そんな訳で、硝子達と一緒にインスタントダンジョンに潜ってエネルギーと熟練度を稼いだのだった。
尚、その日はみんなが優しかった。
ペックル雇用
さて、第三都市カルミラが解放されて判明したシステムであるペックル雇用に関してなんだが、ヘルプには雇用の仕方から何まで色々と書かれている。
とりあえず簡単に説明すると、ギルド登録と同じ様に城の受付でペックルを金銭を使って雇う感じだ。
一人一匹……そういやペックルって鳥っぽいのに一羽じゃないんだな?
雇用するとペックルを戦闘で呼び出す、要約するとペット的な要素が出来るようになる訳だ。
但し、ペックルは戦闘よりも他の作業をさせる方が向いている。
マイホームの清掃や武具の修理、何かの製作等、出来る指示はそこそこ多い。
雇用費の金銭を補給する事で雇い続ける事が出来る。
魚を与えるとやる気が向上し、作業効率が上がる訳だけど、僅かの金銭を与える事でも同様の効果が得られる。
ヘルプによると与えた金銭で魚を買って食べているらしい。
ちなみにその雇用延長費は一部ではあるが俺達の財布に入る。
「新システムという事で雇用したのですが……」
みんなが試しに雇用したペックルを見る。
ちなみに俺が釣り上げたペックルとは完全に別枠のオリジナルペックルという扱いだそうだ。
そこ等辺はゲーム的な仕様らしい。
「絆さんから借りた方が効率的ですよね……無料ですし」
「まあ……」
島主って設定だからか、俺達のギルドメンバーはペックルカウンターでギルドメンバーに当てはめると、島で一緒に作業したペックルをそのまま雇用関係にさせられる。
色々な個体がいるので、好きなのを持っていけば良いって感じだ。
「中々に便利だよ。ペックル達は新たに覚えた技能とかで作業の手伝いをしてくれるし、面倒な採取や採掘、鋳造まで経験させればしてくれる」
ロミナはペックル雇用で随分と助かっていると言っている。
島内に居る限りは制限なんて無い。
いずれ島から出た後の事を考えると採取活動が出来るのは一匹になるんだろう。
ちなみにロミナが気に入っているのはハンマー持ちのペックルだ。
「しかもこの島ではペックルは無数にいる訳だしね。アルトに頼めば幾らでも人員を割いてくれるから私はやりたい事をずっとやって居られるよ」
「ああ……そうか」
「オリジナルペックルを育てるのも楽しそう。私の友達もマイペックルで遊んでるし」
紡が他プレイヤーの状況を教えてくれる。
なんて言うか、ペックルの役目から見る限り、やはり何処かの妖精みたいな扱いが向いているんだろう。
でだ……このペックル雇用なんだが……やはりというかなんと言うか、俺には制限が無い。
一人一匹と言う制限が無く、しかもカモンペックルでいつでも任意の場所に呼び出す事が出来る。
ブレイブペックルはさすがに一匹しかいないけどさ。
「ペックルカスタマイズで任意のアクセサリーとか装備をさせる事が出来るみたいだし」
「じゃあ前カバンでも付けさせてナイフの二刀流でもさせるかね」
「何か危険な発想をしている気がするからお勧めはしないよ」
「そうか?」
「それはともかく、マイペックルのシステムの説明をするよ。疲労度と呼ばれる別数値があるそうだ。高いと勝手に休んでしまう。これはストレスゲージと同じだろうね」
簡略化されているって事かな。
無数にペックルを呼び出せはするけれど、疲労度には十分に注意をしろって事ね。
ペックルの育成も面白そうだよな。
いつでも呼び出せるなら一緒に釣りでもさせるか。
「絆くん、もしもペックルを呼び出す際は、あまり呼び過ぎない方が嬉しいね。どうやら島にいるペックル達を呼ぶと、その分ペックルが使えなくなるから」
アルトが俺の考えを先読みして注意してくる。
「何だかんだ言って絆くんとは付き合いが長くなってきたからね。君の突飛な発想は時にとんでもない事を仕出かしかねない」
……。
「やりそうな事と言ったら……気に入った釣り場を見つけたからと行って際限なくペックルを呼んで釣りをしない事を勧めるよ」
「絵的に面白そう! お兄ちゃんやってみてよ!」
