ちんぷなせりふで申し訳ないけど、ママたちの命が惜しかったら、降参して?ザナさん
ははあ!?あんた、何いってんの!?
一連の様子を見ていたイェルダーヴにとっては、わけがわからない光景だった。ついさっきまで、ザナは卑劣にも人質を取って幼子を脅していた。そのはずだ。
なのにほんの一瞬で、その立場が逆転している。幼子が卑劣にも自分の母親を人質に取って、ザナを脅しているのだ。全く意味がわからない。
だってザナさん、ママたちを殺されたら困るんでしょ?
にこやかに、ソフィアは尋ねる。
そ、そりゃ、人質をいきなり全員殺されたら困るわよ!けどあたしが殺せないとでも思ってるっていうんなら、もう一人
リルママは悪魔だから、首を刎ねたくらいじゃ滅びない。死んでも魔界に戻るだけで、また呼び出せばいいだけだもんね
氷の剣を振りかざして言うザナの言葉を遮って、ソフィアはそう言った。
スピナママはスライムだから、心臓を潰したって死なない。ユニスママは英霊だから、肉体を壊したって召喚できる
その刃の行く手を遮るかのように、幼き魔王は冷静に言葉を紡ぐ。
ママはマリーママは正真正銘人間だから普通に死んじゃうだろうけど、その切れ味の良さそうな鋭い氷で綺麗に首を刎ねるんなら、パパは簡単に蘇生できるしまず失敗しないかな
あたしの脅しがハッタリだと、そういいたいわけ?
唸るようなザナの言葉に、ソフィアは素直にこくりと頷いた。
後悔、するんじゃないわよ!
ザナの両手に、まるでウニのように無数の氷棘が生まれた。それでぐちゃぐちゃにすり潰されれば、確かに蘇生は難しいかもしれない。
だがそれをザナが振り下ろすよりも早く、マリーの身体は燃えていた。
ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!
ザナの口から、その美貌に似合わぬ品のない悲鳴が飛び出す。
何してんの!?何してんの!?
燃やしただけだよ
ザナは慌てて冷気を放ち炎を消し止めたが、既にマリーの身体の半分ほどは燃え尽きてしまっていた。
あんたの使ってる火はただの炎じゃないのよ!?全てを滅ぼす原初の炎、核熱の火!そんなもので燃やせば魂ごと灰になって、蘇生も輪廻もかなわない!子供が冗談で使っていいものじゃないの!
半狂乱になりながら、ザナは叫ぶ。その目尻にはじんわりと涙が浮かびさえしていた。
うん、わかってるよ
取り乱す氷の女王とは対照的に、ソフィアは落ち着き払った態度で彼女へと歩み寄る。
ザナさん、そもそもわたしに勝つ気なんてないんでしょ
その周囲からは炎の防護も消えて、無防備に近づくソフィアはいつでも殺せる状態だ。しかしザナは氷を放とうとはせず、ただ恐れるように後退った。
まあ、その辺にしておけ
出し抜けに響いた声に、ソフィアは後ろを振り向いて喜色を浮かべる。
なあ、あんた、なんで!?
そこに立っていたOlの姿に、ザナは目を見開いて叫んだ。
あれ?パパとザナさん、グルじゃなかったの?
ザナに本気で戦う意志がなかった以上、Olが無事なのは不思議ではない。しかしそれに対して驚くのは不思議で、ソフィアは問うた。
ああ。そもそもマリーを燃やした時の反応を見ていればわかるだろう?
あ、そっか
ああの、どういう、ことなのでしょうか?
一人完全に事態の推移から取り残されて、イェルダーヴはおずおずと尋ねた。
何、簡単なことだ。今回の件は、全て狂言、茶番に過ぎん。全ては
Olはイェルダーヴを一瞥し、ついでうなだれるザナへと視線を向ける。
俺への反乱を企てて失敗し、失脚。王位を含めて全てをイェルダーヴに譲り渡す。そんなところだろう?
第14話臆病者を焚き付けましょう-6
なん、で
絞り出すように、ザナは声を上げた。
なんであんたが、自由になってるの
そりゃ、こうなることを予測してたからよ
ひっ!?
突然床に転がるリルの首が喋りだして、ザナは悲鳴をあげながら尻もちをつく。
下らん悪戯はよせ
言葉の割にはさほど咎める色のない声でOlは言い、その首を拾い上げて背後へ放る。彼の影からしなやかな腕がにゅっと突き出したかと思えば、己の首を受け止めながらリルが姿を現した。
まさか偽物!?
