ウォルフは彼女の手を握り、目を見つめた。ユードラはそんな彼に微笑みかけると、最後の力を振り絞った。
名前をね、考えたの
名前?
ウォルフは、目の前で命の灯が消えていくのを感じながら、問うた。
ユニスフィニア。あの子の、名前よ。あなたのお陰で、私の人生は幸せだった。けれども、自由は無かった。お願い、どうか、あの子は自由、に
力の抜けていく手を握り締め、ウォルフは誓った。彼女の最後の願いを、必ず守る事を。
-6 years
自分で油を
正気じゃ
呪われた子
ひそひそと交わされる言葉を気にもせず、ソフィアは桶を運んだ。家の扉を開け、ベッドに横たわる母親に声をかける。
母さん。水を汲んできたわ
お前の、汲んだ水なんて飲めるか!
でも、飲まなければ死ぬわ
そういい、ソフィアは水を杯に汲むと母親に差し出した。その水を、母親はソフィアに叩きつけるようにしてかけた。
恐ろしい悪魔の子め。なんで、何でお前みたいな娘が私から
ベッドですすり泣く母親を、ソフィアは無感動に見つめた。
殺して、しまおうか。心の奥底から湧き上がるそんな考えを、彼女は押し殺した。
皆、彼女を悪魔の子だという。ソフィア自身も、そうなのだと思った。きっと彼女は悪魔の子なのだろう。ならばいっそ、地獄の悪魔が迎えに来ればいいのに。
そう思いながら、彼女は再度母親に水の入った杯を突き出した。
-2 years
お父様の、馬鹿ッ!
叫び、部屋を飛び出していく娘をウォルフはため息をついて見送った。
よろしいのですか
ああ。好きにさせよ
彼方から、壁を破壊する豪快な音が聞こえてきた。
壁は直しておけ
同じ調子で聞いてくる宰相トスカンに、ウォルフは渋面を作って答えた。
-1 years
そふぃ、そふぃ
近付かないでください、マリー
おだんご、どうぞ
並べられる泥団子を、ソフィアは冷たい目で見つめた。
これは泥です。食べられません
マリーは少し困ったような表情で彼女を見ると、急に表情を輝かせて泥団子に砂をまぶした。
砂をかけても泥は泥です。食べられません
えぇ
マリーは表情をくしゃりと歪ませた。彼女はそんな顔さえ愛らしく、可愛らしい。それが、ソフィアには憎らしかった。生まれた直後に両親をなくした彼女は、しかし誰からも愛され、村中から大切に育てられた。ただその、その愛らしさゆえに。
見た目がどうであろうと、泥は泥。白かろうが黒かろうが、泥です。食べられる団子では、ありません
憎らしかった。ねたましかった。誰からも愛され、美しい彼女が。いっそ焼けた油をかけてやろうかと思ったこともある。しかしそれでも、彼女は変わらないだろう。彼女は、泥ではないのだから。
近付かないでください
わたし、そふぃ、すきだもん
そうですか。私はあなたが嫌いです
言い放ち、ソフィアは踵を返し足早にそこを立ち去った。本気で歩けば歩幅の差で、ソフィアにはマリーはとても追いつけない。それでも、マリーは必死にその後ろを追いかけた。
ただ一人彼女の事を嫌い、いつだって真っ直ぐに本当の事だけを言うソフィアの事が、マリーは大好きだったのだ。
-1 minute
なんだあれ
空から注す強い光に、リルは笑い転げた。それは人間の魔術師が、悪魔を召喚している時に見られる光だ。要求しているのは、自分達女淫魔。しかし、その光はあまりにも強すぎた。少なくとも、淫魔などと言う位の悪魔を呼ぶような量ではない。明らかに怪しい光だった。
案の定仲間達は誰も食いつかず、光はずっと空に留まる。その光に、リルは不思議な感覚を覚えた。記憶には無い、しかし、どこか懐かしい思い。
たまには人間をからかうのもいいか
リルは手を伸ばし、空から降るその光を手に取った。身体が引き上げられる感覚と共に、彼女は人間の世界へと侵蝕する。
空間を越え、彼女は目の前の男に、そう言った。
そうして、物語は走り出した。
番外編6NGシーン集
★ゆにすけ1(第14話英雄を無残に殺しましょう-6 より)
息子が去った部屋の中、ウォルフはすっと立ち上がると、寝台へと向かった。
うおおおおおユニスぅぅぅぅぅう!! この父を許してくれぇぇぇぇぇえええ!ああああああ俺のせいでえぇぇぇぇぇ! 出すんじゃなかった! 出すんじゃなかった!やっぱり外になんか出すんじゃなかったああああああ英雄制度滅びろ! 魔王滅びろ!
