そんなわけないだろう

エレンの問いに、Olは薄く笑う。

剣士と言うのは全く魔術を使わないが、あれで中々厄介でな。精神力の強さだけなら魔術師を凌ぐ事が多い

椅子に腰掛け、Olは種明かしを始めた。粗末な椅子に見えていたそれは、あっという間に巨大化し、肘掛つきの大きな椅子に変じてOlの身体を支える。

だから反抗できないよう呪いで制限をかけても、とかく扱いづらい。呪いで全身に激痛が走ろうと、構わず数秒程度なら戦い続けたりも平気でする連中だ。反面、目晦ましの類は効き易いから、今回は絡め手で攻めてみた。それがこの顔だ

Olは呪文を一節口ずさむと、その顔がぐにゃりと歪んだ。輝くような金の髪、女と見紛うばかりの細面。それは、アランの顔だった。

あの男に化けて、娘を犯したのはわかっているのですが

唐突に槍で突きながら俺を牢に連れて行け、などと言われた時には、エレンは長い地下生活で主の気が触れたのかと思った。

よく見てろよ

んんんん?

エレンはOlの顔に違和感を覚える。しかし、それが何であるかがわからない。

どうだ?

あ、あれ!?

気付いた時には、Olは元の顔に戻っていた。琥珀色の髪に茶色の瞳。整ってはいるが、男性的な顔付き。どう見てもいつものOlだ。

が、いつもとに戻ったのか、エレンにはさっぱりわからなかった。

ゆっくり、ゆっくりと顔を変化させたのだ。人間アールヴもそうだが、生き物の認識と言う奴は中々面白くてな。ゆっくりとした変化には中々気付けんようになっている

いつの間にかOlの顔は、再びアランのそれへと変化している。

まあ、金と琥珀色で、髪の色が比較的似ていたのが幸いしたな。流石に髪の様な目立つ場所の色が大幅に変わると気付かれる

そういえば、とエレンがOlの目に注目すると、確かに碧眼がゆっくりと茶の瞳に変化していた。

これを数日がかりでやりながら、夜毎に暗示をかけ、記憶を潜在的に植え込んだ。実は自分はOlの手先で、冒険者の仲間のフリをしているだけとな。偽の記憶と変化する顔、後は時折わざと見せてやるアラン本人の顔のせいで、奴はすっかりアランの顔が敵で、俺の顔が味方だと信じこんだ

ナジャが扉の隙間からのぞき見た、大きな椅子に座っていた男はアラン本人だった。そこでそれに気付けば、ナジャは或いは彼を助け出せたかもしれない。しかし、記憶を曖昧にされ、Olの顔をアランだと信じていた彼女にとっては、憎き敵の顔にしか見えなかった。

人間と言う奴はな、どんなに疑い深い者でも相手の裏をかいたと思った瞬間は酷く心が無防備になる。その瞬間を利用し、敵と味方の顔が入れ替わったのを支点にして植え込んだ記憶を一気に表面化させ、奴の今までの人生の本当と嘘をすげかえ、俺の味方であると信じ込ませた。信じ込む、と言うのは怖いぞ。疑いすらしない事は防ぎようがない

怖いのはあなただ、と思ったが、エレンは口には出さない。主人として頼れるという思いもあり、やはり恐ろしくもある。

だがまあ、実験はうまくいったがこの方法は手間がかかりすぎるな。成功したのも半分以上は運みたいなものだし、次はもう少しスマートに済ませるか

娘は後二人、別々のアプローチで堕とすつもりだ。

邪悪な思考を巡らせながら、Olは次の犠牲者の下へと足を向けるのだった。

第10話欲にまみれた冒険者どもに絶望を与えましょう-4

話は数日さかのぼる。

ナジャが牢獄で目を覚ましたその日、つまりアラン一行がOlに破れ捕えられた翌日。僧侶のShalもまた、牢獄で目を覚ましていた。

ベッドの上で半身を起こしたShalは、同じ部屋の中で椅子に脚を組んで座る男を見て反射的に身構えた。仮面をつけていたから顔には見覚えがないが、背格好と琥珀色の髪ですぐにわかる。この男こそ、邪悪なる魔術師Olだ。

