ホスセリはいや、その身に宿った女神ククルは辿々しく、答える。それは催眠にかかった人間特有の反応でもあり、同時にホスセリ自身の反応を思い起こさせた。
それは好都合だ
少なくとも、イェルダーヴが奉じていた太陽神イガルクは男神だと聞いていた。だから無意識にホスセリを操る神もそうなのだと思いこんでいたが、そうでもないらしい。奇妙な事だとは思いつつも、Olはあまり気にしない事にした。
覚えているか?お前はお前のこの肉体は、俺のものだと
祭壇に横たわったままのククルの胸を、Olは鷲掴みにする。
お前のその肉体は俺のものだ。言ってみろ
私の肉体はあなたの、もの
そう。お前は、俺のものだ
囁くように繰り返しながら、Olはとん、とんとククルの肌を撫ぜていく。
んっぅ
その唇から、微かに声が漏れる。
昨日彼女が麻痺している間に、Olはその身体をじっくりと開発していた。
知性があろうとなかろうと、肉体の反応が消えてなくなったわけではない。
お前が俺のものであるという証拠を、刻みつけてやろう
Olはククルの服を脱がしながら、その下腹部に指を添わせる。魔力の籠もった指先はまるで筆のようにククルの白い肌に跡を残し、複雑な紋様がその下腹部子宮のある位置の表面に描かれた。
これは性感を増幅する魔術紋淫紋だ。お前が俺に隷属すればするほどその効果を増し、快楽を引き上げていく
隷属
お前はただ心のままに、俺に身を委ねれば良い
ただの事実を復唱させて、その解釈を拡大することで認識を少しずつ歪め、強制はせずに己の望む方向へと誘導していく。それはOlの得意とする催眠、洗脳の常套手段であった。
いかに太陽神と言えど、その権能に果てなく無限ということはないだろう。故に、Olは己が最も得意とする手段で勝負に出た。
Olの技と術とに太陽神の能力が抗しきらねば、Olの勝ちだ。
さあいくぞ
彼は覚悟を決めて、祭壇の上に横たえたホスセリの上に自身を埋めた。
日が沈み、再び昇り、そしてまた沈む。
ホスセリが新たな耐性を得てOlの術を逃れる度にOlは術の威力をあげて、彼女を拘束し更に念入りに洗脳を刷り込んでいく。
催眠、洗脳自体はククルの自由を奪い拘束するものだ。当然それへの耐性は得て、彼女の意識は次第にはっきりしていく。だがしかしそれと反比例するかのように肉体はOlの与える快楽に蕩け、熟れていっていた。
昼夜を問わず繰り返される快楽と淫蕩に塗れた戦いは丸二日間続き、それは三日目のことであった。
あぁっ!く、ぅんっは、あぁぁっ!
祭壇で四つん這いになり、後ろから突き入れられて、ククルは気持ちよさげに鳴き声をあげた。下腹部に描かれた淫紋が強く輝いて、それが彼女にビリビリと響くような快楽を伝えていく。
快楽は、危害ではない。故に彼女はそれへの耐性を得るわけでもなく、素直にそれを楽しんでいた。
そこぉっいい、のぉっOl、そこ、もっと、ゴリゴリ、してぇっ!
随分素直になってきたな
犬のような姿勢で尻を振ってねだるククルに、根本までずっぷりと埋め込みながらOlはその乳房を弄ぶ。
ん、だって、こんなの、初めてだしあっそれ、おっぱい、もっと、してぇっ
明確に敵対する間柄でありながら、二人は睦み合い、気軽に言葉を交わし合う。
それにもう、今日で最後、でしょ?
そうだな
それはククルがOlの限界を知っているが故の余裕であった。
太陽の女神ククルの権能がOlの術を上回る範囲を見事に読み取って、それをほんの僅かに超える術で次の日を制する。精微を極めた魔術師の、ある種の到達点。Olであるからこそ出来た芸当だ。
彼は度々ホデリの技に半ば呆れ半ば感心していたが、剣と魔術の差があるだけで、Olの芸当も相当に人間離れしている。
だがその繰り返しにも、いよいよ限界が訪れていた。三日目の朝、Olがかけた術は全力でのものだったのだ。これ以上、ククルを押し止めることは出来ない。
ククルもそれをわかっているがゆえに、最後の逢瀬を存分に楽しんでいた。
お前は、何が目的なんだ?
