだ?
もしや何かしらの要素で硝子達が送ってくれたのかな?
ボトルメールとかだと届くとかありそうじゃん。
そう思って確認すると……。
拝啓ブレイブペックル様
いきなりこのようなお手紙を送ってごめんなさい!
でも戦場で貴方を一目見た時から私は核石を鷲づかみされた様に電撃が走って毎日貴方の事ばかり考えてしまって夜も眠れません。
優しく皆の前に出て守るそのお姿、とても真似できる様な事ではありません。
そして憤怒の力で敵を屠るその雄々しさ、私の心まで燃やし尽くして欲しいと常々思ってしまいます。
上手く伝えたい事を伝えられるか本当に不安だけどこうして思いの丈を綴って居ます。
貴方が今挑もうとして居る相手は魔王軍四天王の一人、ダインブルグよ。
ダインブルグはとても強力で土の力を使いこなし怪力を所持する魔物で例え強い貴方でも正面から勝てるか分かりません。
だけど安心して、ダインブルグに勝てるように私が色々と助言をするわね。
ダインブルグの砦内のマップを同梱するわ。色々と罠等のギミックがあって私も全部把握はしてないけどダインブルグの元に行くには途中で杯に液体を満たして行かないと行けないから注意して。
それでボスのダインブルグは風の魔法が効果があるけど、実は水の魔法にも弱いの。だから魔法で挑む場合はこの二つと難しいかもしれないけど植物の力で挑むと効果的ね。
出来れば要石~と付いた武器を持っていくと効果的だからお勧めするわ。
入手方法はセン地方のクエイクキャットフィッシュの素材で作れるわ。
次に戦闘が始まった時は格闘と角による突進攻撃をして来るけど、大ぶりの打撃は3発目にフェイントをしてくるからそこを見切って4発目の突進で柱にぶつけると角が刺さって大きな隙が出来るわ!
地響き攻撃をしてきたら落石に注意しつつダインブルグの右後方で待機すると安全にやり過ごせるの!
体力を半分以上減らすと斧を持って振りかぶってくる様になって攻撃が強力になるから注意ね! それも1……2! のタイミングでパリィ出来るわ。
難しいなら部屋の奥にある石像の前に立つと強力な叩きつけを絶対にして来なくなるから安心して、仮に石像を壊したら斧を落して土下座するからその間にボコボコにして一気に削ると良いわよ!
削りきれなくても石像をダインブルグに壊させると勝手に大ダメージを受けて瀕死になるから後はすぐに倒せるわ!
ブレイブペックル様、どうかご無事でダインブルグを倒せることを祈っています。
貴方を思う私より、愛を込めて……。
「なんだこれ? 攻略情報? ブレイブペックル宛てに」
「何言ってるのよ? アンタ」
「いや……なんか変なラブレターみたいなメールが来て、砦の見取り図まで同梱されつつボスのモーションとギミックが説明されてる」
「はあ?」
姉さんが訳が分からないって言いたい気持ちは分かる。
俺もいきなりこんなもん送られても理解出来ないぞ。
そもそも何処の誰だよ。ブレイブペックルに謎のラブレターを送ってる奴は。
俺は皆にメールの内容を伝える。
「これまた随分と奇妙なイベントだね。だけどギミックを教えてくれるのは助かるのかな」
クレイさんが苦笑してたぞ。
ブレイブペックルを見ると……困った様に眉を寄せているぞ。
そりゃあ知らない奴から謎のラブレターが送られて来たらそんな反応もするか。
「顔文字さんも似た感じ? なんかラブレターとしか言いようが無いんだけどさ」
「いや、わらわの方はブレイブウサウニーへの果たし状じゃな。ブレイブウサウニー、お前に決闘を申し込むなの! と始まり第一の刺客、ダインブルグが目の前の砦で貴様を待っている。まさか逃げるなんて事はないはずなの。逃げたら笑ってやるなの。プププー! っとかなり長文の挑発がされておるの」
発信者は別か? 語尾がなのって個性的だな。
「ギミック説明などは同じじゃな。挑発的で、お前は止められないと思うなのーと馬鹿にしてるようじゃ。雑魚のお前にヒントを与えてやったって体裁じゃな」
「調子に乗るなですピョン! 絶対にやってやるですピョン!」
ブレイブウサウニーは会話に反応している様でやる気を見せてぶんぶんと槍を振っている。
やってやるってのが殺るって声音に聞こえた気がする。
「妙な要素があるけど、まあ良いのかしらねー」
姉さんが大きくため息をしながら事態を受け入れる。
「何か面白そうね! 連続クエストかしら」
「手紙の発信者にいずれ会えるんじゃねえの? ブレイブペックルとウサウニーを連れてるとよ。目が離せねえな」
クエストマニアのらるくとてりすが目を輝かせている。
まあ……確かに色々とありそうではあるね。
「ビッグブレイブペックルで代理をしたらイベントが変化するんじゃねえの?」
