もしかしたらチャット禁止地域とかそういう設定をされているのかもしれない。

にしても幽霊船っての意識し過ぎだろう。

「硝子がいるんだ。本人も大丈夫って言っていたし信じよう」

数分は扉の前で開くのを待ったが開ける事も開く気配すらなかった。

もしかしたらワープタイプの構造でどこかに飛ばされたのかもしれない。

こうなると俺達がこのまま黙って待っているのは得策じゃなくなるな。

そこ等辺はアルトが硝子としぇりるに話してくれると信じよう。

あいつ、地味にゲームに詳しいからな。多分大丈夫だ。

「ともかく別の通路を探してみるか?」

「わ、わかったでござる」

「ほい!」

怖がっている闇影と喜んでいる紡。

対照的な二人が残ったな。

正直、混ぜるな危険な感じの二人だ。

まあ良い。今は三人と合流を果たす事だけを考えよう。

「あっちに通路があるなって、人数が減ったからか暗いな」

「カンテラは機能しないみたい」

「ゆ、幽霊の所為でござるか?」

「いや、そういう風に設定されているんだろ。そうだな……」

光のルアーが装備されたままの釣竿が目がいった。

使えるか?

実験に取り出して、釣竿を振ってルアーを飛ばす。

「おお、見えるな」

まあルアーの部分だけが微弱に見えるのでブーメランライトみたいな感じだ。

それにしても飛距離が長いな……。

コツンッ!

そんな音と同時に糸を通して光のルアーに何か当った感触が響く。

壁ではなく、骨の様な物体に当たったと思う。

幽霊船でモンスターと言えば当然、アレだよな。

「闇影、紡! 何かいる。気を付けろよ?」

「むふー!」

「だ、だ、大丈夫でござる!」

う~ん……ちょっと大丈夫じゃ無さそうだが信じるしかない。

リールを巻いてルアーを戻し、シルバーガラスキを取り出す。

一応以前の奴よりランクアップした武器なので信頼はできるはず。

前方からはガタガタと木々と何かをぶつける様な音が響く。

その音の正体も直に判明した。

やはりモンスター。

頭にバンダナを巻いた骸骨……パイレーツスケルトンだ。

「……? なあ、海賊って割には服がなんか変じゃないか?」

「そうなのでござるか?」

「あたしはわかんない! こういうデザインなんじゃないの~?」

そう言われればそれまでなんだが。

パイレーツスケルトンはボロボロになったならず者の衣服、というよりはボロボロな紳士服みたいな、もうちょっと気品を感じる衣類だ。

考え過ぎかもしれないがモンスター名を見て初めてパイレーツスケルトンだと分かった。

「おっと!」

考えに没頭しているとパイレーツスケルトンは持っていた剣、カトラスを振りかぶってきた。その攻撃を辛うじて避ける事に成功。船上戦闘スキル様々だな。

今はそんな事考えている場合じゃない。

早く、硝子達と合流してダンジョンの仕組みを理解するのが先決だ。

何より紡は船上戦闘スキルが低い。

そうなると前衛である俺が敵を抑えないと話にならないからな。

「スライスイング!」

初級解体スキルの二番目攻撃スキルだ。

クレーバーが力を込めた一撃に対して、こっちは切り裂く事に重点を置いた攻撃だ。本来は骨の様な物理攻撃と相性の良いスケルトンには効き辛いが、使わないよりはいい。

「え?」

赤い発光の伴ったスライスイングが命中したパイレーツスケルトンはあっさりと倒れた。

その死体に怪訝な目を向けるが、動かない。

いや、そんなバカな。

客観的に分析すれば俺はアルトの次に弱い。

無論、商売を第一に行動していたアルトを比較対象に持ってくるのはアレだが、パーティー内での俺は解体スキルと釣りという名の食料調達が主だ。

そんな俺の、それも解体武器の攻撃スキルを一発食らった程度で死ぬって何かおかしくないか?

