彼女の口調の邪気の無さに、リルはかえって恐ろしくなる。

あなたが敵じゃなくて良かったいや、二、三回敵に回ったっけ

えー、敵だったのは最初会った時だけでしょ

しみじみと呟くリルに、ユニスはケラケラと笑った。

出ろ

Olの声とともにキューブの壁が展開し、ざばりと水が辺りに広がる。人魚がその波に乗ってぴょんと跳ねたかと思うと、その魚の尾が足に変わった。鱗はそのままきらめく衣になって、スカートのようにふわりと彼女の脚を包み込む。

幻術ではないな。氷から抜け出した種はこれか

人間に変身する術を持つ種族は珍しいがいないわけではない。

だが、身体の一部だけを変化させるものを見るのはOlも初めてだった。

俺は、Olだ

おうる

己を指していえば、女はオウム返しに呟く。

お前は?

たつき

やはり馬鹿ではない。言葉が通じずとも、こちらの意図を正確に読み取っている、とOlは感じた。

ではタツキよ。お前に糧をくれてやる。代わりにお前は我々を害するな。良いか?

料理の乗った皿をタツキに向けて問えば、彼女はこくりと頷く。

それで、契約は成った。

そら、食え

テーブルに皿をおいてやれば、タツキは喜び勇んで食べ始めた。

ビルスキィ!

言葉は分からないが、何と言っているのかはその輝く表情を見れば一目瞭然だ。

ニコニコと笑顔を浮かべながら、タツキはあっという間にリルの用意した料理を平らげてしまった。

どれ

食べ終わって満足気に息を吐くタツキの胸を、Olは無造作に鷲掴みにする。

結構あるな

悲鳴は、二度響き渡った。

一度目はタツキが腕を振り上げる前、そして二度目はその腕をOlの頬に振り下ろした後だ。

どうやら呪いは正常に働いているようだ

じんじんとする頬を押さえつつ、Olは頷く。

彼に危害を加えれば、タツキには激痛が走る。我々の範囲や何を持って危害とするかは不明だが、とりあえずこの程度制限できていれば問題はないはずだ、とOlは判断した。

そら、さっさと帰れ

腕を振るOlを憎々しげに睨みつけ、タツキは下半身を魚に戻すと水路に飛び込んだ。

帰しちゃって良かったの?

新しくOlの分の食事を用意しながら、リルは聞いた。

ああ。問題ない。これでもうここに来ることは無いだろう

こちらの強さは示し、呪いをかけて危害も加えられなくした。

その上で、嫌な思いをさせたのだ。まともな神経をしていれば近寄ろうとするはずがない。

犬とて痛ければ覚える。これでまた来るのであれば、よほどの大物かさもなくば、底抜けの馬鹿だ

そして奴はそのどちらでもあるまい、とOlは心のなかで呟いた。

なお、タツキは翌日も普通に食事を貰いに来た。

第3話原住民と平和的に友誼を結びましょう-1

言語を習得せねばならん

Olは端的にそう言った。

いい加減、わからんことが多すぎる。そうでなくともこちらの言語を学ばなければならない

魔術で何とかならないの?

Olは何気に言語学の大家だ。アールヴ語、ドヴェルグ語、ゴブリン語やハルピュイア語など様々な言葉を解するから使わないが、言語翻訳の魔術は存在する。

あれは、魔術を作った者がそもそも言語を理解していなければならないのだ。完全に未知の言語には使えん

へー、そういう仕組みだったんだ

感心しつつ、リルはふとあることを思いついた。

あの子に教えてもらえばいいんじゃないの?

アレは役に立たん

アレというのは、Olの隣で幸せそうにパンを頬張っている人魚のことである。

おい、タツキ

Olに名前を呼ばれると、タツキは耳の当たりにあるヒレをピコピコと動かした。

しかし一瞥を向けることもなく、彼女は一心不乱に食事を続ける。

スープの汁の一滴までも貪って一息つくと、彼女はちらりとOlを見た後、

ディーーーーヴィ

何事か一言残して水路に飛び込んだ。

何を言っているかはわからんが、とにかく悪態をついたことだけは雰囲気でわかるな

そうね

うんざりと呟くOlに、リルは深く頷いた。

まあそういうわけで、言語を学ぶために現地人を探して連れてくる

どうやって?

