胸に舌を這わせるアランに、ナジャはぴくんと身体を震わせた。戦いに明け暮れた剣士の体だが、その肌には傷は殆どない。ナジャ自身の剣士としての腕の高さや癒し手のShalの技量ももちろんあるが、何よりもそれはアランが守った肌だ。
出会ったその時からアランは常に誰よりも前面に出、攻撃をひきつけた。そして体勢を崩した敵を屠るのがナジャの役割だった。
最初は線の細い頼りない男だと思ったものだったが、その評価はすぐに覆った。そして、それが信頼に変わり、やがて愛情に変ずるのはそれほど時間はかからなかった。
唇は胸からゆっくりと下り、腹を通って脚の間の茂みの奥へと辿り付く。
レオナ、脚を開いて
そっと脚を押すと、ナジャは顔を真っ赤にしつつもそれに従って両脚を開き、誰にも見せたことのないそこを晒した。
駄目だ、アラン、こんなの恥ずかしすぎる
両手で顔を多い、ナジャは情けない声を上げる。
可愛いよ。レオナ
言って、アランはそこに舌を差し入れた。
あぁっ
初めて気恥ずかしさからではなく、確かな快楽にナジャは高く声を上げる。アランの舌は縦横無尽にそこを蹂躙し、その度にナジャは波に翻弄される小船のように身体をよじり、声を上げた。
ア、アラン、私、もう大丈夫だと、思う、からっ
このままでは、わけもわからぬまま我を失いかねない。ナジャが声をかけると、彼女を怯えさせないようアランはゆっくりと彼女に覆いかぶさり、目を見つめた。
じゃあいくよ
アランは不思議そうにナジャを見つめた。それで、ナジャは一瞬自分の目がかすれたようになったことに気付く。目をぱちぱちと瞬かせるが、特に異常は見られない。
い、いや、なんでもないその、一思いにやってくれ
言って自分で情緒の無さに情けなくなるが、アランは優しく笑みを浮かべ、ナジャを抱きしめた。途端、ずぶりと貫かれる感覚がナジャの背筋を駆ける。じんわりとした痛みと共に、彼女は女としての幸せに包まれた。
大丈夫だ、これしきの痛みなんとも無い
心配そうに見るアランに、ナジャは微笑みかけて見せた。内臓を抉られる様な痛みは辛かったが、アランに与えられていると思えばそれも不思議な満足感を彼女に与えてくれた。
ただ、そのぎゅっとしてくれ
アランは頷き、ナジャを抱きしめるとゆっくりと抽送を始めた。
んっ、ん
しばらくそうしていると、最初は苦痛に声を押し殺していたナジャの声に、だんだんと甘いものが混じってくる。
突き入れながらアランが彼女の胸の先端に口をつけると、喉を反らせるようにしてナジャは鳴き声を上げた。
ああっ、あ、あ、あぁっ、アラン、アランっ
こんなにも甘くいやらしい声が自分から出るのか、とナジャは驚いた。アランの頭をかき抱く様にして、ナジャは快楽に身を任せる。
レオナ愛してるっ!
あぁ、アランっ、もっと、もっとして、もっと激しくああっ、アラン!
いつの間にか抽送は激しさを増し、水気を帯びた肉のぶつかり合う音が牢獄に響く。
レオナ、イくイくぞっ!
アランっ、中に中に、出してえぇぇっ!!
ざざ。
叫んだ瞬間、再びナジャの視界がブレた。
しかしそれがなんなのか考えるまでも無く、ナジャの一番奥までアランの物が突き入れられる。まるで鈍器で頭を殴られた時のように火花が散り、ナジャは身体を大きく反らせた。
~~~~~~~~~ああああああああ!!
自分が叫んでいた事にすら気付かず、絶頂するナジャの奥深くにアランはたっぷりと精を吐き出す。満足いくまで射精の快感を堪能し、アランがナジャの秘部からペニスを引き抜く時には、彼女はぐったりと気を失っていた。
アランはベッドを降りると、彼女の頭を軽くなでて囁く。
中々良かったぞ、ナジャとやら
その顔からは先ほどまでの優しい表情は消え、代わりにニヤリとした邪悪な笑みが浮かんでいた。
第10話欲にまみれた冒険者どもに絶望を与えましょう-3
あっ、ああっ、アラン、アランッ!
