当時はそれこそ殺したいほどにOlを恨んだウィキアであったが、その思いはとうの昔に色あせ風化しきってしまっている。憎み続けるには、Olという男は身内に対して優しすぎた。
これで良かったなどとは言えないが、今不幸か幸福かと問われれば、ウィキアは迷いなく幸福であると答えるだろう。
ザナにしても、己が手中に収めたからと言ってないがしろにするような男ではない。むしろただ同盟を組むよりも手厚く守るのではないだろうか。
果たして、どちらが最善なのか
それはウィキアにも読み切ることなどできそうになかった。
もう一度、言ってみろ
Olは自分の耳を信じることが出来ずに、思わずそう問うた。
ですから。わたしはあなたの言っていることを何一つ理解していませんから、理解できるようにして下さい
つまり、こういう事か
Olは頭痛を堪えるように額に手を当てて、言った。
お前がここに来てからの言動は全て能力に従ってオウムのように声真似をしていただけで、お前は俺たちの言語どころかヤマト語すら知らず、自分がなんと発言しているかすら把握できてないというのか
その通りです
己の能力に随分自信があるとは思っていたが、そこまでいくともはや自信というより妄信だ。
自分自身すら何を言っているのかわからぬような状況で寛ぎながら茶を飲むその度胸に、Olは呆れを通り越して感心さえした。
しかしそうなれば、先ほどかけた呪いに関してもちゃんとかかっているのか怪しいものだ。
例え内心では約束を守るつもりなどなくとも、口にすれば誓約の呪いは成り立つ。
誓約を口にするという事自体は、本人の意思によるものだからだ。
が、例えば眠っている相手を魔術で操って言わせても意味はない。
そこに本人の意思がないからだ。
しかし間違いなく本人の意思で口にしながらも、その意味を微塵も分かっていない場合はどうなるのか。Olでさえそのような経験は初めてのことで、判断に困った。
となればリルが見抜いたはずの嘘も当てにはならず、そもそも最善手を打てるというその能力自体が虚偽である可能性すらあった。無論そこから嘘では話自体が成り立たないが、そう見せかけることのできるような全く別の能力なのかもしれない。
そんなことを考えて、Olは堂々巡りに陥っている自分に気が付いた。可能性だのかも知れないだのと確証もない事を考えるのは時間の無駄だ。そんなことを言い出せばそれこそこの世界そのものが蛇の見ている夢かも知れないのだ。
とにかくお前は意思の疎通を望んでいる。それに間違いはないのだな
はい。その通りです
頷いて言うその言葉さえ理解していないとしても、望む方向自体は正しいはずだ。
どの道行う予定だったことでもある。
わかった。ついていや、ここで待て
言い置き踵を返して歩き出せば、ザナはその後ろをついてくる。
入るな。外で待っていろ
扉を開けてそういえば、ザナは頷いてOlの部屋に入る。
雄たけびを上げ、尻を叩きながら踊れ
これでいいですか?
おずおずとベッドに腰掛けるザナに、Olは頭を抱えた。
どうやら彼女は本当に、こちらの言っていることを理解していないのだ。
言葉の内容をわかっていないなら、口先では何を言おうが同じことだ。
単純にこちらの意図だけに対応して行動する。
まるで間違った命令句(コマンドワード)を仕込んでしまったゴーレムを相手にしているような、奇妙な感覚だった。
まあ良いここまで来ておいて否やはなかろうな
Olは嘆息し、ローブを脱ぎ捨てるとザナの腕を取ってベッドの上に組み伏せる。
初めてなんです。優しくして下さい
ザナは驚きに目を見開き、嫌悪感を滲ませながらもそう言った。
表情と言葉が全く合っていない。これがこの女の素の表情か、とOlは何故か安堵する。
どうする。進むか、退くか
言葉が分からずとも、意味は通じるだろう。
腕の力を緩めて問うOlに、ザナは抵抗の意思をなくした。
Olとて、別の方法があるのならそうしただろう。
だが全くの未知の言語を操る相手と言葉を交わすには、以前にユツを相手にやったのと同じ方法を用いるほかない。
つまりは意思の疎通を望んでいる以上それが最善手なのだ。
Olは毛皮で出来た衣服を捲りあげ、ザナの両脚をぐいと押し開いてその間に分け入る。
意外なことに、初めてだというのは本当のことだった。
(いっったぁぁぁぁぁぁいっ!)
