そうだ。我に月に一度食料を、そして年に一度美しく清らかな乙女を捧げよ。さすれば、我が祝福を汝らに与えよう。作物は凶作に見舞われる事なく、狼も小鬼も盗賊も汝らを脅かす事はなくなるだろう

リルが意外そうな顔をするが、それは無視する。

そのもし、取引に応じなかったら?

恐る恐る尋ねる村人に、Olは軽く手をあげる。その合図と共に、背後の死者達が数歩前に出た。

この者たちは、取引に応じなかった愚か者どもだ

ゲオルグさん!

中でも村長だったものの顔を見て、村人たちの何人かが声をあげる。

あのオッサン有名人だったんだね

あの程度の規模の村にしては破格の腕だ。さもあろう

Olはリルの呟きに答えてやる。

我に敵対するならば、待つのは死などと言う生ぬるいものではない。果て無き永遠の苦役だ。しかし、取引に応じるならば汝らは百年の豊穣を得よう。差し出す食料よりも豊かな実りを。差し出す娘よりも多くの身の安全を約束しよう。さて、汝らが長は賢き者か? それとも愚かなる者か?

村人達は顔を見合わせたが、答えは大体決まっているのだろう。

さほど揉めた様子もなく、彼らはOlに恭順を誓った。

良いだろう。ならば村の中央に祭壇を作り、毎月一の日に供物を捧げよ。供物は牛を一頭、豚を二頭、鶏を五頭。作物はその月に取れた種類全てを、五分ずつ捧げよ。娘も同様に、竜の月の一の日に祭壇に待たせよ。良いか、娘は美しく、男をまだ知らぬ清らかな乙女でなくてはならん

ほんっと細かいなあ

ぼそりとリルが呟くが、これはまた無視。

その後、監視と護衛の為にガーゴイルを村の中央に置き、田畑に豊潤の呪いをかけ、祭壇の作り方について簡単に指示を残すと、Olは死者達とリルを連れて村を後にした。

ふうここに戻ると落ち着くな

その後数日をかけて近隣の村をいくつか回り、同様の契約を結んだ後Ol達はダンジョンへと戻ってきていた。

結局最初の村以外は抵抗するものもなく、全部で6つの村と契約した。多少遠い村もあるが、ダンジョンコアの魔力を用いて転移の術を使えば問題ない。村人たちに作らせた祭壇は転移の術の目印でもあった。

滅ぼした村から持ち込んだ家具で殺風景だった一室も随分落ち着いた空間となり、Olはソファにゆったりと身を沈めた。

でも、ちょっと意外だったな。てっきり全部滅ぼして奪いつくすのかと思ってたから。逆に魔力を分け与えて、生活を保障してあげるなんてね

実際そうしたところで良心の呵責を覚える訳ではないが、ある程度村人たちの事も気遣ってやるのはリルにとっても好ましい事だった。悪魔といえども、別に破壊と殺戮の化身と言う訳ではない。

そんな事をすれば幾つ村があっても足らんからな。人間が家畜の世話をしてやるのと同じだ。奴らが飢えて死に、生活も出来なくなれば、こちらにも実入りがなくなる

ああ、なるほどね

家畜と同じ、という説明はリルにとってはしっくり来た。悪魔から見た人間はちょうどそんな感じの存在だからだ。自分にとって益になる存在だから無闇に殺すのは気が進まないし、無抵抗のものを殺すのには若干の抵抗を覚えるが、自分に牙を剥くものであれば殺す事に何のためらいもない。

Ol、あなた本当に悪魔以上に悪魔みたいね

誉め言葉と受け取っておこう

多少憮然とした表情でOlはソファから腰を上げ、ベッドへと移動する。

まだまだやらねばならん事は山積しているが、とりあえずは一仕事終わったな。今日はそろそろ休むとしよう。来い

当分は必要ないんじゃなかったの? それにどうせ、すぐ若い娘が来るんでしょ

そういいつつも、命令は聞かない訳にはいかないのでリルはベッドに近づく。

やれやれ、まだ臍を曲げているのかと、Olは内心嘆息するが、表情には出さない。

最初の娘が来るのは2週間後だな。まあ、抱く為だけに処女を要求した訳でもないが

ベッドに横たわったまま腕を強引に引っ張り、Olはリルを腕の中に収めた。

契約した村は6つ、それぞれ娘を捧げる月をずらしたので、2ヶ月に一度は新しい娘が届く事になっている。

お前に溜まっている魔力はまだ十分だがな、こちらにも溜まったものはある。それに情交の為にだけ存在するお前達夢魔より抱き心地のいい人間など、いる訳がないだろう

慣れないリップサービスを口にすると、リルがニヤニヤしながらOlの顔を見ていた。

リップサービスと言っても事実ではあるが、言わなくていい事を一々言わされているというのはOlにとっては若干の屈辱でもある。

それに、魔力で出来ているお前の身体は、魔力を注げば僅かずつだが容量も増える。そもそも容量自体が人間とは段違いなのだ。これからも頻繁に相手をしてもらうから、覚悟しておけ

