言って下卑た笑みを見せるウォルフの様子には、かつて王として相対した時の威圧感はまるでなかった。恐らくはこれが、ウォルフディールという男の素の姿なのだろう。似ていないと思っていたが、その雰囲気はどこかユニスに通ずるものがあった。
だがそんな話をしに来たわけではあるまい?
見透かすように言うウォルフに、Olは杯を飲み干す。
機械的な動きでスピナはその杯に麦酒を注いだ。
こいつは命令に従う知性のみを残し、自らの意思で行動したり記憶したりすることのない特別製だ。まあ、気の利いたゴーレムのようなものと思えば良い
スピナを指してOlが言うと、ウォルフの目が僅かに鋭く細められた。
つまりこの場に話を聞いているものは、Olとウォルフしかいないという事になる。
これは余程の話であろう、とウォルフは表情に出さぬまま覚悟だけを決めた。
には、どうすればいい?
Olの言葉を捉え損ね、ウォルフは聞き返す。
娘を幸福にしてやるには、どうすればいいのか、と聞いておる
一瞬の沈黙。
その後、まるで爆発するかのような笑い声が、小さな酒場の中に響いた。
笑うな。恥を忍んで聞いておるのだ
いや、すまぬ。だがどんな大事かと思えばそうか、魔王も人の親か
俺の娘はどうやら人ではなさそうだがな
吐き捨てるように、Olは言った。
関係あるまい。娘は娘、悩むは同じことであろう
未だ笑いの余韻を残しつつも、ウォルフは表情を真面目なものに取り繕う。
思えば俺もユニスにはずいぶん手を焼かされたものよ
それだ
酒を煽るウォルフに、Olは頷く。
ウォルフよ。お前は親としての先達だ。そしてユニスのような娘を立派に育て上げた父でもある。恥を忍んでお尋ねする。どうしたら、父親は娘を幸福にしてやれるのだ?
なるほど。娘を幸せにする方法か
ウォルフはゆっくりと腕を組み、しばし瞑目した。
その極意とは!
眉間に力を込めるウォルフに、Olはごくりと喉を鳴らす。
そんなもの、ありはせぬ!
ふざけているのか!?
そして出てきた回答に、思わず叫んだ。
ふざけてなどおらん。大体、親が子にしてやれることなどごく僅かよ。俺がしてやれたのは、アレの母が言い残したように、自由に育てさせてやっただけ。幸せにしてやるなどとは烏滸がましいにも程がある。赤子の頃ならいざ知らず、既に歩く力を持った子に親が出来る事など、せいぜいが進む道を邪魔せぬようどいてやる程度のものよ
だがウォルフは生真面目な表情で、Olを見下ろす。
だが俺は、全てはお前が敷いた道だったのではないかと思うときがある。ユニスを英雄として殺し、英霊として俺の下へとつかわせた。ユニスが幸福になるにはあの道しかなかったし、それを指示できる人間はお前しか
随分買いかぶってくれたものだ。ふん。晩年こそ賢王だ英雄王だと持て囃されたが、俺の根など所詮は喧嘩馬鹿よ。そんな先まで見通す事など出来るものか。偶然だ、偶然
英雄は長く生きるほど、その最期にも濃く影を落とす。ウォルフは若い頃に出会った何人もの英雄の末路から、それをよく知っていた。故に、ユニスを苦しめぬようザイトリードに命じて殺させた。
この男ならばあるいは天を相手に一矢報いるかもしれぬとは思いはしたが、まさかその後一家で英霊として呼び出されようなどとは、誰が想像するものか。
だが
もしそれが偶然でないというのならば、魔王Ol
なおも言い募るOlの瞳をしっかと捉え、ウォルフは言った。
それはお前がやったのだ。お前が、ユニスを幸福にしたのだ
考えてもいなかったのか、Olは目を大きく見開く。
俺は頼むと言い、お前は引き受けた。そして今アレは子を成し、幸せそうだ。ならば誰の功であるかなど、考えるまでもあるまいよ
そこまで言ってウォルフは酒を飲み干して、息をつく。
感謝せねばならぬのは、俺の方だ
そして、深く頭を下げた。
非公式の場とはいえ、稀代の戦士にして王の頭だ。軽いものではない。
Olは頷き、不器用にその謝意を受け取る。
気まずげに彼が酒に口をつけたところで、ウォルフは顔をあげると意地の悪い笑みを浮かべた。
故に娘が幸せになるかどうかは、親ではなく連れ合いに依るという事だな
途端、Olは口に含んだ酒を吹き出しそうになる。
つ、連れ合いだと!?
