砦内でズラーっと一列で並んでいる列とは別のガラガラの受付がある。

俺たちの後から来たプレイヤーがチョロッとその受付に話しかけるのだけど、なんかそそくさと長蛇の列の方へと行ってしまう。

まあ……良いか。

俺はその受付の方へと向かう。

俺の前に並んでいる人がその受付に声を掛けると。

「ようこそいらっしゃいました! ミカカゲ国へようこそ……こちら、貴族地位所有者用の受付でございます。一般の冒険者の方はあちらの冒険者窓口でお尋ねください」

と、NPCが長蛇の列の方を手で指し示している様だ。

……とりあえず俺も声を掛けよう。

「ようこそいらっしゃいました! ミカカゲ国へようこそ……カルミラ島の島主様!」

うお。反応が違うぞ。

「こちらが滞在期日無期限のミカカゲ国の栄誉通行手形になります。お受け取りください!」

「あ、ありがとう」

サッと、通行手形と言う木製のアイテムを受け取る。文字が金色で書かれているなぁ。

「ミカカゲ国では他国から来る者達には滞在期間を設けております。普通の冒険者の方々は通行手形を受け取り、国内で依頼や危険な魔物の討伐等を行って実績を稼いで行き、通行手形の格を上げて行くことで滞在期間と関所を越えて行く事が出来るようになります」

なんか受付のNPCが長々と俺に説明を始めてしまった。

硝子達がなんか勝った様な顔をして俺の後ろに居るんだが……。

ともかく、どうやら普通のプレイヤーは一般受付の方に並んで普通の通行手形……ビザを受け取って実績を稼ぎながら国内へと進んで行くって事なのね。

「ですが、貴方様はミカカゲ国と交流のあるカルミラ島の島主様。これはギルドの皆様にも適用いたしますので、どうぞ我らが国ミカカゲをご堪能ください」

えーっと……つまり、色々と面倒な手続きを免除してくれるわけね。

カルミラ島で甘い汁を吸いつくした俺たちが次の場所でも優遇処置を受けるのかー……色々と大丈夫なのか?

激しく接待をされている様な気がする。

ただ……それだけカルミラ島での隔離業務をさせられた見返りって事なのかもしれない。

考えてみれば開拓の遅延は起こりえる問題な訳だし、適切な人材を呼べなければ上手く行かない可能性は高いだろう。

俺はそう言った面だと友人知人に有能な人材が多くて助かった。

「やったでござるな!」

「アッサリと通れそうですね」

「うん! やっぱお兄ちゃんに話しかけさせて正解だったね」

「ごー……」

って感じで受付のNPCの指し示す方向から硝子達は関所を通って行ってしまう。

チラッと隣を見ると唖然とした表情や納得し難いかとばかりに不満そうな顔をするプレイヤーたちが見える。

どうやって通っているのかまでは聞こえていないはずだから……粘着とかはされないかな?

まあ……これも特権って事で行こう。

「ありがとう、お兄ちゃん」

「ああ、また何かあったら連絡をしてくれよー」

「まだ釣りに戻るんですね絆さん」

「そりゃあまだ港で満足するほど釣りをしてないからな!」

「せっかくの新マップだって言うのに釣りに戻るでござるよ……」

闇影がなんか呆れた目を俺に向けてきた。

そんなの今更だろ。

って訳で俺は永久ビザをもらったその足で港に戻って釣りに勤しんだ。

日が沈み……人通りもまばらになっても尚、俺は港に停泊させた船で釣竿を垂らす。

しぇりるが設置してくれた灯りのお陰で夜釣りも苦じゃないな。

「うーん……仕掛けはやはりこの辺りが無難か……後はウキと錘、撒き餌も視野に入れて……」

何が釣れるのか一目でわかれば苦労はしない。

ここは色々とトライ&エラーを繰り返すのが常だな。

「そう言えば……」

独り言になるが前にブレイブペックルからフィーバールアーってスキルを授かっていたっけ。

これって何なんだろう?

とりあえず発動させて見るか。

「フィーバールアー」

フィーバールアー

釣竿を使った補助スキル。

魚を引き寄せる光を宿すルアーを付与する。

一回の使用に1000のエネルギーを消費する。

取得条件、エピック

ランクアップ条件、???