はぁい、ご・主・人・様

耳元でくすぐる様に囁くリルを押し倒しながら、Olはもう一度心中で嘆息した。

全く、面倒な悪魔をパートナーに選んでしまったものだ。

リルも、似たような感想をOlに対して抱いている事には気付かないまま。

第4話迎撃準備を整えましょう

はぁ気持ちよかった

まるでひだまりの中でまどろむ猫の様に弛緩しきった表情で、リルはごろんとベッドに横になった。股間の穴からはごぽりと白濁した液が零れ落ち、前回よりも更に全身精液にまみれているが、前回と違って身体が動かない程疲労はしていないようだった。

随分と余裕そうだな。魔力が効かなかったか?

そういうわけじゃないよ。何回もイカされたし

言いつつも、リルは体勢を変えると綺麗にするねーと呟き、Olのものを口にくわえる。

ただ、下手に抵抗せず受け入れたら大分楽だったかなそれに、前と違ってベッドの上だったから体勢とか気にしなくて良かったし

舌を伸ばしてOlの一物を舐めあげながらも、リルの言葉は明瞭にOlの耳へと伝わる。サキュバスにとって舌や口は発音器官ではなく、口淫の為に存在するものなのだそうだ。

あは、おっきくなってきたえっと、それにOlが精と一緒に魔力を私の中に入れてるでしょ?生気は許可がなきゃ吸っちゃ駄目って契約にあるから吸ってないけど、魔力はちょっとだけ吸っちゃったんだ。それで大分体力楽かも

なんだと?

横たわったままリルの奉仕に身を任せていたOlだが、その言葉に思わず上半身を起こす。

ちょ、ちょっとだけだよ!? 契約にないからってその辺はちゃんとわきまえて

慌ててリルは弁明する。そうしつつもOlの股間から口を離さないのはさすが淫魔といったところか。

普通、他人の魔力と言うのは悪魔でもそう簡単には吸えん。魔力、魔力と一括りに言ってはいるが、大気や地面に散らばるマナと、生物の持つオドでは性質がまるで違う。ダンジョンコアで集めているのも、お前の中に放っているのも俺専用のオドだ。俺以外がそれを扱うには、一度マナまで戻してから、自分専用のオドにせねばならんはずだが

あー、なるほどね。なんか私とOlの魔力って性質近いみたいで、そのまま吸えたよ。こういうの、相性いいって言うのかな?

事も無げに言いながら、リルは仕上げとばかりに喉の奥までOlの一物を飲み込み、舌を絡ませる。

俺の魔力は琥珀色だぞ? 普通、悪魔の魔力は黒とか紫とかだろうがく、出すぞ!

ん、美味しいOlって性格は悪いけど、精はすごく美味しいよね

こくこくと喉を鳴らして精液を飲み下し、更にストローの様に吸い上げながらリルは満足そうな声をあげる。

余計なお世話だ。まあ魔力を共用出来るなら、それはそれで使えるな。お前に注ぎ込んだ魔力のうち、1割程度なら自分の物にしていい

Olは汗や精液、愛液に塗れたベッドから身を起こすと、軽く濡れた布で身体を拭い、服を着込む。

そのうち湯殿なんかも用意せんとな。が、今は先にやらねばならん事がいくつかある

Olはリルを呼んだ時と同様に血で魔法陣をいくつか描く。と言ってもリルを呼んだそれとは違い、かなりシンプルなものだ。

一応ダンジョンが出来て、家具も揃って、定期的に食料とかも手に入って他に何かやる事あるの?

とりあえずベッドのシーツを剥ぎ取り、予備の物に交換しながらリルが尋ねる。

馬鹿を言うな、やる事はまだまだ無数にある。これだけでいいなら、わざわざお前を呼んだりはしない。いでよ、インプどもよ!

