思わず問うた言葉に、リルは更に肩を落とす。
我らとリル殿で、食材を集めてきたのだ
そうか。よく手配してくれたな
ん
エレンのフォローにOlが乗ると、リルは小さく頷く。
あたし、料理覚えようかな
落ち込んだ空気の中、出し抜けにユニスはそんな事を言い出した。
だってOl、あたしを奥さんにしてくれるって約束したでしょ?
ぎゅっとユニスはOlの腕を抱きしめる。
ちょっと、それどういうこと!?
途端、落ち込んでいたことも忘れて、リルはOlに伸し掛かるように身を乗り出す。
同時に、スピナが無言でがたりと立ち上がった。
よいしょ、よいしょ
そんな中マイペースに、マリーが飲み物を盆に乗せて運んでくる。
ふふ
そんなやりとりを見て、頬杖を突きつつエレンはニヤニヤと笑みを浮かべた。
ねー、Olー
ちょっと、離れなさいよ!これはわたしのなんだから
誰がお前のものだ
仮にも一国を統べる魔王と使い魔、英雄などという立場でありながら戯れ合う三人も。
そんな彼らを射殺しそうな瞳で見つめる魔女も。
のむ?
そんなオーラを放つスピナの隣で、呑気にマグカップを差し出してくる幼子も。
貰おうか
どれもこれも見てて全く、退屈しないな。
マリーからマグカップを受け取りながら、エレンは笑みをこぼした。
没プロローグ
2巻のプロローグ、没バージョンです。
没になった理由は
・説明部分が冗長すぎて退屈
・あまりちゃんとキャラの紹介ができていない
・キャスの魂がどうなったかとかどうでも良い
辺りです。
その地に、生命と呼べるものはなかった。
一滴の水も含まぬひび割れた大地には草一本生えず、ただただどこまでも続いている。荒野以外にあるものといえば、捻くれた奇妙な岩山か広大な砂漠くらいで、海はおろか河も湖もない。それどころか、空は常に分厚く重い曇天に包まれて、陽の光が差し込むことすらなかった。
どんな生物も棲めず、生まれることもない、文字通りの不毛の地。
それが、俗に地獄だとか魔界だとか言われる世界だった。
およそ変化というものとは無縁であると思われるその空に、ぴしりと音を立てて亀裂が入る。その亀裂から、一人の女がずるりと抜け出してきた。
真っ白な肌と、対照的に黒い髪。まるで芸術品のように美しい姿をしながらも、同時に男の劣情を誘う肉感的な肢体。そして、人ならざるものであることを示す蝙蝠のような羽と鞭のようにしなる長く細い尾、羊のような角を持っている。
彼女は名を、リルシャーナ。リルと呼ばれている淫魔(サキュバス)であった。
空に開いた穴から出て、リルはぐっと羽を伸ばしながら息をつく。久方ぶりの帰省であった。悪魔はしばしば人間の魔術師に召喚されて人間界へと赴くが、その期間は大抵、さほど長くない。今回のように一年以上に及ぶ事は極まれな事だ。
リルは空を飛んで、自分の家へと向かう。家と言っても、さほど位の高くない淫魔である彼女のそれは小さな掘っ立て小屋のようなものだ。
えいっ!
それに手を当てて魔力を注ぎ込むと、小屋は見る間に膨れ上がり、石造りの屋敷へと姿を変えた。乾いた土と石しかないこの世界で、人間界から持ち帰る魔力というものは唯一にして万能の資材だ。
主人であるOlからはリル程度の位の悪魔にしては破格の額をもらっている。小屋をちょっとした豪邸に変えてもなお有り余る程の量だったが、ひとりきりで住む家をこれ以上大きくする気にはなれなかった。
うーん
あまりにもOlの迷宮に似た作りになってしまった自室を見て、リルは唸るような声をあげる。概念の世界である魔界では魔力で物を作るのに緻密な計算など要らないが、その分、心の奥底にあるものが色濃く反映される。
どうやら、自分は迷宮での暮らしを思ったよりもずっと気に入っているらしい。リルはそれを改めて認識して、誰も見ていないのに少し気恥ずかしい気分になった。
さっさと用事を済ませて戻りますか
誰にともなくそう呟いて、リルは懐から手のひら大の石を取り出し、宙にかざす。鈍く灰色に輝くそれは、人間の魂だ。不毛の大地である魔界には生命はなく、なにものも生まれない。
ならば、悪魔はどうやって増えるのか。その答えが、これだった。
小屋にやったのと同じ要領で魔力をそそぎ込むと、魂はみる間にその輝きを失い、石炭のように黒く濁った。
ここまで安定すれば、もう他の悪魔に喰われてしまう心配もない。とくとくと微かに鼓動するそれを、リルは部屋の窓から地平に向かって思いっきり放り投げた。しばらくすれば、周囲の瘴気を吸って立派な悪魔に成長するだろう。
それを見届け、リルはさっさと翼を広げて宙に飛び出す。空にあいた隙間を目指して飛びながら、彼女は一度だけ、自分の住まいを振り返った。
普通に暮らしていては百年や二百年の稼ぎではとても作れないだろう大きく堅固な屋敷は、かつて彼女が心から望んでいたものだ。
だが今は、それは酷くくすんで見えた。
ただいま、っと
あ、おかえり!
