冒険者として魔物や盗賊達を相手にし、普通の娘の様な恋愛が出来ると思っていた訳ではない。しかし、それでも彼女は人並みに初体験と言うものに夢を抱いていたし、大切にもしていた。それが今、見も知らぬ男によって踏み躙られたのだ。知らず、ユニスの頬を涙が伝った。
そんな彼女の頭に、Olは優しく手を置く。すると、じんわりとした暖かさがその手から伝わり、痛みがすうっと引いていく。
大丈夫だ。痛みはきえただろう?
ユニスはこくりと頷いた。
耳元で囁かれた優しげな声は、ユニスの胸にあいた喪失感にスコンと収まった。頭では、今目の前にいる男こそが自身の純潔を奪い、汚したのだと理解している。
しかし、ユニスの心は失ったそれを目の前にいる男が癒し、埋めてくれると感じていた。感じてしまっていた。
動くぞ
ゆっくりと、Olが抽送を始める。その動きはユニスを気遣うように優しいものだった。破瓜の痛みはOlがユニスの頭を撫でる度に和らぎ、代わりにOlのペニスがユニスの奥を突くたびに、身体と心を甘い疼きが満たしていった。
ぐ、う!
ユニスは歯を食いしばり、それに必死に耐えた。これは、罰だ。罪を犯したものへの当然の罰。だから、ユニスは耐えなければならない。
しかし、それは唐突に中止された。Olは動きを止め、じっとユニスの顔を見つめている。ユニスも、困惑した表情で彼を見つめ返した。
どうかしたか?
Olは尋ねるが。そう問いたいのはユニスの方だった。何故、動きを止めてしまうのかそう言おうとして、ユニスは口をつぐんだ。そんな事を思うなんて、どうかしている。
思う事があるならば、素直に述べてみろ
しかし、Olはそれを見透かしたようにささやいた。
思った事を言うのは罪ではない。自然に、あるがままに振舞う事が何故罪となる?何も耐える必要などなく、そのまま受け入れれば良いのだ。それが正しい事だろう?
嬲られ、焦らされ、熱に浮かされたように理性と忘我の狭間で揺れるユニスの中に、その言葉は染み込むように響いた。
として
どうした?
我知らずユニスの口から出た呟きに、Olが彼女の耳元で囁くように問う。
もっともっとして!
とうとう、ユニスは叫ぶように求めた。
こうか?
うんっ! それぇっ! それが気持ちいいのぉっ!
奥まで突き入れると、ユニスは嬌声をあげてそれを迎える。拘束され殆ど動かない身体を懸命に揺らし、少しでも快楽を貪ろうとする。
いいぞ。ユニス、最高だ
んんっ、はぁっ、いぃ、いいよぅ
既にユニスの表情は快楽に溶け、目には理性の光はない。ただ貪欲に快楽を求め、全身でOlを受け入れていた。
Olはユニスの奥に突き入れながら、彼女の拘束を一部解く。
ユニスはすぐさま腕をOlの首に回すと、ぎゅっと抱きつきながら激しく腰を動かした。
ああっ、すごい、すごいよぉ! いいっ、もっと、もっとしてぇ!
Olはユニスにキスをしながら、円を描くように腰を動かす。同時に、愛液でぐちゃぐちゃに濡れている淫核を指でなぞり、摘みあげた。
ああああっ! それ、それいいっ、いいのぉっ! いっイ、ちゃっうぅっ!
途端、ユニスの声色が一段高くなる。
そうだ、イけっ! 思いっきりっ!
あああああああっ!!
ユニスは身体を仰け反らせ、身体を震わせる。一瞬遅れ、Olはその奥に白濁を吐き出した。
英雄よ、明星の如く輝け
Olがキーワードを囁くと、快楽に溶けていたユニスの表情が途端に失われ、瞳は焦点を失った。
よし、後催眠も上手く効いているな
瞳を覗いたり、身体を触ったりしてOlは催眠の効き方を確かめる。
さっきもそれやってたけど、何なの? 洗脳系の魔術?
Olがユニスを抱き始めてからは暇そうに部屋の隅で推移を見守ってたリルが尋ねる。
いや、これはただの催眠術だ。おきているが、意識は無い状態。それを催眠状態と呼ぶ。さっきお前が愛撫した後にかけた時は魔術と単調な刺激でこの状態にしたが、後催眠を刷り込んだ今ならキーワード一つでこの状態に出来る
起きてるのに意識が夢を見てる状態ってこと?
