安心しろ。お前は先程生まれたばかりといったな。ならば何かを食しているはずもなく、腸(はらわた)の中とて綺麗なものだ
そういうっ、問題では、う、あぁっ!
逃げ出そうとするサイノカミの両腕を引いて、Olは彼女の直腸を犯す。
全き女というだけあって、その腕力は神といえどただの女のそれだった。
男であるOlに敵うわけもなく、逃れる事もできずにされるがままに陵辱される。
ああああっ!だめ、だめえっ!
いい声で鳴くようになったじゃないか
尻穴の感触は、膣内とは全く違った。
Olの動きに合わせて如才なく締め付け搾り取ってくる前の穴と違い、後ろの穴はサイノカミ自身さえ感知できない動きで震え、窄まり、素直な反応を見せてくれる。
だめだ、こんなもの、交わりではひぅんっ!
首を振って嫌がるサイノカミの膣口に指を入れて犯してやれば、彼女のそこは喜びに震えながらよだれを垂らして咥え込む。
あああああああっ!
そうしながら尻穴を抉ってやれば、絶叫のように声を上げ、潮を吹き出しながら、サイノカミは絶頂に体を震わせた。
例え神であろうとも、その持つ力は無限ではない。
これはサクヤとの付き合いでわかっていたことだった。
彼女ほどの力を持つものであっても運動をすれば人間同様に疲れるし、食べたり眠ったりといった行為が必要だ。
ならばサイノカミの無尽蔵の体力はどこから来ているのか。
それは彼女の司るものに関係しているのではないかと、Olは推測した。
境界、性愛、豊穣。
サイノカミが司る三つのものは、一見結びつかないように見えてあるもので結ばれている。
それは妊娠と出産だ。
出産とは死と生の境であり、性愛の結果であり、そして豊穣そのものだ。
ならば性行為であっても、子を成すことの出来ない種類のものであれば回復は不可能なのではないか。
Olのその読みは当たっていたらしい。
尻を犯し続けているうちにサイノカミの声は段々と力なく、その動きは緩慢なものとなり。
もう、無理だ勘弁してくれ
更に三度ほど精を吐き出す頃には、サイノカミは寝台の上に突っ伏して、息も絶え絶えにそう降参を告げたのだった。
第6話旧きものを斃しましょう-5
変態変態だ
ぐしぐしと泣きべそをかきながら、サイノカミはしきりにそう呟く。
尻の穴に胸の間、口の中に髪、挙句の果てに脇だの膝だの汝らの文化はどうなっておるのだ
どうやら彼女の知識にあるのは、子作りのための真っ当な性交だけであったらしい。
性器以外の場所を使って精をかけられる度に大いに狼狽し、未知の感覚に困惑していた。
情けないわねえ。わたしなら、耳や鼻の孔だって大丈夫なのに
それは俺の方から願い下げだ
呆れた口調でリルが言うが、流石にそれはOlの許容できる範疇からも逸脱していた。
さて、ではお前の力を貸して貰おうか
無理だ
ふるふると首を振るサイノカミに、Olは顔を顰めた。
口約束とは言え、サイノカミははっきりと力を貸すと言った。
Olほどの魔術師を相手に結んだ約定は、神といえどおいそれと破れないはずだ。
貸したくとも力が足らぬ。言うたであろう。我は順(まつろ)わぬものであり、祀られぬ神なのだ。異国と道を繋ぐような大それた事は出来ぬ
話が違うだろう。お前は出来ると言い、それは嘘ではなかったはずだ
嘘であれば、リルはそれを見抜く。そういった部分に、人と神とで違いはない。
無論だ。祀られれば、その程度の力はある
祀るとはどういうことだ?
言葉の意味自体はわかる。敬い、信仰するということだ。
だがその具体的手段まではわからない。
言ったであろう。一年まぐわう事だ
しかしそれも、サイノカミの簡潔な説明に氷解した。
なるほど性愛の神への敬意を表するのに、それ以上の方法はないだろう。
だがそれは困った話だな
単なる性愛ならともかく、子を成すというニュアンスを多分に含んだ性愛だ。
Olのような男でなくば毎夜相手にすると言っていたが、逆に言えばどれだけ濃密に交わろうと一年という期間は短縮できないという事でもある。子供が出来るかどうかは、性交の密度とは関係ないからだ。
ということならば、複数の男を当てがっても無意味だろう。リルのような淫魔であれば相手が多ければ多いほど掠め取れる生気も増えるだろうが、女が同時に孕める子の数は相手の男が増えたとて変わるものではない。
つまり何をどうしても、一年の歳月が必要ということだった。
他の方法はないのか?
