「領主故に討伐隊を派遣させたと言う扱いなのじゃ」
心配して居る俺を察したのか顔文字さんが両手を挙げて言い切る。
まあ、ペックルに洞窟探索させたりの指示をした事あるから分からなくもないけどさ。
こう言った大事なクエストで不参加というのもどうなんだろう?
「ただ……なんとなくだけど絆さんは行けないような気がするよ。こういう時は」
クレイさんが苦笑いをしながらそう発言した。
「なんでよ?」
姉さんがクレイさんに尋ねた。らるくも同意見なのか頷いて居る。
「試しに絆さん。ポータルをチェックして見て欲しい」
「わかった」
クレイさんに言われるままにポータルに近づくと……。
このダンジョンは該当プレイヤーの達成後に挑戦して下さい。
と、表示されてダンジョンへの侵入が出来ないようだ。
「入れない」
「やはりね。領主となったノジャさんがここで活躍しないというのは美味しい展開じゃない。別の領主が解決というのは問題があると思ったんだ」
なるほどなー……となると俺は参加不可能って事ね。
ちょっと納得してしまった。顔文字さん達のイベントにゲストの俺が参加してクリアは確かに頂けない。
ただ、顔文字さんがリーダーで俺が仲間として入っても良いような気もするのだけどな……やっぱり。
後に分かる事なのだけどここのダンジョン、一般プレイヤーだとNPCに雇用ペックルかウサウニーか、もしくは他の開拓生物で違いが出るのが検証で判明する。途中にあるギミックに影響があるみたい。
ウサウニーを連れて参加しなきゃ行けないとかあるようだ。
つまりダインブルグの砦(ウサウニー)とダインブルグの砦(ペックル)と内容が変わる仕掛けだったようだ。
「それならしょうがない。硝子達と再会した時にこのダンジョンに挑むさ」
俺が入れないのだから顔文字さんに席は譲ろう。
「ちょっと気まずいのじゃ」
「イイのイイの、実はちょっと気になってた所があってさ」
俺は城の堀を指さして釣り具を出す。
「クレイさん達がやっとの事作ってくれた釣り具の検証をしたかったんだよね」
そう、やっとの事、マグマ対応の釣り具をみんなが作ってくれたのだ。
まずてりすがラーヴァルビースピナーと言うマグマ耐性のあるルアーを作成、目の部分がルビーを使った代物でマグマの中でこそ性能を発揮するスピナーベイトだ。
次にクレイさんが溶岩耐性が付与されたワイヤーを作った。
錬金術でこんな代物が作れるのな。
クレイさんはブレイブペックルとてりす、ミリーさんの連携スキルで作成してくれた一品である。
そうして出来上がったのは良いけど丁度、城の建築が終わってこうして砦に挑むって事になってたんだ。
空気を読まずにダンジョンに行ってマグマの中に居る魚を釣るぜー! とは言えなかったので丁度良い。
「この砦の堀にも何か潜んでいるかも知れないので挑戦だ!」
「この子ったら……」
「し、島主がそれで良いのじゃったら良いのではないかの」
「絆の嬢ちゃん徹底してるぜ」
「絆ちゃん楽しんでるー!」
ははは、褒めるな褒めるな。
このマグマの中にも何かが潜んでいる可能性は捨てきれないぞ。
フィッシングマスタリーと狩猟具のスキルがマグマ釣りに反応してるのできっと何か釣れるのじゃ!
ってね。
「……」
で、ここで会話に参加せずに上の空のミリーさんの肩にクレイさんが手を置く。
ああ、早く都市解放して娘さんを探したいんだね。
ギミックまで分かってるんだからサクッと終わるよ。
「この辺りにある謎が気になるんだね。ここは私に任せて君は周囲を調べてくると良い」
え? ちょっと待って、娘さんを気にしてる訳じゃないの?
「でも……」
「あの子の誇れる親になりたい君が考えて居る事は分かるさ。考古学者としての調査も大事だよ」
「……わかったわ」
いや、なんか二人の空気を出してるけどつまりミリーさんも砦攻略は不参加で良いの?
「まあ……バランスは大事よね。あんまりインスタンスダンジョンに頭数連れてくと敵のHP増えたりするし」
「そうだな。厳しいようなら改めてミリーのおかみさんを呼んで挑めば良いんじゃね」
姉さんとらるくが謎の空気にフォローを入れる。
「何より、絆さんの方で何か別のイベントが起こったりする可能性もありえる、その時に誰か近くにいると心強いだろう」
いや、そんな配慮されても微妙なんだけど。
「えーてりすも絆ちゃんの方で起こる奇妙なイベントあったら見たいー」
「俺の周りにそんな変なイベント無いから!」
「河童」
姉さん、お口チャックしようね!