いや、むしろ逆だな。夢を見ているときは、寝ているが意識はある。催眠状態になると意識がないから、判断力や思考力は殆どゼロになる。この状態で教え込んだ事はかなり素直に聞いてしまうし、暗示をかけて無意識に行動を制御したりも出来る。初めてのセックスで、しかも無理やり犯されているのにあんなに乱れたのも、さっきかけた暗示のおかげだな
Olの説明に、リルは興味深げにユニスの顔を覗きこむ。目は開いているし、おきてはいるようなのだが、目の前にいてもリルを見ている様子は全く無い。
じゃあ、これでずっとOlに仕えろーって言えば、奴隷になるの?
リルの問いに、Olは首を横に振って否定する。
いや、催眠術はそんなに万能じゃない。と言うより、出来る事は殆ど無い。本人が嫌がる事はさせられないし、無理にそんな暗示をかければすぐに催眠術は解ける。まあ、だからこそ英雄の星に生まれたこいつにもかけられるわけだが。強制の呪いなんてかけようとすれば一発で弾き返される。英雄の道を阻む者は必ず排除される運命だからな
これは道を阻んでる事にはならないの?
ユニスを拘束していた鎖や拘束具を示し、リル。
勿論なる。だから、この方法で拘束すればそのうち何らかの方法で抜け出すだろうな
魔術で小さな炎を出し、ユニスの前で点滅させながらOlは答える。単純な光の明滅を繰り返す事で、解けかけていた催眠状態を更に深くしていく。
さぁユニス、お勉強の時間だ。優しくしてくれる人はどんな人だ?
優しくしてくれる人はいい人です
抑揚の無い声でユニスが答える。
傷を癒してくれる人どんな人だ?
傷を癒してくれる人は優しい人です
しっかり覚えているようだな。偉いぞ
ここまでは、抱く前にユニスにかけた暗示の再確認だ。
さっきも思ったんだけど、それって当たり前の事じゃないの?
リルの問いに、Olは頷く。
そうだ。当たり前だから、当たり前に受け取る。当たり前でない事を受け入れさせるのは難しい。だが、受け入れてしまった事は比較的無条件に刷り込まれる。たとえ相手が自分を強姦している憎い男であろうとも、少しでも優しくされればいい人だと無意識に思ってしまうんだ
この暗示をかけていたから、ユニスはあそこまで善がったのだ。
じゃあ毎回その暗示をかけておけば、後はちょっと優しくしておけばその子はOlに懐くの?
再び、Olは首を横に振る。
そう簡単じゃない。さっき上手くいったのは、お前の愛撫で冷静な判断力を失ってたからだ。落ち着いて、時間が経てば自分がおかしかった事に気付く。俺への好感は残るだろうが、論理的な思考で俺を敵と思う事は変わらない。まあ、多少手心を加えてくれる事はあるかも知れんが
その前に、手を打たないとな。
そう呟き、Olは更にユニスに暗示を加えていった。
第6話哀れな虜囚を調教しましょう-2
ユニスが再び目を覚ますと、そこはやはり暗い石造りの部屋で、彼女はベッドの上に寝かされていた。
汗やその他体液でべとべとに汚れたはずのシーツはさらさらした真新しいものに取り替えられており、一瞬あれは夢だったのだろうか、とユニスは考えた。
しかし、秘部を穿たれて大声で善がった記憶と、僅かに残る身体の火照りが夢などではなかったと訴えており、彼女は悔恨と羞恥に頭を抱え
自分の頭を抱えられる事に、気付いた。
相変わらず武器や防具の類は見当たらないし、魔術も封じられているようではあったが、身体を拘束するものは何も無い。部屋には扉もついておらず、そのまま通路に通じているところも元のままだ。
今なら、逃げられる?
そんなユニスの考えを読んだかのように、通路の奥からOlが姿を現した。
思わずユニスは身構え、ベッドから離れる。
そう警戒するな。もう危害は加えん
Olが指をパチンと鳴らすと、部屋の中央の床がぐにゃりと歪み、意思を持っているかのように動くと簡素なテーブルと椅子の形をとってまた石に戻った。
丸一日寝ていたんだ。腹も減っただろう
そういってOlは手に持っていた皿をテーブルの上に乗せた。
毒でも入ってるの?