繋がった瞬間、ザナは心中でそう叫んだ。
(なにすんのよこの下手くそ!もっとちゃんと優しくしなさいよ!)
んっ、ああっいい
口汚く罵る声と、艶を帯びた喘ぎ声が同時に響く。
とても同一人物から同時に発せられてるとは思えない程の差だ。
(口汚くて悪かったわね!ってあれ、言ってることがじゃない。考えてることがわかる?)
ユツの時とは違い、相手がそれを受け入れているのならば魂を繋ぐのに絶頂に至らせる必要はない。まぐわうだけで良かった。そしてザナとはユツよりも深く太く魂を繋いでいる。ユツは大まかな感情が伝わってくる程度だったが、互いに考えていることがわかるほどに。
(便利なんだか不便なんだかわかんない術ね。まあいいわ、さっさとこの小汚いもの抜いてよ)
駄目だ。魂のつながりが定着するまでしばらくかかる
そう言って、Olはゆっくりと抽送を開始する。
(しれっと嘘ついてんじゃないわよ!)
魂の繋がりは双方向だ。
表面的な思考だけだが、考えていることは互いに伝わって隠すことはできない。
既に魂は十分に繋がり、今すぐやめても何の支障もないことはザナにしっかりと伝わっていた。
(っていうか嘘だってすぐバレるのもわかってるのになんでわざわざ嘘を)
ザナの心の声を、現実の声が遮る。
(な、なに、今の)
それは彼女の能力が指示したものではなく、自然と漏れ出たものだった。
知らんのか?
Olは戸惑いに満ちたザナに、意地悪く言った。
女が気持ちいいときに出す声だ
(冗談でしょ、あんたなんかに抱かれて気持ちいいわけ)
ふぁんっ!
腰をずんと押し進めれば、吐き捨てるような内心の声とは裏腹に高い雌の声があがる。
(なんで、なんでこんな)
安心しろ。今までの人生の中で最も善がらせてやる。お前の好きなものだろう?
ザナの衣服を脱がしながら、Olはそう問うた。
第9話氷の女王を持て成しましょう-5
ほう
分厚い毛皮の服を剥ぎ取り、その下から現れた裸身にOlは思わず声を上げた。
すらりとした手足はまるで人形のように華奢で、ともすれば折ってしまうのではないかと思うほど細い腰は繊細な花の茎を思わせる。
その肌は目に眩しいほどに白く、触れれば手に吸い付いてくるきめ細やかさ。
紫水晶を削り出して作ったかのような色合いの長い髪がベッドの上に広がるその様は、生きた芸術品のようであった。
(貧乳で悪かったわねっ!)
細いというOlの感想をどう受け取ったのか、ザナは心中で悪態をつく。
気にするな。それはそれで問題はない
大きければ大きいなりに、小さければ小さいなりに、或いはその中間だったとしても、それぞれ違った良さ楽しみ方というものがあるのが女の乳房という器官だ。
Olの手の平に少し物足りない程度の双丘をやわやわと揉みしだき、焦らすようにゆっくりその先端へと口付けを落としていく。
ん、はぅ
ザナの、まるで少女のようにほとんど色づいていない乳首は、しかし敏感に反応して硬く尖った。
(反応してない!)
慈しむようにそれを食むOlに、ザナは強硬にそう主張する。
あまり意地を張らぬ方が良いぞ
心からの忠告として、Olはそう伝えた。なにせ互いに考えていることが筒抜けなのだ。
男を知らぬ処女とは言えいやだからこそ、老獪な魔術師の手練手管に抗うすべなどありはしない。
(お生憎様、あたしにはマリナの加護があるの。あんたの粗末なチンコなんかに屈する)
ザナの思考を遮るようにその奥を擦り上げれば、驚くほどに容易く媚声がその口を突いて出る。
やっ、だめぇっ、そこ、あぁっ、ごりごりしちゃ、だめぇぇっ!
(感じてない、感じてない、何も感じてなんかいないんだから!)
身体はこれほど素直だと言うのにな、とOlは呆れ混じりに思った。
わざとやっているのかと思うほどにザナの肉体は敏感に反応するというのに、心は頑なにそのことを認めようとしないのだ。いっそそのような演技なのかと疑うほどだが、魂で深く繋がるこの術はただの読心術とはわけが違う。虚偽など通じるわけもない。
お前の身体は随分と具合がいいな。存外、俺との相性がいいのやも知れん
(そんなわけ、ない、でしょっ!)