リルが床に描かれた魔法陣から這い出すと、ユニスが出迎えてくれた。ユニスはリルの肩程までしか背丈のない、小柄な少女だ。南部の人間特有の浅黒い肌は彼女の活発さを表しているかのようで、コロコロと表情の変わる愛らしい顔立ちとすらりとした肢体には、淫魔であるリルとはまた別の健康的な魅力があった。
大丈夫だった?
魔界への穴を開けっ放しにしておくのは非常に危険だが、閉じてしまうとリルがこちらへ帰って来れなくなってしまう。そこで、リル以外の悪魔が勝手に出入りしないようにユニスに見張りを頼んでいたのだ。
うん。大して強いのは出てこなかったし、全部追い返しちゃった
リルの問いに、ユニスは剣を肩に担いで朗らかに言った。なりは小さくても、英雄として生まれたユニスの力量はこの迷宮でも随一だ。それ程大きな穴をあけてはいないとはいえ、無限に湧いて出てくる悪魔の相手をして全く疲れた様子すらない。
おう、悪かったな
野太い声と同時に、渦巻く炎が立ち上った。
炎はそのままぐるりと捩じれて、人の様な形をとる。といっても、そこに現れたのは人間とはかけ離れた姿の悪魔だ。毛皮に覆われた下半身と四本の腕を持つ上半身。そして山羊の様な角を持つ悪魔、ローガンであった。
まあ、あなたが通れる穴をそうホイホイと開けるわけにもいかないからね
リルが魔界へ赴いたのは、彼が手に入れた魂を捨ててくるためだった。
ローガンはリルよりも遥かに上位の悪魔だ。そんな大きな穴を長時間開けては、流石にユニスでも対処しきれない。
でもいいの?せっかくの魂なのに
位の高い悪魔は人間や位の低い悪魔など自分の餌だとしか思っていない傲慢な性格のものも多い。それ程上位の悪魔にしては、ローガンは比較的接しやすい性格をしていた。
俺は女の魂は、幼女のものしか口にしないと決めてるんだ
筋金入りのロリコンであることを除けば。
じゃあわたし、ご主人様に報告してくるね
うん、今なら自室にいると思う
ローガンが救いようのない変態であることはいつものことなので、リルはさらりと無視して、Olの部屋へと向かう。
ただいまー!
戻ったか
勢いよく扉をひらくと、琥珀色の髪の男が鋭い視線をリルへと向けた。彼がリルの主人であり、この迷宮を支配する魔王アイン・ソフ・Olであった。
見かけは二十代の若い男に見えるが、魔力で若返っているだけでその実態は八十歳を超える老魔術師だ。自ら魔王を名乗るだけあって邪悪で冷酷な男だが、リルにとっては少し口喧しいご主人様といったところであった。
今も、ノック位しろと怒られるものだと思っていたので肩透かしを食らったくらいだ。
どうしたの?
