一緒にやってみる?

尋ねると、一も二もなくマリーは頷いた。

よし、これで完成!

できたー!

マリーとリルは揃って両腕をあげて、完成を喜ぶ。

うん、なかなかの出来じゃない

改めて出来上がった像を眺めて、リルはうんうんと頷く。

魔術で補助しつつ作ったこともあって、土塊にしてはかなり精巧な像が出来上がっていた。

モチーフには多少の難点があるけど

太い四本の腕に、引き締まった身体、山羊のように湾曲した二本の角。

ローガンだー!

それはどこからどう見ても、ロリコンの赤き悪魔の姿だった。

リルは最初、大雑把に人型の像を作るだけのつもりだった。しかし、マリーが勝手に腕を増やし、角を付け、尻尾を生やしだしたので、開き直ってリルもローガンの土像作りを始めたのだ。

ちゃんと動くだろうかと密かに心配しつつ、リルは土人形に魔力を通す。途端、土人形の双眸が赤く光り輝き、跪く姿勢だった土人形がすっくと立ち上がった。

成功ね。ゴーレム、マリーを抱えてあげて

リルが命じると、土人形はマリーを四本の腕でそっと持ち上げ、己の頭の上に乗せる。

たかーい!

マリーはゴーレムの角を掴んで笑い声を上げる。

オォー

ゴーレムは声を上げながら、ゆっくりと廊下を歩いた。

あれ?声を上げる機能なんてつけたっけ

ゴーレムに発声機能をつけるには、ある程度口の中に空洞を作らなければならない。見た目はローガンそっくりだとはいえ、口はパクパクと開け閉め出来るくらいで内蔵まで作った覚えはないのだが。

っていうか、どこ行くのよ!?

そもそも歩けなどと命令してないことにようやく気付き、リルはゴーレムを慌てて追った。

止まりなさい、止まりなさいって!

ぎこちなかったゴーレムの動きはどんどん滑らかになり、どすどすと音を立てながら走って行く。

すごーい、はやーい

風に髪をなびかせながら、マリーは大喜びだ。だがそれを追いかけるリルはそれどころではなかった。

ジョォォォオオオオオ!

土で出来ている癖に、もはやその走る早さはリルの飛行速度を超えていた。巨体に相応しい長い手足を振りながら、迷宮の廊下をひた走っていく。

ヨウジョォォォォオオオオオ!

こんにちはー!

とっくの昔にリルを振りきった事に気づきもせず、もはや吠えながら走るゴーレムに乗ってマリーはすれ違う迷宮の住人達に手を振る。

丁度部屋を出てくるスピナに、マリーは思わず声をあげた。

ゴーレムはあっという間に彼女の横を過ぎ去り、通り過ぎて行く。

スピナはその上に乗るマリーを一瞥しただけで表情一つ変えず見過ごし、マリーが振り向くとこちらを見てさえいなかった。

ソフィ

マリーはその背を見ながら、ぐっと口元を引き結ぶ。

そうする間にもゴーレムはどんどん進んで、やがてざあざあと鳴り響く音にマリーは前に向き直った。

かわだ

ぽつりと、マリーは呟く。

洗濯や用水に使っている地下水脈が、音を立てて流れていた。ゴーレムは一切気にせず、ざぶざぶと川の中に入っていく。

わあ

魔術で出来ているとはいえ、所詮は土塊である。ゴーレムはどんどん崩れ落ちていく。

だめ。だめだよ、もどって

角をぐいぐいと引っ張りながらマリーが言っても、ゴーレムはいうことを聞くことなく川の中を進む。

だめ、だめだってば、こわれちゃう

ぼろりと腕が一本落ち、角が片方欠け、身体が水にさらわれて細くなっていく。片足が膝からぼきりと折れて、マリーの脚の先が川に浸かった。

だめだよ、せっかくつくったのに!

流石に慌てて、マリーは叫ぶ。

ローガン!いたずらしないで!

その途端、ゴーレムの動きはピタリと止まった。

いつから、気付いてたんだ?

ゴーレムの口から、先程までとは打って変わって流暢な声が漏れる。

めがひかったとき

俺が入った瞬間じゃねえか!?

同じ悪魔であるリルですら、目の前で憑依しても気づかない程自然に取り憑いたつもりだったのに、とローガンのプライドが、ほんの少しだけ傷ついた。

あしつめたいよ。もどって

おう。だけど、もうちょい待つと面白いもんが見れるぜ

おもしろいもん?

小首を傾げるマリーに、ローガンは笑みを押し隠す。

マリー!