本来ならばそれでも望外の条件なのだろうが、一季節後には敵が攻めてくるというこの状況では役に立たない。
お前は境界と性愛、豊穣の神なのだろう。それは出産という軸で共通する一方、それぞれが別の側面でもある。性交以外に力を得る方法はないのか
なくは、ない
Olの問いに、サイノカミは難しい表情で答える。
いや正確には、あったと言うべきであろうな
そう呟くサイノカミの表情は、酷く沈鬱なものだった。
そもそも我がこれほどまでに力を失ったのは、長い間誰にも顧みられることがなかったからだ。それこそ、我自身名を忘れてしまうほどにな
サイノカミと言うのは、名ではないのか
Olが問うと、サイノカミは頷きを返す。
其は汝らで言うなれば、役職のようなものよ。我を指す号ではあるが、我自身の名ではない
サクヤにでも知らないか聞いてみる?
リルが言うと、サイノカミはほうと片眉を上げた。
汝らはコノハナサクヤ姫と知己であったか。だが、あの者も我の名など知ってはおるまい。まだ年若き故にな
一万二千歳で若いって、どういうスケールよ
そういうサイノカミ自身は、一体どれほど生きている神なのか。
ここまで行くと驚きよりも呆れの方が強かった。
な、なに?
突然Olから名を呼ばれ、話の流れに参加もできずただ聞いていたマリーは驚きに目を瞬かせる。
こいつに名をつけるなら、なんとする
更に投げかけられた言葉に、彼女は困惑した。
我に名をつける、だと?
その困惑は、マリー以外の面々も同様だ。
サイノカミは怪訝そうに眉を顰め、Olの言葉を反芻する。
この世の誰も知らず本人も覚えていないのなら、そのような名は無いのと同じであろう。名のないものを呼ぶ時どうするかなど、決まっておる。名付けるのだ
神の名とはそのような単純なものではない。存在の本質を示し、根幹となるものだ。犬猫ではあるまいし、疎略に決めて意味などあるものか
よほど受け入れがたい話なのだろう。
サイノカミは不機嫌そうな声で唸るように吐き捨てる。
わかっておる。俺とて考えもなしに言っているわけではない。それで、どうだ?
うーーーーん
再びマリーに視線を戻せば、彼女は頭を抱えて考え込んだ末に、ぽつりと名前を口にした。
ミーシャ
思いっきりフィグリア風の名前じゃないの!
こちらではあまり聞かない名前ですね
即座にリルがツッコミを入れ、ユツもまた困ったように笑いながら控えめに同意する。
それ、だ
だがサイノカミは大きく目を見開き、呆然としながら掠れる声でつぶやいた。
いや違う。それではない。我の名はそれではない。だが、今の我を言い表すにはむしろ元の名よりも相応しいなぜだ?
ぶつぶつと、うわ言のようにサイノカミは自問する。
女の子の名前だからじゃない?あのおちん蛇の姿だったら、似合わないでしょ、そんな名前
そうか!
素朴にマリーは指摘し、正しいと同時に間違っているその答えにサイノカミは正当へと思い至る。
半身を失った故に、名も半分に分かたれるは道理。ミーシャ御石神(ミシャグジ)!それが我の名だ!
サイノカミがそう叫んだ瞬間、彼女の身体からぶわりと何かが溢れ出た。
目には見えず、音もなく、熱もなければ匂いもないが、しかし風にも似た何らかの圧力が存在しているのをその場にいた全員が感じる。
サイノカミのつま先から髪の一本一本に至るまでが力に満ち満ちて、全身が光り輝いているようにさえ感じられた。
その姿に、Olは今更テナがヤマタノオロチの事をヤツと呼び続けた理由を悟る。
名というのは、神にここまでの力を与えるものなのか。
小さき娘よ、感謝する。我に名を与えてくれたことを
サイノカミはゆっくりとした動作でマリーの前に跪き、マリーはこくこくと頷く。
ミシャグジで、良いのか?