珍しく言いよどむOlに、リルは首を傾げた。
悪魔という存在は、約束を破れない。そういう風にできている。
しかしそれは人間界だとか物質界だとか呼ばれる、こちらの世界での話だ。一度魔界に戻れば、約束を律儀に守る必要はない。一度魔界へいって戻ってこい、などという約束に従う必要はないのだ。
にも関わらず、リルは戻ってきた。
もちろん、魔力の払いがいいからというのはあるのだろうが、やはりそれは奇妙なことのように思えた。
彼女のそういう悪魔らしからぬ振る舞いは今回に限ったことではない。ユニスは、リルはOlの事が好きだから等と言っていたが、淫魔が人に惚れるなどという事があるとはとても思えなかった。
Olが判断に悩んでいると、リルが開け放ったままの扉がコンコン、と律儀に二度ノックされた。
お師匠様。準備が出来ました
姿を現したのは、Olの弟子であるスピナだった。病的なまでに白い肌に真っ黒な髪と瞳。表情のない顔立ちはまるで人形のように美しい。
あ、スピナが代わりにやっててくれたの?ありがと
いえ
そういえば、とOlは気づく。
お前は最近あまり文句を言わなくなったな
ん?あー。言われてみれば、そうかもね
リルが使い魔になった直後は、何かと文句を言っていた気がする。
もう慣れちゃった
笑いながらいう使い魔に、変な奴だ、とOlは内心で呟いた。
没エロシーン
没シーン二つ目。
書き下ろしエロシーン閑話愛人たちに褒美を与えましょうに入れるつもりで書いたけど没にしたシーンです。理由は
・長すぎる
これのみ。ヒロインの数が多すぎました。19Pは心が折れる。没にした部分だけで13ページ分くらいあります。
では、お清めいたしますね、お師匠様
ノームとの情交の後、真っ先にそう言い張ってOlの脚の間に陣取ったのは、スピナだった。有無を言わさぬ迫力で他の女を寄せ付けず、水中にあるOlの逸物を握りしめると、彼女は迷わず湯の中に顔を潜らせた。長い黒髪がまるで花弁のように水面に広がり、湯とは違う生温かい感覚がOlの股間を根元まですっぽりと包み込む。
じゃあわたしはこっちー
リルがそう言ってOlの腕を取り、そのたわわにみのった果実の間に挟み込む。淫魔の豊かな双丘は腕をすっぽりと挟み込んでしまうほどの大きさで、谷間に塗られた石鹸の泡がぬるぬると滑ってOlの肌を楽しませた。
オーウルっ
楽しげな声とともに顔を横向かせられたと思うや否や、ユニスの顔が迫ってあっという間にOlの視界を埋め尽くす。二度、三度と高く音を立てながら唇が重ねられ、首に腕が回されて、口内に舌が入り込んできた。
あんっ、もう、えっち
ユニスの腰に腕を回して尻を触ると、彼女は唇を離して気恥ずかしげにそんな事を言った。殆ど毎日のように床を共にし、こんな状況で何を言っているのだとは思うが、Olは再び彼女の唇を奪って黙らせた。
ぷはっ!
と、その時、流石に呼吸が限界に来たのかスピナが顔をあげる。いつもなら病的なまでに白い肌が真っ赤に紅潮し、濡れた髪が頬に貼りついて何とも言えない色気を醸し出していた。
無理はするな。一旦
水中呼吸《ウォーター・ブリージング》
立ち上がろうとするOlを制するように青銀色の光が渦巻いて、スピナの顔を取り巻いた。
これは?
水の中でも息が出来るようにする魔術よ。このくらい、弟子なら教えておいてあげなさいよ
ウィキアは口をへの字に曲げて鼻を鳴らす。苦言を呈したというよりは、単に照れ隠しだろう。
ありがとうございます。では、お礼に
スピナはやおらウィキアの頬を両手で挟むと、いきなり口づけた。
-----!?
ウィキアはジタバタと手足を暴れさせてもがくが、口を封じられた彼女は非常に脆弱だ。
な、何を、飲ませたのよっ!?
何やら口移しで飲まされたらしく、咳き込みながら尋ねるウィキアに
媚薬です
スピナは腕でごしごしと唇を拭いながら、しれっとそう答えた。
さあ、共にお師匠様にご奉仕しましょう
いや、私はガボッ!?
有無を言わさずスピナはウィキアの頭を水中に押し込んで、自身も湯の中に没する。
ではわたくしは、我が君の身体をお清めして差し上げますわね
あまりの出来事にしんと静まり返った中、オリヴィアは何事もなかったかのようにそういうと、石鹸で泡だらけになった身体でOlの胸元に抱き付いた。
ふむ、では私も助太刀しようか。後は戦士殿、ご助力願えるか?
了解した。Ol様の為であれば、身命をかけて奉仕させて頂こう
楽しげに笑みを浮かべながらエレンがオリヴィアに続き、周囲を見回してナジャを手招いた。その意図は明白だ。集まった女たちの中でも特に豊かな胸を持った三人が前から後ろからOlを挟み込み、その乳房を使って彼の身体を洗い清める。
なにそれ面白そう。じゃあ、わたしも、えいっ