なぜ、と思う間もなく横に滑るOlの視線を追えば、寝室の扉の向こうにザナの存在が感じられた。何の意味もなくそんな場所にいるわけがない。聞き耳を立てているのだ、と思い至った瞬間に、マリナの頬はかっと紅潮した。
んっ!
それを見計らったかのように、Olの指先がマリナの太ももを撫でる。慌てて奥歯を噛みしめるも、微かな声が飛び出てマリナは己の口を両手で塞いだ。
先程までの繊細な動きが嘘のように、Olは彼女の両脚に手をかけると強引に押し開く。男の眼前に秘部が晒される恥辱を感じながらも、マリナはそれに抵抗することができなかった。
っ!ぅ、っ!
Olが顔を埋め、舌先がマリナの入り口を突く。ねっとりとした柔らかな感触がなぞるだけで、マリナがビクビクと身体を震わせてしまった。
しかしそれが二度、三度とスリットをなぞり、ゆっくりと入り込んでくる。初めは入り口のごく近い部分を撫でるように。少しずつ少しずつ、坑道を掘り進むように侵入してくる。気遣われ、優しくされているのが、否が応にも感じられてしまった。
気持ちいいのか、と自問してみれば、それは正直なところよくわからない。だが、少なくとも恐れも嫌悪もないことは確かなことだった。
ヌルヌルと蠢く舌が縦横無尽に膣内をねぶり、唾液を塗り込めていくさまを、マリナはただ両手で己の口を塞ぎながら眺めるしかないというのに。
不意に、Olの口が彼女の股間から離れる。水気を帯びた生ぬるさが失われ、それにどこか喪失感を抱く。だがマリナがそのことについて思いを馳せるよりも早く、舌とは違う、何か硬いものが彼女の中に入ってきた。
男根ではない。それは、指だった。
Olの右手の人差し指が、ゆっくりとマリナの膣内に挿入されていく。
ああ
それがずぶずぶと埋め込まれていくさまを、マリナは目を見開いて見つめた。
──受け入れて、しまった。
小さく柔らかな舌とは違う。男のそれよりずっと細いとは言え、平時の女のそこは指を入れられるようにはなっていないことくらい、マリナとてわかっている。
それが、指の根本までほとんど抵抗もなくすんなりと埋まり込んでしまっている。意識はともかく、マリナの身体はOlの指を受け入れてしまっているのだ。それは衝撃的なことであった。
ゆっくりと、抽送が始まる。Olの指が中ほどまで引き抜かれ、そしてまた埋め込まれていく。その指が濡れているのは、彼の唾液だけが原因ではないのは明白だった。
指の動きは徐々にその速度を上げて、マリナの膣壁を擦り上げていく。それでもなんとか声を我慢していたマリナの耳に、くちゅりと水音が響いた。
ぁっ!
それが己自身が分泌した蜜の立てた音であることを悟って、マリナは思わず声を上げる。だがそれは一度で終わるばかりか、意識すればするほどに頻度が上がっていく。
ふっ、ぅっ
いつの間にか彼女の息は荒く乱れ、吐息とともに喘ぎ声が漏れ出ていくのを止められない。Olが指を出し入れするたびに、そこはくちゅくちゅと微かではあるが明らかな淫猥な音を奏でた。
マリナは悲鳴のような声を上げた。
指を差し入れたまま、Olの舌が彼女の陰核を捉えたからだ。
やっだめぇっ
思わず口を手で押さえることも忘れてOlの頭を押すが、腕にはまるで力が入らず、ただただ琥珀色の髪を押さえるばかり。それどころかそれはむしろ己の大事な部分を愛撫する頭を抱きかかえるのにも似た心境になった。
あっ、んんっ、やぁっ
口からは嫌だ駄目だと言葉は出るが、それはまるで空虚な言葉であった。マリナ自身、もし本当にここでやめられてしまえば愕然とするだろう。気持ちいい、などとは思っていない。──そのように自分を客観視できる状態は、とうに通り過ぎている。
そして、あれほどマリナを気遣う様子を見せていたというのに、Olはやめる気配どころか様子を伺うことさえせず、愛撫を続けていた。
ああっ!だめっ、やぁっ!いや、ああぁっ、そこぉっあ、だめ、くちゅくちゅ、音、たてない、でぇっ!