う……エネルギーを1000も消費したぞ。

すると俺の釣竿の糸の先に釣るしてあった針がブレイブペックルから渡された無駄に派手なルアーに姿を変える。

強制的にルアーに変化する仕組みか。

「……よっと」

スナップを掛けて海に向かって投入する。

直後――ビクっ! っといきなり手応えが帰って来た。

「お?」

リールを回して釣り上げるとシマダイだった。

急いでシマダイを収納した後、ルアーを確認。

……まだ効果が続いているとばかりにルアーは姿を維持している。

なので再度投入。

やはりいきなりルアーに魚が掛る。

「これは……文字通りフィーバー……入れ食いになるルアーだ!」

ブルーシャーク『盗賊達の罪人』

フィーバールアー!

スキルの説明通りだけど、思ったよりも引き寄せ効果が高い!

俺からすると滅茶苦茶ぶっ壊れ性能を宿したスキルだぞ!

それから俺は無我夢中でフィーバールアーを海に投げ入れていた。

何せ海面に入ると同時に魚が掛ると言う恐ろしい状態だ。

しかも俺のフィッシングマスタリーがこの港で要求されるLvよりも高いお陰でかなり楽に釣りあげられる。

ほぼ魚との戦闘を繰り返していた様なもんだ。

やがて……ガクンと一際大きな手応えで竿がしなった。

「お? この手ごたえは……」

グイグイと今までにない手応えに、間違いなく大物が掛ったのを俺は理解した。

電動リールで巻き取りを仕掛けるのだが、ナマズと同等の抵抗を見せてくる。

ギギギ……と船が僅かに傾く様な手応え、うんうん……このありえない程の引きの強さはたぶん主だろう。

「あ、釣りマスターがなんか大物引き当てたみたいで船で竿振ってる」

「がんばれー」

港で休憩していた奴が俺を指差して応援を始める。

いや、お前ら見てたのかよ。

とりあえず軽く手を振って、魚とのバトルを繰り返す。

「釣りマスターの釣りを見てるとさ、結構大変そうだな……釣りって」

「だなー」

呑気な会話を俺を指差しながらしないで貰えますかね?

うお! 船底に潜ろうとしやがる。

「一本釣り!」

グイッとスキルを使って引き揚げに掛るがしぶとく抵抗しやがる。

「はぁ!」

バシャアアア! っと水面に大物らしき掛った魚を確認する。

お? かなり大きなクロダイだ。

そのままザバンと海面に落ちるだろうがこのままリールを巻いていけばいずれ釣れる!

きっとあれが主だな!

なんて思った直後の事――。

ザバッ! っと大きなサメ……見た目は大きなブルーシャークが海中からいきなり現れて俺が戦っていた大きなクロダイに噛みついた!

ガクンと釣竿が更にしなりリールがぐるぐると回り始める。

「え? な、おい!」

思わず驚きの声を上げる事しか出来ないぞ。

急いで巻きなおすのだけど、引く力が洒落にならない位上がった!

さっきの比じゃない。

「な……な……」

観戦していたギャラリーも驚きの表情を浮かべるしか出来ないだろ。

なんで釣っている最中に他の魚と言うか魔物が乱入して来てるんだよ!

「サメワロタ!」

「スゲー! さすがは釣りマスター! あんな事が起こるんだな!」

いや、そんな事言ってる暇はねえよ!

ぐいぐいと、洒落にならない位、引きが強くて引き摺られる。

やっば! 落ちる!

手すりに足を引っ掛けて思い切り引っ張って体勢を整えて行く。

大きなブルーシャークは釣られまいと右へ左へ海底へと暴れ回っていやがる。

これは釣りと認識して良いのか?

誰かに手伝ってもらいたい所だけど硝子達は現在、新大陸での夜を満喫している最中だ。

……しょうがない。

「カモンペックル!」

「ペーン!」

クリスこと王冠をかぶったキングペックルを呼び出し、ターゲット指定を行う。

「行け! あのサメを弱らせろ!」

「行くペン!」

ザブンとクリスが海に入り、高速回転しながら水面に飛びだして糸を斬らんとする大きなブルーシャークに突撃する。

クリスの突撃で水竜巻が発生し、ブルーシャークがそこに捕らわれた。

なんか派手な攻撃エフェクトが発生した様に見える。

「おおおおおお!」

「スゲー……滅茶苦茶派手だな! みんな見に来いよ!」

なんか観戦している連中が騒ぎを聞きつけてぞろぞろと集まってきている?