ベッドに横たわったアランの上で、ナジャは一心不乱に腰を振っていた。あれから幾度も肌を重ね、痛みを感じる事は全くなくなっていた。二人とも遠慮なくお互いの身体を貪り、愛欲にふける。
初めて肌を重ねた日、意識を失ったナジャが目を覚ますとアランの姿はなくなっていた。ナジャがおきてしばらくすると朝餉が黒アールヴによって差し入れられ、それから半日後、夕餉が届けられると共にアランが戻ってくる。
別々の間何をしていたのか問うと、アランは言葉を濁した。言いたくない事であれば無理には聞くまい、とナジャは彼を心配しつつも、問いただすのをやめた。
共に夕餉を摂ると、どちらからともなく手を絡ませ、再び睦みあう。情交の疲れで眠りにつき、目を覚ますとまたアランがいない。そんな生活の繰り返しが、ここ数日ずっと続いていた。
囚人生活はとにかく暇の一言だった。狭い監獄の中で、出来る事は何もない。とりあえず身体が鈍ってしまわない様に腕立てや腹筋などの筋力トレーニングを行うが、器具も訓練用の武器もない狭い室内では限界がある。食器を使って何とか脱走できないかと、壁を掘ろうとしてみたり、錠前を壊そうとしてみたりといった努力は全て徒労に終わった。
恐らく魔術で補強がかけてあるのであろう。壁や錠前は傷一つつかず、逆にスプーンやフォークなどの食器はすぐにぐにゃりと曲がって使い物にならなくなった。
食事を運ぶ黒アールヴに次に壊してみろ、焼けたスープを素手で飲ませてやると脅されてから、そういった努力は諦めた。
暇である事を除けば、囚人生活はそれなりに快適だった。運ばれてくる料理は質素なものだったが、それなりの量と味があり、メニューも毎日変わる。
朝食が終わると、食器が回収されると共に湯の入った桶と布が渡され、身を清める事も出来た。普段は滅多に湯になど浸からずたまに水を浴びる程度の生活だったが、アランと肌を重ねる時にはやはり汚れも気になる。たっぷりと時間をかけ、彼女は身体の隅々まで磨いた。
排泄物も毎日二度回収され、綺麗な壷と取り替えられる。いずれもアランのいない時間帯に、女のアールヴによって取り替えられるのが地味に嬉しかった。やはり、そういったものを男に見られるのは勘弁願いたい。想いを寄せる相手であれば尚更だ。
食事以外に時間を知るすべもない生活に、いつしかナジャは何年も牢に入れられている気分になった。楽しかったはずのアラン達との冒険の日々は遠く霞み、色彩を失って現実感がない。
そんな中、アランだけが彼女の心に安らぎを与えてくれた。彼女は縋る様に彼に抱かれ、精を求めた。彼の腕に抱かれていると心から安心し、このままの生活がずっと続けばいい、そんな気持ちになった。
ざ。ざざざ。
そんな生活に影を落とすのが、ナジャの視界を揺らすこのチラつきだった。ふとした瞬間に視界がぶれ、異音が耳を突く。アランにはこの症状は出ていないようだった。病気か、それとも何かの呪いか。最初は気のせいかと思う程度だったそれは、次第に頻度を増やし、今では拭いがたい違和感としてナジャの頭にこびりついていた。
ア、アラン
助けを求めるようにアランの頬に手をそえ、顔を近づける。
ざざざざっ。
口付けようとしたその瞬間、再び視界がブレた。ナジャは慌てて顔を上げ、首を振る。
いきそうなのか? 俺もっいくぞ!