そうだ。お前の娘もいずれは知らぬ男をつれてくるのだろうな。認めれば娘はとられ、認めねば娘に嫌われる。何とも素敵な話ではないか
馬鹿を言うな、ソフィアはまだこんなに小さいのだぞ。そんな話は早すぎるわ
ふっ。愚かなり魔王。子の成長は早いぞ。特に娘ともなればあっという間よ。光陰矢の如しというが、女の成熟ときたら雷光よりも早い。ついさっきまで赤子と思っていた娘が、気付けば化粧の真似事など始めるのだぞ
ぐ、とOlは言葉に詰まる。確かにソフィアはつい最近まで赤ん坊だと思っていた。
ソフィアに限って言えばそもそも物理的に実際成長が人間よりも遥かに早いのだが、酔った頭ではそこまで思い至らない。
そんな馬鹿な話があってたまるものか!この死にぞこないめ、地獄に落ちてしまえ!
Olよ。恩人よ、俺から宝を奪っていった憎き男よ!ならば俺はその地獄とやらからお前の宝が同じように奪われていくのを、楽しみに見物させてもらうぞ。高笑いしながらな!
ははははは、と高笑いするウォルフの杯に、スピナはとくとくと機械的に酒を注ぐ。
酔った二人は気づいていない。目の前の女の姿をしたスライムに、飲み終えるという機能がついていないことを。
無限に注がれる酒を飲み干し続け。
翌日Olは、二日酔いに苦しむことになるのだった。
第9話氷の女王を持て成しましょう-1
服を脱げ
エレン、セレス、ミオの三人は、呼び出されるなりOlから発せられた言葉に、思わず顔を見合わせた。
彼の寝室に来いと言われたのは昼食を終えた後のこと、真昼間と言って良い時間帯。
確かにOlは好色な王ではあるが、性根は生真面目だ。
日中にわざわざ呼びつけて、というのは珍しいことだった。
とは言え否やがあるでもなく、三人は言われた通りに服を脱ぎ始める。
待て、下は良い。上だけ脱いでおけ
セレスがまずスカートの中の下履きをするりと抜くとOlはそんなことを言い出して、三人は再び顔を見合わせる。今日の主人は随分とマニアックな趣向をお試しになるらしい。
言っておくが、別に今からお前たちを抱くわけではない
そんな妻たちの視線に気付いたのか、Olはやや憮然としながら何やら軟膏のようなものを取り出した。
今からお前たちに、鍵を付与する
琥珀色をしたそれは指先につければとろりと伸びて、軟膏と言うよりは絵具に近い。
その呪をかける処置をするだけだ。妙な事は
言いかけて、Olは眼前の光景に目を奪われる。三人の妻が言われた通りにすっかりと準備を整えて、その胸をさらけ出していたからだ。
張りに満ち満ちてツンと尖ったエレンの乳房や、たっぷりとして蕩けるほどに柔らかそうなセレスの胸は言うに及ばず、普段の服装からは想像もつかないほど立派なミオの双丘も、その控えめな佇まいと相まってかえって強烈な存在感があった。
それらが三対六つ並んだ様子は、正に絶景という他ない。
考えるでない
思わずむしゃぶりつきたく気持ちを押し込めてOlは言った。
彼がその光景に見とれていたのは僅かに一瞬だったが、妻たちは敏感にそれを察して忍び笑いを漏らす。
これは全てOl様のもの。お好きなときにお好きなようにされて構いませんのに
やかましい
Olは絵具をたっぷりと掬い取ると、セレスの胸元に叩きつけるようにして塗りたくった。
途端、ぴりりと走る感覚に、セレスは声を漏らした。
魔力を通しながら塗るからな。少し痛むかも知れん。堪えられぬようなら言え
い、いいえ痛くはありません
ふるふると首を振り、セレスは答える。
事実彼女が感じているのは痛みではなく
んぅっ!
微かな快楽であった。
Olの指が肌を撫でていくたび、その経路を沿うようにして痺れるような甘い疼きが走る。それは彼の描く紋様が大きく複雑になっていくほど倍増されて、セレスは喉の奥から漏れ出る喘ぎを懸命に堪えた。
ふ、ぁんっ
だが喘ぎを我慢する姿が余計に艶めかしいことにまでは、考えが至らなかった。
セレスの水晶のような透けるほどに白い肌が赤く染まり、耐えるように目を伏せて震えるさまは同性のミオですら息を呑むほどだった。
次はエレンだ
くたりとしてベッドに横たわるセレスを背に、Olはエレンに向き直る。
うむ。私は白の姫君のような無様は晒さんからな。安心してくれ
エレンは自信満々そう言って、Olに胸を突き出した。
その言葉は半分正解で、半分間違いだった。
ああああっ!だめぇっ、これ、きもちよすぎるのぉっ!