水音の中、聞き慣れた声にマリーは振り向いた。

動かないで!いいですか、じっと、しているんですよ!

スピナがそのローブの裾をまくり上げ、川の中へと足を踏み入れている。

じっとしてなさいっ!

今まで聞いたことのない声量で叫び、スピナは呪文を唱えながら片手で複雑な印を組む。するとほんの一瞬、水の流れが緩やかになった。

ソフィ!

崩れ落ちていくゴーレムの上から、スピナはマリーを抱え上げる。そして急いで岸まで上がった。

おう、おつかれさん

なんとかマリーの身体を陸地に上げて、ずぶ濡れになった衣服を絞ることさえ出来ずに呼吸を整えるスピナに、ローガンはのんびりと声をかけながら炎の塊を幾つか出した。

え?

じゅっと音を立て、一瞬にしてスピナの服や髪が乾く。

彼女は呆然として、ローガンを見上げた。

マリーと水浴びして遊んでたんだが、驚かせちまったみたいだな

しゃあしゃあと言ってのけるローガンに、スピナの顔は一瞬にして真っ赤に染まった。

ソフィーーーーーーーーーー!

満面の笑みを浮かべながら、マリーはスピナに抱きつく。

スピナの目が大きく見開かれ、そして刃のように鋭くなってローガンへと向かう。

しかしその頃には、老獪な悪魔は一瞬の隙をついて既に消えてしまっていた。

ぶわりとスピナの髪が逆立ち、蛇のように波打つ。

わーい、ソフィだ、ソフィだ

しかしそんなスピナを見てマリーは怖がるどころか、喜んで彼女にぐりぐりと頭を押し付けた。

何でそんなに嬉しそうなんですか

小鳥くらいなら殺せそうな殺気を漂わせながら、スピナは怨嗟の声を上げる。

だって、やさしいよりそんなかんじのほうが、そふぃっぽいもん

しかし返ってきた答えに、スピナの毒気は抜けて髪がすっと落ち着いた。

もう少し、接し方を考えた方がいいのだろうか

ニコニコと嬉しそうに笑うマリーに、スピナは一人、頭を抱えた。

3.恋せし乙女と察しの悪き悪魔

んっふ、んんっ

部屋の中に、艶めいた声が微かに響く。

お師匠様ぁっ

スピナは愛しい相手を呼びながら、快楽に身を震わせた。

そ、こっ!

指先が彼女の敏感な部分をゆっくりと擦り上げ、スピナは堪えるように背を丸める。

お師匠様のが入ってくる

硬いものがぐっと秘裂を割り開いて中心を突き進む感覚に、吐息が漏れる。

ああっ、駄目です、そんな、あぁ

ぴちゃぴちゃと鳴り響く音にスピナは頬を紅潮させて、髪を振り乱した。

あっ、あっ、あっ、ああっ!

抽送の速度は徐々に上がっていき、それにともなってスピナの声色も高さを増していく。

おししょう、さま、ああっ、おししょうさまぁあぁ!

それとともに胸が揉みしだかれて、硬く張り詰めた蕾がコリコリと刺激される。

ああ、あああぁ、ふあぁぁぁあぁっ!

スピナの脚がピンと伸び、彼女はベッドのシーツをぎゅっと握りしめながら、身体をびくびくと震わせて絶頂に達した。

ついと銀の糸を引きながら膣内から指が引きぬかれ、スピナの呼吸音だけが部屋の中に響く。

数分、呼吸を整えた後、スピナは重い息を吐いた。

ベッドの端から布を引き寄せ、自らの体液で濡れた指と股座を拭う。

先ほどまでの興奮はすっかり消え失せ、代わりに罪悪感と自己嫌悪が襲ってきていた。

こんな端ない女だと知ったら、お師匠様はどう思うだろう

鬱々とそんな事を思いながら、スピナは身支度を整え、部屋の扉へと向かう。

扉には万が一にも声が外に漏れないよう、防音の結界が張ってあった。

扉に貼られた呪符を剥がし、扉を開く。

わっ

なっ

その瞬間、扉の向こうにいたリルと目があった。

な、なんでそんな所にいるんですかっ!

いや、結界が張られてたから気になって

目を白黒させながら、リルは答える。

考えてみれば当然の話だった。結界は空間に作用する魔力の塊そのものだ。

悪魔であるリルからしてみれば、その存在を全力で喧伝しているようなもの。

スピナは羞恥に顔を赤く染めた。

中で何を、していたか、見たのですか

いや、何の結界かもわからなかったし、見てはないけど

それをリルは、怒りによるものなのではないか、と捉えた。

あなた変なことしてたんじゃないでしょうね

変なこと!?

