リルは目を丸くしてスピナを見る。その容姿が醜かったからでは、ない。
あまりに、美しかったからだ。
え、何、どっから連れてきたのこんな子
スピナの傷痕はOlの魔術により消され、彼女が本来持っていた美しさが完璧に取り戻されていた。相変わらず表情はないが、それがかえってその人形めいた神秘的な美しさを際立たせている。
どこでもいいだろう。とにかく、当分はリルについて雑事を覚えろ。ダンジョンの見回り、清掃、魔物や罠の管理、死体処理、食料の管理、シーツの取替えに料理もだ
やっとそういった仕事から解放されるのね! やった!スピナって言ったっけ、しっかり仕事覚えなさいよー
喜ぶリルに、スピナは表情を微塵も変えず答えた。
私が従うのはお師匠様だけです。使い魔ごときに命令される謂れはありませんので勘違いなさらないで下さい
ぴしり、とリルの笑顔が凍りつく。そして、スピナを指差しOlに抗議の声を上げた。
Ol! この子凄い性格悪い!
そうだ、だから弟子にした
ああっこっちも性格悪いんだった!
まるでOlが二人に増えたかのような錯覚を覚え、リルは頭を抱えるのだった。
第7.5話ダンジョン解説
第7話終了時点でのダンジョン。
悪名:2
貯蓄魔力:16(単位:万/日)
消費魔力:3.5(単位:万/日)
召喚の間
最深部に出来た部屋。Olの迷宮の中で、唯一直接転移が可能となっている。ここに転移してきたものは魔法陣の中に捕らえられ、迷宮内に元々いたものの許可がなければ魔法陣から出ることが出来ない。
転移魔術防止結界
Olの迷宮全体にはられている結界。この結界内には原理的に転移魔術で転移することは出来ない。大きな街や王都にも張られているメジャーな結界で、暗殺者や盗賊の侵入を防ぐ為に用いられる。
リルの寝室
リル専用の部屋。何処から持ってきたのか、花やぬいぐるみなんかが飾ってあって意外とファンシー。
ユニスの寝室
ユニス専用の部屋。最低限の家具と武具が飾ってあるだけの殺風景な部屋。部屋の主は基本的にOlの部屋に入り浸っている。
汎用寝室
生け贄として送られてくる予定の娘達のための部屋。折角だから、と10部屋くらい作ったのだが、ユニスのごたごたのせいで娘の到着が2ヶ月ほど遅れ、長く日の目を見ていなかった。
マリー(子供)
戦力:0
5歳児。戦力を期待するも愚か、足手纏いにしかなりようがないが、元々持っていた気質に加えOlがかけた健やかに育つ呪いのせいで大人になるまでは凄まじく運がいい。
スピナ(魔術師見習い)
Olの弟子にはなったものの、まだ見習いであるため魔術らしい魔術は使うことが出来ない。しかし、恐ろしく豪胆で自らの死の危険性があるような事でも必要なら全く躊躇なく実行することが出来る。ある意味もっとも敵に回してはいけない人物。
ジャイアントスパイダー
洞窟や森の奥深くなど、薄く瘴気の漂う場所に巣を張る巨大な蜘蛛。Olの迷宮の一角に巣を張っている。基本的には巣にさえ近づかなければ無害だが、糸は非常に細く見つけにくい。しばしばゴブリンが巣にかかって餌になっている。
オーク
2mほどの体躯を持つ妖魔の一種。ゴブリンに比べればかなり期待できる戦闘能力を持ってはいるものの、数頼みの雑魚には違いない。争いごとや血生臭いことが好きでしょっちゅうゴブリンを血祭りにあげている。
非支配層に魔物が増えたものの、Olの配下としては余り戦力は増えていない。また、Olの技術ではそろそろダンジョンの拡張に限界がきており、迷宮の一部が崩落しては修復を繰り返している。
第8話邪悪なる下僕どもを揃えましょう-1
そうマリーがそっちで
では私は
あ、私空飛べるから
じゃあ、あたしは
なにやらひそひそと交わされる言葉に、目を開いたOlの視界に映ったのは白く伸びる足だった。
それを辿って根元の方を見れば、彼の股間に群がるように寄り添う四つの顔があった。
何をしている
あ、ご主人様おはよー
おはようございます、お師匠様
おっはよーOlー!