彼女は全く堪えることなどなく十全にその快楽を甘受し、声高に喘ぎ、一度絶頂に至りさえした。
確かにセレスの様子とは全く違うが、どちらが無様かと言うと議論の余地があるだろう。
お、お願いします
恐る恐る、と言った様子で胸元を開くミオは、そう言った意味ではもっとも善戦した。
彼女は喘ぎ声を漏らすことも、快楽に我を忘れることもなかったからだ。
Ol様、Ol様、Ol様、Ol様
しかしOl自身にとっては、愛おしげにOlの名を呼び続ける彼女の様子が一番堪えるものだった。
これで良い。後は乾くのを待つのみだ。乾けばその紋様は見えなくなるから安心しろ
三人の身体に紋様を描き終えて、Olは深く息を吐く。
ふむ。では乾くのを待つ間少々暇だな
そうですね
何やら意味有りげな視線をよこすエレンに、セレスが深く頷いて同意する。
あの、Ol様。ここ、お辛くないですか?
かと思えばミオまでもが、Olの下腹部を撫でさすった。
妙な気を回さんで良い。下手に動くと紋様がよれて書き直しになる。悪いが抱いてやることはできん
例えば後背位のような直接胸元に触れないような体位でも、四つん這いになれば彼女たちの胸の大きさだとぎゅっと乳房が寄せられて絵具が滲んでしまう。肌の触れ合う正常位などもっての外だ。
下手に動かなければ良いのだろう?
片手だけであれば、動かしても構いませんよね
そう言って、エレンとセレスはOlの腰に手を伸ばした。
お口でなら、大丈夫ですよね
半勃ちになったOlの逸物をエレンとセレスのしなやかな指が擦り上げ、大きくなったその先端をミオがぱくりと口に咥える。
確かにそれなら紋様は大丈夫だろうが
咎めだてする気力は、すぐに萎えた。三人が完璧なコンビネーションで、Olのモノを攻め始めたからだ。
弓を巧みに操る繊細な指は、肉槍に持ち替えても健在なようだ。茶褐色と白色の指がまるで睦み合う蛇のようにOlの男根に纏わりつき、絶妙に弱いところを擦り上げる。そしてそれに合わせて、ミオはその先端を舐め、唇で食むようにしながらちゅうと吸う。
くっミオ、上達していないか?
れんひゅう、ひまひたはら
Olのものを咥えたまま、ミオは答える。つい先日同じように彼女が口で奉仕した時は、慣れない故にたどたどしいものだった。だが今は、Olでさえ思わず呻いてしまうほどの舌技で攻めてくる。
今までどちらかと言うと消極的だった彼女が何か心境の変化でもあったのか。短期間で凄まじい上達を遂げていた。
あん。Ol様ったら
良いぞ。主殿の好きに触ってくれ
堪らずOlがエレンとセレスの尻に手を伸ばすと、二人は妖艶な笑みを浮かべてそれを許した。胸の大きさはほとんど同じ程度の二人だが、尻の方は随分違う。むっちりとして揉みごたえのあるエレンの尻を鷲掴みにするようにしながら、セレスのほっそりとしたヒップを撫でるように味わう。
ぐっ出すぞ!
そうしているとミオが一際強く吸い上げて、Olは堪らずそう宣言した。
はい来てください
ミオが唇を離すと舌を大きく伸ばして先端をチロチロと舐め、エレンとセレスの指がスパートをかけるように速度を早めながら擦り上げる。
呻くようなOlの声とともにその先端から白濁が迸り、ミオはそれを大きく開いた口と舌とで受け止めた。だが大量に吹き出す精はそれだけで受け止めきれるものではなく、彼女の顔や小麦色の髪にも降り注ぎ、穢していく。
すまぬ。大丈夫か
顔いっぱいに精液を浴びたミオに声をかけると。
顔にも紋様を描かれちゃいましたね
ミオは照れくさそうにそう言って、笑った。
おお、これは凄い
エレンは思わずそう声をあげた。
まさに絶景と称するに相応しい光景ですね
セレスもまた、目を丸くする。
はー