後で第二都市で釣りをしようと思っているけれど……あの川に一列ズラーッとペックルが釣竿を垂らしている光景を想像してみる。
凄いシュールな光景だ。
「何かのイベントだと思われそうですね」
「僕はやるなと言ったんだけど……」
硝子も想像して納得した様子。
確かにアルトの言う通りやめておいた方が良いかもしれない。
「わかったわかった。とはいえ、こんな育成システムも搭載してるんだな」
「やりたい事が多くなってくるから、そのアシスト用って事なんじゃないかな? MMOにはそこそこあったシステムだと思うよ。武器とか防具、道具作り、家具、何かの作業を代行してくれるNPCの雇用とかね」
「俺も知らない訳じゃないけど、確かになー……しかも戦闘にも一応出せるから便利と言えば便利か」
まあ、呼び出すのは精々五匹くらいがバランス的に便利そうだ。
一人でもパーティー活動が出来る。
……微妙にむなしいな。
「まあ、気に入ったペックルが居たら教えてくれると助かるよ。割り振るから」
「わかりました……けど」
そこでアルト以外の連中が俺の方に視線を向ける。
具体的には俺の頭上だな。
今の俺は元サンタペックルであるクリスが落としたサンタ帽子を被っている。
「あの、絆さん、一体いつまでその帽子を被っているのでしょうか?」
「別に俺は好きで被ってる訳じゃないぞ!」
「そうだね。絆くんがそれを被っている事には大きな意味がある。具体的にはペックル達に効果がね」
アルトが後押しとばかりに胸を張って言い切る。
俺が今装備しているのはクリスマスペックル帽とか言うふざけた頭装備だ。
クリスマスペックル帽 クリス&島主専用
どんな効果があるのかと言うと、雇用しているペックルの全能力20%増加とか言うふざけた性能を宿しているのだ。
ちなみにクリス自身に装備させれば前のサンタ帽子ペックル状態に戻せる。
中身はキングペックルだけどさ。外見だけな。
その優秀な効果の為に、俺はこれを装備する事を強要されてしまっている。
「絆くんとクリス、更にブレイブペックルの能力上昇効果を総合計すると、全ペックルの能力が約2倍にまでなるんだよ! ブレイブペックルの指揮無しで!」
「指揮をさせると?」
「2.5倍になるよ」
「それだけの能力を生かせる状況ってもうあるの?」
開拓ではやる事が多かったからこそ必要な能力だった訳で、今は精々店番や採掘、漁をさせるくらいしかする事は無いのではないだろうか?
建物の補修にしたって、劣化する時期ではない。
「ふ……甘いね。マイホームをカルミラで購入したプレイヤーが建築委託をしないとでも思ったのかな?」
「ああ、なるほどね」
ペックルに建物を建てさせる依頼の受注とかある訳か。
他にも家具製作とか、アルトからすると仕事は山ほど存在するって事だな。
とは言え、家の自作くらいは一般プレイヤーでも出来るはずなんだが……その辺りも金で解決できるのがなんとも妙にリアルっぽくて嫌な気もする。
「それに高いに越した事は無いだろう? 僕のボディガードをしてもらうにも良いしね」
「アルトはもう少しLv上げをすべきだと思う」
なんでそこまで頑なにLvを上げないのか、お前がディメンションウェーブをゲーム終了まで商売の練習をする為だけにやっているんじゃないかと言いたくなる。
薄らと見えるアルトのゲームプレイの意味。
今度紡にアルトをゲームオタクにさせる様、囁いておこう。
まあ元々アルトはゲーマーっぽいけどさ。
「話は戻って絆くんはブレイブペックルと……クリスが固定で雇えるのを忘れないでほしい」
「ほい」
一番有能な二匹が俺の専属ってわけね。
……癖が一番強い二匹とも言えるのが悲しい。
「新たな採掘場が見つかったら絆くんがペックルを大量に派遣させるという手もあるよ」
ロミナも悪知恵が働くようになってきたなぁ。
確かにその方法を使えば少ない時間で大量の鉱石を入手する事が出来そうだ。
「後は……タイムリーな話題としてコレが良さそうだね」
そう言ってロミナは何処からともなく大きなペックルのぬいぐるみを出した。
……いや、これはぬいぐるみじゃない。