俺は魔王だぞ

Olはローブを翻す。

攫ってくるに決まっておろう

邪悪な魔術師はそう言って、ニヤリと笑みを浮かべた。

ユツは一人、森の道を歩いていた。

小さな頃から遊び慣れた道だが、今日ばかりは酷く恐ろしく感じられる。

ともすれば止まってしまいそうな足を、一歩一歩、踏みしめるように歩く。

しかしその足は、不意に止まってしまった。

確かここの道は二つにわかれていたはずだ、と彼女は思う。

しかし木々の間に伸びている道は左にだけ続いていた。

奇妙な予感が彼女の胸を重くするが、それでも引き返すわけにはいかない。

彼女は仕方なく、左の道を辿っていった。

進んでいくうちに、彼女は違和感に気がつく。

いつもなら聞こえるはずの虫の音や鳥の鳴き声が、全く聞こえないのだ。

一旦意識してしまえば、しんと静まり返った森は酷く不気味だった。

今まで極度の緊張で気が付かなかったが、風にざわめく木の葉の音すらしない。

足は止まり、ゆっくりと後ずさり、そしてとうとう耐え切れなくなって、彼女は踵を返して駆け出す。

そんななんで!?

しかしそれはすぐに止まってしまった。

今まで歩いてきたはずの道が、なくなっていたからだ。

後ろを振り返れば、ユツを誘うように大きな赤い花が咲いている。彼女はそれを不気味に感じ、茂みをかき分けて道なき道を進んだ。

嘘!

そして、愕然とする。茂みを掻き分け抜けだしたその先には、大きな赤い花が咲き誇っていた。

同じ種類の花がたまたま咲いていたわけではない。

記憶力には自信があった。戻ったはずなのに、同じ場所に出たのだ。

座り込みそうになる己を叱咤し、覚悟を決めてユツは道を進む。

そうする内に、段々と辺りには霧が立ち込めてきた。

進めば進むほど霧は濃くなり、しばらくすると自分の足元さえ見えないほどになる。

とうとう立ち止まってしまうユツの耳に、声が聞こえてきた。

何と言っているかはわからない。しかし、自分を呼んでいるような気がする。

その声に誘われるように、彼女はゆっくりと歩いて行く。

どれほど歩いたかもわからなくなった頃、視界は唐突に開けた。

まるで部屋のように複雑に編み込まれた茨の屋根の中にいたのは、一人の男だった。

見たこともない、濃い金の髪。背は天を衝くように高く、肌は不自然な程に白い。

鼻も高ければ手も足も長く、金色の瞳が、ユツを見下ろしていた。

これはまた小さな娘が釣れたものだ、とOlは思った。

Olの部屋に迷い込んできたのは、ともすれば少年と見間違えてしまいそうな少女だった。

年の頃はマリーと同じか、少し下くらいか。

短く切った銀の髪に黒い瞳。顔立ちも平坦なら、体つきも殆ど凹凸はなく未発達だ。

本来ならば人の侵入を阻む迷宮だが、今回Olが仕掛けたのはその真逆。

迷宮の奥に侵入者を誘い込み、迷い込ませる罠の数々だ。

初めて作った仕掛けが早々に上手くいったのは重畳だが、それで捕らえたのがこんな年端もいかない少女とは。

まあ、選り好みをしても仕方あるまい

そう自分に言い聞かせ、Olは少女を捕らえようと腕を伸ばす。

少女ユツは、逃れるどころかOlの胸の中に飛び込んだ。

第3話原住民と平和的に友誼を結びましょう-2

懐に飛び込んできた少女に、Olは瞠目する。

どこを刺されたか?

いや、接触性の呪いか?

触手でも生えて捕縛されるか?

