イェルダーヴの声が上ずり始め、魂はもはや文句を言う余裕さえ失う。

いいぞ、イけっ!

イェルダーヴの魂に繋がる経路のうち、もっともOlの扱い慣れたものつまりは性感を通じて、彼は彼女の魂に魔術を使わせた。それは暗闇の中、垂らした釣り糸の先にくくりつけたペンで文字を書くようなものだ。

ああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!

だがOlは世界で五指に入るであろう魔力制御の名手は、それを成し遂げた。

イェルダーヴの首輪が光を放ち、パキリと音を立てて中央から両断される。Olはすかさず、外に放たれようとする魂を彼女の胸の中に押し込めた。

陛、下?

イェルダーヴの瞳がぱちぱちと瞬き、Olの顔を見つめる。その頬には赤みがさし、人形のようであった顔立ちに命が吹き込まれ。

そして彼女は、己の胸を鷲掴みにするようにして押し当てられた男の手を見た。

いやあぁぁぁぁぁっ!!

待て、嫌とはなんだ、嫌とは

絹を裂くような悲鳴に、Olは渋面を作る。

ご、ごめんなさいぃ、で、でも、こんな、は、恥ずかしすぎてぇ

首輪の発話機能ではなく、舌を動かし喋るイェルダーヴの肉声は、今までの理知的な印象とは裏腹にどこか舌足らずで幼いものだった。

何を恥ずかしがる事がある。俺は今までお前の全身を洗ってやったしそもそも、動けるようになったら抱いてやる約束だろう

Olが言うと、イェルダーヴの褐色の肌が目に見えて分かるほど真っ赤に染まった。

そ、そんなは、恥ずかしすぎますぅ!

そして胸を掻き抱き、彼女はうずくまってしまう。

今まで自分の意志では動かぬ身体を、自分のものだとあまり実感できていなかったのだろう。それが動くようになった途端、人並みの羞恥が表出した。

理屈としては、わからなくもない。わからなくもないが

散々柔肌に触れて愛撫し、昂ぶりきったこの欲求をどうしろというのか。

泣き喚くイェルダーヴを見下ろしながら、Olはやはり放っておけば良かったと後悔したのであった。

第12話戦後処理を片付けましょう-3

あっ、んっ、あっ、いいっ、んっ、いい、よぉっ、Ol、さまぁっ

濡れた肉が打ち付け合う音とともに、リズミカルに嬌声が響く。

その声の主マリーは尻を高々と掲げ後ろから貫かれながら、ベッドのシーツを強く掴んだ。

もう、だめぇっ!イッちゃう、イッちゃうよぉっ!

きゅうとその膣口がOlの男根を締め付けて、マリーはふるふると身体を震わせる。

ああ、イく、ぞっ!

ふぁっ~~~~~~~っ!

ピタリと呼吸を合わせ、Olが彼女の膣奥に精を放つのと同時に、マリーは絶頂に達する。どくり、どくりと断続的に白濁の液を少女の中に注ぎ込むと、張り詰めていた彼女の身体から不意に力が抜けた。

ぐったりとするマリーの膣口で、尿道に残る精の一滴までも絞り出すかのように二度、三度腰を前後させて扱き立てたあと、Olは繋がったまま彼女の身体を回転させて、前から抱きすくめ顔を寄せる。するとマリーは嬉しそうに微笑んで、よく懐いた子犬のような仕草で唇を重ねた。

えへへなんか、Olさま、やさしいですね。久しぶりだから?

ぐりぐりと男の胸板に頭を擦り寄せるマリーの首には、既に無骨な首輪の姿はない。イェルダーヴと同様の方法で簡単に外すことが出来た。しかし首輪が外れてからもOlはマリーを求め、何度も抱いていた。