いいや。我の事はミーシャと、このなりでそれは流石に座りが悪いか。そうさな、ミシャと呼べ。それこそが我に相応しき名だ。元の名よりもな
Olの問いに、サイノカミミシャは、そう答える。
確かに純ヤマト風の出で立ちで名乗るならば、長音は抜いた方が多少なりともそれらしいだろう。
だがそれは同時に、マリーの答えた名が真実正解を射抜いていたわけではない、という事でもあった。
ねえマリーちゃん、何でわかったの?
何もわかってないよ適当になんとなく、言ってみただけなんだけど
ユツの問いに、マリーは困惑して首を横に振る。
彼女が見せたのは相手の真の名前を言い当てる能力などではない。
もしそんな力があるとすればそれは凄まじい脅威だ。魔術師にとって、真名を知ることは相手の心臓を握ることに等しい。マリー程度の未熟な術者でも恐るべき力となるだろう。
だが、そうではない。近い名前を言えても間違えているようでは何の意味もないからだ。
ならば一体、先ほどからマリーが見せている力の片鱗は何なのか。
白蛇が竜であることを見抜き、洞窟の入り口の扉の意味を察し、サイノカミの名を半ば当てる。
名付けの才能、か
考えられるのはそれだけであった。本質を見抜き、感覚として捉える。
ならばそれに名をつける事も容易いだろう。
その才能って役に立つの?
わからん
リルの問いに、Olは首を振る。
例えば未知の化け物に遭遇したとして、それに相応しい名を与えることは出来よう。だが、弱点だの能力だのを知れるわけではなかろう
サイノカミに対して有効だったのは、たまたま竜という名を持つ種族が既知のものであり、さらに偶然マリーがそれへの対抗手段を持っていたからだ。
全く役に立たないわけではないにせよ、そのような例は稀と思っていいだろう。
だが、果たして本当にそうだろうか。
ただの珍しい才能、とるに足らぬギフトの萌芽。それでは済まないものを感じながら、Olは不思議そうに首を捻るマリーの顔を見つめた。
第7話王の帰還を祝いましょう-1
Ol、準備が出来たよ!
ああ、ごくろう
空間を超越し、文字通り飛んできたユニスを抱き留めながら、Olは彼女を労う。
ようやくか。待ちくたびれたぞ
そういうな。お前の力は強力すぎるのだ
欠伸を噛み殺しながら言うミシャに、Olは憮然として答えた。
彼女の力はOlが想定していたよりも遥かに便利なもので
あまりに便利過ぎた。
境界の神であるミシャは、あらゆる境界を繋げることが出来るのだという。
扉と扉を、門と門を、そしてダンジョンとダンジョンを。
しかも繋ぐ自体には力を使うものの、維持するのには殆ど力を消耗しないらしい。
だから大きな門でも作って本拠地とこの地を繋げば、戦力を丸ごと持ってくることが出来る。
それは非常に危険なことだった。なぜなら、行き来は双方向だからだ。
こちらの戦力が簡単に持ち出せるという事は即ち、本拠地に簡単に攻め込めるという事でもある。
かといって、ダンジョンから遠く離れたところに繋いでは利便性にかける。
それを解決するために、Olは特別な部屋を作り上げていた。
ミーシャの洞窟以外とはどこともつながらない、大きな大きな部屋だ。
そこからOlのダンジョンへは、通常の転移を使って行き来する。
間には分厚い岩盤が横たわっているものの、距離自体は短いため通常の魔術の転移で事足りる。
これならば、座標が分からなければ侵入できない。
テナのような能力もあるから安心はできないが、ある程度の備えにはなるだろう。
最悪の場合はその部屋を土で埋めてしまえば、物理的に侵入を防ぐこともできる。
では、開くぞ
ミシャはすっくと立ちあがり、彼女の住む洞窟の奥に設えた巨大な門扉へと腕を伸ばした。
一体どのように力を揮うのか、と見守る一同の前で、彼女は軽く扉をとんと指先で突く。
すると両開きの扉はきいと音を立てて開き
何もない空間だったはずのその向こうには、まったく別の部屋が広がっていた。
Olはその光景に、目を見開く。
空間を繋ぐ門といえば、Olがかつてフィグリアの軍師に捕らえられた時にユニスが作り上げたような、光り輝く渦のようなものを想像していたのだ。
だがミシャが成したそれは、違和感など微塵もない。