「なんだあれ? ブルーシャーク?」

「釣りマスターが大きな魚を釣り上げようとした所を横取りしてそのまま第二ラウンドに入った感じ」

「で、ペックルがサポートしてると……」

「すげぇえええええ!」

バシャ! っと大きなブルーシャークは水竜巻を消し飛ばし、そのまま海中に入って、再度水面に飛び出て抵抗を繰り返す。

ええい! 大人しくしろ!

クリスはペシペシとブルーシャークに飛びついてバシバシと攻撃を続けてくれている。

何か無いか……あった! しぇりるの用意したバリスタ近くまで格闘を繰り返しながら片手で……片手で持つのも無理か!

「カモンペックル!」

「ペーン!」

ペックルを再度適当に呼び寄せる。今度は……兜装備のペックルか。

「バリスタ準備!」

ステータスでアイコン指示を送り、ペックルに援護射撃を指示する。

「了解ペン!」

兜装備のペックルがバリスタの矢を拾い上げてブルーシャークに向かってバシュっと射出した。

ドスっとエフェクト発生!

よし! 徐々に大きなブルーシャークが弱ってきたぞ。

「頑張れ!」

「大物にはあんな風に攻撃して良いのか……」

「アレって参考にして良いのか?」

「良いんじゃねえか? つーか……閃きもしなかったぜ」

応援の声がなんか複雑な気持ちにしてくれる。

「とにかく……これでトドメだ! 一本釣り!」

大分弱って来たのを確認し、俺はトドメとばかりに一本釣りを使って大きなブルーシャークを甲板に引き上げる。

ビチビチと大きなブルーシャークが甲板に乗っかり跳ねまわって暴れていたが、やがて観念したのか大人しくなった。

「ペーン!」

二匹のペックルがブルーシャークの尾にロープを縛り付け、船の後方にあるフックに引っかけて吊りあげた。

アングリとばかりにブルーシャークが巨大サメ映画で見る様な体勢で吊るされている。

「おおおー!」

「釣りマスターの勝利!」

「見てて面白い勝負してんな!」

「さすが釣りマスター。白鯨を釣り上げた幼女」

パチパチと拍手が起こっているけれど、港で起こる勝負じゃねえ……。

つーか……なんでブルーシャークが釣れてんだよ。

それと誰が幼女だ! ネカマと呼べ!

って所で針を外す……あ、いつの間にか釣り針に戻っていた。

ステータスを確認するとフィーバールアーのクールタイムが表示されている。

……どうやらクールタイムは一日程必要っぽい。

入れ食いになるルアーを呼び出すスキルでしばらくの間は釣り具も強化される隠し効果があるって……所か。

少なくともサメ釣りに適した仕掛けはしていなかったので間違いは無いはず。

この辺りはゲーム故にあんまり参考にすべきじゃないかもしれない。

とにかく……釣った物は釣った物な訳で、魚拓を撮ろう。

カシャッと手でカメラのポーズにしてスクリーンショットを撮る。

「ペーン!」

ペックル達が勝利とばかりに胸を張って自己主張をしている。

勝利ポーズって所か……。

「でかいなー……」

釣りあげて確認したのだけどブルーシャークにしてはかなり大きい。

ちなみにブルーシャークはアオザメではなく、魔物としてのブルーシャークなので別種だ。

で……そのブルーシャークからして別種の魔物かと思ったが魚名としてもブルーシャークだ。

ブルーシャーク『盗賊達の罪人』

妙な二つ名が付いている!

盗賊達の罪人って……魚を横から掻っ攫おうとしていたからか?

そのブルーシャークなのだけど……全長5メートル程あった。

8メートル行っていたらかの有名なサメ映画に匹敵する化け物なんだが、そこは残念と見るかどうするか。

……この港でなんでこんなの釣れるんだろうな。沖で釣れたらまだ納得出来たんだが……。

宿代をケチって船に戻っている船持ちの連中がしきりにこっちを指差している。

とりあえず硝子達にでも報告でもするか。

チャットで呼び出して硝子、闇影、しぇりる、紡を指定して一斉チャットを行う。

プルル……とやや古い演出でチャットが繋がった。

……闇影は繋がらないな。

「あ、絆さん。こんな時間にどうしたんですか?」

「ちょっと話がしたくてさ、闇影はどうしたんだ?」

「もう寝てます」

そうか。寝るの早いなアイツ。

新大陸のルール

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