んっふ、あ、ぁそうだねおっぱい、もっと、気持ちよくしてくれたら、教えてあげる
Olはククルを抱き上げると向きを変えて己の膝に乗せ、対面座位の格好でその胸の先端を口に含む。
ん、や、ぁ触っ、あっそれいいっ!すご、いっ!あぁっ!
焦らすようにじわじわと舌先が乳輪をなぞり、同時にOlの無骨な指が柔肉を優しく揉みしだく。堪えきれず懇願しようとしたその瞬間にピンと硬く尖った乳首が軽く甘噛されて、ククルは思わず高く鳴いた。
それで、目的は?
あっ、や、やめないでかつての栄光を、取り戻したい。それだけだよ
唇を離し、焦れる程度の強さでクリクリと乳首を摘み上げるOlに抗議しながら、ククルは答える。
栄光、か
Olは思わず振り向いて、風のダンジョンを一望した。
それは未だ機能した生きた迷宮ではあったが、しかし万全には程遠い。きちんと管理され、運用されていた頃であればOlとてここまで簡単に奥まで辿り着けはしなかっただろう。
そしてその周囲の滅びた街。そこもまた、かつては人々で賑わい栄えていたはずだ。
この子は、私の国の民その王族の、末裔。だから、力を借りたの
王族だと?
思わず問い返すOlに、ククルは頷く。
獣の神に呪いをかけられ流浪の身になって失われちゃったけどね。その獣の神ももう滅んで、どこにもいない
遠い昔を懐かしむように目を伏せ、ククルは独白するように言った。
この国を復興したいというのなら、手伝ってやる。それでは駄目なのか?
ごめんね。Olの事は嫌いじゃないけどそれは、無理
無理なのは復興なのか、それとも手を結ぶことなのか。
どちらかはわからないが、Olの差し出した手は、しかしはっきりと拒絶された。
ね。そんなことより楽しもう?最後、なんだし
Olは頷き、ククルの両乳首をねじりあげるようにしながらずんと腰を突き上げた。
ククルはぎゅっとOlにしがみついて、快楽を受け入れる。淫紋が一際激しく輝いて、彼女は声を震わせながら絶頂した。
うんっ!頂戴。中に膣内に、頂戴。私を、Olのものにして
隷属の言葉と意思に反応して、淫紋が更に輝きを増す。先程否定したばかりの懇願に、しかしOlは素直に従った。
ああ俺のものになれ!お前は、俺の女だ、ククル!
うんっ、うんっ、Olのものになる!
出すぞ孕めっ!俺の子を、孕めっ!
ああっ、ああああっ!来る、来てるっ!Olの、あかちゃんできちゃうぅっ!私の、この子の、おなかがっ!喜んで、迎え入れちゃってるっ!
どくり、どくりとOlは白濁の液を容赦なくククルの胎内へと注ぎ込んだ。すると紫の光を放っていた淫紋が、琥珀色に染まっていく。
それは、堕ちきった証。身も心もOlに隷属した証拠であった。
何の備えも仕込みもしていない精は我先にとククルの子宮を蹂躙し、犯し、穢していく。その奥で待っていた卵につぷりと子種が侵入するのを確信して、ククルはぶるりと身体を震わせた。
孕んじゃっ、たぁ
うっとりと顔を綻ばせ、琥珀色の紋様を輝かせて。ククルの開いた股の間から、たっぷりと仕込まれた精液がこぽりと溢れ出す。
そのまま順調に行けば、十月十日の後に彼女は元気な赤子を生むことだろう。
そんな日はけして来ない事を、Olもククルも理解していた。
それ故の戯れ。ごっこ遊びの一種のような戯言に過ぎない。
ククルの身も心も、確かに間違いなく堕ちた。
だが、太陽とは何度落ちようとも、必ず昇るものなのだ。
ククルの身体を純白の光が取り巻き、その身についた精液が燃やし清められていく。その光に抵抗するかのように、彼女の下腹部に描かれた紋様が輝いた。
全てが白で包まれる中、淫紋だけが黒く浮き出る。それは一際大きく輝くと、白を陵辱するかのようにククルの全身を黒く染めあげていく。
その、次の瞬間。
バチン、と大きく音を立てて淫紋がはじけ飛んだ。
それは最期の輝きでしかなかった。
Olが三日の時をかけ、幾重にも幾重にもかけた呪いはしかし、及ばなかった。
少し焦った
ぽつりと呟き、ククルは調子を確かめるように腕を回す。それだけで、彼方の山を覆っていた雲が吹き飛んだ。
その光景に、Olは目を見張った。膂力を増やすような行為はしていない。彼女の筋力はホデリが押さえつけるのを克服できる程度のはずで、雲を吹き飛ばせるような規格外の力など持っているはずがなかった。
ああ簡単な話だよ
Olの表情を見て、その考えを察したのだろう。ククルは答えた。
Olがこの身体に思考能力をつけてくれたから。もうこちら側から干渉して、好きな能力を成長させられる
彼女は伊達や酔狂だけで三日間、Olに付き合ったわけではなかった。その時間を用いて、ククルは己の能力を更に成長させていた。
空の雲をも割る膂力。音を遥かに超える速度。あらゆる呪いを受け付けぬ肉体。
地上最強の存在が生まれた存在であった。
なるほどそこまで強くなれば、もはや技巧など不要だろう。技も研鑽もなくとも、竜すら容易く縊り殺せる。
なかなか楽しかったよ、Ol
笑みさえ浮かべて、ククルは言った。それは純粋な本音であった。
そうだな悪くはなかった
Olもまた、それに答える。
だがまだお前は最強ではない
返ってきた答えに、ククルはキョトンとしてOlを見返した。
私より強い存在がいるってこと?