せいかーい。結構良い出来だったでしょ?
氷漬けにされていたのは、リルが魔力で作り出した分身だ。サキュバスである彼女は見た目だけならどんな姿にも変身できる。ユニスやスピナ、マリーといった見慣れた面々であれば、その細かな癖までをも模倣することなど朝飯前だった。
一応ヒントは出しといたんだけどね。ソフィアは気づいたんでしょ?
気づいた時思わず笑っちゃったよ。リルのだけ、あからさますぎるんだもん
マリーのつけている腕輪の意匠がいつもと違う。
椅子に座るスピナの指に、いつもつけている指輪がない。
本を読んでいるユニスの利き手が本来と逆になっている。
一つ一つなら気分で変えることもあるかと思う程度のことだが、揃えばそれは明確なサインであった。極めつけは、リルの角がいつもと反対の方向に伸びていたことだ。最初に気づいたのはスピナの指輪で、マリー、ユニスと違和感を見つけ、リルの違いを見つけようとしたところで、ソフィアはそれに気づいた。
なぜ自分もザナもそんな大きな違いに気が付かなかったのか。そう思うと緊迫した場面であったにも関わらず笑いを堪えられなかった。
で、でも!あたしの氷は、ただの氷じゃない!月の女神の加護を受けた氷なのよ!?Olは間違いなく、何の手加減もなしに凍らせた!ただの炎じゃ絶対に溶けないはず!
つまりただの炎じゃなきゃいいんでしょ?
片目だけを赤く光らせて、真紅に染まった髪をかきあげマリーが言う。
戻りませ、炎髪の姫ヨハネ・アーク
魔界の炎さえも燃やし尽くす英霊の炎。軽々とザナの氷だけを消し溶かしてみせたその力を天門に還すと、マリーの瞳と髪の色が元に戻った。
そもそもなんで、こんなものを準備する時間なんて与えなかったはず!
ザナがOlに敵対の意志を見せてから、完全に凍りつかせるまではほんの数秒だった。リルと念話出来ることだって知っていたから、打ち合わせは結界を張った部屋で行い、それは機能していたはずだ。
何も知らず客室に残っていたリルたちが、ザナに対処できるはずがない。ましてやこれほどの精度の分け身を作るのは、いくらサキュバスだって一瞬というわけにはいかないはずだ。
事前にこうなるってわかってたの?
いいや。流石にここまで大胆な事をしでかすとは思わなかった
ソフィアの問いに、Olは首を横に振る。
じゃあなんで
予想はしていませんでした。しかしそれは、備えをしない理由にはなりません
困惑するソフィアに、スピナが言う。
お師匠様は私たちを置いて行かれた。ならば私たちはお師匠様に何かあった時の備えをするのは、当然のことです
当たり前のように言ってのける彼女に、ザナは絶句した。
じゃあ、何?
震える声で、ザナは尋ねる。
あんたたち、あたしがOlに何かするなんて思ってもいないのに、わざわざこんな偽物を作り上げて寒い外で待ってたってこと?
城の中にいれば、その存在にザナが気づかぬ訳がない。だとするなら、そういうことなのだ。
そうだよ。まあ、前にも似たような事は何回かあったしね
Ol自身の最大の欠点は、本人に戦闘能力が乏しいことだ。ダンジョンキューブを得てある程度は自分で戦えるようになったものの、ユニスのような強者に比べてしまえばどうしても何段かは劣る。
常に護衛につければいいが、今回のように友好を示す場ではつけたくともつけられないこともある。それに、いつでもOlの元へと転移する能力を持ったユニスならば、かえって離れている方が都合がいい場合も多い。
何もなくとも有事の備えをしておくのはもはや習慣と化していた。
お姉様なぜ、このようなことを?