それはいつもよりも心なしか丁寧で優しげな寵愛で、マリーはすりすりと頬を寄せてOlに甘える。そんな彼女のふんわりとした髪を、Olは無言で撫で付けた。

イェルダーヴに拒否された欲求の捌け口にしたわけではないが、それでもどことなく後ろめたいものがあったが故にかえって丁重な扱いをしてしまったとは流石に言えない。

いずれにせよ、懸念はこれで一つ片付いた。

後の懸念は一ついや。

二つ、か。

Olはゴロゴロと喉を鳴らすマリーの頭を撫でてやりながら、そう心のうちで呟いた。

それは、夕食時のことだった。

卓を囲むのはOlにリル、ユニスにスピナ、マリーとソフィアと言ったいつもの面々。そこに今日はサクヤとミシャ、ザナまでが呼ばれていた。

呼んでもいないタツキがちゃっかり食事にありついているのはいつものことだ。

この地を、ソフィアに委譲しようと思う

出し抜けにいい出したOlの言葉に、ソフィアの手からぽろりとパンが転がった。

パンが地面に触れる前に掻っ攫うように受け止めながら、マリーは呆然とする我が子の代わりにそう問う。

そのままの意味だ。この大陸での俺の立場をソフィアに継がせる。当面の脅威は去ったようだからな

ソフィアの力を狙う大国サハラは潰し、ヒムロとは同盟関係にある。更に東に小国は幾らか存在するものの、サハラやヒムロを越えてまでヤマトへと侵攻してくるほどの力を持った国は存在しないという。ならば、もうOlがここに残る理由は殆どなかった。

元々、Olが新大陸にやってきたのはただの偵察にすぎない。それが色々面倒事に巻き込まれて、あれよという間にソフィアもダンジョンも随分大きくなってしまった。だがいい加減、Olが本国を留守にするのも限界が近づいてきている。

無理無理無理!無理だよぉ!

我に返ったソフィアがぶんぶんと首を振りながら、悲鳴のように叫んだ。

今の彼女の姿は十二歳程度だろうか。政を執るには幼すぎるが、それがどれほど困難なことであるか想像できる程度の分別はあった。

案ずるな。無論今のお前に無理なのはわかっておる

何せ一年足らずで今の姿にまで成長したのだ。成長に応じてある程度の知識や技術は備わっているようであったが、政治の勉強をする間などあったわけがない。

補佐はつけるし、手も必要であれば幾らでも貸そう。だが、この地の魔王はこれからお前だ。お前はこの俺の娘なのだ。出来るな?

Olの言葉にソフィアはハッとして、彼の瞳を見つめ返す。

うん。わかった、頑張ってみる

うむ。それでこそ我が娘だ

幼い顔を精一杯に引き締める愛娘に、魔王は満足気に頷いた。

だからあたしまで呼んだってことね。別にいーけどさ

平素被っている猫を脱ぎ捨てて、食卓に行儀悪く頬杖を突きながらザナ。部外者である彼女までがこの場に呼ばれた理由は、要するに国単位でソフィアの補佐をせよという話だ。といっても小国であるヒムロにとって、ソフィアと協力関係を結ぶことはそう悪い話ではない。

旦那様故国に、帰ってしまわれるのですか?

悲しげに眉根を寄せてそう問うのは火山の神、サクヤだ。

帰ると言っても、俺のダンジョンとソフィアのダンジョンはミシャの能力によって繋がっておる。今と大差はない。何なら、お前の部屋から直通の通路を作っても良い

まあそれは、素晴らしい案ですわね

Olの言葉に、サクヤは両頬を手のひらで押さえて顔を赤らめる。

その様子を見ながら、あ、それ知ってる。中ボスって奴だ、とリルは思った。

ユニスとローガンをまとめて相手に出来るほどの戦闘力を持つサクヤであれば、守衛としてはこの上ないだろう。

ふむ。なれば我は主のだんじょんとやらに住まうか

えっ、ずるいですわ!

ぼそりと呟く塞の神ミシャに、サクヤが敏感に反応した。

我は主に祀られる神ゆえ、共にあらねばならぬ

では妾も

汝はこの山を離れられぬだろうが

ピシャリと言い込められて、サクヤはぐぬぬと歯噛みする。

おうるのおうち、美味しいご飯ある?

無論だ。ここで取れる食材とは量も質も比べ物にならん

じゃあたつきもいく!

ビチビチと尻尾を振りながら、タツキは楽しげに言う。神は自らの領分を離れたがらないものだが、この海の女神はどこまでも自由奔放だ。

いずれにせよ、今すぐという話ではないし、こちらとの繋がりを断つわけでもない。徐々にソフィアに仕事と権限を渡しつつ、移譲が済めばミシャの門を使って交流する形になる

Olの言葉に、ソフィアはホッとして胸を撫で下ろした。いきなり全てを渡されるかと思ったが、よくよく考えてみれば慎重で過保護な父親がそんな事をするわけがない。

ちょっと住む部屋が変わるだけで、今までと変わらず見守ってくれるはず。

そう思ったからだ。

だから。

無理無理無理無理、絶対に、無理ぃっ!