おはよ、ございます、おうるさま
低く唸るように問うと、4種類の挨拶が返ってきた。
4人とも一糸纏わぬ裸身で、それぞれいきり立つOlの一物に舌を這わせていた。
Olの両足の間にマリーが小さな頭を突っ込み、裏筋の辺りを懸命に舐めあげる。
左手にはユニスが陣取り、舌を長く伸ばして玉を撫でる様に愛撫する。
右手にはスピナが首をかしげ、横笛でも吹くかのように竿を軽く食んでいる。
そしてOlの身体と互い違いになるようにリルが翼を広げ、空中からOlの鈴口に舌を這わせていた。
目の前で浮いているので、むっちりとした太ももからそれに挟まれた秘裂、たっぷりとしたボリュームのある乳房まで全部丸見えだ。
あはっ、おっきくなった。やっぱり意識があると反応が違うね。どう、ご主人様? 愛妾4人によるお目覚めフェラは
男なら誰もが羨むであろう体勢ではあるが、複数人による口淫という物はその見た目ほど良いものではない。口淫、というその字句とは裏腹に、実際に快楽を与えるのは手の動きが主なものであり、数人がかりの口淫では手による愛撫はほぼ不可能になるからだ。
が、それは尋常な女によるものの話だ。淫靡を知り尽くし、性技を極めた淫魔の取り仕切るこの宴では少々わけが違った。
ふりふりと形のいい尻と共に振られる尻尾によって4人の身体の動きはまるで一つの生き物のように統制され、Olの肉棒をその4つの唇でしごき、舐め上げ、吸い、むさぼっていた。
くああ、そのまま続けろ
Olは腕を伸ばし、ユニスとスピナの胸を鷲掴みにする。二人はOlが胸を揉み易いように身動ぎして体勢を変えると、リルの指揮の元、一気に攻勢にかかった。
四つの舌がまるで手の指のように協力して動き、Olの肉棒を挟んでしごき上げる。
悪魔のような、というより正に悪魔の技巧によってOlはあっという間に絶頂に導かれた。
抵抗する事無く欲望を解き放ち、四人の娘の顔を白い欲望が汚していく。
で、どうしてこんな事になったんだ
えーとぉ、それぞれがOlを起こそうとしてて
誰がご主人様を起こすかとか、ちゃんと決まってなかったでしょ?
全員が自分が、と主張した結果、リルが全員で起こそう、と提案しまして
みんなで、おこし、ました!
いつの間にそんなに仲が良くなったのか、Olの言葉に少女達は口々に答えた。
はあ、とOlはため息をつき、言った。
では、今日はそれぞれの仕事を割り振るとするか
とりあえず、現在の急務は戦力の確保だ
全員に顔を洗わせ、スピナの作った朝食を胃の中に収めた後、Olは全員を集めてそういった。
過去、魔術協会で講師をしていた時期を思い返しながら、Olは黒板に白墨で文字を書いていく。
最低限の人手と、生活基盤が成り立ったからな。次は、領土を広げる為の戦力を確保せねばならん
以前ユニスがスケルトンやゴブリンの大半を殲滅してしまった上に、魔力も大量に使ってしまったので、現在のOlの迷宮には戦力と呼べるような存在が殆どいなかった。
防衛はユニスがいれば殆ど問題はないだろうが、攻め入るとなると話は別だった。
戦力確保の手段は大きく分けて次の四種類だ。自然発生。契約雇用。魔術創造。悪魔召喚。細かく説明していくぞ
既にこっくりこっくり船を漕ぎ始めているマリーを無視して、Olは続けた。
というか、何でマリーまで集まってるんだ。
まず、自然発生だ。以前リルには軽く説明したが、悪鬼妖魔の類はダンジョンを用意しておくだけで勝手に集まってくる。入り口すぐの所に巣を作ってるゴブリンなんかが良い例だな。こいつらは基本的に、敵ではないが味方でもない。不用意に巣に近づけば襲い掛かってくる。我々の居住区には魔除けの結界が張ってあるからそうそう入ってくることはないが、誤って踏み入れないように気をつけろ。特に、マリーがふらふらしないように見張っていろよ、スピナ
名前を呼ばれ、びくりとマリーが目を覚まし、辺りをきょときょとと見回す。
この自然発生する魔物を管理するのはリルの役目だ。魔物は基本的に悪魔を攻撃しない。その身が肉じゃなく魔力の塊で、餌にはならん事を本能的に知ってるからな。新しい魔物が巣を作りにきたら報告しろ
はーい
やる気があるのかないのか、リルは手を挙げて返事をする。
自然発生の要因となるのは、瘴気と深度、そして部屋の形だ。瘴気が濃ければ濃いほど、深度が深ければ深いほど強力な妖魔が惹きつけられる。部屋の形は好み次第だから、いろんな形の部屋を作っておけ。狭い部屋を好む妖魔もいれば、広い部屋を好むもの、天井の高い部屋を好むもの、水辺を好むもの、さまざまだ
瘴気と深度とは何ですか?