慌てるな。別にお前を害する気はない。その気ならとっくに殺している

Olは慌てた様子もなくそういった。その言葉を信じた訳ではないが、Shalは身体の緊張を少しだけ解く。そもそも、反抗する事自体が無駄だというのはわかっていた。

彼女の右手人差し指にはまっているのは封魔の呪具だ(余談だが、Olがナジャにした説明は大嘘で、いちいち魔封じの呪いなどかけていない)。

これがある限り魔術は使えないし、自分で外す事も出来ない。白アールヴである彼女は人間より力が弱く体格も小さいので、魔術師といえど人間の男であるOlに腕力で敵う気もしない。

何が望みですか

話が早いな

酷薄な笑みを浮かべ、Olは足を組み替えた。彼は少し考えるように手を顎にやり

では、身体でも捧げて貰おうか

まるで酒場で酒の注文でもするかのようにそう言った。まだ経験のないShalだったが、その意味が判らぬほど子供でもない。真っ白な肌を真赤に染めてOlを睨んだ。

ふざけないで下さい。あなたの様な邪悪で下卑た男に汚されるくらいなら、あたしはこの舌を噛んで死にます

命を賭けるほど嫌か

当然です

即答するShalに、なるほど、とOlは頷いた。

ではその命が仲間の物でも、同じことが言えるかな?

Shalの顔色が、赤から一気に蒼白へと変わる。

お前の仲間は三人とも無事だ。今は、な

この、恥知らず

可愛らしい表情を憎悪に歪め、ぎりりと奥歯を噛み締めShalはOlを睨んだ。しかし、視線に刃がついていればOlをバラバラに出来そうな瞳も、邪悪な魔術師の面の皮の前では全くの無力だった。

たっぷりと逡巡した後、のろのろとした動作でShalはベッドに身体を横たえ、ぎゅっと目を閉じた。

好きにしなさい

白アールヴは、人間の何倍もの時間を生きる。そして、その時間の大半を、たった一人の相手を緩やかに愛する事に使う。白アールヴにとって愛とは至高のものであり、その証明になりうる純潔は何よりも大切にするべきものだ。

それを、仲間の為に捨てる事を決意した彼女の覚悟は、いかばかりのものか。愛するアランは勿論、ナジャやウィキアも種族は違えどShalにとってはかけがえのない友人であり、仲間だ。これから自分に降り注ぐ残酷な運命に身を震わせ、Shalは歯を食いしばった。この男の前でけして涙を見せたりしない。そう、誓った。

どうやらお前は何か思い違いをしているようだな

そんな、小さな少女の悲壮な覚悟を

俺はお前の身体などどうでもいい。乞い願うのはお前の方だ。お願いですOl様、どうかこの身を犯してください、とな

Olは、土足で踏み躙った。

あまりの屈辱に、あまりの怒りに、Shalは言葉どころか呼吸さえままならない。元々平穏を好む白アールヴであることに加え、彼女は神に仕える僧侶を目指した身の上だ。慈愛に満ち、怒りなどとは無縁であると仲間達は思っていたし、Shal自身もそう思っていた。

それがこの、身を貫くような憎しみ。生まれて初めて味わう感情に、Shalは我を失った。

ああああああっ!!

ベッドから跳ね起きると、拳を振り上げてOlに突進する。激情のままに振り抜かれた細腕は、しかし軽々とOlによって受け止められた。

なるほど、貴様の要求は良くわかった

憎らしいほど落ち着き払った態度でOlはそういうと、Shalの腕を離してくるりと背を向けた。

まずは右腕だ

Olの言葉の意味をはかりかねながらも、不吉な気配を感じ取ってShalの鼓動がどきりと高鳴る。

次に左腕、右足、左足。その後は耳を削ぎ、目を抉り、舌を切り取る。安心しろ、回復魔術をかけながら少しずつ進めてやるから死にはせん。何も出来ぬ肉の塊になったところで、会わせてやろう。お前の愛しい男にな

待って!

ShalはOlに縋りついた。怒りも憎しみも即座に消し飛び、代わりに恐怖が完全に彼女の心を支配している。

お願い、やめてお願い、します。なんでも、しますから

彼女の両目からは涙が溢れていた。少女の脆弱な誓いなど、老獪な魔術師の前ではないも同然だった。

ほう。ならば言う事があるのではないか?

ぐ、とShalは言葉に詰まった。だが、躊躇しているとOlは彼女から興味を失ってしまう。つまらない羽虫でも観察する子供の様な表情で、OlはShalを見ていた。角を持つ甲虫や蝶の様に見ていて面白いものではないが、懸命に飛んでいる間だけなら目を向ける気にはなるそんな感じの表情だ。

おお願いです、Ol様。どうかどう、か、この身をっうう犯して、ください!