「なんですか、コレは?」
「実は島の倉庫に溜まっていた品なんだけどね。ペックル達の抜け羽と言う物を鍛冶に使ってみたらレシピに出て来たんだ」
「着ぐるみ……ですか?」
そう、ペックルを模った着ぐるみだった。
ディメンションウェーブ第三波-始動-
ペックル着ぐるみ。
遊園地とかにいる、あのマスコット的な着ぐるみの衣装だ。
「フィッシングマスタリーと泳ぎ補正、水中戦闘技能が掛るんですか……しかも性能がそこそこ高いですね」
「絆くんの所持する下級エンシェントドレスには及ばないしドラゴンゾンビ素材に僅かに負けてしまうがね」
地味にいろんな技能が追加されるみたいだな。
コレはある意味ペックルに成り切れる装備かもしれない。
この手のネタ装備はネットゲームではありがちだが……う~ん。
「ちなみにだ。先ほどのサンタ帽子の件があるだろう? この装備を着用すると一時的に種族がペックルに表面上変化する」
「何……? じゃあスピリットは?」
「その辺りのシステムまでは介在しないのは確認済みだ。後は分かるんじゃないかね?」
「俺がリーダーとしてみんながこれを装備したらドラゴンゾンビよりも上の性能になる」
硝子を初め、みんなに目を向ける。
しぇりる、ロミナ、アルト以外が首を振る。
「……ペンギンストーリー。ダイエット。レトロゲーム」
しぇりるは反応が微妙だな。
それは何のネタだ?
「幾ら強くなれると言っても困ります」
「そうでござる!」
「そうそう、そう言ったネタ装備はお兄ちゃん枠でしょ。何ならそのドレスを頂戴」
「誰がやるか! と言うか完全に俺をペックル枠に入れる気だな!」
「客寄せと顔を隠す意味で僕は良いかもしれないけどね」
アルトの場合はな……死の商人としての顔が割れない様にしようとしている様に見える。
色んな意味で便利かもしれない。
というか、この前の4人組が使うと良いアイテムだな。
「武器とかは作れないんですか? それならまだ妥協できるかもしれません」
「どっちにしてもネタ装備になりそうじゃない? 硝子さん」
「よくわからないんだよ。ありそうな雰囲気はするんだけどね」
「アップデートで出る新武器枠にあるんじゃないか?」
「かもしれないね。キー素材が無いとかの可能性もあるよ。どちらにしても海上では有利になるかもしれないから覚えておいてほしい」
「使わない事を祈りましょう」
そんな訳でペックル達はディメンションウェーブをプレイしているユーザー達に浸透して行ったのだった。
で、他に起こったイベントとして島の近隣に別の島が発見された。
こっちも一応、カルミラ島の領地内って扱いっぽい。
この島は単純なモンスターが生息する狩り場って扱いだ。
カルミラ島本島を拠点に島へ向かう船持ちプレイヤーが効率の良いモンスターを探して向かう構図が出来ているって所だな。
しぇりるが監督する船のドックには新規で船を依頼する人がそれこそ、山の様に来るようになった。
船作りに関しては製造系プレイヤーが急いで作っているらしいけど、やはりゲーム当初から船作りをしていたしぇりるには敵わないらしい。
しかもしぇりるが作る船にはマシンナリーで作ったレーダー付きなので、性能もピカイチ。
素材、金銭、全部持ちでしぇりるに作って貰う環境と言うのは、しぇりるからしたら幸せな状況かな?
本人はあまり喋らないからわからないけど、人数限定で依頼は受けている様だ。
島が解放されるまで好き勝手に船作りしていた腕前が評価されつつあるって事か?
ああ、後……やはり解体に関しては割と周知の事実となっていて、解体技能を磨いている連中がそこそこ増えている。
釣り人は俺が見た所、其処まで居ないのが不満に思う所だろうか?
釣りと解体は相性がいいと思うのだが……。
そんな感じで島での出来事は日々代わる代わる変化が起こっている。
インスタントダンジョンの時間節約術でケチくさく地道にLv上げするか未知の島を冒険して自分達にあった狩り場を見つけるか等、やる事の可能性が広がった感じだな。
で、島での変化にみんなが対応し始めた頃……。
――バリンッ!