イェルダーヴの問いに、しかしザナは答えない。
本気でOlに対し反旗を翻したのならば、まだわかる。利益にしろ動機にしろ、そうするだけの理由は揃っていた。
しかし、そうしなかったのは明らかだった。本気でOlたちを滅ぼすつもりであれば人質に対して必要以上に危害を加えることを恐れる意味はないし、そもそもザナは月の女神マリナの権能、最善手の力を使っていない。使っていれば、ソフィアを相手に遅れを取ることなどなかったはずだ。
さてなおそらくはソフィアに討たれるつもりだったのだろうが、お前の目論見通りにはいかなかったことは確かだ
正確には、最善手の力を使わなかったのではなく、使えなかったのだろう、とOlは思う。最善とはザナにとっての最善ではなく、女神マリナの思う最善だ。つまり、ザナがやろうとしていたことは、彼女の保護者が賛同しない内容であったということでもある。
それでも。あんたはあたしをただで済ませたりはしないでしょう?お優しい魔王さま。一応言っておくけど、本気じゃなかったからって放免するつもりなら、またあたしは同じようなことをやるわよ。それも、今度はもっと徹底的に
ザナはOlを見上げ、暗い声でそういった。安い挑発ではあるが、かと言って応じないわけにもいかない。そういう意味ではザナもまた、目的を達してはいるということか。
無論だ。狂言だろうとなんだろうと、俺は俺に楯突くものに容赦はせん。ひとまずお前には
まったく、とOlは内心でため息をつく。
奴隷にでも堕ちてもらおうか
面倒な奴だ、と思いながら、Olはそう告げた。
第14話臆病者を焚き付けましょう-7
殺風景な部屋だ
Olは端的に、そう感想を述べた。氷の城の最奥、尖塔の頂上、女王の部屋。そこは女の部屋とは思えぬほど、簡素な一室であった。装飾も何もないシンプルなベッドが置いてある他には、殆ど調度品と呼べるものもない。
せいぜいが衣類をしまうための木箱だけで、それにしたって色気も素っ気もない、ただの木箱であった。実用性を重んじ過度な装飾を嫌うOlでさえ、自室はもう少し彩りというものがある。
まあ良い。とりあえず、脱げ
Olがそう命じると、ザナは無言で服を脱ぎ捨てた。眩いほどの白い肌が露わになり、一糸まとわぬ美しい肢体がOlの眼前に晒される。だが生ける芸術品のような調和の取れたその美しさを、首につけられた太い首輪が台無しにしている。
やはり趣味が悪い、とOlは心中で独りごちた。
Olがベッドに腰掛けて己自身を取り出すと、ザナは命ぜられるままに彼の前に跪き、肉塊を口の中に含んだ。柔らかく垂れ下がっていたそれは、ザナの口内でみるみるうちに硬く大きく膨れ上がっていく。
ザナの喉から、小さく音が漏れた。それは声というよりは、圧迫された喉が出したただの反射に近いものだったが
ん、んん、んんんんっ!っお、大きくしすぎでしょ、馬鹿じゃないの!?
なおも体積を増していく肉の塊にとうとう耐えきれず、ザナは口を離して叫んだ。
奴隷が口答えするな。さっさと続けろ
奴隷だっていうならなんで魂を封じないのよ!
ザナの首につけられているのは、ウセルマートの使っていた服従の首輪だ。だがそれからは既に、魂を封じ無条件に言うことをきかせる機能は削り取られていた。
下らん。俺は人形遊びになど興味はない。興味があるのは、意思を持った生身の女だけだ
答えながらOlはザナの頭を掴んで、その顔にいきり勃つ男根を押し付ける。
反抗する女を屈服させモノにしてこそ、意味があるのだ
随分高尚な趣味ですこと
吐き捨てるように言って、ザナは再び口を開いてOlのペニスを頬張った。
下手くそだな、お前
悪かったわね、こんなことするのは初めてなのよ!
そのあまりの要領の悪さに思わず呟くと、ザナは再び唇を離して怒鳴る。そう言えば何度か交わりはしたが、口でさせるのは初めてだったか、とOlは思い直した。
ならばやり方を教えてやる。まずは闇雲に咥えるのではなく、手でしっかりと握れ。唇だけでイカせようなどとは十年早い。手で扱きながら、舌と口は補助的に使うのだ
ザナは不満げな表情をしながらも、存外素直に従ってOlの逸物を両手で握りしめる。ひんやりとした柔らかな手のひらが熱い肉塊に添えられるのは、それだけで気持ちが良い。
舌を出し、根元の方から先端までを舐めあげてみろ。手の動きは止めるなよ
言われた通り、ザナはゆるゆるとOlの肉槍を手で扱き立てながら、舌を伸ばして根本から先端まで這わせていく。
うむ次は、雁首。その、段になっている辺りをぐるりと舐めろ