ついに、貞淑な白アールヴの僧侶は屈した。

ふむまあいいだろう。ベッドに横たわり、服をたくし上げて脚を開け

特に感慨を見せるでもなく、Olは命じた。おずおずとした動作でShalはベッドに身体を横たえ、震える手で服をたくし上げた。

全部見せろ

下半身だけを露出するように服を上げたShalに、Olは文句をつける。Shalは目の端に涙を浮かべながら、言われた通りにした。脇で引っかかる場所まで服をたくし上げ、彼女の素肌が殆どあらわとなる。

肉感的な黒アールヴの身体に比べ、白アールヴの身体は凹凸に乏しい。ささやかなふくらみと、子供のように毛もひだも無いシンプルなスリットがOlの無遠慮な視線に晒され、Shalはきゅっと身体を縮めた。

Olは言葉も発さずに彼女にのしかかると、濡れてもいない秘裂に己の物を強引に突き入れた。

あああああっ!!

文字通り身を裂く痛みに、Shalは悲鳴を上げた。あまりの痛みに、目からぽろぽろと涙が零れ落ちる。喪失感など感じる暇さえ無かった。

痛みに身をよじり、苦しむShalに構う事無くOlは抽送を繰り返す。

うっ! く、ああ! ぃっ、う、ぐぅぅぅっ!

ベッドのシーツを手の色がなくなるほど強く掴みぼろぼろと涙を流しながら、Shalはそれでもやめてだとか嫌といった言葉を口にしなかった。彼女の口から漏れるのは、ただ苦痛の声のみ。少しでも拒否の姿勢を見せれば、仲間に累が及ぶ事を懸念しているに違いなかった。

口にも表情にも出さないが、その意志の強さにOlは少しだけ感心した。まあ、頃合か。そう胸中で呟き、Shalの悲鳴に紛れさせて小さく呪文を唱える。最初に畏怖を与えるのが目的であって、壊してしまうのは本意ではない。

う、あぁぁあ?

少しずつ痛みが和らぎ、Shalは戸惑ったように目を瞬かせた。

大分濡れてきたな。どんなに嫌がろうと、所詮女はこんなものだ

そんな、わけ

ではこれはなんだ?

Olはわざと音が鳴るように、ぐちゅぐちゅとShalの中をかき混ぜて見せた。

Shalの表情が、絶望に染まる。無理やり穢されるのは死よりも辛く耐え難い事だが、仲間の為を思えば耐えられる。しかし、心を穢されるのは、彼女の許容量を越えていた。

この表情は流石にまずい、とOlは方向転換する。

恥じる事はない。これは自然な事、神が定めた当然の摂理だ

神が?

ああ、とOlは頷く。

俺はお前達四人を一人で倒した。計略は用いはしたが、それでも俺がお前達より強い事は確かな事実だ。そして、女は強い男に惹かれるように身体ができている。心はどうあれ、肉体は嘘をつけぬ。天より与えられたものならば、神がそう定めたと言う他あるまい

勿論、そんなものは大嘘だ。

Shalの秘部が濡れているのは、単に強引な抽送から身を守る為の防御反応に過ぎない。前戯もなしに無理やり貫かれて感じる女などいるわけもなく、ただ強い男に女が惹かれるならば、世の中の男達は苦労しない。

しかし初めて男を知り、事実股間を濡らし痛みも消えているShalにはそれを疑う事は出来なかった。疑えば、自身の心が穢された事を認める事になる。そんな事には耐えられない。だから、ShalはOlのその嘘に縋りついた。

すぐにもっと良くなる

OlはShalに突き入れながら、隠し持った媚薬を彼女の秘核にぬりつけた。いつぞやの、スピナ製作のスライムに原材料として使われたものを、更にOlが改良を加えたものだ。皮膚に塗っても経口でも効果を発揮し、じわじわとその性感と興奮を盛り上げる。

んふ、ぁ

程なくして、Shalは甘い声をあげはじめた。

いや、こんな嘘嘘です

自分の身体を走る感覚に戸惑い、必死に否定する。

嘘ではない。言っただろう、お前の身体は俺に惹かれ、既に受け入れているのだ。だが、心まで許せとは言わん

意外な言葉に、Shalは思わずOlの顔を見上げた。

心はお前のものだ。差し出すのは身体だけで良い。神の御業をたっぷりと味わうがいい

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