そんな忙しい彼にままごとに付き合ってくれとも言えず、今回の話はリル達だけの間でしかしていない。Olは地面に横たわるローガンを見て、眉をひそめた。
あ、あのね、ご主人様、ちょっと話があるんだけど
状況を報告しろ。これはどういうことだ
Olは固い声色で尋ねた。その表情は眠そうではあるが、真剣そのものだ。
鍵が、かかってて! 部屋にはいったら、ローガンしんでたの
一生懸命、マリーは説明した。一通りの説明を受け、Olはなるほどと頷く。
外部のものがこの迷宮に足を踏み入れれば、即座に警報が鳴る。つまり、内部の犯行というわけだ。加えて、この部屋が密室であったことから考えて
Olはその場に集まった者たちを指すように手を広げて腕を伸ばすと、重々しく言った。
犯人は、この中にいる
(それはノってるの!? それとも本気で言ってるのー!?)
Olの真剣そのものの表情に、リル達は主の心中をはかりかねて戸惑った。
うんだから、わたしがこのなぞをとくの!
やはり真剣な表情で真っ直ぐOlを見つめるマリーに、彼はふむと唸る。
確かに、この中で容疑者から外れるのはお前だけだな。マリーにローガンは殺せまい。いいだろう犯人探しはお前に任せる
ま、待ってよOl! あたし達の誰かがローガンを殺したって、本気で言ってるの?
ユニスの問いに、リルとスピナは胸中で彼女に拍手を送った。本気で言ってるのか、単に遊びだと察して乗ってくれてるのか。後者であれば、彼はこの言葉に何らかの合図を送ってくれるはずだ。
いつも言っているだろう
Olは生真面目この上ない調子で答えた。
人は、必ず裏切る
(本気だったぁぁぁぁぁぁぁ!!)
(そうだ、こいつこういう奴だった!)
リル達は頭を抱えた。
とにかく、犯人を見つけだそう。まずは現場を調べなければな、マリー
そんな彼女達の苦悩はさておき、メリーはマリーを優先した。
うん!
元気よく頷き、マリーは改めて現場を確認した。
ローガンの死因は胸の傷。剣で一突きにされていた。もちろん彼は死んでいないが、死んでしまえば悪魔は闇の塊になって消えてしまうから仕方がない。
ばったりとうつ伏せに倒れ、おっぱいとダイイングメッセージを残している。
それを目にし、マリーは叫んだ。
だから早いって! もっとよく考えて!?
マリーは周囲を見回した。ユニスを見、スピナに視線を投げ、そしてリルを見つめる。そしてその豊かな双丘を指差して宣言した。
はんにんはおまえだ!
胸を指ささないで!
反射的に胸を両腕で隠し、リルは叫ぶ。犯人はOlに処断されかねない今、彼女達も必死だ。
待って、よく考えて! ローガンは胸を刺されて即死してるんだよ!?ダイイングメッセージなんて書いてる暇ないじゃない!
リルの言葉にはっとして、マリーはローガンの死体を見た。
まって!
そしてリルに手の平を向け制止すると、しげしげとローガンを見て、言った。
ローガンはそくししてるダイイングメッセージなんてかけるわけがない!
うんそれ今私がいったよね?
リルはちょっと黙っていてくれ
メリーに言われ、釈然としない表情でリルは口をつぐむ。
呟き、マリーは顔を上げると、Olの足元にすがりつくようにしてぴょんぴょん飛び跳ねた。
Olさま、みみかしてっ
なんだ?
屈んで耳をマリーに向けるOlに、メリーは素早く法術をかけた。眠気を強化され、彼の意識は瞬く間に夢の世界へと向かい、その場に崩れ落ちた。
マリーはさっとその後ろに隠れると、出来る限り低い声色を作っていった。
なぞはすべてとけた
いや今、目の前で隠れむぐぅ
余計な事を言おうとするリルの口を、スピナが塞ぐ。
はんにんはおまえだ!
そう言って、マリーはユニスを指差した。
いや、マリーが指しちゃ駄目じゃん
ふーんあたしが犯人だって言う証拠でもあるの?
リルの呟きを無視して、ユニスは不敵に腕を組み、マリーを見下ろした。マリーはこくりと頷き、彼女の腰を指差す。
だって血のついた剣持ってるもん
あっちゃあ~バレたか~
彼女の腰には抜き身の、血のついた剣がぶら下げられていた。
さすがマリー、名探偵だね!