「全部倒しおわった~!」

「思ったより怖くなかったでござる」

「そうか……気の所為か……?」

まあ良い。

ともかく俺達三人は幽霊船内の探索を始めた。

ギミック

「……一体なんなんだ、ここは」

探索を始めて既に数時間が経過していた。

分かった事といえば地図を多少把握した程度で、船内がどうなっているのかまるで解らない。敵は前や後ろからやってきて、時間の経過と共に増えている。

そして判明した事はパイレーツスケルトンが復活系モンスターである事。

倒しても一定時間経過すると元通りに復活してプレイヤーを襲う。

尚、経験値が入ったのは最初だけで以降は0。

ダメージを受けた場合、回復する手段が乏しい。

一応はシールドエネルギーの範囲で戦えているが、数の増加と共に受けるダメージも増えて来ている。エネルギー減少も時間の問題だろう。

「闇影はもう大丈夫っぽいな」

「さすがに何時間もいれば慣れるでござるよ」

「がんばったね。闇ちゃん!」

「紡殿……」

なんかおかしな二人が友情を深め合っている。

そうなると硝子達はアルトと友情を……なんだろう、釈然としない。

いいや、気にしない。

それにしても長い事彷徨っているが、硝子達と遭遇しない。

ワープポイントの関係で出会えない場所にいるのかもしれないが、連絡手段すらない。

これはどういう事だ。

RPGに謎解きダンジョンといえば切っても切り離せない要素なのは確かだが……。

「あれ?」

「どうしたでござるか?」

「なにかあった~?」

現在歩いている場所、そして地図を見比べてみる。

良く見ると地図と現実の構造が違う。

「地図が間違っている……」

そうなると地図を全部埋めた所で何の意味もない。

良く考えたら途中何度も扉を潜ったりしている。

仮にワープ機能が備わっていた場合、同じ場所をグルグル回っていても気付かない。

通りで広いと思った。

これはゲーム内ギミックだ。

だが、種さえ解れば攻略の仕方も出てくる。

俺、RPGのこういうギミック解くの好きなんだよな。

MMORPGをそこまで熱心にやらなかったのはMMOはキャラクター育成の方に重点を置かれているから、こういう謎解きとか少ない、というのも理由の一つだ。

「紡、ちょっと考える。敵を近付かせないでくれるか?」

「ほい!」

出発点からの徒歩経路を全て割り出す。

そこから入った扉の数、入った方向、道の長さから逆算していくと……。

八箇所ほど行っていない場所がある。

仮に現在地の割り出しが正しいとして、八箇所の一つに一番近いのは。

「わかったぞ。こっちだ」

そう告げると紡は経験値の入らないパイレーツスケルトンを撃破した所だった。

紡は何か妙に目をキラキラと輝かせている。

こいつ、RPGを後ろで見ているの好きだからな。

というかゲームは全部好きなんだけどな、紡は。

「何がわかったのでござるか?」

「ああ、地図が間違っているなら自分の頭を信じるしかないだろう? だから最初から通った経路を割り出したんだ」

「そんな事ができるのでござるか?」

「昔のRPGじゃ当たり前だぞ? まあ紙とかあれば紙使うけど、今は持ってないからな」

攻略ホームページとか使えば楽なんだろうが趣味じゃないんだよ。

その所為で謎解きダンジョンに数時間引っかかって困る事多数。結局、紙にダンジョンの形状や出る場所なんかを記載していくうちに覚えた。

まさかこんな所で役に立つとは思っていなかったが。

「あった。見た所……ホールか?」

三人で八箇所の一つを訪れると大広間みたいな場所に到着した。

天井にはシャンデリアが飾られており、青白い部屋が逆に怖さを引き立たせている。

いや、おかしくないか?