胎内に流し込まれる暖かい感触を感じながら、ナジャは今見たものの事を思い返す。
ブレた視界の先で見えた、アランの顔。
それは、全く別の男の顔だった。
深夜。日の光など届かない、時間の流れもロクにわからない地下の中ではあるが、食事の時間から換算して恐らく深夜だろう。ベッドに横たわるナジャの横で、むくりとアランは身を起こした。
ナジャを起こさぬようにそっと牢獄の扉を開け、外に出て行く。
薄く開けた目でそれを確認して、ナジャはぱちりと両目を開いた。いつもの様に愛し合った後、気を失ったフリをしたナジャは、今までアランだと思っていた男が、全くの別人であると確信した。
恐らく、幻術の類でもかけていたのだろう。時折起こるチラつきは、思えばアランと一緒にいる時だけ起こっていた。異常ではなく、正常。魔術が綻ぶ瞬間だったのだ。
ナジャは猫の様にしなやかな動きで監獄の扉に張り付くと、そっと押した。鍵はかかってない。後で黒アールヴが閉めに来るのだろう。ナジャは隠し持っておいたナイフを服の袖から取り出すと、長い髪をぐっと握り締め、根元の方から切り取った。武器にはなりそうもない食器のナイフだが、髪を切る事ぐらいは容易い。
ショートカットになったナジャは、掛け布団を丸めて中に人が入っているかのように偽装すると、その端から髪を覗かせるようにしておいた。これで、遠目にはナジャが寝ているように見えるはずだ。
ナジャはそっと牢を出、足音を忍ばせながら迷宮の廊下を歩いていく。ナジャ達が冒険していた階層は、そこかしこに死骸が転がり腐臭に塗れていたが、この辺りはまるで王宮の廊下の様に清潔感が溢れ、塵一つない。
牢獄にいた頃はあまり気にしていなかったが、壁面も淡く光を放っていて、薄暗くはあったが明かりがなくても先を見通す事ができた。それに、薄暗いのはナジャにとっては都合がいい。
勘に任せて迷宮の中を進んでいると、光の洩れている扉を見つけ、ナジャは忍び寄って中を覗いた。そこには、大きな椅子にくすんだ金色の髪の男が座っていた。眠っているのか、目を閉じ、椅子に座ったまま微動だにしない。
こいつだ、とナジャは内心を怒りに燃やした。幻術の向こうで見えた男の顔は、間違いなく椅子に座っている男のものだった。アイツがアランのフリをして、何度もナジャを抱き、精を胎内に注ぎ込んだのだ。
ナジャの心は嫌悪感で満たされ、今すぐにでも部屋に入っていって殺してやりたい衝動に駆られるが、彼女は鋼の意思でそれを抑えた。今すべき事は、本物のアランを探し出し、助け出す事だ。
ナジャは扉をそっと離れ、探索を再開する。今夜は何故か勘が冴え渡っている。誰にも見つかることなく廊下を進み、ナジャは槍を持ってぼうっと立っているゴブリンを見つけた。
ゴブリンの背には木で出来た粗末な扉があり、ゴブリンの腰には鍵束がぶら下がっている。
あそこだ、とナジャは直感的に思った。風の様にゴブリンに駆け寄ると、その小さな首を掴んで思いっきり横に曲げる。首の骨をおられ、声をあげる間もなくゴブリンはあっという間に絶命した。
その腰から鍵束を剥ぎ取ると、扉につけられている錠前に鍵を突っ込む。一度、二度は失敗したが、三本目で鍵はカチリと音を立てて開いた。
小さな部屋の中で、彼は粗末な椅子に腰掛けぐったりとしていた。その腕を縛っている縄を解き、もう一度呼びかけると彼は辛そうにゆっくりと顔を上げた。
ナジャ?
ああ、アラン!
ナジャは彼をぎゅっと胸に抱きしめた。ナジャの様にいい扱いをされていなかったのか、髪の色は艶やかさを失い、身体もやや痩せてしまっているが、間違いなく彼こそが本物だ。
さあ、逃げよう。一旦逃げて、体勢を立て直すんだ。丸腰で逃げるのは難しいかもしれないが、私とアランなら何とかなる。運が良ければ装備やShal達も見つかるかもしれない
その必要は、ない
意外な言葉に顔を上げると、彼の瞳がナジャを見つめていた。深い茶の瞳に見つめられ、一瞬、全てを忘れナジャはその瞳を見つめ返す。
俺はこの迷宮の主。そして、お前の主だ。身分を隠して冒険者の一行に紛れ込む任。よく頑張ったな、レオナ
優しく髪を撫でる彼の手つきに、ナジャは全てを思い出した。
ああOl様
目の前にいるのは、アランじゃない。Olだ。ずっと恋を抱き、牢獄の中でナジャを抱き続けた顔、そのままの姿が今ナジャの目の前にあった。
美しい髪を、俺の為に犠牲にしてしまったな。しかし、短い髪のお前もまた美しい。後できちんと整えさせよう
ゆっくりとナジャをかき抱くOlの腕の中で、安心したようにナジャは目を閉じた。そのまま、すやすやと寝息を立て始める。
終わりましたか
それを見計らい、エレンと黒アールヴの娘が一人入ってきた。
ああ。今度は寝室に連れて行け。後で一応呪いはかけるが、もう抵抗する事はないだろう
黒アールヴの娘にナジャの身体をわたし、Olは答えた。ふむ、とエレンは眉根を寄せ、少し考えてからOlに率直に尋ねた。
主殿、私には良くわからんのだが、結局あの娘は元々主殿の配下だったのか?