一瞬のうちに無数の疑問とその対処法が思い浮かぶが、少女はただ、Olの腕の中で震えているだけだった。

何が目的かは知らんがこちらはこちらの目的を果たさせてもらうだけだ

Olは彼女をひょいと抱き上げて、ベッドの上まで運ぶ。

お前には悪いが

Olが宣言している間に、ユツは服を脱ぎ去っていた。

まあ、そういうことだ

釈然としないものを感じつつ、Olは彼女を組み敷いた。

同時に魔術で走査するが、武器なし、毒なし、魔力なし。

暗殺でも色仕掛けでもない。そもそもこの異郷の地でそんなことをされる覚えもない。

全くもって不可解ではあったが、例えOlの想像を超える罠であっても隣の部屋にはリルもマリーもいる。問題はない。

Olはそう判断し、ユツの首に噛みつくように口付けを落とす。

そしてまたひとつ、わからんと内心で呟いた。

落ち着け

Olは通じないとわかりつつ、諭すようにゆっくりと言ってユツの頭を撫でる。

少女は、震えていた。

魔王さえも騙す稀代の役者でもない限り、彼女はまだ男を知らぬ生娘であり、男を誑し込むような訓練も受けていない。

しかし、初対面の言葉も通じぬ男にその身体を許そうとしている。

不可解だが、状況を整理するとそういうことだった。

お前がそれでは、こちらとしても困るのだ

Olの呟きに、ユツは不思議そうな視線を向けた。

頭を撫でている手の平を、ゆっくりと頬に滑らせる。そして彼女を落ち着かせるように、ぎゅっと抱きしめた。

その肩は軽く力を込めれば折れてしまいそうなほど薄く華奢で、Olの腕の中にすっぽりと収まってしまう。小柄な身体の温度は小動物のように高く、重ねた肌から伝わる胸の鼓動は張り裂けんほどで、なおさら彼女の小さな印象を強くしていた。

落ち着いたか?

その鼓動がようやく収まってきた所で尋ねると、言葉はわからなくとも意味は察したのか、少女はこくりと頷く。しかしその身体は次の瞬間、ビクリと跳ね上がった。

Olの指が、その脚の間を割り広げたからだ。

恐らくは誰にも触れられたことのないであろう少女の秘奥を、Olはゆっくりと撫で上げる。硬く閉じた蕾は指を入れる隙間さえなく、今だ僅かな潤いすら帯びてはいなかった。

大丈夫だ

するすると、Olのもう片方の手がユツの喉を撫で、胸元へと向かう。触れるか触れないか、産毛だけを撫ぜるような指先。男らしいゴツゴツとした指からは想像も出来ないほどの繊細な動きで、彼女の肌の上を滑っていった。

んっ

その指先が彼女の胸の頂きに辿り着いた時、ユツは初めて小さく声を漏らした。それは快感というよりは羞恥と緊張によるものだったが、声を出すのと出さないのには大きな差がある。

声を堪える必要はない

耳元に口付けながら囁くと、ユツはふるりと身体を震わせた。指先で触れた場所が、徐々に熱を帯びていく。

ふ、うっ

指と指の間をやんわりとなぞり、首筋に唇を這わせ、滑らかな腹を撫で、脇腹を伝い、太腿を擦り、膝に触れて、ふくらはぎから足の指先までをそっと辿る。

じっくりと時間をかけ全身くまなく指と唇で愛撫して、その唇を奪った時にはユツの体中から力は抜けていた。

んぅ

ふんわりとした気持ちのまま、ユツは唇を割って入ってきた舌を受け入れる。柔らかな濡れた肉は優しく気遣うように彼女の口内を犯し、甘く口づけを繰り返す。夢見るような心地でそれに応えていると、突然、熱い感覚が彼女を貫いた。

気付けば彼女のほっそりとした両脚は大きく割り開かれて、その中心にOlの赤黒い男根がずっぷりと突き刺さっていた。

蕩けるほどに全身を愛撫され、恥ずかしいほどに濡れそぼっているからか、破瓜の痛みは殆ど無かった。それ以上に、身体の奥から熱がこみ上げてくる。

まるで焼けた杭を打ち込まれるような感覚を、ユツは背を丸めて耐える。痛みも苦痛もなく、Olが彼女の奥を突く度に未知の熱さだけがユツを襲った。

ふ、あぅっ!

わけも分からず堪らえようとユツの腕は縋るものを探し、それはOlの広い背中を見つけてぎゅっと力を入れる。両手両足でしがみつく彼女の肢体は、しかしかえって男に対して開かれて。

あああああッ!

奥の奥までを貫かれる感覚に、彼女は鳴いた。

ひっ、あ、あっ!

男を知らず、自らを慰めたこともない純朴な少女には、その熱が何なのか理解できなかった。

ただただ未知の何かへの恐怖が勝り、男に縋りしがみつけば、その色を塗り替えるようにより強い熱が突き刺さる。それをわかっていてなお、しかし彼女は縋ることをやめられなかった。

腕に力を込めれば、口内は貪るような舌に蹂躙される。

脚に力を込めれば、胎の奥まで貫かれる。

怖いのに、恐ろしいのに、しかし彼女はそれをやめることが出来ない。

恐れ、離れ、縋り、求める。

揺られ揺られ繰り返すうちに、彼女の中から何かがこみ上げてきた。逃れるように男の背中に爪を立て、腰を浮かせたそこに熱い肉槍が突きこまれる。

知らずきゅうと締め付けて、少女はその熱を逃がすかのように喘いだ。

その逃げ道を塞ぐように。

男の唇が、彼女の口に重なる。

っ!

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