「なあ、ここって幽霊船って事になっているけど、元は何の船だと思う?」

「海賊船ではないのでござるか?」

「それはありえない。海賊船にこんな豪華な場所があるか」

「だけどモンスターは海賊だよね」

「そうなんだよな……」

単に現実でモデルにした船でもあるのか。

あるいは何か謎解きの一つで、それすらもミスリードという可能性。

「ともかく辺りを探索して――」

突然ガタガタと室内が揺れ始め、音を立て始める。

そして頭上を眺めるとシャンデリアが大きく揺れていて落ちてきた。

「避けろ!」

叫びながら横へ飛ぶ。

あんなトラップ受けたらシールドエネルギーだけじゃ足りない。

爆発にも似た破砕音が鳴り響き、シャンデリアが飛び取る。

若干尖った破片が命中したが受けるダメージは10だの20だの許容範囲内。

木片や木々の粉が舞い上がり良く周りが見えない。

「闇影、紡、大丈夫か?」

声が返ってこない。

もしかして当ったんじゃないだろうな。

いや、仮に当っても闇影なら即死はありえない。

あれでパーティーメンバー中一番のエネルギー、もといHPの所持者だからな。

「ちいっ! また分断トラップか」

大広間だった場所は似た別の部屋に変わっており、闇影と紡の姿はない。

怖い、という気持ちはある。

ホラーなんかで怖いという気持ちを長らく忘れていたが、初めてみた映画はこんな気分だった気がする。

長く一緒に行動した仲間とはぐれるのは怖いものなんだな。

なんというのか、小さい頃デパートで一人待っていた記憶を思い出す。

今考えれば特売か何かだったのだろう。

母さんはここで待っていてと一言残すと俺はベンチで待つ事になった。

しかし無用心だよな。子供が誘拐でもされたらどうするんだ。

ともかく俺は母さんを待った。

最初は大人に頼られた事で嬉しくなったりもするんだが、時間と共に心細くなって、辺りには知らない人しかいなくて、怖くなっていく。

自分は捨てられたんじゃないか、みたいなありえない想像をしてな。

そうか、一人っていうのは怖いのか。

いつのまにか硝子がいて、闇影がいて、しぇりる達と一緒に行動する様になっていたから忘れていた。

「早く、謎解きして合流しないとな!」

俺は頬を両手で二回叩くと気合を入れて歩き出す。

地形としての現在地は解っている。

このゲームは現実と同じく建物の大きさは現実に比例する。つまり一軒家に不自然な空間があった場合、隠し部屋などを外から見つける事だって出来る。

そこで周った範囲から、行っていない場所は……。

「あっちか」

俺は道を急ぐ。

途中パイレーツスケルトンが徒党を組んでいて困った。

硝子や紡達に任せ過ぎだな。これからは戦い方を学んでプレイヤースキルを磨くか。

せっかくあんなに強い奴が周りにいるんだから教えてもらうのもいいな。

「……今、行くからな」

俺は既に解答を導き出された道を走った。

この寂しさを晴らす為に。

守るべき敵、倒すべき敵

「……ここで最後だ!」

一人になった俺は行っていない場所を駆け回ってギミックの謎を解いていた。

ワープ構造を変化させる類の物があって何度か迷ったが、ワープ経路の変更と共に開けた道から行ける場所にそこ『船長室』はあった。

俺は武器を構えて硝子がやった方法と同じく扉を蹴り開けて、敵の攻撃に備える。

数時間前はのんびり見ていたが、意外にこの手法は役に立つ。

そういえばVR系のFPSでも使われる手だったか。

……攻撃はない。

一度顔を出して、何かいないか確認する。

何もいない。

辺りに気を使いながら部屋へと足を踏み出した。

「まさしく船長室って感じか」

部屋にはボロボロに腐食した大きな作業机とイスが置かれている。

壁際には本棚が置かれており、その後ろには何かの地図があった。

これまでの道に鍵や特別なアイテムの類は見つけていない。

もちろんパーティーメンバーの誰かが見つけた可能性は高いが、判明していない不確定要素は見付かってから考えれば良い。

それにしても本、か。

これまで幽霊船内で本などが置かれた部屋はなかった。

俺は少し気になって本棚を漁る。

何個か触れると読む前に所有者を選ぶみたいに崩れ落ちた。

システム的に読める物が無いのかもしれないな。

と、最後の本を手に取ると崩れずにページを捲れた。

……日記?

触れるだけで壊れてしまいそうな色焼けした本にそう書かれている。

著者は……ハーベンブルグ・ミーフィファナと高貴っぽい仰々しい名前だ。

おそらく船長の名前とかそういう所だろう。

「日本語じゃない……あれ? 読める様になった」

英語かどうかは解らないが途中から日本語に変わった。

きっと雰囲気重視に作られていて、プレイヤーが読める様に変換するのだろう。

なになに?

――○月×日。私はハーベンブルク。伯爵の地位を承った者である。

私はさるお方よりあの島を任せられた。

あの島は諸外国との国交に必要な、決して失ってはならない大切な島である。

これは私が己を戒める為に書いた書記である。

未来の私よ。これを見る度に自身を戒めて欲しい。

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