じろりと睨むリルに、スピナは跳び跳ねんばかりに驚く。

その反応にリルはますます疑いを強くした。

かつて彼女が放置した媚薬スライムにユニスが襲われたことは記憶に新しい。

Olを害するとは思わないが、何か妙な企み事をしている可能性は十分にある、とリルは考えた。

ちょっと部屋を見せてもらっていい?

ええ

頷きかけ、スピナは部屋の中に汚れを拭った布を放置したままだった事に気がついた。

普通なら多少濡れた布があるくらい、汗でも拭いたのだろうと特に気にも止めないだろうが、相手は淫魔である。そんなものでも、スピナが何をしていたか気づくかもしれない。

絶対にダメです!

スピナは勢い良く扉を閉めて、背後にかばった。

なんで隠すのよ

にじりよるリルに、スピナはふるふると首を振る。元々寡黙で口数の少ない彼女は、混乱と焦燥の極地で上手い言い訳など考えつくはずもない。

あ、わかった

不意に、リルが疑いの眼差しを向けるのをやめて、ニヤニヤと笑みを浮かべた。

スピナ

まさか。

さては

扉越しでも、

Olがいないからって

気づいたというのか。

部屋がぐちゃぐちゃなんでしょー

お師匠様には黙っててください!

ピンとリルが人差し指を立てるのと、スピナが頭を下げるのはほぼ同時だった。

いや、別にそんな事報告したりしないけどさ。そんな慌てるくらい、部屋汚いの?

そそうなんです。とても他人に見せられるような状態ではなくて

スピナは潔癖性と言っていいレベルの綺麗好きだ。ほんの少しでも部屋が汚れているような状況は許せないし、机の上のビーカーの位置がずれているだけでも気になるほど。リルの言葉を肯定するのは屈辱だったが、背に腹は代えられない。

ふーん

だが、その決断は、

そういえばわたしスピナの部屋って見たこと無いな。どんな感じなの?

完全に、逆効果だった。

ですから、他人に見せられるような状態ではないと

いいじゃない、見せてよ。大丈夫、わたしの部屋だって相当なものだし、引いたりしないって

いえ、ダメです

わたしとスピナの仲じゃないの

そんな押し問答を何度か繰り返して、スピナはとうとう観念した。

あまり頑なに拒否しすぎても、また妙なことを疑われる可能性がある。

わかりました、ですが、最低限だけ片付けさせて下さい

そんなに気にしないでいいのにまあいいわ

ヒラヒラと手を振るリルから視線を逸らさず、スピナは後ろ手に扉を開けて、そして素早く体を部屋の中に差し入れると急いで扉を閉めた。

さっさと、あの布を処分しなければいけない。

そこまで考えて、スピナははたと気づいた。処分と言っても、どうやって?

服の中に隠しただけでは、匂いを嗅ぎ当てそうだ。

かと言って燃やしてしまっては、煙や煤でバレバレだ。

部屋の何処か隅に隠そうにも、シンプルで無駄のない部屋にしているせいで隠せそうな場所がどこにもない。

衣装棚の中なら隠せるかもしれないが、流石に汚れたものを服の中に混ぜるのは抵抗が大きかった。

ねえ、まだー?

どんどん、と扉がノックされる。慌ててスピナはピンク色のスライムが詰まったガラス容器の蓋を開け、布を放り込んだ。

終わった?

ピャッ!?

それとほぼ同時に、リルが扉を開けてずかずかと入ってくる。

か、勝手に入らないで下さい!

なによー、全然綺麗じゃないの

きょろきょろと部屋を見回すリルからスライムを背中で隠しながらも、スピナはジュルジュルという独特の咀嚼音が消えるのを感じた。以前作った布のみを食べるスライムが、処分してくれたのだ。

リルとは違います。私はこの程度でも恥ずかしいんです

ほっと胸を撫で下ろしつつ、安心してスピナは言う。

ふぅん?

何となく部屋を見回して、リルは不意にあることに気付いた。丁寧に整頓され、実験器具の一つに至るまで整理された部屋の中で、ベッドのシーツだけが皺になって乱れている。

それを認識した途端、彼女の鼻が部屋の中にわずかに残った香りを嗅ぎつけた。どこか甘い、ツンとした匂い。リルにとってはある意味嗅ぎ慣れたその匂いに、彼女はスピナが今まで何をしていたのか完璧に把握した。

大体、リルは普段からだらしなさすぎるのです。仮にもお師匠様の使い魔であるなら、もっとしっかりとですね

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