えへへ
誉める真犯人の言葉に、マリーは照れてモジモジとはにかんだ。それを一同は微笑ましく見つめる。しかし、その表情は一瞬後、恐怖に凍りついた。
ユニスまさかお前が裏切者だったとはな
迷宮の主が怒気をはらんだ眼差しで見つめていたからだ。
あ、あのね、Ol、これは
いかなる理由があろうと、裏切り者は処罰しなければならん
止めようとするリルをぐいと押しやり、Olはユニスに近付き彼女に覆いかぶさるように、抱きついた。
罰としてこのまま俺をベッドに運べ。眠くてかなわん
軽いどころの話ではない処分に、ユニスは目を見開いた。
ただの茶番よりは、多少は暇も紛れただろう?
Olはニヤリと笑ってみせる。
や、やられた!
私は最初から、そういう事だとわかっておりました!
悔しそうにリルは唸り、スピナはうそぶく。
もしかしてお仕事終わったの?
両腕にOlを抱きかかえながらユニスが問うと、Olは欠伸を噛み殺しながら答える。
設計はな。明日からは、実際の製作の開始だお前達にも手伝って、もらうからそのつもりで
言葉の途中で段々彼の言葉は不明瞭になり、ゆっくりと目を閉じる。
おつかれさま、Olさま
その琥珀色の髪を撫で、マリーは囁いた。
じゃあ、寝室までご主人様を運びましょうか
はーい!
リルの言葉に元気よく返事し、5人の娘達はOlの身体を支えてその場を出て行く。
Ol爆発しろ
その後に、起き上がるタイミングを逃し、倒れ伏したたままのローガンを残して。
番外編3マリタロウ
マリタロウ
むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんとおばあさんとおばあさんが住んでいました。
おばあさん多い!?
そもそも、リルはともかく私達までお婆さん扱いなのは
まあまあ、おじいさんはOlなんだからいいじゃない
おじいさんは山へダンジョン掘りに、おばあさんとおばあさんとおばあさんは川へせんたくに行きました。
おばあさん達が川でせんたくをしていると、ドンブラコ、ドンブラコと、大きな桃が流れてきました。そして、瞬く間に流れさっていきました。
ごめん地下水脈の流れ舐めてた! はやいはやい!
任せてください、はっ!
黒髪のおばあさんは即座に粘体化すると、桃を拾おうと手を伸ばしました。
あ、駄目です桃重い
スピナー!?
しかし、桃の重さと流れの速さに引きずられ、一緒に川を流れていきます。
任せて! はっ! あ、駄目だ、桃ほんと重い
ユニスー!?
赤い髪のおばあさんが瞬時に転移しますが、彼女もまた流されていきます。
一体お前達は何をやっておるのだ
結局おじいさんに助けられ、呆れ顔でいわれてしまいました。
とにもかくにも、おじいさんとおばあさんとおばあさんとおばあさんは桃を食べようと桃を切ってみることにしました。
黒髪のおばあさんは鉈を構え、斜めから袈裟ぎりに
って待てー! 何で斜めに切るの!? 縦か横にしておきなさいよ!
中の人を確実に両断しようと
両断するな! ちゃんと縦に切りなさい、縦に
羽の生えたおばあさんに言われ、黒髪のおばあさんは渋々縦に切りました。
すると、なんと中から元気の良い女の赤ちゃんが飛び出してきました。
これはきっと、神さまがくださったにちがいない。
子どものいなかったおじいさんとおばあさんとおばあさんとおばあさんは、大喜びです。
桃から生まれたので、おじいさんとおばあさん達は女の子をマリタロウと名付けました。
いや待って。桃関係ない
そもそも女の子にタロウって
マリタロウはスクスク育って、やがて愛らしい女の子になりました。
そしてある日、マリタロウが言いました。
わたし、鬼ヶ島へ行って、わるい鬼を退治します
マリタロウはおばあさん達にきび団子を作ってもらうと、鬼ヶ島へ出かけました。
旅の途中で、イヌに出会いました。
マーリタロさん、マリタロさん
イヌは歌いながら、マリタロウに近付き、言いました。
お腰につけたその野太いおチンポでこの雌犬のオマンコズポズポ犯して奥にたくさん精液注ぎ込んで赤ちゃん孕ませてくださいぃぃぃ!
わたし、女の子だからおちんぽないよ?
そうですか、残念です
酷い出オチでした。
でも、Olさまならたくさんしてくれると思う
ついていきます、地の果てまでも!