「ちょっと、私に何をさせるつもりよ! その手のイベントと分かったら絆にこれを着せるからね」
「いや、攻撃力が下がりすぎて困るし」
ブレイブペックル着ぐるみのマイナス効果は馬鹿に出来ないんだぞ。
俺が装備しても性能を全く引き出せない。
「絆さんとブレイブペックルはセットなので装備する意味は無いと思うよ」
クレイさんの考えはごもっとも。
俺が使役しているブレイブペックルなんだから俺がブレイブペックル着ぐるみを着る必要は無い。
後は顔文字さんに送られて来た見取り図に関する確認を行うと、仕掛けが若干異なるのが分かった。
「プレイヤー毎にマップ構造も少し違うのね」
「誤差の範囲だけどね」
「何にしてもここを乗り越えないと都市解放出来ないんだ。早く行こう」
「うん」
そう思ってみんなして砦の方へと向かう。
ゴゴゴ……と、暗雲蠢く空模様とマッチしていてラストダンジョンって雰囲気がバリバリしてるなー。
で、道中の砂地を確認してると魔物が居そうな雰囲気なのに出てこない。
ミリーさんがチラチラと砦の裏手の方に視線を向けてる。
この辺りに何かある的な話をしてたし周囲が気になるんだろうなぁ。
みんなして砦の前に立つと待ちかねたとばかりに砦から架け橋が降りて来て道が出来る。
そして……ゲート登録のポータルみたいな物が扉の前に出現した。
「あそこが入り口のようだね」
「ああ」
「ま、内部構造とギミック情報が先に出てるって事はサクッと終わらせられるって事だぜ」
「それでも厳しいって事もあり得るから油断は大敵ね」
らるくとてりすが念押しをしてくる。
顔文字さんが先頭に進んでポータルに近づこうとしたその時――。
「お!?」
ゴン! っと俺だけ何かバリアみたいな物に弾かれた。
なんだ? 前に領主クエストをしている際に色々な所に移動中に入れなかった時の壁みたいなものがここで俺の目の前に出てきやがったぞ。
「どうしたのじゃ島主?」
「いや、なんかいきなり壁みたいなものが」
「みたいね。アンタが進むと壁に波紋みたいなものが出来てるわ」
障壁に俺が触れると波紋が生成される。
「一体どうなっておるんじゃ?」
と、顔文字さんが近づいて俺の後ろ側へと回り込むと壁がフッと消えた。
「おわ!?」
いきなり消えるなよ! 転び掛けただろうが。
「消えた?」
「なの――じゃ!?」
で、ポータル側に俺が進むと今度は顔文字さんが俺と同様に障壁に阻まれる。
「今度はノジャ子が弾かれてるわよ」
「ワラの嬢ちゃんもか」
俺と顔文字さんの様子をみんなして確認する。
「絆さん、ノジャさんの後ろに回ってくれないかい?」
「うん」
クレイさんの言う通りに顔文字さんの後ろに行くと顔文字さんを阻んでいた障壁が消えて通れるようになった。
「うーん……この流れは、ノジャさんと絆さんは同時にこのダンジョンに挑めないって事のようだね」
「ここまで露骨に阻止されるとそう思うしかないよな……」
「歯がゆいのじゃ」
俺と顔文字さんの同時パーティー不可って制約厳しくないか?
「とは言っても二人とも領主って事だからね。先ほどのメールもあって可能性は無くは無かったよ」
ああ……もしかしたらリーダーの影響でイベントに変化がある的な?
討伐隊
「リーダーにした人物でイベント変化でも良いような気がするんだけどなぁ……」
自由の幅が狭まってると思うんだけど。
「フラグ管理も関わってるのかも知れないね。四天王と戦う際にさ」
「うーん……」
「じゃあとりあえず絆とノジャ子だったらどっちを連れて行くのが良いかしら」
顔文字さんと俺のどちらかと言う選択をここで求められるのは、選ばれなかった方が激しく虚しい感情に晒されそうなんだけどね。
姉さん、この辺りの配慮足りないね。
「バランスを考えるとノジャさんで、火力で一気に進むなら絆さんになるね」
回復と支援特化構成の顔文字さんと何時の間にか馬鹿火力となった俺とで皆がどっちをリーダーにして行くか話し合っている。
クレイさんやミリー、てりすは魔法の後衛構成でらるくと姉さんが前衛……顔文字さんはヒーラーで前衛も擬似的に出来る。
「クレイ、バランスでノジャ子って言ってるけど魔法系が三人も居れば穴は塞げるでしょ。絆の攻撃力が突き抜けてるから効率を考えると絆じゃないの?」
姉さん、もう少し遠慮って事をしてほしいんだけどなぁ。
顔文字さんの面子を立てるって意味で。
まあ、姉さんの装備しているブレイブペックル着ぐるみの効果で回復も多少出来るからヒーラーが不要って考えも分からなくはないんだけどね。
クレイさんって支援の効果時間把握も出来てそうだし。
「そういった考えもあるね」
「確かに効率を考えるとその辺りが無難じゃな」
割り切りすげー……まあ、俺も和を乱すような発言は憚られるんだけどさ。