ああ、そうだ。一人だけ、俺の配下にお前を超えるものがいる
ふぅんまあいいよ。その強さも超えるまでだし。出してみて
では行くぞ
Olが手をついた途端、ククルの周囲を壁が取り囲む。
そしてOlごと、小さな部屋に閉じ込めた。
?あなたが私より強いってこと?
ククルは警戒する素振りすら見せない。それはそうだろう。彼女を害せるものなどいるわけがない。仮に害せたとしても、日が昇ればそれは全くの徒労に終わる。
あ。もしかして、太陽から隠せばいいと思ってる?
いいや。いくら大地の下に隠そうと、太陽が無くなるわけではないだろう
壁、床、天井。その表面に魔法陣が浮かび上がった。Olが大仰な仕草で印を組み、呪文を唱える。陣を、呪文を、手印を、動作を。その全てを使ったそれは、間違いなくOlの出来る範囲でもっとも強力な術の行使。
ククルの身体が琥珀色の光に包まれ、染み渡っていく。
その段になってようやく、彼女はOlの意図を察した。
それは、駄目っ!
音を超える速度で腕が伸ばされて、吹き荒れる風がOlの髪を揺らす。
だが、その腕が彼をバラバラにする寸前で、もう片方の腕がそれを止めていた。
わかったか?これが、お前より強い、俺の最強の配下だ
なる、ほど
ククルの顔が奇妙に歪んだ。笑みのような、怒りのようなそしてそのどちらでもないかのような、複雑な表情。
さあ。俺の女から出て行け、太陽神
Olがかけたのはククルを害する術ではない。
強化する術だ。
太陽神の権能によって高められた対術能力は、Olの強化を受けて更に倍化いや、累乗化する。世界最高峰の魔術師の洗脳をすら容易く跳ね除けるそれを更に高めた能力は、太陽神自身の支配能力をも超えた。
ただいま。お館様
ふらりと身体をよろめかせ、ホスセリはOlを見上げる。
ああよく帰ってきた、ホスセリ
その身体を、Olはそっと抱きとめた。
第16話愚かしい決断を選び取りましょう-1
旦那様。湯加減はいかがですか?
ああいい、湯だ
ホスセリを取り戻した、その二日後。
たっぷりと休息をとったOlは、七日間の疲れを癒やすために火山の中の温泉に身を埋めていた。
火山から溶け込んだ様々な成分が含まれるその湯は、Olのダンジョンの風呂に比べてさえ心地よさが段違いだ。
この湯には毎日入りに来ても良いかも知れんな
Olの言葉に、サクヤはくすりと笑みを浮かべる。
寂しくなりますわね
そして、そっとしなだれかかった。
ヤエガキのオロチを倒し、サハラを下し、ヒムロと同盟を結び、ホスセリを取り戻し。
Olがこの地で成すべきことは、全てを成し遂げた。
もはやOlがこの地に留まる理由はなく、彼は数日の間にも本拠地へ戻る事を宣言したのだ。
何。ミシャの能力で繋がっているのだ。今までとそう大差はない
そんな事はない、とサクヤは思う。
ソフィアがダンジョン自体であるように、Olが今まで寝起きしていた火の山はサクヤ自身だ。人が自分の体内を知れぬのと同じで、ソフィアのようにその内部を把握できるわけではない。けれど、Olの存在自体は常に感じていた。
それが無くなるのは、酷く寂しいことだ。