大丈夫だ。お前なら出来る

サハラの民に新たな王として演説しろ。Olがそう言い出して、ソフィアは全力で抵抗した。

砂の王ウセルマートを討ち、その後のサハラは無政府状態となっていた。Olとしてはてっきり他の人間がすぐに跡を継ぐものと考えていたのだが、神帝とまで名乗っていただけあって王の権威は相当強いものだったらしい。

そのまま捨て置けば、国は乱れ人々は困窮し、難民がヒムロやヤマトへ押し寄せかねない。そんなわけで、Olはこれを簒奪することにした。せっかくだからソフィアを王として立てて、だ。

そら、さっさと覚悟を決めろ

無理、むぅーりぃー!

一流の仕立て屋に誂えさせた豪奢なドレスに身を包み、飾り立てられた姿でジタバタと暴れるソフィアを、Olは即席で作った高台の上に突き出した。

予め触れ回ったので、新たな王の姿を見に民衆は高台の前に集まってきている。その数は何百、何千、あるいは何万か。産まれて初めて見る数の人間に、迷宮生まれのソフィアは石のように固まった。

一応演説の内容は叩き込んでおいたが、この様子では満足に言葉も出せないか。最悪Olが魔術でソフィアの口を動かし肩代わりする方法もないではないが、それは最後の手段だ。例えしどろもどろであろうとも、この大人数の前で演説することができればそれは一つの経験になるだろうが

ねえ

思案するOlの前で、ソフィアはふと声を上げた。

皆、なんでそんな格好をしているの?

それはOlが渡した演説の内容とはかけ離れたもの。ただの、純粋な疑問の声だった。

ソフィアの目に映るのは、砂漠の民たち。ボロボロの布を纏い、虚ろな瞳で彼女を見つめる、見窄らしい人々の姿だ。

彼らが身に着けているのは衣服というのもおこがましい粗末な布切れで、男たちは腰に布を巻きつけただけのもの、女も胸から下を辛うじて覆っているだけで、それすら着れずに腰だけを隠し胸は露出しているものさえ散見される。肌もあらわな彼らの身体は皆、一様に酷く痩せ細っていた。

お腹がすいているの?

トン、とソフィアは高台から飛び降りて、手近な民の一人へと近づく。

それは、魔王の娘としてダンジョンに生まれ育ち、裕福なものしか見てこなかった彼女にとって衝撃的な光景であった。

ソフィアは食べるものにも着るものにも困ったことがなくそれどころか、そんな人間がいることさえ知らなかったのだ。

食べる?

彼女の手のひらの上に、パンが一つ現れた。彼女はダンジョンの中にあるものならなんでも自由に移動させることが出来る。台所から失敬してきたリルの焼き立てのパンは、ほかほかと湯気を立て香ばしい匂いを放っていた。

それを差し出された男は、ソフィアからひったくるようにパンを奪い、齧り付く。

もう、そんなに急がなくても

言いかける彼女の元に、民衆が一斉に殺到した。

えっ、ちょ、待っ

まるで幽鬼のように伸ばされる無数の手から、ソフィアは慌てて逃げ出す。だが、まだ幼い彼女の脚は慣れない服の重さもあって非常に遅く、あっという間に追いつかれてしまう。

やめなさーい!

折角Olに用意してもらった美しい衣装を容赦なく引っ張られ、ソフィアが叫ぶとともに地面が隆起した。突如現れた無数の壁は幾何学的な迷宮を作り出し、ソフィアと人々の間を隔てる。

乱暴にしないの!

その壁の上に立ち、ソフィアは声を張り上げた。その幼くあどけない容貌とは裏腹の、神業としか言いようがない奇跡の現出に人々は畏れ戸惑う。大地が何の前兆もなく水のようにその形を変え、巨大な迷宮を一瞬で作り上げたのだ。彼女がその気になれば人々をその壁で押しつぶしてしまえる事は明らかだった。

ご飯が欲しいんなら、ちゃんと並びなさい!

腰に手を当てソフィアが宣言すると、迷宮の壁がやや低くなって互いの顔が見えるようになる。それと同時に、人々は迷宮の構造をあらかた悟った。それは迷宮とはいっても、分岐のない一本道だ。

ぐるぐると周りながらやがてソフィアの元へと辿り着き、そこを過ぎればまた周囲をぐるぐると周りながら出口へと向かう一本道。人々はそこを歩き、王の元を訪れ、順番にパンの施しを受けていく。

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