こうして雌イヌがマリタロウのおともになりました。
そして、こんどはサルに出会いました。
マリタロウさん、マリタロウさん
サルは生真面目な調子でマリタロウに話しかけました。
お腰に付けたきび団子を1つ下さい。そうすれば、おともします
うん、いいよあっ
マリタロウは腰に何もつけていないことに気付きました。
作るだけ作ってもらって、受け取るのを忘れたのです。
ごめん
いえ
サルは少し困って考えると、言いました。
なくても大丈夫です
いいの?
はっ。Ol様から、マリタロウ様をお守りせよと言いつかっておりますので
サルはおじいさんの回し者でした。
こうしてサルもマリタロウのおともになりました。
ママリタロ、さん、ぜぇ、はぁマリ、タロウ、さんはぁ、はぁ
そしてこんどは、キジに出会いました。
キジは全力で走ってマリタロウに追いつくと、息も絶え絶えに声をかけました。キジは体力が無いのです。
だいじょうぶ?
だいはぁはぁじょ、はぁごめ、はぁやっぱはぁ、はぁ、無理
マリタロウは優しい子なので、彼女の体力に一定の理解を示しました。
マリタロウ。このきび団子を忘れているわ
キジは息を整えると、髪をかきあげてきび団子を渡しました。おばあさん達から預かっていたのです。
ありがとう!
べ、別にあなたの為じゃないから勘違いしないで。おじいさんに頼まれたから、仕方なくもってきただけなんだから
キジは酷いツンデレでした。
じゃあ皆で、きびだんご食べよう!
マリタロウが包みを開くと、そこには5つのきび団子が入っていました。
素朴で暖かい、羽の生えたおばあさんのきび団子。
不恰好だけど心の篭った、赤い髪のおばあさんのきび団子。
究極まで真球に近付く事を追求した、黒髪のおばあさんのきび団子。
そして丸く整った几帳面さが滲み出るのは、おじいさんの作ったきび団子です。
4人はそれを分け合い、美味しく食べました。最後に残った一つは、真っ黒で怪しげなきび団子でした。
それはけして食べてはいけないと言っていたわ
一体何を寄越したんだ、Ol様!?
ロクでもないものに決まっていました。
こうして、イヌ、サル、キジの仲間を手に入れたマリタロウは、ついに鬼ヶ島へやってきました。
よくここまで来たな、マリタロウ
鬼ヶ島では、四本の腕と山羊の頭を持つ赤い鬼が待ち構えていました。
その時点で大体オチが読めるので、鬼との戦いは省略します。
待て待て待て待て! 省略すんなー!?
省略します。
ふざけんな! 断固俺は戦うぞ!
仕方ありませんね。マリタロウさん、黒いきび団子を投げてください。
おい地の文、ナチュラルに登場人物と会話すんな
マリタロウがぽーいと投げると、きび団子は鬼の顔にべっとりと張り付きました。
なんだこりゃ
鬼がきび団子を拭い取ると、団子はうねうねと蠕動しながら鬼の身体を取り込んで瞬く間に巨大化しました。
スライムじゃねーか!
そうです、黒い団子は黒髪のおばあさん特製、魔喰いスライムだったのです。
だったのです、じゃねぇぇぇぇぇぇえ!!
魔力で出来た悪魔もとい、鬼はひとたまりもありません。
とうとう鬼は、
まいったぁ、まいったぁ。こうさんだ、助けてくれぇ
と、手をついてあやまりました。
しかしその頃には、マリタロウとイヌとサルとキジは、鬼から取り上げた宝物をくるまにつんで、おじいさんの手配した地下道を通って家に帰っていました。
放置プレイしかしそれもマリーの愛と思えば!マリーちゃんマジ天使!
断末魔の声をあげ、鬼はこの世から消え去りました。死にました。
おじいさんとおばあさんとおばあさんとおばあさんは、マリタロウの無事な姿を見て大喜びです。
黒いおだんごありがとね、そふぃ
べ別に、あなたの為に造ったわけではありません。勘違いしないで下さい
黒髪のおばあさんも酷いツンデレでした。
そしておじいさんとおばあさんとおばあさんとおばあさんとマリタロウとサルとイヌとキジは、宝物のおかげでしあわせにくらしましたとさ。
めでたし、めでたし
ミオが本を読み終わると、マリーはすやすやと寝息を立てていた。
っていうか地の文ミオだったの!?
リルの言葉に、にっこりと笑顔でミオは頷く。