起きている時にわざわざそんな事をするんなら、寝てる間に殺してるだろう
訝しげに見るユニスを尻目に、Olはさっさと席について皿を手に取る。Ol自身も食事を取るつもりらしく、料理の盛られた皿は二つあった。
それもそっか
納得して、ユニスはOlの向かいに座る。皿に盛られていたのは小麦粉を練って細長くしたものを茹で、ひき肉のソースをかけたものだった。
これってパスタ? 珍しいね
知ってるのか
こくりとユニスは頷く。この辺りの地方では、小麦粉はパンにして食べる事が多く、あまり麺類には加工しない。文化が根付いていないという事もあるが、この辺りで作られている小麦があまり麺類には向いていないというのもある。普通に作ると、どうしても口当たりがボソボソとしてしまうのだ。
ん、でも美味しい。これってディングラードの方の料理でしょ?このソースははじめて見るけどよく合うね。小麦を取り寄せたの?
いや、小麦はこの辺りのものだ。つなぎに一工夫を凝らして食感を良くしてある。ソースも一応俺のオリジナルだな
ふーんって、ええっ!?
急に叫ぶな。驚くだろう
全く驚いた様子の無い表情で抗議するOlに、ユニスは身を乗り出す。
え、これ、君が作ったの!?
そうだが、悪いか
憮然とした表情でOlがぼやく。
え、だって、邪悪な魔術師が料理とか
邪悪だろうが魔術師だろうが腹は空く。リルは悪魔だから人間の食べ物など食わんし、食わない物を作れる訳もない。人手不足で他に作るものもいないから、俺が作るしかないだろう。それに、料理は魔術実験に似ている。中々上手いものだろう?
心外そうに眉をひそめ、自作の料理を口に運びながら言うOl。
うん、美味しい
パスタをフォークに絡めて口へと運び、ユニスは素直に認める。少なくとも旅の間食べていた携帯食や、野生の動物を狩って火で炙っただけのものよりも数倍美味しかった。
さて
食事を終え、立ち上がるOlにユニスは再び身構える。そんな彼女に、Olは呆れたようにため息をついた。
そう身構えるな。もう危害は加えないといっただろう。昨日のアレは俺の命を狙った罰だ。もうこれ以上罰を与える気はない
あそ、そうなんだ
ユニスは自分の心に戸惑う。Olの言葉に感じたのは、大きな安堵。
しかし、その奥にほんの少しだけ、残念に思う気持ちがあった。
困惑するユニスに、Olが言葉を付け足す。
ただし、俺になお刃向おうというなら話は別だが
鋭い目で見据えるOlに、ユニスは答えを返せず押し黙った。
俺の邪魔をしないと言うなら、このままこの迷宮を出て行っていい。武具も返すし、封呪も解いてやる。だが飽くまで敵対するというなら、容赦はせんぞ
どうして?
ユニスは瞳に困惑の光を浮かべ、Olを見つめた。
君は邪悪なる魔術師とか言ってるけど、そんなに悪い人じゃない気がするそりゃ、あたしも酷い事されたけど、先に首刎ねちゃったのはこっちだし、罰を受けるのは仕方ないでも、どうして何の罪も無い村の人たちを一方的に脅して搾取したりするの?
ユニスの訴えにOlは考え込むように口元に手をやり、ふむと唸った。
どうやら、少し誤解があるようだな
誤解?
ユニスの心はOlを信じる方に傾きかけてきていた。
口元にやった手の向こうで、口が笑みの形に曲がるのに気付かぬまま。
Ol様! 申し訳ありません、供物の準備はまだ整っておりませんで明日の夜までには必ず用意いたしますので!
良い、気にするな。元々供物は1の日という約束だ。約束の通りに用意してくれれば良い
村に着くなり、走りよって平伏する村人にOlは鷹揚に答えた。その隣には、ユニスを伴っている。武具はまだ返していないが、拘束具の類もつけていない。
では、本日はどのような
うむ。田畑の様子を見に来た。それと少し気になる事があってな
田畑?
意外な言葉にユニスは目をパチパチと瞬かせる。
そうですか! ではどうぞこちらへ、粗末な村の畑ではごぜぇますが、Ol様のお力でみるみる育ち、もう冬も近いってのに今年一番の豊作でさぁ!
村人に案内された先には、様々な作物が豊かな実りを見せていた。どれも一般に流通しているものより遥かに巨大で瑞々しい。