これは嬉しい誤算だった。一度知られれば使えなくなるような類の罠でも、ある程度冒険者の数を減らすのには有効と言うことだ。
さて、そろそろ進むとしよっか
パンパンと尻を叩きながらFaroが立ち上がる。形代を動かしているOlには体力の消耗はないが、回復もない。胎内のOlの魔力を利用して回復できるリルや、歴戦の冒険者であるナジャ達もまだまだ問題なさそうだ。
Olは頷き、結界を消して先へと向かった。
ここからは外郭。空を飛ぶ相手が多いから、よろしくね
狭い通路を抜けると、一気に天井が開けた。上を見上げると、はるか上に青い空が見える。他の場所に比べれば空気は澄み、明るい日差しが降り注いでいた。縦穴の一つだ。
Faroは弓を構えながら、後ろの魔術師二人に声をかけた。空を自由に舞う敵に対しては、魔術は弓以上に有効だ。
ここでは私はあまり役に立たないかもなShal、防御はよろしく頼んだぞ
はいっ
剣を肩に乗せて呟くナジャに、Shalが元気よく頷く。グリフォンや飛龍であれば攻撃しに降りて来た時に反撃も出来るが、キマイラやマンティコアの様に火を吹いたり毒針を飛ばして空中から攻撃されては、剣しか使えない彼女は手も足も出ない。
早速、きた
ウィキアの静かな警告に一同が顔を上げると、ばさばさと翼の羽ばたきと共に三匹の魔獣がギャアギャアと鳴きながら空中を旋回していた。
あれはハルピュイアか
弓に矢をつがえ、Faroが呟く。ハルピュイアは、女の顔と鳥の翼を持つ魔獣の一種だ。それほど強くはないが頭がよく、脚で器用に石を掴んで投げ放ってきたりする。
戦闘に備えて身構えるFaroを、Olは腕を横に伸ばして制した。
待て。あれはどうも、友好的なようだ
またあ?
Olの言葉に、Faroは大げさに呆れ、肩の力を抜いてガックリした。
まおーさまだ
え、ほんと? ほんと?
まおーさま、まおーさま、こんにちは
他の物にはぎゃあぎゃあと言う喚き声しか聞こえない言葉で、ハルピュイア達は口々にOlに挨拶する。
この者たちは仲間だ、降りて来い
はーい
Olがハルピュイア語で話しかけると、三匹のハルピュイア達はくるくると回りながらOlの目の前に降り立った。
まおーさま、まおーさま、どうしてここにいるの、まおーさま
まおーさま、おなかへった、ごはんある? まおーさま
まおーさま、なんでニンゲンといっしょにいるの?
口々に騒ぐハルピュイア達はひどくかしましい。Olは背嚢から食料を取り出すと、ハルピュイアに分けてやった。食事をしている間だけは、彼女達は静かになる。
リザードマンにケンタウロス、ケイブジャイアントにマーメイド、ハッグとまで話してた時は驚いたけど何なの? あんた、実は魔物使いか何か?
まあ、そんなようなものだ
第二階層にいる魔物達の大部分は、Olが直接契約を結んだ魔物たちだ。殆ど獣に近い魔獣の類を除いて、Olと敵対するものはいない。彼らは戦闘らしい戦闘もなく、第二階層の中ほどまで進んでいた。
さすがに外郭の魔獣とは戦闘になるだろうと気を引き締めたところに、鳩か何かの如くOlの手から食料を食べるハルピュイア達だ。Faroは完全に毒気を抜かれ、驚きを通り越して呆れていた。
まおーさま、まおーさま、おいしかった、ありがとー
まおーさま、まおーさま、おれい、おれい
まおーさま、まおーさま、きてー
ハルピュイア達が、Olの服を掴んでぐいぐいと引っ張る。
なにやら礼をくれるらしい。少しここで待っていてくれ
待っていろ、って
ここはこいつらの縄張りだ。他の魔物は入ってこない。休んでてくれ
あ、ちょ、ちょっと!
呆然とするFaro達を置いて、Olはハルピュイアの足に捕まり、空中を飛んでいく。
なあ、あれってさ
でしょうね
いいなぁ探索終わったら、あたしも
ヒソヒソとナジャが声をかわし、ウィキアがこめかみを引きつらせながら杖をぎゅっと強く握る。Shalは指を咥えながら、モジモジと太股をすり合わせた。
あー私ちょっとご主人様の様子見てくるね
そう言って翼を広げるリルの両腕、翼を、冒険者三人娘は絶妙な連携で拘束した。
待っていろと言われただろ
抜け駆けは駄目ですよー
あなたまで行ったら余計長引くでしょ
離して、行かせてー!