Olが一喝すると、魔法陣から小さな悪魔が数匹湧くように現れた。人間の赤ん坊くらいの大きさしかないその悪魔は、しかし赤ん坊の持つ可愛らしさとは無縁の生き物だった。全身はつるりとして毛は全くなく、背中にはコウモリを思わせる翼が生えている。耳は禍々しくとがり、顔は醜悪で邪な笑みを浮かべていた。

最も位の低い悪魔の一種だが、それでも悪魔は悪魔。簡単な魔術くらいなら使用し、人並みの知能も備えているので魔術師に使い魔としてよく使用される。

まず、このダンジョンを大きく拡張せねばならん。インプどもよ、この地図の通りにダンジョンを掘るのだ

Olはあらかじめ用意しておいた地図をインプたちに渡して指示する。インプたちはすぐさま作業に取り掛かった。

ダンジョンの拡張には二つの意味がある。侵入者対策と、収集する魔力量の増大だ

汚れたシーツのやり場に困っているリルからシーツを奪い、代わりに地図の写しを押し付け、Olは説明する。

今、このダンジョンは地上への穴からこのコアのある部屋までほぼ直通の道が通じている。ここを掘り当てる為に、俺が真っ直ぐ掘ったからな。これでは侵入者がいた場合、すぐにこの部屋を攻められる事になるが、これは非常にまずい。ダンジョンコアが壊されればすべては終わりだ。そう簡単に辿りつけぬ様に、ダンジョンは複雑な迷宮にしてやる必要がある

そもそもこの部屋にはいれないように、壁で囲っちゃえばいいんじゃない?

素朴な疑問を口にするリルに、Olが首を横に振る。

それが出来んのが二つ目の理由だ。このダンジョンは龍脈の真っ只中に存在しているが、そこにコアを置けば勝手に魔力が溜まるという訳ではない。ダンジョンの通路に魔術的な彫刻を施し、周辺の魔力を通路を通してコアへと流し込むようになっている。ちょうど、植物が根を伸ばし、地中の養分を取り込む事に似ている。ダンジョンを広げれば広げるほど、大量の魔力がコアへと流れるというわけだ。コアを隔離すればそれも適わん

あー、なるほどね。ダンジョン自体が立体的な魔法陣みたいになってるんだ

飲み込みが早いな。みたいなではない。実際、これは魔法陣なのだ

図や模様には意味があり、意味には力がある。

魔法陣とは、模様の意味を利用する魔術の一種だ。例えば、円には内と外の区別という意味があり、円だけで進入を拒む最小の魔法陣となる。

Olが作ろうとしているのは、それを途方もなく発展させたものだった。壁に魔法陣を掘りこみ、さらにその壁自体も全体を見渡せば魔法陣となる。

更に、通常の魔法陣とは違い平面的なものではなく、地下のダンジョンで作る事で立体的な魔法陣を構築するのだ。

へー器用な事考えるのね

何を他人事の様に言っている?

地図を見て感心するリルに、Olは呆れてため息をつく。

お前を呼んだのは性欲の捌け口の為だけではないぞ。この設計も、お前にやってもらうのだ

はあ!? 無理無理無理無理、絶対無理! これってあれでしょ?魔力を澱まない様にちゃんとコアに届けつつ、侵入者には予測できないような迷宮にしなきゃいけないんでしょ!?

ついでに、迷宮全体に防衛効果を持たせたり、魔物どもが暮らし易い様、部屋の数や大きさにも気を配る必要があるな

更に難易度上がってるじゃないの!? 絶対無理だってば!

心配せずとも、一朝一夕にやれとも一人で全てこなせとも言わん。俺の元で学び、小さい単位から徐々に仕事を学んでもらう

地図を改めて見返し、リルは眉根を寄せる。悪魔は人間と違って理論に従って魔術を使っている訳ではない。しかし、基礎的な魔法陣の意味くらいは読み取れる。

Olが設計したそれの緻密さは、彼女の目から見ても途方もないものだった。

まさか魔術の勉強をさせられるとはねそりゃまあ契約だからやるけどさ、あんまり期待はしないでよね?

これを見て困難さを理解できているなら、問題ないだろう。知とは何を知っているかより、何を知らぬかを理解している事の方が肝要なのだ。お前ならいずれ出来るだろう

真っ直ぐ見つめて言うOlに、思わずリルは視線をそらす。

まあ、やるだけはやってあげるわよ、使い魔だし

Перейти на страницу:

Поиск

Нет соединения с сервером, попробуйте зайти чуть позже