それどころか、マリナが嫌だと言ったことをこそ執拗に繰り返してくる。
あぁっ、そこの、奥、そこ、だめですっああんっ、そんな、はやくしちゃ、やぁんっ!あっ、やぁっ!
だからこそマリナは悶え、乱れた。
ああ、あ、あ、あ、あ、あ、だ、め、えぇっ!や、あ、何、か、くるっきちゃい、ま、すぅっ!
押し寄せる快楽の予感に、マリナはOlの身体を強くぐいと押す。それはある意味では、はじめての真の拒否だった。
その時だけOlが顔を上げ、言う。
呟くような低い声は、しっかりとマリナの耳に届き。
ああ、ああああ、あああああああっ!
マリナはOlの首に両脚を巻きつけるようにして、気をやった。
あっああああ、あ
己の身体に何が起こったかわからず、マリナは荒く呼吸を繰り返す。
マリナ
Olは彼女の股間から顔を離すと、己の裸身を晒すようにして、問う。
いいか?
は、い
己の顔を両手で隠すようにしながら、マリナはこくんと頷いた。
第18話欠けたる月を満たしましょう-4
マリナは、思わずOlの股間に釘付けになっていた。
隆々とそびえ立つそこは、彼のへそに付きそうなほどに反り返り、太い血管がどくどくと脈打っている。
彼女の視線に気づいたOlの問いに、マリナは思わずこくんと頷いた。
これは骨が入っているわけでは、ないのですよね
長い月日を生きてきた女神のあまりにも初心な言葉に、Olは思わず苦笑する。
硬いような柔らかいような不思議な感触
しなやかな指先で恐る恐ると言った風に握りしめ、マリナは怒張をじっと見つめた。
そのわたしの、を舐めながら、こんなにしてくれたのですか?
迷いなく答えるOlに、マリナの方が赤面する。
その舐めるのが、気持ちいいのですか?
男のそれが、快楽によって大きくなるという程度の知識はマリナにもある。
だが、マリナの秘部に舌を這わせる行為が快楽に繋がるとは思えなかった。
そういうわけではないな
案の定、Olは首を横にふる。
では、なぜ?
お前は気持ちよかったのだろう?
返ってきたのは意外な言葉だった。
それはまあ、そのよくなかったわけでは、ありませんけれども
あれだけはしたない声を上げ、息を乱してしまったのだ。否定すれば嘘になる。
俺自身に快楽がなくとも、お前が乱れ善がっていれば興奮もする
それは、マリナにとって衝撃的な言葉だった。
ではその、これはわたしのを、舐めていたときからずっと?
いや。それよりももっと前からだな。お前の胸元を愛撫していた時からだ
驚きに、マリナは思わずOlの怒張を凝視してしまう。
おつらくはないのですか?
こんなに硬くしているのであれば、男はすぐにでも女の穴に突き入れたいと思うのではないか。
辛いに決まっておろう。質問の時間は手短に済ませてもらえると助かる
そう思って問えば憮然とした返事が返ってきて、マリナは思わずくすりと笑い声を漏らした。
そうした後一拍置いて、彼女はすうと息をすい、意を決した表情で。
ザナも、こうしておりました、よね
Olの剛直の先端を、ぱくりと口に含んだ。
先程して頂いた、お礼、です
くっ
マリナの舌先が雁首をするりとなぞり、唇で締め付けながら亀頭を扱き立てる。辿々しさはあるものの、とても初めてとは思えぬその口技に、Olは思わず呻いた。
お前、それ、力をくっ!
女神マリナの権能、最善手を打つ導きの能力。口淫奉仕にその能力を使っているのは明らかであった。技巧自体はとても上手いとは言えないが、Olの感じるツボを的確に、最適なタイミングで突いてくるのだ。
竿を指先でゆるゆると扱きながら顔を傾げてその肉茎を食むように愛撫し、精の詰まった袋から先端までを捧げ持つようにして舐めあげる。マリナの金の髪がさらりと揺れて、舌を長く伸ばしながら男のモノに奉仕する顔があらわになる。
淫靡極まりないその動作は、その顔の角度までもが男に媚びるような色香に満ちていて、それを見下ろすOlの征服欲を満足させた。それでいて、彼女自身は計算などしていないのだ。ただ己の能力に従い行動しているだけで、それがどのような意味を持っているかなどわかっていないのだろう。
それがかえって、Olの獣欲を煽る。
その一方で、快楽に呻くOlの姿にマリナは目を細める。声を漏らすOlは苦しげではあるが、それが快楽の発露であることはわかっていた。先程のマリナと同じく、気をやらぬよう、乱れぬよう必死に堪えているのだ。
その姿を見て、なるほどと得心する。確かに男の肉棒に奉仕することそのものは、気持ちのいいものではない。むしろ喉の奥にまで咥え込むのは苦しいし、舌や顎も疲れてくる。
だが、魔王ともあろう男が己の口と舌とで感じている姿を見るのは、なかなかに悪いものではなかった。
出す、ぞっ!