イかせて欲しいのはこっちですよ!
青空の下に、Shalの叫びが響き渡った。
第13話魔王の迷宮を攻略しましょう-3
ハルピュイアの巣は縦穴の中ほど、壁面に出来たくぼみの中にあった。外から取ってきたのか、木の枝や葉が敷き詰められ、意外と踏み心地は悪くない。
まおーさま、おれい、おれい
きもちいーこと、しよー?
まおーさまの、こども、うむ
ハルピュイアは巣にOlを運び込むと、すぐさま彼に圧し掛かった。良くも悪くも彼女達は節制という事を知らない。
顔付きは無邪気な子供そのもので、大きな瞳にくるくると巻いた金髪、人間の目から見て十分愛らしいといって良い顔立ちをしている。口の中には鋭い牙が並んでいるが、ちょっと口を開くくらいなら可愛らしい八重歯に見えなくもない。
顔立ちに反して豊かな双丘と、その下のきゅっとくびれた腰、金の繁みに隠された秘裂に、白い太股の中ほどまでは人間のものだ。
腕の代わりに肩からは茶色の大きな翼が生え、太股の途中からは羽毛に覆われていて、膝から下は細かい鱗に覆われた細い鳥の脚になっている。
Olがハルピュイアの脇に手を伸ばし、持ち上げてやると驚くほど簡単に持ち上がった。脚が人間に比べれば短く、小柄だという事を考慮してもなお軽い。骨自体の重さが、地上を歩く生き物とはまるで違うのだ。
Olが抱え上げると、ハルピュイアの股間からは愛液が滴り落ちた。彼女達は何よりもその貪欲さで知られている。食欲にせよ性欲にせよ、我慢を知らず好きなだけ貪りつくす。
んーっ、んんーっ!!
抱き上げたハルピュイアに対面座位の形で突き入れ、残りの二匹の秘部にも指を入れてやると三匹のハルピュイアはパタパタと軽く羽ばたいてバランスを取りながら涎を垂らして善がった。
Olのペニスを咥え込んだハルピュイアが、Olの首筋に鼻先を近づけると、かぷりと軽く噛み付く。
マズイー
そして、うえぇ、と顔をしかめた。
今日の身体は形代だからな。今度、血くらい飲ませてやる
ほんとー? ほんとー?
うでもかじっていい?
あたしはまおーさまのこどもほしいー
口々に騒ぐハルピュイア達はどうにも情緒にかけるが、Olも別に情事を楽しみにだけきたわけではない。
少しならかじって良い。その代わりちょっと思い出せ。最近、この辺りで何か変わったことはあったか?
Olの問いに、ハルピュイア達は揃ってうーんとと考え込んだ。
さいきん、ニンゲンすくないよ
おそとのもりにしろいのいたよ
あっちにピカピカひかるみずがあったよ
そして口々に情報を口にする。魔獣にしては知能が高いとは言え、その頭は人間の子供くらいのものだ。しかし、好奇心が強く、闇でも見通せる良い目と早く飛ぶ翼を持つ彼女達は、思った以上に様々な情報を集めていた。その解釈は、Olの頭でしてやればいいだけだ。
最近人間が少なくなった理由は、フィグリア王国をOlの手に収めたからだろう。冒険者に所属する国はないとは言え、一国の王を敵に回すことを恐れる者も少なくはない。
しかしそのうち、Olを倒して国を手中に収めんとする野心と実力を持った冒険者達がやってくるはずだ。長期的に見れば、勢力を広げるほうが迷宮に瘴気がたまる速度は早くなる。
森にいた白いの、とは白アールヴの事かもしれない。ハルピュイアは東西南北と言う概念を持っていないから細かい場所は聞けないが、探してみればエレン達の敵が見つかるかもしれない。ハルピュイアの行動範囲を思い浮かべながら、Olは心のメモに書きとめておく。
しかし、光る水とはなんだろうか。翼でハルピュイアが指したのは、ダンジョンの奥だった。Olが知らない何かがあるなら、調査しなければならない。
褒美だ。受け止めろ
あーっ! あぁーっ!