Olの説明が一段落したところでスピナが手を上げ、質問する。
弟子の出来のよさに感心しながら、Olは説明した。
瘴気とは、有体に言えば空気に含まれる魔の濃度の事だ。生き物が死んだり、悪魔が滞在したりしているとこれが濃くなる。瘴気があまりにも濃いと勝手に悪霊が生まれたりするがこれも自然発生の範疇に入るな。深度はそのまま、ダンジョンの深さの事だ。浅い層は瘴気の濃さに限界がある。深ければ深いほど、瘴気は濃くなっていく。今このダンジョンは全3階層まだまだ深くする予定だ
なるほど、と頷くスピナの横で、ユニスが難しい顔をする。どうにか、Olの説明を咀嚼している所らしい。彼女が何とか折り合いをつけた様子なのをみて、Olは次の説明に入った。
二つ目、契約雇用は比較的わかりやすいだろう
というか、わかってもらわないと困る。
自然発生で迷宮に巣を作る妖魔や、迷宮を訪れる者の中には条件次第ではこちらに協力しても良いと考えるものもいる。まあ、ある程度以上の知能を持つものでないと無理だろうが。そういったもの達を、金銭や食料などを対価に味方につける事ができる。大抵の物は金があれば用意できるから、実質金銭だな。これが契約雇用だ
おー、わかりやすい
今度は理解できたようで、ユニスが声を上げた。
まあ、ある意味でユニス自身がこれに近いわけだが。対価は裏切らない事だ。
これは基本的には俺が担当するが、ユニスにも協力をしてもらう。契約を結ぶにも、こちらにある程度の戦力がなければ足元を見られるからな。交渉自体は俺が行うが、傍にいて睨みを利かせてくれればいい
了解!
ユニスは元気よく答えた。今まで何もすることがなかったので嬉しいのだろう。
妖魔の種類によっては、互いに諍いを起こす事もあるだろう。そういった場合の鎮圧もユニスの仕事だ。いわば治安維持だな。リル、そういった騒ぎを見かけたら、俺とユニスに知らせるようにしてくれ
ん、わかった
そういうのは得意だから、任せといて!
頷く二人に満足し、Olは更に説明を続ける。
魔術創造はスピナ、お前の仕事だ。これは、魔術でゴーレムやスケルトンといった擬似生命を作るものだ。はっきり言って、魔法生物は戦闘においては大した役には立たん。さほど強くないし、判断力もないに等しい。が、創造主には絶対忠実だし疲れも知らんから、単純な作業や雑事の手助けにはピッタリだ。餌も要らんから契約雇用の様にコストもかからん
こくり、とスピナは頷く。説明を聞く態度を見るに、彼女はかなり聡明そうだ。
魔法生物の作成に限れば、一ヶ月もあればそれなりのものを作り出し、一年か二年程度で一端の魔術師には育つだろう、とOlは睨んだ。
最後の悪魔召喚は、まあ現物がそこにいるから大体わかるだろう。全面的に俺が請け負うから理解する必要もさほどないが、一応説明しておく
Olはリルを見ながら言葉をつづる。
悪魔召喚は、まあ聞いて字の如く、悪魔を異界から召喚し、使役する方法だ。酷く手間がかかるし、呼び出すのにも維持するのにも大量の魔力を食う。他の三種に比べ圧倒的にコストがかかる。が、その能力は折り紙つきだ。リルは淫魔だから戦闘力は大したことはないが、普通の悪魔はそこらの妖魔とは比べ物にならんほどの強さを持っている。切り札というか、奥の手に当たるわけだ
なるほどー
まあ、本当の切り札は今頷いているお前なんだがな、と、Olはユニスを見て胸中でつぶやく。彼女が、仮にも中級悪魔に属するヘルハウンドを一刀の元に切り捨てたのは記憶に新しい。