その秘裂に肉塊をずぶずぶと埋め込めば、ザナの膣口は嬉しそうにOlの肉槍を締め付けてきて、蠢く膣壁が無数の舌先のように肉茎を撫で擦っていく。その心地よさは、Olをして下腹に力を込めねば思わず精を吐き出してしまいそうになるほどだった。
お前にもわかるだろう。そら
ああぁぁっ!
ぐっと腰を突き入れると、肉槍の先端がザナの弱いところをぐりっと抉る。痒くてたまらない場所を掻いて貰ったのにも似て、それを更に何十倍もしたような快楽だった。
(気持ちよくなんか、ない!)
強情な奴め
それでもなお心の中でそう言い返すザナに、Olは半分呆れつつも感心した。
口先でだけ否定するというのは簡単だが、心の中でまで否定するのはこれで意外と難しい。
言葉は意識的に制御できても、心で考えることまではやめられないからだ。若く女であろうとも、王と名乗るだけの意志力は持ち合わせているようだった。
しかしそれもどこまで持つことであろうな
その柔らかな乳肉を鷲掴みにしながら腰を打ち付ければ、蜜に溢れきった秘部はじゅぷじゅぷと音を立てて根本までをすんなり咥え込む。心はどれだけ気丈でも、彼女の身体は既に堕ちきっていた。
しかしそれも無理のないことだ。互いに魂で繋がりあったOlには、ザナの弱いところ、気持ち良いところが手に取るようにわかる。その上Olが快楽を感じれば感じるほどに、ザナもそれを共有して快楽に喘ぐのだ。
だが同時に、ザナの逃げ道もそこだった。
今感じているものはOlの快楽が伝わってきているだけで、自分自身は感じてなどいない。そう信じることで己の矜持を保っているのだとOlは気づく。
お前の身体はこれほど正直に悦んでいると言うのにな
ひぁんっ!
わななくように小刻みに締め付けてくる膣口をこじ開け赤黒い肉塊をねじ込めば、快楽が電流のように背筋を走ってザナは高く鳴く。
(好きでもない男に犯されて、気持ちよくなんか、なるわけないでしょ!)
その声色はこの上なく甘く蕩けているというのに、胸の内はまだ悪態をつくのだ。
ほう。好いた男がいるのか?
一瞬、ザナの心中に男の顔が浮かびかける。だがそれはロクに像を結ばぬうちに、掻き消えてしまった。どうやらよほど知られたくないらしい。
まあ良い。交わっているときに他の男の顔など見ても興が削がれるだけだ、から、な!
ん、あ、あ、あぁぁっ!
激しく打ち付けられる腰に、ザナの意識が一瞬飛ぶ。
(なに、いまの)
気をやったのだ。俺に犯され、絶頂したということだ
未知の感覚に戸惑うザナの顎を指先でつまみ上げ、Olは丁寧にそう教えてやった。
(うそうそよ!)
快楽は相手のものだと誤魔化せても、絶頂はそうはいかない。
男と女の形には違いがあり、明らかにザナの身体だけが反応しているからだ。
信じられぬと言うなら、そら。何度でも味わわせてやるぞ
ああぁっ!やめ、やめて、だ、め、えっ!
敏感になったザナの身体は一突きされるごとに軽くイって、美しいその肢体はまるで小魚のように跳ねる。
(うそ、うそ、こんなやだ、だめぇっ!)
ついにザナの心が現実を認め、彼女は逃げるように身を捩った。
獣のようにシーツの上を這って進もうとするザナの腰を掴むと、Olは覆いかぶさるようにしてのしかかる。そして薄い乳房に爪を立てながら、剣のように反り立った凶悪な肉棒を後ろから一気に突き込んだ。
ひあぁっ!
太いものがみっちりと胎(はら)を埋める圧力に息がつまり、暴力的なまでの快楽にザナの腕の力は萎れて彼女は上半身をベッドの上に突っ伏す。尻だけがOlの腕によって支えられ高く掲げられて、男はただただ獣欲のまま容赦なく女の濡れた膣口に突き入れた。
(こんな、こんな扱い、絶対に、許せない)
尻だけを上げた滑稽な姿で、身体を押さえつけられ身動きすることも許されず。
それは獣の交尾どころか、ただ欲望を吐き出すための肉袋のような扱いだった。
(許せない、のに)