そして横になると、ごろごろと寝台の上を転がりながら彼は叫んだ。しかし、その動きは唐突にぴたりと止まると、彼は風の様な速さで椅子へとすわり、気だるそうな表情で頬杖を突いた。
陛下。御報告がございます
数秒後扉がノックされ、トスカンの声が外から聞こえた。ウォルフは英雄の知覚を持って彼が近付くのを察知したのだ。
うむ。入れ
ウォルフは王に相応しい、威厳を持った態度でそう答えた。
★ゆにすけ2(第14話英雄を無残に殺しましょう-6 より)
彼は部屋を出ると、中庭へと向かい、その豪腕を振り上げた。一撃で地面に巨大な穴が穿たれる。彼のその腕は、ただの力の有り余った凶器ではない。鋭い剣や槍にも勝る英雄の武器だ。その力は集中すれば一点に集まり、深く細い洞窟の様な穴を地面に穿った。
彼はそこに口を近付け、周囲に音が漏れぬよう手を当てると、思いっきり叫んだ。
親父の馬鹿野郎ォォォォォ! 嫌な任務ばっかり俺に押し付けやがってぇぇぇぇぇぇぇ!!また、またユニスに嫌われたじゃねぇかクソがあぁぁぁっぁぁぁぁ!魔王死ね! 100回死ね! 可愛い妹に何しやがったあの糞野郎がぁぁぁぁっ!!
ひとしきり叫んだところで、ザイトリードは人の近付く気配に居住まいを正し、穴をにらみつけた。
殿下いかがなされました?
うむ。庭に穴が空いている。庭師に埋めておけと伝えろ
ザイトリードはいつもの巌の如き表情で、通りがかった兵士にそう命じた。
★ゆにすけ3(第14話英雄を無残に殺しましょう-6 より)
それでは姫様、今はどうかごゆっくり、身体をお休め下さい
うん、ありがとうねトスカン
トスカンが部屋を出、その足音が遠のいた事を鋭敏な英雄の聴覚で確認し、ユニスはベッドをごろごろと転がりまわった。
あーーーーもう、お兄様もお父様もウザいいいいいいい! もー、Olと二人にさせておいてくれればいいのに二人ともばかあああああ! Ol殺すとか嫌にきまってんでしょもおおおお!できなきゃ殺すとかほんっと意味わかんないし!
姫様、よろしいですか? お薬の時間です何か仰ってました?
ううん、なんでもないよ、ありがとう
薬を運んできた侍女を、ユニスは王族に相応しい優雅な動作で迎えた。
★ゆにすけ4(第14話英雄を無残に殺しましょう-6 より)
妹を殺さねばならぬかも知れん
まあ。ユニスちゃんを?
父の命だ、了承はしたが正直気が重い。兄に殺されるなど悲劇中の悲劇だ。間違いなく俺の剣はユニスを殺すだろう
内心を吐露するザイトリードに、少し困ったようにヒルダは答えた。
だ、大丈夫よあなた。あなたが思っているほどユニスちゃんあなたの事好きじゃないから、悲劇と言うほどでも無いわ!
フォローのつもりの言葉が、ザイトリードの胸にグサリと突き刺さる。
それに殺すって言ってもそもそも勝てるとは限らないし、ほら、あなたの鉛の呪いって自分でかけた割に使い勝手物凄い悪いって言うか、ぶっちゃけデメリットしかないわよね?だからきっと大丈夫!
ぐっ、と両腕を握って応援する妻に、ザイトリードはただただ涙を堪える事しか出来なかった。
★穢れを知らぬ聖女(最終話地を這う者の意地を見せ付けましょう-8より)
この娘に、ち、ち、ちちゅーを、しろっ
照れるなら言わなければいいのに、と不死身が思うくらい顔を真っ赤にして、メリザンドは言った。
はぁまあ、そんくらいなら
そう言って唇を近づける不死身の頬を、メリザンドは殴り飛ばした。
ききき貴様ぁっ! く、口にちゅーなんて、それはあんまりにも酷すぎるだろう!?鬼畜か貴様は!? おでこかほっぺにしておけぇぇ!
あ、駄目だこの子悪魔滅ぼせないわ。不死身は自分たちの敗北を悟った。
★魔法陣スピスピ(最終話地を這う者の意地を見せ付けましょう-8より)
あれです核とは、肩の後ろの2本のゴボウの真ん中のスネ毛の下のロココ調の右です!