不意に、Olがマリナの頭を押さえるようにして宣言する。マリナは能力に導かれるまま、口の動きを早めて強く吸い上げた。
ぐ、うっ!
肉塊がぶるぶると震えながら、膨れ上がる。そしてその次の瞬間、大量の精がマリナの口内に飛び込んできた。
どくり、どくりと断続的に吐き出される白濁の液を、マリナはすべて口で受け止め、飲み干していく。どろりと粘つく青臭い液体を飲み込むのは大変だったが、それも能力を使えば難しくはなかった。
そう。精液を飲み干すことの最善手を打てば。
美味いものではなかろう
マリナは口元を押さえながら、失敗した、と思った。
思えばこの荒涼とした月の上で、数えることも出来ないほどの月日を過ごしてきた。ヒムロの民に加護を与え、見守り続けていたから、すっかり忘れていたのだ。
味、というものを。
初めて口にする男の精液は酷い味であった。生臭くて、ネバネバしていてねっとりと喉に絡み、苦くエグい。
だが久方ぶりのそれを、彼女の身体は、美味として覚えてしまった。
もっと欲しい。肉体そのものがそう望み、Olの男根を見つめるだけでじゅんと子宮の奥が疼く。唾液が分泌されて、マリナはそれを握りしめたまま食い入るように見つめた。
様子のおかしいマリナに、Olは問う。
はい大丈夫、です
嘘だ。全く大丈夫ではない。こんな状態でこんなものを入れられてしまえば、一体どうなってしまうのか予想もつかない。
安心しろ
Olは、ぽんとマリナの頭に手を乗せてそういった。
悪いようにはせん
大丈夫だと答えたにも関わらず、なぜOlはそんな事を言うのか。
わからないままに、マリナはこくりと頷いた。
緊張した面持ちでマリナが頷くと、Olの切っ先がゆっくりと彼女の被裂を押し広げ、侵入してくる。思ったよりも、ずっと痛みは少なかった。
痛むか
いいえ大丈夫です
問われ、マリナは首を振る。かつてイガルクに無理矢理されたときはそのまま自分が二つに裂かれて死んでしまうのではないかと思うほどだったが、この程度であれば我慢できる痛みだった。
Olは無愛想に答えて言葉を切った。マリナは内心首を傾げる。Olが何をするでもなく、じっとマリナの顔を見つめていたからだ。
あの何か?
痛みは、収まってきたか?
ええと、大丈夫だと申し上げましたが
それはけして嘘ではない。確かに痛いことは痛いが、喚くほどの痛みではなかった。
そうか。では、動くぞ
Olは淡々とそう答え、ゆっくりと抽送を開始する。
肉と肉が擦れ合い、太い棒がマリナの奥をめりめりと押し開いていく。すると、途端にずきりと腹の奥が痛んだ。まるで肉と肉を剥がされるような激痛。
しかし大丈夫だと言った手前、すぐに前言を覆すのもきまりが悪い。マリナは声を漏らすのを何とか堪えた。
にもかかわらず、Olはぴたりと動きを止める。そして無言のまま、先ほどと同じようにマリナを見つめた。
──いや。違う。Olは、ずっとマリナの顔を見ていたのだ。
それに気づいた時、言いようのない思いがマリナを襲った。羞恥とも喜悦ともつかぬ、複雑な感情。それでいて、心の底から湧き上がるような、そんな想い。
もう大丈夫です
Olはそっけなく頷き、動きを再開する。ぐっと彼の太いモノが、先程よりもずっと奥まで押し入ってくる。しかし、今度こそは殆ど痛みはなかった。
ゆっくりとした抽送は次第に滑らかな動きになって、小刻みに前後しながらマリナの膣内を少しずつ進んでいく。それは坑道を掘るような動きであり、同時に扉をノックするようでもあった。
この奥に進んでもいいか。そう、問うようなノックだ。