それは偶然河童を釣り上げた所為で変なイベントを見つけちゃっただけだし、闇影達から聞いただけでしょう。
「さすがにそんなすぐ妙なイベントは起こらないのじゃ。攻略情報も分かってるし初見クリアをしてサッサと終わらせるのじゃ」
「そうだそうだ! 姉さん! サクッと攻略してくれば良いさ」
顔文字さんの援護射撃に便乗して皆に行くように催促する。
俺はこのイベントを硝子達とやるから良いの!
気にせずに行って来い、みんな!
「まあ……しょうがないわね。絆の火力を頼りにしてたんだけどね」
「システムで行けないならしょうがねえよ。んじゃ行ってくるぜー」
「なのじゃ」
「絆さん、釣りが早く終わったらミリーの手伝いをしてくれると助かるよ」
「わかったよ」
って事で俺とミリーさんを残してみんなは砦の中へと入って行った。
「では調査に行きますね」
「うん。何か妙な代物があるのかな?」
「ここに来るまでに少し確認してたのですけど砦の裏にそれらしいものがありましたね」
「へー」
という事でマグマの堀伝いにミリーさんに付いていくと……岩場がある。
魔物は居ないか。
イベントマップみたいな場所だから出てこないんだろう。
逆に出てきそうではあるんだけどなぁ。
その辺りは既に蹴散らしているって体裁なのかもしれない。
メール内にあった見取り図にも結構な数の魔物の配置が書かれていたしな。
ラーヴァブルーギル
「それでは」
「うん。何かあったら連絡してくれたら行くよ」
「はい。よろしくお願いします」
ミリーさんは俺に手を振って岩場へと向かって行った。
さて……俺は俺でレッツフィッシング!
マグマ用の仕掛けでマグマにルアーを投入!
「ほ!」
ここでフィーバールアーを考えるだろうがちゃんと釣り具が対応しているかの検証は大事だ。
実は時間に余裕のある時にダンジョンのマグマ地帯にフィーバールアーを使って針を落したのだけど失敗した。
万能のフィーバールアーも限度は存在するって事だね。
ドボン……とマグマ対応のラーヴァスピナーがマグマの中に落ちる。
キリキリ……っとリールを巻いて手応えを確認する。
うん、どうやら糸も切れる様子も無くマグマ内でルアーは溶けずに泳いで居るようだ。
実験は成功だな。
やっとマグマ釣りが出来る。
「ここの堀では何が釣れるかな」
俺の中の冷静な部分がマグマで釣りとか頭大丈夫? って囁いているのが居るが異端審問に掛けるぞ。
マグマの中でも釣れる魚が居るのだから、そう言ったものなのだ!
って事で釣り糸を垂らして様子を確認。
ここに仮にヌシが居るとしたらどんなヌシが居るだろうか?
それ以前にマグマの中に生息する魚ってどんなのだろう?
まずは一匹釣って確認だ。
っと、クイッとルアーを適度に動かしながら魚の本能を刺激して様子を見る。
……釣れないか?
砂漠での釣りみたいに何かしらの条件が必要かもしれない。
なんて思っているとガクッと何かが引っかかった。
「フィーッシュ!」
引きはそこそこ強い。
開拓地に来てから引きが弱い魚ばかりで拍子抜けだった所から考えると歯ごたえがあって良さそう。
ただ、それでも釣りづらいかと言えば否でテクニックを駆使して安全に手元にまで引き寄せられた。
「おーし、クレイさんが用意してくれたマグマ用の網で……」
この辺りの配慮が出来るクレイさん凄いね。
こんな事もあろうかとって感じでいろんな不思議道具を開発してくれるんじゃないだろうか。
なんて思いつつ堀のマグマ近くまで網を伸ばして魚を入れて持ち上げる。
マグマを払って地面に投げ出して魚を確認っと。
「ラーヴァブルーギル」
……マグマに生息するブルーギルって扱いなのね。
そう言えば日本でも有名な皇族の堀とかでブルーギルが見つかったとかあるらしいからあり得ない話じゃないか。
熱そうだなぁ。
とは思いつつラーヴァブルーギルを解体すると溶岩魚の鱗(小)や溶岩魚の骨(小)とかが得られた。
鱗が黒くて……黒曜石っぽい感じ?