いやどこよそれ
★嬉しかったんだね(第17話天に弓を引きましょう-7より)
なんだと
絶望的な表情で目を見開くOlの背後に、笑顔で大量の皿を運び込んでくる彼の形代達の姿が見えた。
★理由は一つ(第17話天に弓を引きましょう-7より)
格好いいから!
★プロローグ(NG)
それまで静寂を保っていた空間に、弓の弦を絞るような音がギリギリと音が鳴る。
そして、鉄を擦り合わせる様な声をあげた。
幼女ヨコセー
お前の出番は8話先だ、引っ込んでろ!
★プロローグ(テイク2)
(略)
そして、元気よく声をあげた。
サキュバスだと思った? 残念、ユニスちゃんでした!
天に帰れ
★プロローグ(テイク3)
そして、いやに甲高い声をあげた。
ハハッ! やぁ、僕ミッ○ー
すいませんお願いですお引き取りください!
★人気投票の結果(第5話愚かな侵入者を捕えましょうより)
スケルトン1体に一撃だ。しかも、相手は十人
あれ、聞き間違い? スケルトン10体が一撃?
いや、冒険者10人がスケルトンに一撃だ
あの骨、何者なの
★早く何とかしないと(第9話街を蹂躙しましょう-1より)
いよいよ、街へと進行する
名前が違う!
字が違う!
街の方がなんか格好いい!
田舎くさくない!
口々に述べる部下たちに、Olはため息をついた。これでは今後の戦いは絶望的だ。
この愚かどもめいいか、良く聞け。街の方が、美味い物を売っているのだ
おおー!
部下は揃って歓声を上げた。魔王の食い倒れの旅が、今ここに始まるのだ。
★厨ニ(第10話欲にまみれた冒険者どもに絶望を与えましょう-1より)
今オーガを両断した剣を見つめ、嬉しそうに言うのは戦士のナジャ。
それじゃあまりに平凡じゃない?
ぼそりと突っ込みを入れるのは、魔術師のウィキア。
ウィキア約束された勝利の剣(エクスカリバー)でどう?
Shalですね
ウィキアそれとミノタウロスも、私の解釈だと牛じゃないのよね
ナジャは?
ウィキアあれは角じゃなくて槍なのよね
Shal二つ槍を頂きしものですね
ウィキアそれと私の解釈では冒険じゃなくて再配置って呼びたいの。それと
友人がどこか遠い世界に旅立ってしまった。ナジャは遠い目で、かつての仲間達を見つめた。
★巨星乙(最終話地を這う者の意地を見せ付けましょう-6より)
***したげる
ローガンは思わず拳を突き上げ、立ち上がった。その拳はザイトリードを木っ端微塵に吹き飛ばし、迷宮の天井を貫き、空を衝き、太陽の影に隠れた星核を粉々に破壊した。
我が生涯に一片の悔いなし
ろーがん? ろーがん?
しんでる
その日、一体の悪魔の死と共に、世界には平和が訪れた。
番外編7Memory of amber
それは偶然と言えば偶然だったし、必然と言えば必然だった。
あるいはそれを、人は運命と呼ぶのかもしれない。
彼女、ラディクス・フルーメンが彼を見つけたのは、ちょうど新しく開発する兵器の発想に行き詰っていた時のことだった。
気分転換にと出かけた街の市場。その道の片隅に、彼はうつろな表情で座り込んでいた。汚れに塗れた生気のない顔。ボロボロの布の切れ端のような衣服。ガリガリにやせ細った身体。どこにでもいる、ありふれた孤児の姿だった。
この小さな国プラエティは今、隣国フィグリアと戦争の真っ只中だ。しかも、負けの見えている戦。どうにか新兵器で持ちこたえてはいるものの、日に日に目減りしていく物資はどうしようもない。民草は貧困に飢え、人心は荒れ、治安は悪くなり、道には孤児があふれた。
そんな中、彼女が彼に目を留めたのはその髪の色だった。彼女と同じ、琥珀色。金や赤は珍しくもないが、その中間の褐色を帯びた色というのは少しばかり珍しい。しかし、それ以上に珍しいのは、彼の体の端々から漏れ出る魔力だった。
量そのものは大したことはない。年相応の、ごくごく微量なものだ。しかし、その色はあまりにもラディクスの魔力に似ていた。魔力の色はよく髪に出る。髪自体の色が濃い場合はその限りではないが、概ね髪の色と魔力の色は似通うことが多い。