Olがハルピュイアの中に精を放つと、彼女は翼をばさばさと動かしながらそれを享受した。ハルピュイアには恥じも外聞もない。口からだらしなく涎をたらしながら舌を突き出し、快楽を貪る。
快感に正体を失った彼女を持ち上げて引き抜くと、すぐさま残りの二匹がOlの股間に群がった。
歯は立てるなよ
あーぃ
はーぃ
Olの一物に付着した精液を懸命に舐め取りながら、ハルピュイア達は元気よく返事をする。魔力を多量に含むOlの精は、彼女達にとっては上下どちらの口で受けても甘露の様な物だ。
技巧も何もあったものではなく、ただ飴を舐めるように舌を這わせるだけなので大して気持ちいいわけではなかったが、愛くるしい顔を寄せ合いペニスを舐め回すその姿は精神的にOlを満足させた。
その豊かな乳房の感触を両手で楽しみつつ、そろそろ精液も舐め尽され、どちらに入れてやろうかとOlが思案していると、右手のハルピュイアがOlの一物にがぶりと噛みついた。
まずいー
そして、歯に伝わってくる木の感触に顔をしかめる。
歯を立てるなと言っただろうがッ!
別に痛みがあるわけではないが、視覚的に気持ちのいいものではない。思わず股間の一物を萎えさせながら、Olは怒鳴った。
三匹のハルピュイアに支えられ、Olは空中から地面に降り立った。
なっ、何やってたのあんた!?
Faroが顔を真っ赤にして叫ぶ。Olが何をしてきたのかは、三匹のハルピュイアの股間から流れ出る白い液体で丸わかりだ。ハルピュイアには服を着るという習慣はないから、隠しようもない。
やっぱり
ウィキアが眉をひそめてじっとOlを睨む。
情報を得てきた。この先に、なにやら光る水とやらがあるらしい
Olは彼女達の反応を気にした風もなく言った。
それと、土産だ
そう言ってぽんと大きな宝石をFaroに渡す。
えっ、何これ!? 瑪瑙? こんなに大きな?
ハルピュイアが巣に溜め込んでいた物だ。礼として貰った。待たせた詫びだ、受け取ってくれ
空を飛ぶ魔獣の大半がそうであるように、ハルピュイアも光り物に目がない。宝石から金貨、ただの石まで、キラキラする物であればなんでも巣に持ち寄っては溜め込む習性があった。
Olはその中から大振りの瑪瑙を選んで、代わりに銀貨を数枚くれてやった。ハルピュイア達は数が増えたと大喜びし、Olに瑪瑙を渡した。
これ、金貨10枚くらいにはなるんじゃないの?ホントに貰っていいの?
ああ。俺にとっては大した価値もない
あのスケコマシ
と言うかあのハーフリング、チョロすぎないか
いいなあ、あたしもお土産に精液欲しい
狙いはわかるけどムカつくなーあの爺
宝石を貰ってぽうっとなるFaroを陰から見て、こそこそと囁きあう女たち。
で、光る水とやらに心当たりはあるか?
Olが改めて問い直すと、Faroははっと我に返り、鞄に宝石をしまいながら答える。
あ、うん。多分、回復の泉じゃないかな
回復の泉は、ハルピュイア達の巣から数分の距離にあった。細い通路の突き当たりに小さな部屋が出来ており、その片隅に青く輝く水が湧き出している。
これが回復の泉か
Olは泉の水を手にとって確かめた。水自体はどうやら、地下水が土から染み出した物が溜まっているだけの様だ。しかし、その中に在り得ないほどの魔力を含んでいる。
飲めば身体が楽になるし、しばらく身体を浸しておけば傷も魔力もすぐに回復する不思議な泉だよ。まあ、しばらくすると枯れてなくなっちゃうんだけど、迷宮のあちこちにたまに沸いてるんだ
水をすくって飲みながら、Faroはそう言った。
ここ、魔力の吹き溜まりになってる
やはりそうか
魔力の瞳で魔力の流れを見ながら言うウィキアに、Olは頷いた。Olの迷宮は本来、龍脈の魔力を蜘蛛の巣の様に絡めとり、通路を通じて澱みなくダンジョンコアに運ぶように設計されている。
しかし、第一、第二階層はコボルトやダンジョンリーチが無秩序に拡張するせいで、魔力の流れに澱みが生まれているのだ。そこにたまたま地下水脈が流れていると、水に魔力が溶け込み、通常の何百倍もの魔力濃度を持った泉が生まれる。
これって放置してるとちょっとまずくない?
小声でリルがOlに尋ねる。特定の場所に沸いているわけではないらしいからまだマシだが、厄介な事にはかわりない。と言っても、コボルトやダンジョンリーチの動きを完全に抑制するのは無理だし、地下水をせき止めるのはもっと無理だ。