溶岩魚の魚肉も手に入った。そのままでも刺身として食べれるっぽいなぁ。
ブルーギルなのに……さすがに高温のマグマに生息する寄生虫は居ないって事かな?
ただ、身が熱くて温度が下がらない。
食べれるようにするには料理技能がそこそこ必要そうなのは変わらないかな。
俺だとギリギリ調理出来るってラインだから姉さんやてりすと協力が必要だろう。
「次はっと」
同様に釣り糸を垂らして確認していると、ラーヴァブルーギルが何匹か引っかかった後に別の魚が釣れた。
「フレイムバス」
今度は鯉が釣れちゃったよ。
ぶっちゃけダークバスの亜種な見た目で燃えてるコイだ。
解体素材もラーヴァブルーギルと似た感じで必要釣り技能は高めだけど俺からすると簡単じゃないけど難しい程ではなく普通な感じだ。
「少し期待外れだったかなー……それとも仕掛けが適してないから引っかかってるって事か」
うーん……もう少し検証が必要かな?
と思いつつ……深めにルアーを沈めているとガクッと強めの引きを確認。
「おっし! ヌシかー!」
意気込んでリールをぐるぐる回しつつエレキショックを放つ。
あ、マグマの補正なのか効果が薄いようだ。
リールも引っかかった魚に攻撃できるような属性を考えないといけないか。
クレイさんとしぇりる辺りに相談だな。
お? いい感じに掘の壁沿いを泳いでる。
「喰らえ! 破城槌!」
ゴス! っと魚を掘の壁にぶつけてやると良いダメージが入ったのか魚の動きが鈍くなった。
よーしよし、フィッシングコンボが作動するか様子を見ながら手繰り寄せる。
すると今度は獄炎ウナギという燃え盛るウナギが釣れた。
「リアクションに困るなぁ」
ウナギ大好き紡に見せびらかすのが無難かな?
解体すると骨と身になった。
しかし……マグマに生息する魚って最初から調理済みかと思ったけど身を食べようと思えば食べれるのが多いなぁ。
あ、このウナギ、解毒が必要っぽい。
ええっと……水で血を洗うのが解毒なのかな?
ウナギの毒は火に弱いけど獄炎ウナギは水に弱いのね。
なんて調子にマグマ掘で釣っているとズズズ……って音が後ろの方から聞こえるので振り返る。
すると大きな背びれっぽいものを動かす魚が砂の中を泳いでいた。
攻撃的な魔物ではないようだけど、デカいな……魔物っぽいけど……。
見ることが出来るタイプのヌシかもしれないぞ。アレ。
うん。マグマ釣りとしゃれ込もうかと思ったけど気になって集中できない。
あの大きな魚の魔物を釣ってからにしよう。
そんな訳で砂海用のルアーに変えて物陰からキャスティングに入る。
仮にあれがヌシだったら警戒心とか強いかもしれない。
「……」
デザートシャークを釣り上げた俺は砂漠に生息する魚の釣り方も習得済みだ。
砂の魚は基本、音に敏感なので岩などに乗って静かにルアーを落すのが大事。
日中で砂上に少し顔を出したりもしていたのでハイディングハントも作動させて完全に姿を隠してから引っかかるのを確かめる。
チリンチリンと……砂用のルアーに仕掛けられたギミックが砂の中で小魚としての音をかき鳴らす。
引っかかるか?
若干不安になっていたけれど砂の中を泳ぐ大きな魚は俺の仕掛けたルアーの元へと近づき……食いついた。
「フィッシュー! うお!」
竿を上げて針を掛けると恐ろしく強い引きが発生して抵抗を始めた。
ザァアアア! っと砂の中を縦横無尽に駆け回り、リールから高速で糸が飛んで行く。
く……下手に止めたらこれは間違い無く切れる。
狩猟具のスキルとフィッシングマスタリーの自動補正でリールを巻くまでの距離が算出されたって所か。
無理矢理釣り上げるには難易度が高めの奴を引っかけたって事で間違いは無さそうだ。
「こりゃあ良い相手だな。みんなが帰って来るまでに釣り上げてやる!」
ワクワクしてきた!
引っかかった大きな魚は……うお! 砂の中にある岩を跳ね上げてこっちに向けて飛ばして来やがる。